内外情勢調査会知事講演~「幸福度日本一」を次のステージへ~

最終更新日 2014年7月28日ページID 028460

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 このページは、平成26年7月28日(月)にユアーズホテルフクイで行なわれた、内外情勢調査会の「『幸福度日本一』を次のステージへ 」と題して行われた知事の講演をまとめたものです。

 今日は「『幸福度日本一』を次のステージへ」というテーマでお話をします。
 本論に入る前に実は今日、高志高校に行きました。ちょうど英語の夏期課外の時間でしたが、1時間ほど生徒たちといろいろやりとりをしました。高校を卒業したら英語がしゃべられるようにと、マニフェストに書いていますが、あまり実現できていません。今、英語教育などの改革を進めていますが、まずは授業を変えていかなければならないと思います。
 普段はにぎやかな生徒たちだと思いますが、英語の授業としては、もう少ししゃべったり元気を出した方がよいと思いました。これから英語の授業を変えるにしても、かなりガッツを出していかないと厳しいと感じました。総合化してもういちど授業のことを考え直さなければいけないと思います。  
 さて、まず今日は、本県が当面する大きな3つのテーマを申し上げます。
 1つ目は、高速交通基盤の整備の進展です。これには形容詞がつくと思います。「見通しが立ちつつあり、次の段階を考えるべき」高速交通基盤の整備促進をどうするか。
 2つ目は原子力・エネルギーの問題です。これも形容詞をつける必要があります。「より問題の処理が複雑になっている」原子力・エネルギー問題です。
 3つ目は人口減少問題です。これも形容詞がつきます。「よりはっきり数値化をされて、人口についての問題提起がされた」日本の人口減少問題です。高速交通基盤、原子力・エネルギー、人口減少問題にしっかり対応し、福井県が将来にわたり発展する道筋をつけなければならないと考えます。 
【写真】知事講演


1 高速交通基盤の整備促進

 まず、はじめに、7月20日に開通した若狭さとうみハイウェイ(舞鶴若狭自動車道)、そして中部縦貫自動車道、北陸新幹線の3つの高速交通基盤についてお話しします。
 高速交通体系の全体についてまず申し上げたいのは、これらがネットワークとしてつながることにより、福井の産業や観光、防災等の面において、大きな役割を果たすということです。
 これまで、ともすれば福井県は他の地域との移動が少ない状況にありました。かえってそれが、三世代同居・近居率の高さなど、福井の良さと言われる「つながりの力」を支えてきた部分もありましたが、これからの「ふるさと」は外に向かって開き、他の地域と結びつきを強めるなど、新しい活力を生み出す積極姿勢が必要であります。これが「ふるさと福井」の次なる飛躍・発展の鍵になると考えております。その基盤となる高速交通網の早期完成に、全力を挙げてきたわけであります。
 さらに国土政策の面から申し上げれば、高速交通網によって輸送能力が上がり、また国土全体の時間距離が短縮されます。これによって、大都市に集中している企業を地方へと分散を進める地理的条件が大きく改善することになりますから、企業と人の誘致を積極的に進めていく環境が整いつつあると考えております。
 そこで後ほどお話しますように、県として福井経済新戦略を1年前倒しで改定に着手したり、新たな観光戦略も策定しようとしております。そして国に対しては、「ふるさと企業減税」といった新たな地方分散政策を提案しているわけです。
 

