第5回福井県科学学術大賞特別賞受賞者

最終更新日 2011年2月9日ページID 013892

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山田氏 さかい  りょうじ
酒 井  良 次

 サカセ・アドテック㈱取締役ACM事業部長


<略歴>
昭和27年 丸岡町(現坂井市)まれ
昭和49年 慶応義塾大学法学部法律学科卒業
昭和63年 サカセ・アドテック㈱設立
平成20年 現職
 


業績名 『三軸織を利用した、次世代宇宙構造技術の開発と、その要素技術の地上転用』


 長年にわたって取り組んできた三軸織物の宇宙分野への応用研究が進捗し、新たな宇宙構造物の素材としての可能性が実証されようとしています。またこの技術の地上転用事例として、文化財の保存・修復への利用や冬季五輪用のリュージュそりの開発が行われています。本県繊維産業を取り巻く環境は厳しさを増していますが、三軸織物の特性を活かし、さらなる科学・文化への貢献が期待されています。

≪開発研究の内容、成果≫
  三軸織物は、繊維などの素材を縦、横、斜めの三方向に竹籠のように 編んだ織物で、正六角形の集合体で構造が安定していることから、あらゆる方向からでも高い強度を持つことが特長とされています。
 サカセ・アドテック株式会社は世界で唯一、この三軸織物を工業生産できる企業です。同社では、酒井氏が中心となり、平成4年頃から、丈夫で型崩れしない三軸織物の特長を活かし、軽量化した素材を宇宙開発分野に用いる取り組みを進めてきました。今では世界の商業用人工衛星で用いられるアンテナ材の6割を供給するまでに至っており、その技術はスポーツ資材(ゴルフシャフト、釣竿など)にも応用されています。
 酒井氏は、平成11年より、宇宙分野においても単に素材を提供するだけでなく、製品、構造システム事業への進出を図ろうと、次世代の宇宙構造物構築技術である「宇宙インフレータブル構造技術の研究」にNTTと共同で着手しその後産学官連携体を組織し当研究を進めてきました。地上から宇宙へ発射する際にはエアバックのように、あらかじめ小さく折り畳んで収納しておき、宇宙においてそこにガスを注入することにより膨張展開させ、目的に応じた形状に成形する、これが、「宇宙インフレータブル構造」と呼ばれるものです。特に収納容積に限界のある中・小型衛星用搭載機器で大きな展開構造を実現するための有力な構造だと言われています。三軸織物の特長である折り畳んでも繊維にダメージを与えず、形状を保持する特性が生かされています。
 平成17年から、同テーマでJAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同研究も始まり、国際宇宙ステーションの日本の実験棟「きぼう」の第2期利用計画(平成22年度後半〜24年度)において、船外実験のテーマの一つとして準備が進められています。また、平成19年には観測ロケットにより我が国で初めて、宇宙インフレータブル構造の宇宙実証に成功しました。
 酒井氏は、同構造に関する技術を、地上でも転用しようと、幾つかの応用研究を進めています。このうち、文化財保存・修復用途への応用については、平成19年度には、アフガニスタン・バーミヤン遺跡流出文化財の保護・修復に同社の三軸織物の技術が用いられ、更に国宝級の文化財への保存・修復への応用も進められています。
また、JAXA等との新たな共同研究として、バンクーバー五輪用ハイテクリュージュそりの開発にも参画しており、三軸織物に関する特性について検証が行われる中で、さらなる応用研究についての成果が期待されています。
 

 

センサー
 「三軸織の構造」

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