○福井県自然環境保全基本方針

昭和50年3月31日

福井県告示第259号

福井県自然環境保全条例(昭和48年福井県条例第1号)第10条第1項の規定に基づき、福井県自然環境保全基本方針を次のとおり定めたので、同条第4項の規定により公表する。

福井県自然環境保全基本方針

第1章 自然環境の保全に関する基本構想

第1節 自然環境の保全の意義

自然は人間生存の基盤であり、人間は自然の限りない恩恵の上に今日の繁栄を築いてきた。すなわち、自然は経済活動のための資源としての役割を果すだけでなく、それ自体快適な生活環境を構成し、豊かな人間性を培い、優れた郷土の文化をはぐくむなど人間が健康で文化的な生活を営む上で不可欠なものである。

しかしながら、現在自然環境の破壊は容赦なく進められ、国土のいたるところで深刻な問題を提起しており、大気の汚染、水質の汚濁、緑地の消滅など環境の悪化は自然界において生物が生存するための直接的な諸条件にまで影響を及ぼすに至っている。

自然は厳粛かつ微妙な法則のもとで調和と均衡を保つものであり、ひとたび破壊されるとその復元には長い年月がかかり、あるいは全く復元できない場合さえある。したがって、自然の仕組みの微妙さを正しく理解し、人間活動を自然の復元力の範囲内にとどめない限り、やがて自然は荒廃し、我々は重大な危機に直面するおそれがある。

本県は、幸いにして優れた自然に恵まれ、その自然と風土に応じた特色ある文化を発展させ、豊かな県民性を培ってきた。しかし、この優れた自然も近時の都市化の進展、産業開発、観光開発などに伴い、しだいに変ぼうを遂げつつあり、自然環境の破壊が懸念されるに至った。

したがって、我々は、一人一人が自然の保護と環境の保全の精神を自らのものとすることにより人間生活における自然の役割の重要性を認識し、経済的効率優先の陰で見落されがちであった自然環境の非貨幣的価値を適正に評価し、尊重していかなければならない。

そして、我々県民は、自然環境の適正な保全に留意した土地利用計画の下に適切な規制と誘導を図るなど、英知を結集して、自然の保護とその有意義な活用に努め、広くその恩恵を享受するとともに、これを将来の県民に継承していかなければならない。

第2節 自然環境の現状

本県は、本州のほぼ中央部の若狭湾、伊勢湾とを結ぶ地峡部に在って、日本海に面し、敦賀市の北東にある山中峠から木ノ芽峠を経て栃ノ木峠に至る山嶺をもって2分され、その北東部は嶺北、南西部は嶺南と称されている。

嶺北は、海岸にみごとな段丘が連なり、海蝕崖と奇岩のあやなす男性的な隆起性の岩石海岸を示し、越前加賀海岸国定公園に指定されているほか、石川・岐阜県境付近は白山国立公園、これに南接する地域は奥越高原県立自然公園に指定されている。嶺南は、典型的なリアス式海岸を示す景勝の地に恵まれ、若狭湾国定公園に指定されている。

気候は、海岸部では対馬暖流の影響を強く受け、冬季でも比較的温暖であるが、内陸部はいわゆる北陸型の気候に属し、冬季にはシベリヤ寒気団の影響の下で多量の積雪があり、降水量は年間2,500ミリ以上に達し、晴天日数は年間100日に満たない。

しかし、嶺南では、漸次北陸型から山陰型の気候となり、年間の晴天日数もやや多くなる。

このような本県の自然環境を更に地形、地質、植物および動物についてみれば次のとおりである。

1 地形・地質

(1) 地形

嶺北は飛騨高原の南西縁部にあたり、嶺南は丹波高原の北東端部を占め、両者の間には、甲楽城断層、栃ケ瀬断層と熊川断層にはさまれた若越破砕帯がある。嶺北の東部には標高1,000メートル以上の山嶺が連なり、特に岐阜県境の越美山地は標高約1,200メートルの定高性を示し、山頂には各所に平坦面を残している。しかし柳ケ瀬断層を境にして若越破砕帯から西の県境山地は越美山地よりも約400メートル低く、高原性の地形は更に顕著であり、平らかな山陵に、ところどころ残丘とみられる椀形の高所が見られる。これらの山地はいずれも高度を減じつつ海岸にまで迫り、特に丹生山地と南条山地は海に向って急斜している。

若越破砕帯は、最近の地質時代の活動による諸段層のため、著しく地塊化が進み、三方、三遠、敦賀半島などの小山塊と敦賀湾、小浜湾、三方五湖などの小凹地が交錯し、特異な地形を造っている。