(1)舞鶴若狭自動車道全線開通

 さて、県民が長年待ち望んでいた若狭さとうみハイウェイ(舞鶴若狭自動車道)が全線開通しました。北陸自動車道の県内区間全線開通が1980(昭和55)年ですから、新高速道路の全線開通は実に34年ぶりです。福井県の政治課題の一つが大きく前進したことになりうれしいことです。
 福井から小浜までは少なくとも30分以上は早くなりますので、行き帰り1時間の短縮です。まだ利用になっていない方が多いかもしれませんが、国道27号線とはルートが違います。信号が全くありませんから、これまでのようによく信号で止まったり、大きなトラックに不安になることは少なくなりました。また、高い地点を通っていますので、非常に景色がいい。敦賀のところでは70メートルから80メートルの高さから、敦賀湾が見えます。三方五湖、小浜など津々浦々の景色が本当によく見えて、非常に気持ちのいいルートだと思います。
 そして、嶺北の中部縦貫自動車道は、来年の春には福井北インターから永平寺東インターまでつながり、さらに2年後には永平寺東~上志比間が開通します。勝山~大野間は既に開通していますから、これにより大野まで一挙につながります。地図を逆さまにしていただくと逆によく実感できるのですが、北陸から越前そして若狭湾、関西、京都、兵庫、さらに滋賀から中京、これらの地域が短距離のルートとして高速交通体系で結ばれることになります。勝山の恐竜博物館を小浜の方がすぐに観に行けるようになります。また、天橋立から丹後の宮津、若狭湾、敦賀、越前海岸、東尋坊、加賀海岸が1つの観光的なエリアになったことがわかります。
 敦賀~小浜間の交通量については、今日でだいたい1週間たちますが、これから1か月後、3か月後、6か月後、1年後にリサーチを行う予定です。交通量や観光の状況のほか、問題やトラブルがないかを調査します。高速交通体系については、これまで大都市的な立場から批判を受けることが多く、このことも問題があるとしても、役に立つ道路だということを理解していただかなければなりません。
 交通量の速報値では、開通後2日間合計で2万6,000台の車が走っております。NEXCO中日本交通の想定では1日6,000台でしたので、日曜・祝日ということもありましたが、想定と比べ交通量が多いということです。想定の約2.2倍の交通量という状況です。
 これからの利用方向となりますと、まずは嶺南・嶺北の一体化のための活用が必要になります。去年、嶺北の子供たちが嶺南に遠足に行った数は約800人です。市町の教育委員会と相談して今年は去年の10倍以上の1万人を超えるようにしたいと思います。1人当たり500円をインセンティブとして与えながら、互いの地域が分かってくるともっと自然に行き来してくれるのではないかと考えています。
 それから、嶺南・嶺北の一体化という効果のほかに、関西、中京のみならず、中国、四国を含めた高速交通ネットワークがほぼ完成しましたので、恐竜博物館のツアーをつくるなど、民間のいろんな動きが出始めています。南回り、あるいは北回りと選択ができますし、周遊性も上がります。他の地域との接続性も増し、国土強靭化の面でも大きな意味を持つわけです。
 そして大事なことは原子力発電所がたくさんある地域ですので、避難の議論を例にしますと、例えば大飯の原子力発電所であれば、この高速道を使うことによって2時間半以上は避難の時間が短縮されると思います。
 完成したルートは暫定2車線であり4車線ではありません。したがって交通量の推移を見ながら、将来は4車線にという議論があります。今約8%の部分は4車線になっていますが、ほとんどの区間は2車線です。いざというときのことも考え、状況を見ながら国と議論、相談をしていきたいと思います。
 

(2)中部縦貫自動車道の早期完成

 中部縦貫自動車道については、先ほど申し上げましたように2年後には大野までつながります。残りは大野から岐阜県境の油坂峠までということになります。10年以内の全線開通に向けて、少しでも前倒しができるようにしたいと思っております。
 なお、今回の舞鶴若狭自動車道の全線開通によって、昭和62年に組み入れられた国全体の高規格幹線道路網1万4,000キロのうち、福井県の区間が220キロあるのですが、その8割に当たる約180キロが完成したことになります。これにより石川、京都府などと同程度になりました。 
 

(3)北陸新幹線の早期開業

 北陸新幹線については、今日出席の皆さんの大きな力を得て、たび重なる働きかけを国へしてきました。来年春は金沢開業ですが、敦賀開業はそれからさらに11年遅れる計画です。我々としては完成を少なくとも3年は前倒しができるだろうと独自に工期短縮案をまとめました。これは元来、地元自治体がするような仕事ではなく、異例なことですが提案しました。そうしたところ、与党のプロジェクトチームでこれを検討され、この福井県の案をベースに、開業時期の3年前倒しについて決定し、政府に対しこれを実現するよう要請しました。おそらく12月にはこの案のとおり実行される可能性がかなり高くなったと思っておりますが、なお油断なくお力を得て一丸となって訴えていきたいと思います。

 

