第7回福井県科学学術大賞受賞者-1

最終更新日 2012年2月10日ページID 016752

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廣田氏

ひろたこういち
廣 田 晃 一

 信越化学工業㈱磁性材料研究所第二部開発室主任研究員  

<略歴>
昭和48年   富山県富山市生まれ
平成10年   東北大学大学院工学研究科博士課程前期修了
同  年    信越化学工業㈱入社、現職



 



 業績名 『高耐熱性Nd磁石の開発

  「磁石が地球環境保全に役立つ。」電気自動車や省エネ家電の普及に伴い脚光を浴びているのが、その心臓部で働く高性能磁石の存在です。高温の中で強い磁力を保つためには、ほぼ全量が中国で産出される高価な希少金属が欠かせません。その金属の使用量の削減と耐熱性の向上が可能となる新たな磁石の製法が発見されたことにより、私たちの暮らしのエコに直結する製品がより身近になりつつあります。

≪開発研究の内容、成果≫
  エアコンで空気を暖めたり冷やしたりするのに欠かせないコンプレッサーには、モータが使われています。より高出力のモータを使えば空気を圧縮する効率が上がり、消費電力はその分少なくて済みます。そのモータの高出力化に一役買うのがレア・アース(希土類)磁石です。
 エアコン用コンプレッサーやハイブリッドカーの駆動用に使われるモータは、どうしても高温下での使用が余儀なくされます。そこで使われる磁石は熱が加わると磁力が低下する性質があるため、高い耐熱性、すなわち熱が加わっても安定した磁力を保持できることが使用上の必須条件となります。
 希土類磁石の中でも最も強力で、多く使われているのが鉄にネオジムと呼ばれる金属を混ぜた「ネオジム磁石」ですが、高温下での磁力低下を避けるため、別の希土類金属であるジスプロシウムを混ぜることが必要でした。ところが、ジスプロシウムは地球上、ネオジムの約2割程度しか存在していない希少金属で、ほぼ全量が中国で産出されています。そのため中国の輸出制限や環境規制等により、原料価格が上昇したり、安定供給が確保
できない等のリスクがありました。
 廣田氏は、ジスプロシウムをネオジム磁石に混ぜる新たな製法として「粒界拡散合金法」を発見し、貴重なジスプロシウムの使用量を大幅に減少させると同時に、世界最高の性能を持つ磁石の開発に成功しました。
 これまでの製法では、原料の段階でジスプロシウムを混ぜないと高い磁力を維持できなかったため、多量のジスプロシウムが必要となっていましたが、粒界拡散合金法では、半製品の表面からジスプロシウムを低温で拡散させることで希少金属の使用量を低減し、高い耐熱性と高性能を併せ持つ最強の磁石を製造することができます。
 廣田氏が所属する信越化学工業㈱では平成16年より、越前市の武生工場で粒界拡散合金法によるネオジム磁石の開発と試作に取り組んできました。これまで全世界の企業に対し延べ数百件の試作品を提供してきた結果、省エネエアコンや、国内外の次世代電気自動車・ハイブリット自動車等に採用されつつあります。
 地球温暖化が全世界的な問題となり、人々の環境意識の高揚とともに、環境対応の自動車や省エネ家電へのニーズも拡大を見せています。廣田氏の業績により、「環境の世紀」に貢献する製品の流通や新たな製品の開発が期待されています。



 


「粒界拡散合金法」の工程(左)と耐熱性の変化(右)
「粒界拡散合金法」の工程(左)と耐熱性の変化(右)

 

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