職場のトラブルQ&A ~命令時間を超える残業の割増賃金~

最終更新日 2020年3月27日ページID 000396

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 先日、経理の書類を仕上げるため従業員に2時間の残業を命じました。しかし、翌日、計算上の問題が生じたため3時間半かかって書類を完成させたという報告を受けました。時間外手当の支払は2時間分でよいのでしょうか、それとも3時間半の時間外手当を支払うべきでしょうか。

 本来、従業員が使用者の命令あるいは指示のないまま、または命令・指示を超えて勝手に作業を行った場合にはそれは時間外労働にはなりません。
 しかし、当日の残業がその仕事を仕上げることを目的としており、示された時間というのは単なる目安にすぎないのであれば、現実に費やした時間を時間外労働時間とし、割増賃金を支払うべきです。
 ご質問の場合、仕事の完成期日が迫っていたなど、その日のうちに当該書類を仕上げなければならない状況にあったのであれば、3時間半の割増賃金の支払が必要になります。

解説

 残業命令については、上司の直接的な命令だけでなく、残業をするための客観的な事実がある場合も含まれます。例えば、その業務について当日中に終えるということが決まっており、そのために残業が必要であるといった客観的な事実があったり、使用者の具体的に指示した仕事が、所定の労働時間内では達成困難な仕事量を与えているような時です。このような場合は、残業の黙示の指示を行っていたこととなります。
 このことは、残業について「本人の判断により行う場合は、事前の申請が必要であり、上司の承認があった場合は認める。」と就業規則などに規定されていても、時間外労働時間となります。
 また、上司の命令がないまま、勤務時間終了後も自発的に業務を継続している場合にも、「中止」を命じないで黙認している限りにおいては、同様となります。
 なお、時間外労働に対しては割増賃金を支払わなければなりません。月60時間を超える残業の割増賃金率に関して、中小企業では猶予措置により25%とされてきましたが、2018年7月の労働基準法の改正により猶予措置が廃止され、2023年4月1日からは大企業、中小企業ともに50%となります(大企業は施行済)。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

 使用者は労働時間を適切に管理する責務を有しています。しかし、自己申告制の不適正な運用等に伴い、割増賃金の未払いや過重な長時間労働といった問題が生じたことから、これらを防止するため厚生労働省では、労働時間管理のため使用者が講ずべき具体的な措置をガイドラインとして示しました(2017年1月)。その主な内容は次のとおりです。

(1)始業・終業時刻の確認及び記録

 使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。

(2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法

 原則として次のいずれかの方法によること。

ア  使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
イ  タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。

(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

 上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。

ア 自己申告制の対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
イ 実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、講ずべき措置について十分な説明を行うこと。
ウ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間を補正すること。
エ 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。
オ 労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。
 また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。
 さらに、労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。 

(4)賃金賃金台帳の適正な調製

 労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならないこと。 

(5)労働時間の記録に関する書類の保存

  労働者名簿、賃金台帳のみならず、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき、3年間保存しなければならないこと。

(6)労働時間を管理する者の職務

 事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること。

(7)労働時間等設定改善委員会等の活用

 事業場の労働時間管理の状況を踏まえ、必要に応じ労働時間等設定改善委員会等の労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状を把握の上、労働時間管理上の問題点及びその解消策等の検討を行うこと。
 

参考

 

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