2 原子力・エネルギー問題

(1)エネルギー基本計画

 大きな2つ目の課題は原子力・エネルギー問題です。より問題が複雑化しつつありますが、いかにこれを克服して原子力・エネルギー問題に方向を出していくかです。
 まず最初に、4月に公にされましたエネルギー基本計画の意味合いと課題です。4月11日にエネルギー基本計画が策定され、私も委員としてさまざま意見を述べてまいりました。東日本大震災が起こった平成23年3月11日から3年以上が過ぎましたが、原子力、さらには我が国のエネルギーバランスの問題は依然としてあやふやな状態です。こうした状態がなお続いていることは、立地地域としてまことに迷惑な話でもあります。諸外国から見ても、日本の評価に影響を与えております。しかし、今回4月のエネルギー基本計画は、曖昧であった日本のエネルギー政策をとりあえず立て直すといいますか、出発点になったと思っております。
 基本計画では、原子力を「重要なベースロード電源」と位置づけたわけです。ベースロード電源というのは、一日を通して安定的に発電できる基盤になる電源であり、発電コストも安いということですね。石油火力などは高コストでピーク電源と言います。一番上の部分になると思います。それから、天然ガスなどはミドル電源、その中間になるということです。
 

(残された課題) 
 これからどういう問題があるかということです。1つは、原子力発電は「重要なベースロード電源」として位置づけられましたが、エネルギーのベストミックスの決定は先送りされています。先ほどのベースロード電源、ミドル電源、ピーク電源、それぞれ石炭、原子力、自然エネルギー、あるいはLNG、石油といろいろありますが、それをどういう割合で最終的に設定するかというのがまだ決まっておりません。曖昧なままですので、それをはっきりしなければならないということが大きな課題として残っているわけです。
 それから、もう1つは、多くの原発は40歳を迎えつつある、あるいは迎えているということであり、廃炉の問題が出てきます。40年たちますと現在の3.11以後の方針としては、あと最大20年いかに延ばせるかというような議論がありますが、40年で終わるという議論もあるわけで、廃炉、あるいは新型炉への転換、リプレースの問題が曖昧なままで残っているというのが2つ目です。
 

(先送りされているエネルギーベストミックス)
 
特にエネルギーのベストミックスの問題については、5月初旬にドイツ、オーストリアを訪問し、ドイツでは電力関係者と話をしましたが、3.11以後、ドイツは脱原発といいますか、原子力発電所を将来的にやめようということを訴えています。
 現場を見ましたが、なかなか大変です。太陽光あるいは風力といっても、ドイツでもそんなに簡単ではありません。北の方には風力がわりとありますが、送電線があまりありません。一方で電力をたくさん使うのは南の方ということですから、そこには、やはり制約があります。それから、太陽光についてもいつも日が照るわけではありませんから、たくさんの投資を行い、それに補助金を出し、かつ電気料金は高くなるということです。発電効率が悪いものですから、既存の発電所はやっぱり必要ということになります。計算的には1.5倍とか2倍近くの発電容量がありながら、うまくそれを使えていないという問題があり、周辺の国とのいろんなあつれきも生じているということです。
 したがって、このエネルギーベストミックスを日本としていかに知恵をもって決めるかというのは極めて重要な課題です。
 こうした中で、原子力については依存度を低減することも基本計画に書いてあります。したがって、重要なベースロード電源、あるいは原子力依存度の低減というジレンマがあるわけです。さらに、この基本計画には、今後のエネルギー制約を踏まえ、安定供給、コスト低減、温暖化対策、人材・技術の維持に努めなければならない、というもう1つの考え方が書いてあります。この3者の折り合いをどうやってつけるかということであり、私は新たな原子力小委員会の委員になっていますが、委員会では、この3つを一緒に考えなければならないということ、また、どこかを取り出して個別議論するだけでは始まらない、ということを申し上げているところです。
 

(廃炉や新型炉への転換)
 廃炉や新型炉への転換、また使用済燃料の中間貯蔵の問題についても並行して議論しなければならないもう1つの課題です。
 昨年10月、県庁に廃炉・新電源対策室を日本で初めてつくりましたが、廃炉や新電源の問題を自治体からも先駆けて議論しなければならないだろうということを考えたわけです。
 中間貯蔵についても、福井県としては、原子力は引き受けましたが使用済燃料の中間貯蔵を引き受けたわけではありません。これは更地にしてきれいにして返していただかなければなりません。そうなりますと、中間貯蔵の問題については消費地との「分担と協力」のもとで行う必要があるだろうと思います。
 この中間貯蔵とか廃炉の問題について新聞によく出るのは、福島県の事故があった原子力発電所から出る中間廃棄物をどうするかという議論です。これも中間貯蔵施設と呼んでいますが別物であり、そこは誤解のないようにしていただきたいと思いますし、廃炉についてもそうです。事故が起こった原発の廃炉の話と福井県や他の原子力発電所のような普通の廃炉とは言葉は同じですけれども違う意味です。新聞をお読みのときにはそれをよく見ていただきたいと思います。今私が申し上げているのは、福島以外の多くの一般の原子力発電所の廃炉あるいは中間貯蔵の問題ということになります。

