○福井県森づくり条例

平成20年12月25日

福井県条例第52号

福井県森づくり条例を公布する。

福井県森づくり条例

森林は、県民の生活に必要な木材等の林産物を供給するだけではなく、清らかな水と空気を育み、災害から県民の生命と財産を守り、多様な生態系を支えるなどの重要な役割を果たしており、県民にとってかけがえのない財産である。

ところが今日、森林を支えてきた山村地域における過疎化や高齢化の進行、長引く木材価格の低迷等により、森林の荒廃が進みつつあり、森林の多面的機能の持続的な発揮が危ぶまれる状況になっている。

平成16年7月18日に起きた福井豪雨は、県内に死者・行方不明者5名、住宅の被害1万4,044世帯という甚大な被害をもたらした。森林の荒廃による保水力低下が、被害を拡大した大きな要因と指摘されている。

また、人為的な温室効果ガスの放出により、地球温暖化が進行しており、その対策が急務とされている。森林は、温室効果ガスの主要な構成要素である二酸化炭素の吸収源としても、再評価されるに至っている。

こうした状況の中、平成21年6月7日には、本県において、第60回全国植樹祭が開催されることとなっている。森林の荒廃により大きな災害を被った本県が、森林の保全による豊かな地域づくりを全国に発信することは、本県の森づくりにとって好機と考えるべきである。

ここに、県民の財産である森林を守り育て、豊かな水と緑に恵まれたふるさとを次代に引き継ぐことを目的に、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、森づくりに関し、基本理念を定め、県の責務ならびに市町、森林所有者、森林組合、事業者および県民の役割を明らかにするとともに、県の施策の基本となる事項を定めることにより、森づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって豊かな森を次代に引き継いでいくことを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 森づくり 森林を守り、または育てることをいう。

(2) 森林の多面的機能 森林の有する県土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、地球温暖化の防止、林産物の供給等の多面にわたる機能をいう。

(3) 森林所有者 県内に所在する森林の所有者をいう。

(基本理念)

第3条 森づくりは、森林の多面的機能が持続的に発揮されるよう、長期的な展望に立って、計画的に推進されなければならない。

2 森づくりは、森林が県民にとってかけがえのない財産であることにかんがみ、県民の主体的な参画により推進されなければならない。

3 森づくりは、県、市町、森林所有者、森林組合、事業者および県民の適切な役割分担ならびに相互の連携の下に推進されなければならない。

(県の責務)

第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、森づくりに関する施策を策定し、および実施する責務を有する。

2 県は、森づくりの推進に当たっては、国および市町と相互に連携を図るものとする。

(市町の役割)

第5条 市町は、基本理念にのっとり、当該市町の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた森づくりに関する施策の策定および実施に努めるとともに、県が実施する森づくりに関する施策に協力するものとする。

(森林所有者の役割)

第6条 森林所有者は、基本理念にのっとり、その所有する森林について、森林の多面的機能が確保されることを旨として、森づくりに努めるとともに、県が実施する森づくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。

(森林組合の役割)

第7条 森林組合は、基本理念にのっとり、森づくりおよび森林資源の有効な利用の促進に積極的に取り組むとともに、県が実施する森づくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。

(事業者の役割)

第8条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、基本理念にのっとり、森林の多面的機能の確保に配慮するとともに、県が実施する森づくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。

(県民の役割)

第9条 県民は、基本理念にのっとり、森林の多面的機能による恩恵を享受していることを深く認識し、森づくりに関する活動に積極的に参加するとともに、県が実施する森づくりに関する施策に協力するよう努めなければならない。

(基本計画)

第10条 知事は、森づくりに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な計画(以下「基本計画」という。)を策定するものとする。

2 基本計画には、森づくりに関する中長期的な目標、基本となる方針、施策の方向その他必要な事項を定めるものとする。

3 知事は、基本計画を策定するに当たっては、あらかじめ森林所有者、森林組合、事業者および県民の意見を反映することができるよう、必要な措置を講ずるものとする。

4 知事は、基本計画を策定するに当たっては、あらかじめ福井県森林審議会の意見を聴くものとする。

5 知事は、基本計画を策定したときは、これを公表するものとする。

6 前3項の規定は、基本計画の変更について準用する。

(森づくりに関する理解の促進)

第11条 県は、森づくりに当たっては、森林の多面的機能についての県民の理解を促進することが重要であることにかんがみ、森林の多面的機能に関する情報の提供その他の普及啓発に努めるものとする。

(森づくりの日)

第12条 県民の間に広く森づくりについての理解を深めるとともに、森づくりに関する活動への参加の意欲を高めるため、福井県森づくりの日(以下「森づくりの日」という。)を設ける。

2 森づくりの日は、6月の第1日曜日とする。

3 県は、森づくりの日において、その趣旨にふさわしい行事を実施するよう努めるものとする。

(県民の参加の確保)

第13条 県は、森づくりに関する活動に係る情報の提供、指導者の育成等を行うことにより、県民の参加による森づくりが円滑に行われるよう努めるものとする。

(財政上の措置)

第14条 県は、森づくりに関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(森づくりの状況等の公表)

第15条 知事は、毎年、森づくりの状況および県の森づくりに関する施策の実施状況を公表するものとする。

(施行期日)

1 この条例は、平成21年4月1日から施行する。

(経過措置)

2 この条例の施行の際現に策定され、および公表されている森づくりに関する県の基本的な計画であって、森づくりに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るためのものは、第10条の規定により策定され、および公表された基本計画とみなす。

福井県森づくり条例

平成20年12月25日 条例第52号

(平成21年4月1日施行)