○福井県家庭教育支援条例

令和2年10月12日

福井県条例第43号

福井県家庭教育支援条例を公布する。

福井県家庭教育支援条例

家庭教育は、全ての教育の出発点であり、基本的な生活習慣および自立心の育成等は、愛情による絆で結ばれた家族との触れ合いを通じて家庭で育まれるものである。家庭教育においては、生涯にわたる人格形成の基礎が培われる幼少期が特に重要な時期であるため、保護者の役割が極めて重要である。

共働き世帯が多い福井県では、これまで全国に比べて高い3世代同居および近居率ならびに地域のつながりの強さを背景に、祖父母および地域の協力のもとに、家庭、地域、学校等が連携して行う家庭教育が実践されてきており、全国トップクラスである子どもの学力および体力を支えている。

一方、人口減少および核家族化は本県においても進行しており、地域のつながりの希薄化、1人親世帯といった家族形態の多様化等、家庭を取り巻く環境が大きく変化する中、子育ての悩みまたは不安を抱えた保護者が孤立し、家庭教育が困難な状況に陥ることが懸念される。

そこで、これまで行われてきた家庭教育支援に関する施策をさらに推進し、保護者が、家庭教育に対する責任を自覚し、その役割を果たすとともに、安心して家庭教育を行えるよう、行政、学校、地域、事業者その他の関係者が一体となって支援していくことが必要である。

ここに、保護者はもとより、全ての県民が家庭教育の重要性を改めて認識し、子どものかけがえのない個性を尊重した家庭教育を実現するとともに、子どもの生活のために必要な習慣の確立ならびに子どもの自立心の育成および心身の調和のとれた発達に寄与することを目指して、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、家庭教育の支援に関し、基本理念を定め、県の責務および保護者、祖父母、学校等、地域住民、地域活動団体および事業者の役割等を明らかにするとともに、家庭教育の支援に関する施策の総合的かつ計画的な推進に必要な基本事項を定め、もって子どもの生活のために必要な習慣の確立ならびに子どもの自立心の育成および心身の調和のとれた発達に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「家庭教育」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人、児童福祉施設の長その他の子どもを現に監護する者をいう。以下同じ。)が生活のために必要な習慣を身に付けさせる等その子どもに対して行う教育をいう。

2 この条例において「子ども」とは、おおむね18歳以下の者をいう。

3 この条例において「幼少期」とは、おおむね小学校(義務教育学校の前期課程および特別支援学校の小学部を含む。)第2学年修了までをいう。

4 この条例において「学校等」とは、学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(大学を除く。)、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条第1項に規定する保育所および就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第2条第6項に規定する認定こども園をいう。

5 この条例において「地域活動団体」とは、社会教育法(昭和24年法律第207号)第10条に規定する社会教育関係団体、地方自治法(昭和22年法律第67号)第260条の2第1項に規定する地縁による団体その他の地域的な共同活動を行うものをいう。

6 この条例において「就学前教育」とは、小学校就学の始期に達するまでの者に対する教育をいう。

(基本理念)

第3条 全ての県民は、家庭が教育の原点であって、全ての教育の出発点であることを理解しなければならない。

2 家庭教育の支援は、保護者がその子どもの教育について第一義的責任を有するという基本的認識の下に、県、市町、学校等、地域住民、地域活動団体、事業者その他の社会の全ての構成員が家庭教育の自主性を尊重しつつ、それぞれの役割を果たすとともに、相互に協力しながら、一体的に取り組むことを旨として行われなければならない。

3 家庭教育の支援は、1人1人の子どものかけがえのない個性を尊重するとともに、多様な家庭環境に配慮して行われなければならない。

4 家庭教育の支援は、幼少期における教育が生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることに鑑み、とりわけ家庭における就学前教育に重点を置いて行われなければならない。

(県の責務)

第4条 県は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、家庭教育の支援を目的とした体制を整備するとともに、家庭教育の支援に関する施策を総合的に策定し、および推進しなければならない。

2 県は、前項の規定により施策を策定し、および推進するに当たっては、保護者をはじめ、市町、学校等、地域住民、地域活動団体、事業者その他の関係者と連携し、および協働して取り組むものとする。

3 県は、第1項の規定により施策を策定し、および推進するに当たっては、保護者および子どもの障がいの状況、保護者の経済状況その他の家庭状況の多様性に十分配慮するものとする。

(市町への支援)

第5条 県は、市町が家庭教育の支援に関する施策を策定し、および推進するに当たっては、市町に対して情報の提供、技術的助言その他の必要な支援を行うものとする。

(国との連携)

第6条 県は、国と連携協力して家庭教育の支援に関する施策を推進するとともに、家庭教育の支援に関して必要があると認めるときは、国に対して必要な施策を講ずるよう求めるものとする。

(保護者の責務および役割)

第7条 保護者は、基本理念にのっとり、その子どもの教育について第一義的責任を有することを自覚しなければならない。

2 保護者は、子どもに愛情をもって接し、子どもの健全な成長のために必要な生活習慣の確立ならびに子どもの自立心の育成および心身の調和のとれた発達を図るとともに、自らも保護者として成長していくよう努めるものとする。