 

(2)原発再稼働と原子力規制委員会

 これから再稼働の問題が議論になりますが、鹿児島の川内(せんだい)原子力発電所、福井県の高浜原子力発電所などが先頭のグループに今いるわけです。先頭のグループにいますから共通することについて議論する必要があります。もちろん川内の方が先に立っていますが、しっかり議論をしていただかないといけません。これでいいと安易に議論をされると福井県としても困るわけです。
 再稼働までに3年以上と随分時間がかかっていますので、再稼働に当たっては、よほど考えなければならないだろうと思います。世界最高の安全基準を目指したというような議論がありますが、規制委員会がそれですべて安全だと断言していないところがあります。政府の方はまた、規制委員会が認めればそれでよろしいというようなことで、すき間というのでしょうか、お互いどちらにどんな責任があるかということが曖昧です。そこははっきりする必要があります。一般的な考え方としては、規制委員会は安全確保に責任を持つと法律に書いてありますから、それが曖昧なままであれば、政府はしっかりとそれについて責任を持てと規制委員会に言わなければなりません。そうした上で、政府はどう決定するかを決めるということが筋だと思いますが、その辺を明瞭にする必要があると思います。
 それから、国民の賛否がいろいろ分かれていますから、いざ再稼働ということになれば、基準は合っているとしても、ソフト面といいましょうか、きちっとした監視をしばらくは行う必要があるだろうと私は思っています。2年前の、まだ安全の基準がないときに大飯発電所3・4号機を特別に動かしましたが、それは基準のないときに特別に我々自身としての基準を国に申し上げ、あるいは事業者に申し上げて動かしたわけですので、状況は違います。少し時間がかかった後に動かすということになりますと、準備ができているというのが必要だと思います。そして、今の公式の安全基準というのは、我々が暫定的にいろいろ考えた基準を大体使って行っているわけですので、そう中身は変わらない部分が多いのです。
 いずれにしても、今回、川内発電所のいろんな動きなども十分見ながらこの問題に対応してまいりたいと思っております。
 この原子力発電所の安全対策についてもう1つだけ、頭の整理としてご記憶を願いたいことを申し上げます。それは、原子力発電所の問題についてはレベルがおよそ3段階あるということです。
 1つは、一番根っこにあることですが、プラント自体の安全ですね。装置としてのプラントをいかに安全管理するか。ソフトとしてのマンパワーと組織。所長さんのリーダーシップ、いろんなものを含めたプラント全体の安全、これが基本であり、1番基本のレベルです。
 2番目は、万が一トラブルや事故あるいは事象が起こったときに、いかに迅速に制圧できるかという体制ですね、それが2番目のレベルとしてあります。
 3番目としては、よりもっと広い範囲でありまして、どうしても制圧が十分でない、あるいはそのおそれがあるときに、避難をどうするかということであります。このように階層的に3つレベルがあると思っていただきたい。
 今、よく論じられるのは3番目の避難のことですが、1番目のレベルと、2番目のレベルが根っこにあると思ってほしいのです。国際的な原子力機関であるIAEAでは5層というような、これはまた見方が違うのですが、初めの1層から3層は私が最初に言った、1番目のレベルに当たると思ってください。
 そうなりますと何が一番大事かというと、一番最初の1層目です。ここをまずしっかり押さえることです。ここで大体の想定は分かる。2層目はちょっと曖昧になる。3層目の避難になると、いろんな想定が発生して限りがないところがあります。天気がいいのか、風の向きがどうなのか、雪が降っているのか、道はどうなのか、混雑しているのか、海水浴客はいるのか、ということですから、曖昧さが出てくる、ある意味で切りのない部分です。例えば川内、鹿児島では範囲を30キロではなく10キロですればいいというようなことを言っているようですが、そういう考えも無きにしもあらずかもしれない。
 したがって、報道などではよく避難の話がありますが、避難は事柄の一番外側のことで一見わかりやすい部分ですが、全体をみての話しにしなければなりません。避難は想定も実に様々ですから、毎回いろんな工夫をしながら良くしていく性質のものです。一方、プラント自体は毎年良くするという話ではなくて、初めからしっかりしていなければならないものです。こういうレベルの差があるとご記憶願いまして、原子力の安全問題を日常的にも判断してほしいと思います。