諸河川は、ところどころ谷底を開き、嶺北では九頭竜川流域に大野盆地と勝山盆地、日野川流域に武生盆地と鯖江盆地が存在する。諸河川の下流域には、九頭竜川とその支流の埋積作用による県内で最大の坂井平野をはじめ、敦賀平野、小浜平野などの小平野と小低地が各所にみられる。また、丹生山地の内陸側の天王川流域には、典型的な河岸段丘が発達している。

(2) 地質

本県の地質は、飛騨片麻岩瀬と古生代中期以降の各地質時代の岩層から成り、北陸の他地域に比べ豊富な地史的内容をもっている。

嶺北の油坂峠―中島―武生―高佐を結ぶほぼ東西方向の線を境として、その南側は主として二畳系と石灰系の非変成古生層が嶺南山地にまで分布しているのに対し、その北側は飛騨片麻岩瀬を基盤とした中生層と新第三系が広く分布しており、北側と南側とでは地質的に大きく異なっている。これら両者の接触部は、多くの断層により複雑な地質構造を示している。また、嶺南の西端部には二畳系・三畳系や超塩基性岩類などを伴った北東から南西への方向を示す舞鶴構造帯が存し、前者と共に日本列島の地質構造を考察する場合、学術的に重要な意義をもっている。

嶺北西半部の新第三系は、「グリンタフ」と呼ばれる火山性の岩層で特徴づけられ、これは日本海の発生に関連した大規模な火山活動の所産である。石川県境付近には、白山やこれより旧期に属する経ケ岳などの火山群が広く分布し、北陸地方では特異な存在となっている。

各地質時代の地層中には、貴重な化石が含まれ、県下各地でその発掘がなされている。

2 植物

本県の植物は、奥越山地の日本海型ブナ林であるブナーオオバクロモジ群集によって代表される夏緑広葉樹林の原生林や若狭湾沿岸のタブーイノデ群集とスタジイーヤブコウジ群集を主とする照葉樹林の原生林などによって特徴づけられる。

垂直分布をみると、海岸クロマツ林に続く標高200メートル付近までのタブ・スダジイ林帯、標高800メートルから1,400メートル付近までのブナ林帯とそれらの移行帯として介在する低山森林帯によって構成され、低山森林帯はコナラ・クリ林、ミズナラ林などの二次林、アカマツ、スギを主とする代償性植林とウラジロガシ・モミを主とする間帯から成る。そしてブナ林帯から上部は亜高山帯あるいは高山帯としてダケカンバ林帯、オオンラビソ林帯、ハイマツ林帯、高山草原帯などに一部移行する。

これらの植相にはオオキンレイカとエチゼンダイモンジソウの固有種だけでなく、嶺北と嶺南の間にかなり顕著な分布境界がみられ、日本海側における北東・西南分布限界要素を多く含むことによって、本県は区系地理学的に極めて重要な地域として位置づけられる。

3 動物

(1) 昆虫

本県の昆虫相は、概観すれば、位置的関係から日本列島の平均的なものと言えるが、北方的色彩と中部山岳地帯的色彩の強い奥越山地から暖地性要素がかなり加わった西部低山地域にまたがっているためかなり変化し、複雑である。そのため、相当数の種の分布北限が本県にあり、学術上貴重な種も少なくない。それは、動物地理学上にみる旧北区系基盤に東洋区系の要素が加わった日本列島昆虫相の縮図とも言える。また、嶺南と嶺北との区分は昆虫相の相違にもかなり明瞭に現れ、これは伊勢湾と若狭湾を結ぶ動物相の境界線を日本海側で代表しているものと思われる。

県下各地の昆虫相は、大都市周辺の山野に比し、現在なお豊富さを保っている所が多い。しかし、その変ぼうは著しく、昭和10年頃には各地で普通に見られた大形昆虫の中には、激減したものが少なくなく、その姿を全くみることのできなくなったものさえある。

(2) 鳥獣

本県は、シベリヤなどの大陸圏に繁殖地をもつ特定の冬鳥の主要な渡東経路にあたっており、県内の林野はその休息地あるいは越冬地になっている。また、日本列島を往来する鳥類も中部山岳地帯を境として、その日本海側を移動する多くの種類が知られ、特に森林性の鳥類が豊富に見られる。これらの渡り鳥は、県内で記録される全鳥類の3分の2を超える。四季を通じて生息する留鳥は多くはない。

