職場のトラブルQ&A ~私傷病による休職~

最終更新日 2020年3月27日ページID 008668

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 私は、現在業務外の傷病による療養のため会社を休職中です。間もなく休職期間が満了するため、先日、「軽作業であれば復職可能」との診断書を提出して復職を申し出ましたが、社長から「今までどおりの仕事ができないのなら辞めてもらう。」と言われました。このような場合、解雇されても仕方ないのでしょうか。

 私傷病による休職制度は、労働者が業務以外の理由で傷病にかかり、その療養のために労務の提供ができなくなった場合に、従業員の地位を維持したまま一定期間就労を免除するものです。
 休職に関しては法律上の規定はなく就業規則等で定められることになりますので、企業ごとに取扱いもさまざまです。労働者の事情による休職ですから、賃金の補償がないことや、休職期間が満了しても復職の見込みが立たなければ自然退職または解雇となることもやむを得ないことと言えるでしょう。
 しかし、復職の要件である治癒の程度については、休職期間満了時に従前の職務を支障なく行える状態になくても、当初は軽易業務に就かせればほどなく通常業務へ復帰できるという回復ぶりである場合には、短期の復帰準備期間の提供や教育的措置を取るなど使用者に一定の配慮を求めた裁判例もあります。
 したがって、会社側に今後の回復の見込みを伝え、一定期間の業務軽減や業務変更などの配慮を求めてよく話し合うのがよいでしょう。

解説

1 復職をめぐる裁判例

 就業規則等において私傷病による休職についての定めがある場合、「休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。」などとされていることが一般的です。
 しかし、完全に回復していない労働者の復職が争われた裁判において、使用者に一定の配慮を求めた例もあります。雇用契約における職種限定の有無や企業規模、配置転換を行う余地の有無などが判断材料となります。

(1) エールフランス事件(東京地裁判決 昭59.1.27) 
 後遺症の回復の見通しについての調査をすることなく、また、当分の間は一部の業務を行わせながら徐々に通常勤務に復させていく配慮を全く考慮することなく、復職不可能と判断した使用者の措置は妥当なものとは認められず、休職期間満了による退職取扱いが無効とされました。
(2) 東海旅客鉄道事件(大阪地裁判決 平11.10.4)  
 
労働者が職種や業務内容を限定せずに雇用契約を締結している場合においては、休職前の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、使用者の規模や業種、その社員の配置や異動の実情、難易等を考慮して、配置替え等により現実に配置可能な業務の有無を検討すべきであるとしました。 
(3) カントラ事件(大阪高裁判決 平14.6.19)
 職種を特定して雇用された労働者が、従前業務を通常の程度に遂行できなくなった場合は、原則として、労働契約に基づく債務の本旨に従った履行の提供はできない状況にあると解されるとしました。
 職種の限定がない場合(裁判例2)と比べると、使用者の配慮は軽減されています。
 また、使用者が当該労働者の就労の可否を判断するにあたっては、労働者も診断書の提出等によって協力する必要があります。 
(4) 大建工業事件(大阪地裁決定 平15.4.16)
 
使用者は、労働者に対し、医師の診断あるいは医師の意見を聴取することを指示することができるし、労働者としてもこれに応じる義務があるとしました。

2 休職中の賃金

 労働者の事情による休職なので、休職中は賃金が支払われなくともやむを得ません。しかし、会社の就業規則等によっては一定期間について賃金の補償をしている場合もありますので、就業規則等をよく確認することが必要です。
 また、事業主から十分な報酬が受けられない場合には、健康保険から「傷病手当金」が支給されます。会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目以降休んだ日に対して、一日につき標準報酬日額の3分の2に相当する額が支給されます。ただし、休んだ期間について事業主から傷病手当金の額より多い報酬額の支給を受けた場合には、傷病手当金は支給されません。

3 業務上の傷病による休業の場合

 業務上の傷病による休業の場合は、労働基準法第19条第1項において、原則、その療養のために休業する期間およびその後30日間は解雇することはできないと定められており、一定期間解雇が制限されています。詳しくは、「長期欠勤者の解雇」をお読みください。

4 心の健康問題による休職・休業からの復帰支援

 近年、うつ病などの心の健康問題により休職・休業する労働者が多くみられます。厚生労働省は、平成16年に「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」 を発表(平成21年改訂)しました。これらを参考に、それぞれの事業場の状況に応じた職場復帰支援のためのプログラム策定、体制整備等が進められることが期待されています。
 

参考

 

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