 

(3)エネルギー成長戦略特区

 この問題に関連して、福井県はエネルギー成長戦略特区を国に要請しています。二つの課題があり、一つは、資源の乏しい日本において、先ほど申し上げたとおり原子力は「重要なベースロード電源」として、エネルギーベストミックスの中でしかるべき役割を果たす必要がありますが、一方でエネルギーの「多元化」ということが重要です。福井県として、LNGとか水素エネルギーについての対応があり得るわけです。もう一つは、長年にわたって進めているエネルギー研究開発拠点化構想があります。福井県には15基の原発がありますが、原子力の工場といいますか、ものをつくるだけのところではありません。様々な研究をしたり、地元の企業との連携をしたり、そのほか関連する企業を起こしていこうというのが2つ目の柱であります。
 今後は廃炉などの問題もあり廃炉に関連したビジネスを育成するなどもあるかもしれません。これらをまとめて、エネルギー成長戦略特区構想を提案しております。国の第2次選定に向けて強く働きかけているところであり成果を上げていきたいと思っております。

 

3 人口減少問題

 大きな3つ目は人口減少問題です。
 福井県のみならず我が国共通の課題となっています。この問題については3つ申し上げます。国家としてどう考えるか。その解決を図る手法としてどんなものがあるかというのが1つ。それから、2つ目は地方団体としての役割、特に少子化対策はどうか。3点目は政治の問題でありまして、特に一票の格差の問題についてここで申し上げたいと思います。

(人口減少問題の論点整理)
 人口減少問題について、国家レベルでの観点と解決策ですが、人口減少の要因は2つあると思います。
 1つはまず何といっても国民の生活意識が変化してきた、そして、若者の晩婚化、晩産化の傾向が強くなってきていることだと思います。これがベースにあります。世界的にそれぞれの国が高度成長、安定成長、民主化、成熟化して、大体こういう傾向が一般には出るわけです。
 話題が飛びますが、2000年ほど前にローマ帝国というのがありましたが、あの国も同じでしたね。初めは非常に強い国で人口が増えていたのですが、共和政から帝政になる頃にはだんだんローマ人の数が増えなくなるのです。おもしろい話があります。モンテスキューという人が書いた『法の精神』、これは世界史でよく出てくる名前です。ローマではあまりに子供が少ないものだから、例えば政治家が護民官などの特別の職を得ると、あとは大体が地方の属州のヒスパニアとか、トラキアとか、「ア」とつくところの総督になれるのですが、自分の子供の数が多い政治家が、優先的にいい属州を選べたということが書いてあります。最後はこの帝国もゲルマン民族によって滅亡しますが、国が充実しあるいは安定してくると、子供たちの数や結婚の問題が厳しいわけです。ローマには50歳以上の女性は結婚ができないようにするという法律もあったようです。子供の出産にあまり影響がないからだと。国が成熟化すると人口の問題に悩むようになったという例として申し上げたわけです。
 もう1つの大きな要因は、東京への一極集中化だと思います。著しい一極集中を是正する政治的な努力が欠けていたものですから、人口はどんどん東京を中心に集まってしまった。一方で東京の人口の再生産能力というのでしょうか、それが弱い。具体的には合計特殊出生率が低いという、そういう状態です。これら2つの力によって日本全体の出生率が下がっていると思います。
 東京は面積では日本の0.6%。1%に満たない。人口は1割、大学生は、全国の大学生の25%、上場企業は50%あり、著しい集中です。首都圏の東京、埼玉、神奈川、千葉を見た場合には、人口の集中度は実に3割になります。ニューヨークだったら8%、ロンドン13%、北欧は、地形的に北の方は気象条件などが厳しいですから、コペンハーゲンやオスロなど南部に人が集中する傾向にあります。それでも人口の集中度は2割ですから、東京がいかに集中しているか。アメリカの例をとりましても、大きな企業の本社がニューヨークにほとんどあるわけではありません。他の地方都市にも本社がたくさんありますから、東京の例は異常です。
 今、東京都内に住む若い女性、20代、30代の女性ですね、約180万人と考えてみますと、福井と東京を比べますと出生率が違いますね。もし福井のような地域に半数が移り住んだとすると、出生数はそれだけ改善するという計算になるわけです。
 いずれにしても東京に人口を集めないという手段は、我々の力でもかなり解決できると思います。女性が子供を産まないとか、晩婚化であるということへの対策は、そんなに簡単ではありません。しかし出生率の低い大都市から出生率の高い地方への人口還流の流れをつくりだす国土政策は、やり方で一定程度可能ではないかと思います。かつ、そのことは国土の防災や強靭化にもなりますし、エネルギーの生産地と消費地のアンバランスを是正することにもなると思います。