垂直分布をみると、標高1,500メートル以上の山岳部が少ないため、高山性鳥類はあまり見られない。水辺の鳥では、シギ類やチドリ類は、海浜地、河川、湖沼などに採食地や休息地が少ないことなどのため、その種類、個体数はともに多くない。しかし、カモ類は日本海域、海岸に隣接する湖沼、河川流域などにかなりの種類および個体がみられる。特色ある鳥類としては、若狭地方の三方五湖を中心に稀少なオオワシ、オジロワシ、イヌワシなどの生息が例年記録されているほか、イヌワシが、小数ではあるが、山岳部に生息しており、貴重な存在となっている。また、これまでに南方系あるいは大陸系の迷鳥がかなり記録されているが、これは、本県が鳥類の分布上重要な位置にある証拠とも言える。

獣類では、特徴的なものはないが、山岳部においては特別天然記念物のカモシカをはじめ、本州シカ、ヤマネなどかなりの獣相を維持している。

(3) その他

淡水魚では、大野市の陸封型イトヨ(生息地天然記念物)と武生市五分市のトミヨは全国的にも分布の局限された貴重なものであり、イワナ、ヤマメ、アマゴなどの上流河川魚類は各地に豊富である。

両せい類では、特別天然記念物のオオサンシヨウウオは県下でも発見されており、モリアオガエルは各地に豊富である。

は虫類では、分布が限られているシロマダラが各地で発見されている。

以上みてきたように、本県は、多様な地形、地質と特色ある気候のなかで、動植物相も豊富であり、歴史的風土と相まって豊かな自然環境に恵まれている。

第3節 自然環境保全施策の基本的方向

自然環境保全施策は、前述の自然環境の保全の意義および自然環境の現状を踏まえ、自然環境と人間活動との調和を基調として総合的に推進しなければならない。

複雑、微妙なメカニズムを有する自然環境とますます増大する人間活動との調和を図るには、人間活動の限界の設定など困難な課題を多く伴う。

しかし、自然環境の破壊が容赦なく進んでいる現在、我々は、過去の貴重な体験を生かし、一度破壊された自然は元にもどらないという認識の上に立って、将来に禍根を残すことのないよう先取り的に、かつより積極的に自然の保護と環境の保全を図らなければならない。

このため、当面の施策として、県土に存在する貴重な地形、地質、植生、野生動物などのかけがえのない自然や優れた自然については、近い将来に起こり得べき事態を考慮に入れ、十分な範囲にわたって、その保全を図るとともに、太陽エネルギーの合理的な利用が可能である農林水産業については、その環境の保全に対する役割を高く評価し、健全な育成を図る必要がある。また都市地域においては、健康な人間生活を保障するに足る自然環境を適切に確保しなければならない。

以上のような観点に立ち、本県における当面の自然環境保全施策の基本的方向を考えれば、次のとおりである。

1 自然環境の体系的保全

自然環境保全法、自然公園法、福井県自然環境保全条例などの関係法令を総合的かつ強力に運用し、県土に存在する多様な自然を次のとおり体系的に保全する。

(1) 人為のほとんど加わっていない原生の自然地域、県を代表する梁出した自然景観、学術上あるいは文化上特に価値の高い自然物などは、多様な生物種を保存し、あるいは自然の精妙なメカニズムを人類に教えるなど、県の遺産として後代に伝えなければならないものであるので厳正に保全を図る。

(2) 県土の自然のバランスを維持する上で重要な役割を果たす自然地域、優れた自然風景、野生動物の生息地、野外レクリエーシヨンに適した自然地域などは、いずれも人間との関係において欠くことのできないものであるので、適正にその保護を図るとともに、必要に応じて復元と整備に努力する。

(3) 農林水産業が営まれる地域は食糧や林産物をはじめとする資源の供給面だけでなく、国土の保全、水源のかん養、大気の浄化など自然のバランスの維持という面においても欠くことができないものであるので、その建全な育成を図る。

(4) 都市地域における樹林地、草地、水辺地などの自然地域は、大気の浄化、気象の緩和、無秩序な市街地化の防止、公害や災害の防止などに大きな役割を果たすとともに、また地域住民の人間形成にも大きな影響を与えるものであるので、健全な都市構成上あるいは都市環境上不可欠なものについては積極的にその保護、育成および復元を図る。

(5) 歴史的、文化的あるいは社会的な遺産と一体となった自然地域は、県民の文化の向上に役立つとともに、地域住民に潤いを与えるものであるので、積極的にその保護、育成および復元を図る。

