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○福井県手話言語条例
平成三十年三月二十二日福井県条例第二十七号
福井県手話言語条例を公布する。
福井県手話言語条例
手話は独自の体系を有する言語であり、ろう者にとっての意思疎通および情報の取得または利用のための手段として、また、心豊かな社会生活を営むために大切に受け継がれてきたものである。
国際的には、平成十八年の国際連合における障害者の権利に関する条約の採択により、手話は言語として明確に認知されることとなった。
我が国においても、平成二十三年に障害者基本法が改正され、手話が言語に含まれると規定されたことに加え、平成二十六年に障害者の権利に関する条約を批准したことにより、ろう者による文化的所産である言語としての手話に関する認識が深まることが期待されている。
福井県では、平成三十年に開催される第七十三回国民体育大会および第十八回全国障害者スポーツ大会において、全国で初めての取組として両大会の融合を計画しており、障がいの有無にかかわらず、誰もが互いに尊重し合うことができる共生社会の実現を目指し、スポーツを通した障がい者の社会参加の推進や障がいに対する県民理解の促進に取り組んでいる。
この機に至り、すべての県民が障がいの有無を超えて手話は言語であるとの認識を共有し、円滑な意思疎通に基づき共に支え合う社会を実現するため、この条例を制定する。
(目的)
第一条 この条例は、手話が言語であり、ろう者(盲ろう者を含む。以下同じ。)の意思疎通および情報の取得または利用のための手段であることにかんがみ、手話の普及等に関し、基本理念を定め、県の責務および県民等の役割等を明らかにするとともに、手話の普及等のための施策の総合的かつ計画的な推進に必要な基本事項を定め、もってすべての県民が共生することのできる地域社会を実現することを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において「ろう者」とは、聴覚障がい者のうち、手話を使い日常生活もしくは社会生活を営む者または手話を獲得しようとする者をいう。
2 この条例において「手話の普及等」とは、手話の普及その他の手話を使用しやすい環境の整備をいう。
3 この条例において「手話通訳者等」とは、手話通訳を行う者その他のろう者とろう者以外との意思疎通を支援する者をいう。
4 この条例において「学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校(大学および高等専門学校を除く。)および就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第七項に規定する幼保連携型認定こども園をいう。
一部改正〔令和二年条例一〇号〕
(基本理念)
第三条 すべての県民は、手話が、独自の体系を有する言語であって、ろう者が心豊かな社会生活を営むために大切に受け継いできた文化的所産であり、およびろう者の言語文化活動を支えるものであることを理解しなければならない。
2 手話の普及等は、ろう者の意思疎通を行う権利を尊重するとともに、意思疎通のための手段について選択の機会を確保し、すべての県民が、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生することを基本として行われなければならない。
(県の責務)
第四条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、ろう者が日常生活または社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去について必要かつ合理的な配慮を行い、手話の普及等のために必要な施策を推進するものとする。
2 県は、ろう者および手話通訳者等と協力して、基本理念に関する県民の理解の促進を図るものとする。
(市町との連携協力)
第五条 県は、基本理念に関する県民の理解の促進および手話の普及等に当たっては、市町と連携協力を図るよう努めるものとする。
(県民等の役割)
第六条 県民は、基本理念にのっとり、手話に対する関心と理解を深めるよう努めるものとする。
2 ろう者は、基本理念にのっとり、県の施策に協力するとともに、基本理念に関する県民の理解の促進および手話の普及等に努めるものとする。
3 手話通訳者等は、基本理念にのっとり、県の施策に協力するとともに、手話に関する技術の向上、基本理念に関する県民の理解の促進および手話の普及等に努めるものとする。
(事業者の役割)
第七条 事業者は、基本理念にのっとり、ろう者に対してサービスを提供するときまたはろう者を雇用するときは、手話等(手話その他のろう者の意思疎通および情報の取得または利用のための手段をいう。以下同じ。)の使用に関して配慮を行うよう努めるものとする。
(計画の策定および推進)
第八条 県は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第十一条第二項の規定による障害者計画において、手話の普及等のために必要な施策について定め、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。
2 県は、前項の施策を定めようとするときまたはその施策を変更しようとするときは、あらかじめ、ろう者の意見を聴くものとする。
3 県は、第一項に規定する施策について、その実施状況を公表するとともに、必要に応じて見直しを行うものとする。
(手話を学ぶ機会の確保)
第九条 県は、市町その他の関係機関、ろう者および手話通訳者等と協力して、県民が手話を学び、ろう者に対する理解を深める機会の確保に努めるものとする。
(手話等を用いた情報発信等)
第十条 県は、ろう者が県政に関する情報を円滑に取得することができるよう、手話等を用いた情報の発信に努めるものとする。
2 県は、市町その他の関係機関と協力して、ろう者が手話等による意思疎通を図ることができる環境の整備に資するよう、手話通訳者等の派遣その他必要な施策を講ずるものとする。
(手話通訳者等の人材の育成)
第十一条 県は、市町その他の関係機関と協力して、ろう者が地域において生活しやすい環境の整備に資するよう、手話通訳者等の人材の育成に必要な施策を講ずるものとする。
(学校における手話の普及等)
第十二条 ろう者である幼児、児童または生徒(以下「ろう児等」という。)が通学する学校の設置者は、ろう児等が、手話を学び、かつ、手話で学ぶことができるよう、教職員の手話の習得および手話に関する技術を向上させるため、合理的な範囲内において、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 ろう児等が通学する学校の設置者は、ろう児等およびその保護者の基本理念に関する理解を促進するため、合理的な範囲内において、学習の機会の提供ならびに教育に関する相談および支援に努めるものとする。
3 県は、前二項に掲げる事項を推進するため、市町その他の関係機関に対し、情報の提供、技術的助言その他必要な支援を行うものとする。
(事業者への支援)
第十三条 県は、事業者がろう者に対しサービスを提供するときまたはろう者を雇用するときにおいて、手話等の使用に関して配慮を行うための取組に対し、必要な支援を行うよう努めるものとする。
(手話に関する調査研究)
第十四条 県は、ろう者および手話通訳者等が手話の発展に資するために行う手話に関する調査研究の推進およびその成果の普及に協力するよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第十五条 県は、手話に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
附 則
この条例は、平成三十年四月一日から施行する。
附 則(令和二年三月一九日条例第一〇号抄)
(施行期日)
1 この条例は、令和二年四月一日から施行する。



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