(国家としての観点…ふるさと税制の提案)
 
そこで、より具体的な政策として何があるか。先日、全国知事会議がありまして、私が提案したのは、法人税を地方でより安くするという方法です。
 今、法人税の実効税率は35%です。それを少なくとも20%台にするということですが、仮に29%ぐらいにすると今の35%より6ポイントぐらい下げることになるわけです。私の提案は、例えば東京都の法人は3%減税をします、それから、地方は8%減税します。すると地方と東京都の減税について5%ぐらいの差ができますが、国全体の減収は変わらないことになります。今、法人の減税をするということですから、絶好のチャンスです。東京も少しは減税する、地方はもっと減税するということにより、東京はフランス、ドイツ並みの法人税率になります。地方は、福井県なども含めて、韓国とか中国並みの水準近くに下がりますので、国際競争力も保持できるのではないかという提案です。東京が不満を持つのではないかということですが、減税がない訳ではない。オリンピックなどもありますから、互いの協力としてはバランスがいいのではないかなと思います。もしやるのであれば今がチャンスだと申し上げました。出生率の高い地方に人口を移すということであります。
 今週末には、地方の県の集まりですが13県の「ふるさと知事ネットワーク」の中で、私はその座長の役をしていますが、そこでも提案したいと思います。かつて首都移転のような大きな話がありましたが、そういうことではなくて、出先機関でも研究機関の一部などは地方都市に移すことも可能ですし、いろんなことをすることによって少しずつ安定した地域がつくれるのではないかと思います。何でも東京などということにならない方がよいと考えています。直ちに効果があるかどうかは分かりませんが、政府がそういう姿勢を示すだけで長期的には風潮が生まれると思います。
 人口問題はこれから50年間の話です。相当長い目で絶えずやっていかなければならない話です。これまでも施策は行っていますが、何かをさらにしなければならないわけです、50年間。それをぜひとも今まさに着手すべきではないかと思います。 

(地方の役割…少子化対策の実行と女性活躍の両立)
 
次に、地方としての役割について、特に少子化対策と女性の活躍応援の両立という面から、福井県の出産・子育て応援政策もあわせてお話をしたいと思います。
 安倍内閣の「骨太の方針」では、人口減少対策の柱に「女性の活躍」と「人口の維持」を位置付けています。が、福井県は幸いこの10年余り先進的な政策を行い、女性の就業率が高く、出生率も高いモデル的な県です。企業にもこの問題については努力を求め、県としましても応援はしておりますが、今後も全国の先頭に立って頑張っていかなくてはなりません。
 福井の現状を申し上げますと、女性就業率は約51%で全国2位。保育所の利用率は60%と全国の35%より高い状況です。早い段階から保育施設の整備も進めて以前から待機児童はゼロという状態を続けております。
 また、平成18年度から、3人目の子供たちの保育料などを無料にする「3人っ子応援プロジェクト」を他県に先駆けて実施してきました。全国的に出生率は減少を続けてきたわけですが、そんな中で本県は最初にプラスに転じました。以降、高い出生率を実現しており、平成25年の1.60は全国8位です。
 また、昨年度からは、子どもが1歳になるまで、社員が育休を取得した企業に1社20万円の奨励金を支給する制度を全国で初めて導入しました。これは、家庭での0歳児などの育児と育休後職場に復帰しやすい企業環境の両方を解決することが子育て先進地域の使命と考えたわけであり、既に35社が利用しました。この新たな仕組みについては、今年度の国の新政策にも取り入れられ、全国の自治体向けの支援制度として制度化されました。全国のモデル県として、地方も努力をしながら国の政策も直すという意味で福井県の役割が非常に高いのではないかと思います。女性の就業率の高い福井県において、次のステップを目指すには、企業のトップがこの問題に理解を深め、女性が各分野で活躍できる環境づくりを進めることが、最良かつ最短の道になります。