2 管理体制の整備

保全しなければならない自然地域をその特性に応じて適切に管理するため、管理体制の整備に努めるとともに、必要に応じ民有地の買上げを促進する。

3 開発事業との調整

自然環境を破壊するおそれのある大規模開発が行われる場合は、事業主に対し自然環境に及ぼす影響の予測、代替案の比較などを含めた事前調査(環境アセスメント)が行われ、それらが事業実施計画に反映され、住民の理解を得た上で行われるよう指導する。開発後においても自然環境の保全のための措置が講ぜられるよう十分な注意を払うものとする。

4 自然環境の保全のための調査と研究の実施

本県の自然環境の現状を的確に把握するため、地形、地質、植生、野生動物をはじめ自然のメカニズムなどに関する科学的な調査や研究を実施する。

5 自然環境保全思想の普及啓もう

自然環境の保全を十分味るためには、県民一人一人が自然の保護と環境の保全の精神を身につけることがなによりも重要である。このため学校や地域社会において環境教育を積極的に推進し、自然のメカニズムや人間と自然との正しい関係について県民の理解を深め、自然に対する愛情とモラルの育成に努める。

6 緑化の推進

快適な生活環境を形成するため、都市や集落とその周辺において現存する樹林地、池沼などの緑地を保全するとともに、公園、緑地などの造成や整備と公共施設、住宅地、工場などの緑地の促進に努める。

7 野外レクリエーシヨン施策に対する配慮

県民の自然に接する欲求にこたえることは、自然環境の保全の主要な目的の一つである。自然との交流を図る健全な野外レクリエーシヨンは、今後県民生活においてますます重要性を占め、その要求も増大の傾向にある。しかし一面それが一定の地域に集中すれば、かけがえのない自然を破壊するおそれもある。したがって、自然環境の適正な保全を図る立場から野外レクリエーシヨン施策について十分に配慮するとともに、その調整を図る。

以上の自然環境保全施策は、県民の理解と協力の下に、市町村との連携を図りつつ、強力に展開しなければならない。そのためには、土地のもつ公共的性格を重視し、開発行為に対する規制については、厳正な態度で臨むとともに、国土保全その他の公益との調整、地域住民の生業の安定と福祉の向上などについて配慮し、必要な施策を総合的な見地から講じていく必要がある。

第2章 福井県自然環境保全地域に関する基本的事項

福井県自然環境保全条例に規定する自然環境保全地域は、自然環境の保全に関する基本構想に基づき、県土全域を対象として体系的に指定され、適切に保全されなければならないが、その基本的事項は、おおむね次のとおりである。

第1節 自然環境保全地域の指定方針

優れた天然林が相当部分を占める森林、一定の広がりをもった海岸、湖沼、湿原などでその区域内に生存する動植物を含む自然環境が優れた状態を維持しているものについて、農林水産業など地域住民の生業の安定や福祉の向上、資源の長期的確保などの自然的社会的諸条件に配慮しながら指定を行うが、特に、次に掲げる地域については、速やかに指定を行うものとする。

(1) その自然環境が人の活動による影響を受けやすく、破壊されると復元の困難な地域

(2) その自然環境が特異性、固有性あるいは稀少性を有する地域

(3) その周辺において開発が進行し、あるいは急激に進行するおそれがあるために、その影響を受け、優れた自然状態が損なわれるおそれのある地域

第2節 自然環境保全地域における自然環境保全施策

自然環境保全地域においては、保全の対象である特定の自然環境を維持するため、その自然の状況に対応した適正な保全を図るとともに、必要に応じて積極的な復元を図るものとする。

1 自然環境保全地域における生態系構成上重要な地区、生態系の育成を特に図ることを必要とする地区あるいは特定の自然環境を維持するため特に必要がある地区などで、保全の対象である特定の自然環境を保全するために必要不可欠な核となるものについては、その必要な限度において、特別地区に指定し、保全を図るものとする。

2 特別地区内における特定の野生動植物で学術上貴重なもの、稀有なものあるいは固有なものを保存する必要がある地区については、その野生動植物の種類ごとに野生動植物保護地区に指定し、保全を図るものとする。

3 都市、集落およびその周辺に在る樹林地、草原、丘陵、水辺地およびこれらと一体となって良好な自然環境を形成している地区ならびに歴史的、文化的または社会的な資産と一体となって良好な自然環境を形成している地区などで、快適な生活環境を確保するために必要のあるものについては、緑地環境保全地区に指定し、保全を図るものとする。

