職場のトラブルQ&A ~管理職の時間外手当~

最終更新日 2020年3月27日ページID 000268

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 私は、ファミリーレストランの店長として入社しました。入社の際に会社から「店長は管理職だから残業手当は出ない」と言われたのですが、店員に対する人事権などの管理職の権限はありません。仕事もレジ、ウエイターなど全般に及んでおり、出退勤時にはタイムカードを押しています。また、管理職手当ももらっていません。このような場合、残業手当はもらえないのでしょうか。

 労働基準法では事業の種類にかかわらず監督もしくは管理の地位にある者、または機密の事務を取り扱う者には、年次有給休暇や深夜労働の規定を除き、労働基準法に定める労働時間、休憩および休日に関する規定を適用しないことになっています。
 しかし、その「監督もしくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」といいます)については、労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者とされており、役職の名称にとらわれず職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金等の待遇の観点から実態に即して判断するとされています(解釈例規:昭和63年3月14日付け基発第150号)。
 店長といえども、経営方針の決定や労務管理上の指揮権限、および自己の勤務時間について自由裁量の権限が与えられていないと認められる場合などには、法定労働時間が適用される労働者であると考えられ、時間外手当の対象となります。実情を整理し、会社に時間外手当の支払いを申し出てみてはどうでしょうか。

解説

 労働基準法に定める労働時間等の規定の適用除外となる管理監督者とは、労働時間、休憩、休日に関する規制の枠を超えて活動することが当然とされる程度に企業経営上重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も労働時間等の規制になじまない立場の者に限られます。
 ところが近年、企業において管理監督者の範囲を広く取り過ぎるといった不適切な取扱いにより、結果として支払うべき割増賃金を支払わず、過重な長時間労働を行わせている事例があります。
 全国的にチェーン展開する小規模な店舗の店長等については、管理監督者の範囲の適正化を図るため、その実態を踏まえ裁判例も参考にした判断要素が示されています(「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」平成20年9月9日付け基発第0909001号)。
 次の表の管理監督者性を否定する要素に1つでも当たると、管理監督者に該当しない可能性が高いといえます。また、否定要素をすべてクリアできたからといって、必ずしも管理監督者に該当するとは言えず、実態に即して判断されます。十分な権限もなく、相応の待遇も与えられていないと判断される場合には管理監督者には当たらず、残業手当を支払わなければいけません。
 なお、管理監督者であっても深夜割増賃金の支払いは必要です。また、年次有給休暇を取得させることや健康を害するような長時間労働をさせてはいけないことなどは一般労働者と同様です。
 さらに、労働安全衛生法の改正により2019年4月からは、使用者は健康管理の観点から、裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての人の労働時間の状況を客観的に把握するよう義務付けられています。

【管理監督者性を判断する要素】

 

管理監督者性を否定する重要な要素

管理監督者性を否定する補強要素

職務内容、責任と権限

  • 採用、解雇、人事考課、労働時間の管理、これらへの責任と権限、関与が実質的にない

 

勤務態様

  • 遅刻、早退等で減給、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる
  • 人員が不足する場合自らが長時間労働を余儀なくされるなど、実際には労働時間に関する裁量がほとんどない
  • 部下同様の勤務態様が労働時間の大半を占める

賃金等の待遇

  • 時間単価換算した賃金額がアルバイト、パート等に満たない。または、最低賃金額に満たない
  • 基本給、役職手当等の優遇措置が十分でない
  • 年間の賃金が一般労働者と比べ同程度以下

 

 なお、管理監督者をめぐる裁判例について以下のものがあります。

 管理監督者に該当しないとされた裁判例
  1. 出退勤の自由がなく、部下の人事考課や機密事項に関与していない銀行の支店長代理(静岡地裁判決 昭53.3.28 静岡銀行事件)
  2. 材料の仕入れ、売上金の管理等を任されているが出退勤の自由がなく、仕事もウエイター、レジ係等全般に及んでいるレストラン店長(大阪地裁判決 昭61.7.30 レストラン・ビュッフェ事件)
  3. 売上金の管理、アルバイト採用の権限がなく、勤務時間の定めがあり、通常の従業員としての賃金以外の手当てが全く支払われていなかったベーカリー・喫茶部門の店長(大阪地裁判決 平8.9.6 インターパシティック事件)
  4. アルバイトの採用、時給額、勤務シフト等の決定を含む労務管理、店舗管理を行い、自己の勤務スケジュールの管理を行っていても、営業時間、商品の種類や価格、仕入れ先については、本社の方針に従っている店長(東京地裁判決 平20.1.28 日本マクドナルド事件)
 管理監督者に該当するとされた裁判例
  1. 労働時間の自由裁量、採用人事の計画・決定権限が与えられ、役職手当を支給されている人事課長(大阪地裁判決 昭62.3.31 医療法人徳州会事件)
  2. 出退勤管理がなされていたとしても、基本給以外に管理職に支払われる特別の手当が支払われ、労務管理上の指揮監督権を有し、経営者と一体的立場にあるとみなされたマネジメント・デシジョン・サポート・スタッフおよびマネージャー(東京地裁判決 平9.1.28 バルシングオー事件) 

参考

 

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