(政治の問題…一票の格差と具体的な改革案) 
 次に、政治の問題ですが、選挙における一票の格差の問題であります。
 一票の格差は政治自体に大きな影響を与える課題であり、いま、参議院の選挙制度の定数見直しでは、たとえば石川と福井の選挙区を一緒にするとか、区切った方がいいとかいろんな案が出ています。これについては、私は賛成ではありません。一票の格差を論じる前に、大都市と地方の人口をいかにうまく再配分するかという課題が重要です。今のようなやり方をしますと、まず石川と福井で1人になります。その分は大都市部の定数が増えます。大都市で政治家が増えますと、大都市向けの政治が行われる。また大都市に人が集まる。すると地方の人口が少なくなる。今度は滋賀県と一緒にならないといけない。というような数十年にわたっての悪循環で続いておりまして、これをぜひとも直さないとだめだと思うのです。
 1つは最近話題になっておりますが、アメリカのように、各県が少なくとも2人の定数にするといった「地域代表制」のシステムにすることです。今、日本では3倍とか5倍とか一票の格差を論じていますが、ヨーロッパについては海外にも選挙区がありますので、何十倍の格差があります。一方、北欧などでは憲法で定数算定の基準に人口数のほか人口密度を加味して採用しています。結果はそんなに日本と変わりませんが、一票の格差について、当然それが当たり前だと考えているのか、あるいは日本のように考えがなくて裁判で言われるたびに慌てるのか、その違いは実に大きいと思います。一番大きな流れとしては、参議院を地域代表の府にすべきではないかと思います。
 実務的には比例区から選挙区(地方区)への定数移動によりこの問題は解決できるのではないかと思います。各地方の選挙区の定数が少ないからアンバランスができるのです。今、選挙区と比例区の定数の割合は3対2ぐらいの割合ですが、これを2対1にして、大都市にその数を選挙区分として配分すれば地方がそんなに減ることはありません。そして、全国一区の参院比例区の政治家は大体東京に住んでいる人が多いのです。全国区は東京優位、大都市優位になっていますから、この定数も直した方がよいと思います。 

(ふるさと投票制度の導入) 
 それから、もう1つの案は、「ふるさと投票制度」です。住所を移動しますと住民票も移さないといけません。例えば私が東京に住民票を移動した場合、東京で投票ができます。ところが調べますと、本籍地と住民票地というのでしょうか、かなり数のギャップがあります。それを本籍地で投票しますと、今の大都市と地方の格差は少なくなります。関東のある県は、住民票はあるが本籍地は田舎という人が2割ぐらいいると思います。不在者投票に似た制度になりますから、どうしたらいいかと思いますが、人口問題とかを考えますと、あらゆることを考える必要があると思います。
 そして、この「ふるさと投票」というのは、荒唐無稽な制度ではありません。この例はギリシャにあります。ギリシャでは、首都アテネに住んでいても自分の生まれ故郷が例えばテッサロニキという市だとしたらそこへ帰ります。投票のときにはみんな帰りますので大渋滞を起こすそうです。ギリシャは自分の住んでいる生まれ故郷で投票するのが国政選挙で当たり前だと思っている国だそうです。
 これは何で知ったかというと、村上春樹さんという小説家がいますが、『遠い太鼓』という本を読みましたらそれがおもしろく書いてある。ギリシャ人が車に乗ったりバスに乗ったり大騒ぎして田舎に帰り投票する。田舎へ帰ると、昔の恋人に会ったり、いろんなトラブルもまたあるんですね。余談ですが、そういう制度がありますので、考えられない制度ではないのです。
 したがって、少子化問題、人口問題は国の政策を進めなければならない。そのときにはさきほどの法人税の減税、そして大学の再配置問題などが重要ですし、地方の立場としては、福井県はそのモデルですが、少子化対策、子育ても並行してやらなければならない。そして、政治の問題として投票制度ですね。一票の格差を裁判所から言われたから直そうかというのではなくて、選挙制度そのものの考え方を直さないと、袋小路に陥ってしまい問題に正しくアプローチできないのではないかと思います。 


