4 危急時の対策
(1) 見える危険と見えにくい危険
 @ 見える危険
   どんな遭難事故でも、天候の悪化だけが原因ではなく、いくつかの要因が複雑にか
  かわりあっているのが普通です。天候の急激な悪化は、遭難事故の大きな要因の一つ
  で、見える危険の典型的なものです。
     その他に、
      登山口までのアプローチの長く高い山
     岩場、ガレ場、鎖場など足元の悪い山
      近くに避難するための山小屋などのない山
   なども見える危険として挙げることができます。

 A 見えにくい危険
     目的の山の研究不足
      必需品(装備、食糧)の準備不足
      日程・ルートに無理がある
    パーティー内で役割分担がしっかりできていない
     事前の体力トレーニング不足と健康管理不足
   などは、登山者自身にある見えにくい危険として挙げることができます。
     このような、見える危険と見えない危険が重なり合ったときに、遭難事故は起きて
  しまうのです。

(2) 遭難事故を避けるために

 @ 疲労と日没についての注意
    疲労について
       十分な睡眠や休憩をとらずに、夜通し車で移動し、早朝登山口に着き、そのまま
   登山するなどということは、最初から大きなリスクを背負ってしまうことになりま
   す。
疲労が蓄積されるといろいろなミスをおかすようになります。
     日没について
      午後は早めに目的地へ到着するのが登山の原則です。
     ・ 日が暮れると
      道迷い.転倒、滑落などが起こりやすくなります。

  A 荒天時の対策
      春や秋の高山では、気温が低下すると、雨はみぞれに変わることがあります。
   雨に濡れてその上、ミゾレと風にさらされると急に大量の体熱を奪われ、体温
  が低下し短時間のうちに体が動かなくなり、疲労凍死する危険が生じます。
   このような状況の際には、
    早々に行動を変更して安全な場所へ引き返す
救助訓練の様子  
ツェルトをかぶる
    森林地帯へ降りる
     ビバークする
    などを考える必要があります。

  B 雪と雪崩
     晩秋から初冬にかけて積もった雪は不安定で
  雪崩が発生しやすく、危険です。
   真冬には、一晩に数10センチメートルの降
  雪があり、テントが押しつぶされてしまうこと
  があります。気候の変化には十分に注意する必
  要があります。
  


 C 雪崩について
      斜面の雪は、微妙なバランスで斜面に張り付いており、そのバランスが崩れた時
  に発生します。雪崩には表層、全層雪崩などがあります。
      夜は雪崩が発生しないと言われていますが、これは間違いです。雪崩は先に言い
  ましたとおり、斜面に対する雪の支持力がなくなった時にいつでも発生します。
      したがって夜でも昼でも発生します。その原因は登山者自身が歩行することによ
  って起きることもあります。









                             
冬の荒島岳(大野市)

 5 遭難事故が発生した場合の措置
(1) 基本的留意事項
  @ まず冷静になること
   リーダーの指示に従い、勝手に行動しない。

 A 正確な状況判断
   遭難した事態をその時点での最悪事態とし、事態をそれ以上悪化させないように
  するためにも、正確な状況判断が必要です。
   天候、現場の状況、事故の程度、パーティーの状態などを総合的に判断すること
  です。
 B  救助の要請
   負傷者や病人が出た時は、現場でできる応急処置を行い、近くの山小屋、集落へ
  連絡員を出すか、付近に登山者がいたら、
  ・ 事故の位置
  ・ 時刻
  ・ 原因
  ・ 程度
  ・ 事故者名
  ・ パーティーの連絡先
  ・ 救助の要請先
  などを記載した「メモ」を持たすようにしてください。口頭の依頼は誤りが多くな
  ります。

                              
経ヶ岳から赤兎山

(2) 具体的留意事項

 @ ドカ雪の場合
  ア 雪洞を掘る努力をする
    雪の中は暖かいのです。テントを持っていない場合には、雪洞を掘るなどして
   ください。スコップを持っていなくても、手で掘れます。より暖かい状況を作る
   ことが必要です。
  イ 雪洞の中でテントを張る
    テントを持っていれば、雪洞の中でテントを張る。その方が、暖かいし、夜中
   のテントの除雪をしなくてすみます。ドカ雪になった場合、テントは潰されます。
    なお、雪洞は時間の経過において、天井が下がるので気をつけましょう。

 A 凍傷の防止
   凍傷防止のため、靴を脱いで足をザックの中に入れてあたたかくして、足の指を
  動かしてください。そのまま靴をはいて靴ひもで締めていると血液が通わなくなり、
  凍傷になります。
   また、濡れてきたら、こまめに拭いて、暖かくしてください。

 B 体力の温存
   雪洞を掘るか、樹林帯に逃げ込み、木の根元のくぼみ等で動かずにじっとし、そ
  の際、体力を消費しないようにしましょう。
   昔は、眠るとそのまま死ぬと言われて、無理に起きていましたが、眠るべきです。
  眠って死ぬようなことはありません。

 C 通信手段の確保
   万が一の場合に備え、携帯電話や無線機等を所持して、通信手段を確保しましょ
  う。予備の電池も必要です。電池が少ないときには、電池を肌の近いところに入れ
  ておくと、暖められて電池の消耗が防げます。
   携帯電話や無線機等で警察署等とつながった場合、一定の時間を決めて定時通話
  を心掛け、必要以外は電池の消耗を考慮して電源を切っておきましょう。携帯電話
  や無線機などは谷底などでは通じないことがあるので留意してください。
   なお、アマチュア無線を使用するには免許が必要です。

 D 食料の温存
   日帰りの登山の場合でも、非常食は持参してください。チョコレート、ビスケッ
  ト類、簡単なものもありますが、マヨネーズ1本を非常食の中に入れておくと有効
  です。以前遭難した人が、マヨネーズを少しずつ食べて長時間の遭難に耐えたこと
  が実際にありました。

 E 救助時の注意
   遭難位置を特定するため、ライター、マッチを持っていたら、気を起こし、生木
  等を燃やして煙を出して知らせると、ヘリ救助時にも有効です。
   また、赤、黄、オレンジ等原色の服を着ていたら、それをヘリに向かって振ると
  発見されやすいです。
   なお、ヘリについては、天候等により飛行できない場合があります。

救助訓練の様子

冬期山岳遭難者救助訓練の状況
救助訓練の様子