4 特別地区と緑地環境保全地区以外の普通地区については、その良好な自然環境が十分維持されるよう保全を図るものとする。

5 自然環境保全地域内において自然環境に損傷が生じた場合は、当該地域の特性と損傷の状況に応じ、速やかに復元または緑化を図るものとする。

6 自然環境保全地域が小面積である場合には、その地域と接する部分の取扱いに特に注意を払い、必要に応じて樹林帯などを造成し、その保護を図るものとする。

7 自然環境保全地域においては、適正な管理を図り、必要な保全事業を実施するものとする。

第3節 自然環境保全地域と自然公園法その他の自然環境保全を目的とする法令による地域との調整の方針

自然環境の適正な保全を総合的に推進するためには、自然環境保全法および福井県自然環境保全条例による保全地域だけでなく、自然公園法その他の自然環境の保全を目的とする法律による各種の地域の指定が促進され、それらの保全が積極的に図られなければならないが、その際自然環境保全地域と他の地域との調整は、おおむね次のとおり行うものとする。

1 自然環境保全地域の指定は、自然公園の区域外において行うものとする。ただし、県立公園の区域に含まれている優れた自然地域にあっては、その地域の自然の特質と周辺の自然的社会的条件を考慮し、必要に応じ自然環境保全地域への移行を検討するものとする。

2 都市計画区域においては、自然環境保全地域の指定は、原則として市街化区域については行わないものとし、その他の区域については良好な都市環境の形成を目的とする緑地保全地区と重複しないようにするなどの調整を図りつつ行うものとする。

第3章 その他自然環境の保全に関する重要事項

第1節 自然環境の保全に関する基礎調査の実施

良好な自然環境を適切に保全するため、地形、地質、動植物に関する学術調査、土地の利用状況など自然環境の保全に関する基礎調査を継続的に実施するよう努めるものとする。

第2節 自然環境保全知識の普及と思想の高揚

自然環境の保全を有効に実施するには、行政機関のみならず県民各層が一体となって、これを推進する必要がある。このため、自然環境の保全に関する知識の普及および思想の高揚について広報活動の強化を図るとともに、自然の保護に関する学校教育や社会教育の充実強化を通じて、自然に対する愛情とモラルの育成に努める。

第3節 自然に親しむ施設の整備

自然環境保全知識の普及と思想の高揚には、実際に自然にふれ、自然に親しみながら自然を理解することが必要であり、このため、自然歩道、憩いの森など自然に親しむ施設の整備に努め、併せて県民の保健および休養に資するものとする。

第4節 監視指導体制の強化

自然環境の適正な保全を図るため、自然環境保全監視員を設置し、自然公園監視員、鳥獣保護管理員などとの有機的連携を図るとともに、市町村および関係機関との連携を強化し、必要な監視体制の確立に努めるものとする。

第5節 土地の買取りなどの措置

自然環境の保全に関する地域の指定は、関係者の所有権その他の財産権の行使について自然環境の保全のため規制を課するものであり、これら私権との調整上自然環境の保全の徹底を期することが困難な場合が生ずる。したがって、これらの障害を取り除き、将来にわたって安定した形で自然環境を適正に保全していくため、特に必要があると認められるときは、その土地の買取りを行うなど適正な措置を推進するものとする。

第6節 自然環境保全行政の円滑化

自然環境保全施策の円滑な推進を図るため、国の機関との連携の強化、県の関係機関相互の連絡調整および県の出先機関の充実を図るとともに、特に地域の実情に即した施策の推進にあたっては、市町村との密接な連携が不可欠であり、十分な協力を得るものとする。また、市町村においても行政体制の整備確立を図り、自然環境保全施策を積極的に推進するものとする。

第7節 開発事業との調整

自然環境を破壊するおそれのある大規模な開発については、事業主に当該開発に伴う自然環境に及ぼす影響の程度と範囲、その防止対策、代替案との比較検討など十分な事前調査を行わせ、これに基づき適正な措置を講ずるよう指導するものとする。その際、その開発が地域住民の理解を得られるよう十分配慮するとともに、必要に応じ、自然の保存、植生の回復、緑化の推進など自然環境の保全のため必要な事項について自然環境保全協定を締結し、その履行の確保に努めるものとする。

(平成27年告示第349号)

この告示は、平成27年5月29日から施行する。

福井県自然環境保全基本方針

昭和50年3月31日 告示第259号

(平成27年5月29日施行)

体系情報
第3編 県民生活/第6章 自然保護
沿革情報
昭和50年3月31日 告示第259号
平成27年5月29日 告示第349号