3 保護者は、幼少期における家庭教育を充実させるため、学校等と連携協力するよう努めるものとする。

(祖父母の役割)

第8条 祖父母は、基本理念にのっとり、子育てに関する知恵および経験を生かし、保護者と連携協力しながら、家庭教育の支援を行うよう努めるものとする。

(学校等の役割)

第9条 学校等は、基本理念にのっとり、保護者、地域住民および地域活動団体と連携協力して、子どもの健全な成長のために必要な集団生活における規律等を身に付けさせるとともに、子どもの自立心を育成し、およびその心身の調和のとれた発達を図ることにより、家庭教育の支援に努めるものとする。

2 学校等は、県および市町が推進する家庭教育の支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(地域住民および地域活動団体の役割)

第10条 地域住民および地域活動団体は、基本理念にのっとり、保護者および学校等と連携協力して、地域における歴史、伝統、文化および行事等を通じ、子どもの健全な育成に努めるとともに、家庭教育の支援に関する取組を積極的に行うよう努めるものとする。

2 地域住民および地域活動団体は、県および市町が推進する家庭教育の支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第11条 事業者は、基本理念にのっとり、家庭教育における保護者の役割の重要性に鑑み、その雇用する従業員の仕事と家庭生活との両立が図られるよう、必要な雇用環境の整備に努めるものとする。

2 事業者は、県および市町が推進する家庭教育の支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(親としての学びの支援)

第12条 県は、親としての学び(保護者が、子どもの発達段階に応じて大切にしたい家庭教育の内容、子育ての知識その他の親として成長するために必要なことを学ぶことをいう。次項において同じ。)を支援するため、その学習方法の調査研究の推進およびその成果の普及を図るものとする。

2 県は、親としての学びの機会を提供するとともに、祖父母、市町、学校等、地域住民、地域活動団体、事業者その他の関係者が行う取組に対して必要な支援を行うものとする。

(親になるための学びの支援)

第13条 県は、親になるための学び(子どもが、家庭の役割、子育ての意義その他の将来親になることについて学ぶことをいう。次項において同じ。)を支援するため、その学習方法の調査研究の推進およびその成果の普及を図るものとする。

2 県は、親になるための学びの機会を提供するとともに、祖父母、市町、学校等、地域住民、地域活動団体、事業者その他の関係者が行う取組に対して必要な支援を行うものとする。

(就学前教育の充実)

第14条 県は、家庭における就学前教育の充実を図るため、学習環境の整備、学習機会の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、家庭における就学前教育の円滑化を図るため、幼稚園等(幼稚園、保育所および認定こども園その他の保護者の委託を受けてその乳児または幼児を保育することを目的とする施設をいう。次項において同じ。)に対して必要な支援を行うものとする。

3 幼稚園等は、保護者と連携協力して、家庭における就学前教育の充実に努めるものとする。

(人材養成等)

第15条 県は、大学その他の専門的知識を有する関係機関と連携を図り、家庭教育の支援を行う人材の養成および資質の向上ならびに家庭教育の支援を行う関係者相互の連携を図るものとする。

(多様な家庭環境に配慮した支援)

第16条 県は、多様な家庭環境に配慮した家庭教育の支援に関する施策を推進するため、保護者をはじめ、学校等、地域住民、地域活動団体、事業者その他の関係者が相互に連携協力して取り組む家庭教育の支援に関する活動の促進を図るものとする。

(相談体制の整備および充実)

第17条 県は、家庭教育に関する相談に応ずるため、相談体制の整備および充実、相談窓口の周知その他の必要な施策を講ずるものとする。

(広報および啓発)

第18条 県は、科学的知見に基づく家庭教育に関する情報の収集、整理、分析および提供を行うものとする。

2 県は、家庭教育の支援に関する社会的機運を醸成するため、家庭教育における保護者の果たす役割および社会の全ての構成員が家庭教育を支援することの重要性について、県民の理解を深めるとともに、意識を高めるために必要な啓発を行うものとする。

3 県は、家庭教育の支援に積極的に取り組む団体の活動を促進するための施策の推進、家庭教育の支援に関する有用な事例の紹介その他の必要な施策を講ずるものとする。

(財政上の措置)

第19条 県は、家庭教育支援に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(年次報告)

第20条 知事は、毎年度、家庭教育の支援に関する施策について取り組む事項およびその実施状況を議会に報告し、公表するものとする。

(家庭教育を実践する日)

第21条 県は、家庭教育についての関心と理解を深め、積極的に家庭教育を実践する意欲を高めるため、福井県青少年愛護条例(昭和39年福井県条例第15号)第6条第1項に規定する家庭の日を家庭教育を実践する日として、家庭教育についての関心と理解を深めるための啓発活動その他の事業を実施するよう努めなければならない。

この条例は、公布の日から施行する。

福井県家庭教育支援条例

令和2年10月12日 条例第43号

(令和2年10月12日施行)