4 「幸福度日本一」を次のステージへ

 次に、各論的な話をしたいと思います。まず幸福度日本一の話を申し上げます。福井県としてはこの幸福度日本一を、これからも維持していかなければなりません。1位が福井県です。2位はオリンピックを開催する東京で、すべて田舎が上位になるわけではありません。ここが重要であり、福井県は大都市と競争しても客観的な指標で1位であるということです。
 47位はどこかというと沖縄ですが、地域の人たちが幸せでないかというと、そうではない。みんなが郷土を愛しているし元気もある。高校野球だって弱くない。されど客観的にはこういう平均的な指標というのは統計として大事であります。これは次のことをやる場合の自信になるものであり、観光であったり、あるいは教育であったり、いろいろなことを進めていかなければならないと思います。 

(本県産業の課題と方向性)
 
特に産業につきましては、平成22年12月に打ち出した「福井経済新戦略」、この中で、ふるさと産業の元気再生と、すぐれた技術を活かした次の新しい成長産業の創造という2つを柱に進めてきました。
 1つ目のふるさと産業の元気再生については、県内中小企業のビジネス展開支援として、例えば、金融機関の出資協力を得て100億円の「ふるさと企業育成ファンド」を23年9月に創設し、運用益をもとに、これまで3年間で、新分野への展開を進める企業などのべ26社を支援しました。
 また、アジアビジネスの支援も強化をしまして、経済界と一緒に「ふくい貿易促進機構」を設立し、上海事務所を拠点に、中国等現地への拠点進出や販路開拓等の相談・サポート体制を強化しました。設立以来、貿易促進機構の支援を受けて新たにアジア方面への輸出を行った企業は、のべ84社などとなっています。
 さらに、24年4月には県立大学地域経済研究所にアジア経済部門を設置し、アジアの経済情勢の専門家を配置しまして、東南アジアを含めた市場調査や県内企業への専門的なアドバイスも開始しました。特にタイには県内からも多くの企業が進出し、ベトナム、カンボジアなど周辺地域も含めた地の利がよいということもありますので、この秋、タイの首都のバンコクに、東南アジアにおける福井県としての支援拠点を開設することとしております。
 2つ目の新成長産業の創出プロジェクトについては、とりわけ、本県が有する炭素繊維技術は高く評価されておりまして、昨年スタートした国の「次世代自動車材料開発プロジェクト」に、福井県が自治体として唯一参画を求められました。現在、東大、トヨタ自動車株式会社、東レ株式会社などと連携し、短時間で成型する技術開発を進めています。また、炭素繊維のプレス機の研究にも県内企業が加わり、今年2月、自動車向けプレス機を専門としているエイチアンドエフ社が、県工業技術センターと共同で炭素繊維複合材の成型プレス機を新たに製造し、工業技術センターに導入しました。3月には、パリで開催された世界最大級の複合材料展示会「JECヨーロッパ」におきまして、坂井市丸岡町の「丸八」の製品が「イノベーション賞」を受賞しました。国内企業として初めての快挙であります。
 また、成長分野である医療産業についても、25年7月に「ふくい医療産業創出研究会」を設け、福井大学医学部との意見交換や、医療機器メーカーによるニーズ説明会など、進出を希望する企業の後押しを行っています。
 この分野を強化するため、石川、富山両県との共同により「北陸ライフサイエンスクラスター」の形成を進めています。文科省の「地域イノベーション戦略支援プログラム」にも採択されました。これは、富山が「予防」、石川が「診断」、そして福井が「治療」の研究推進の役割を担い、北陸への医療産業の集積を進めようとするもので、3県が連携し、医療分野への展開を加速化していきたいと思います。
 企業誘致も随分と成果を出してきたところであります。平成15年度以来の11年間で計268社、うち新設は67社になります。これらによる新規雇用創出は、各立地企業の計画値ですが、約5,600名、設備投資額は4,000億円となっております。
 こうした政策が奏功し、また、企業の尽力もあり、福井県は全国トップクラスの雇用環境を実現しています。
 現在、新たな産業団地の整備にも着手しており、特に、原子力発電所の運転停止により厳しい環境にある嶺南地域は、企業誘致を進めようにも残る産業用地が計9ヘクタールと少ない状況です。このため、整備主体である市町への支援制度を強化し、敦賀市と美浜町では、新しくそれぞれ10ヘクタール規模の産業団地の整備に昨年度から着手し、既に整備に向けた調査に入っております。

(経済新戦略の策定) 
 経済戦略が策定された平成22年当時と今を比べると、経済情勢は好転しているかもしれませんが、人口減少や東京一極集中への問題認識は、さらに強まっています。また、グローバル経済がなお一層広がりを見せる中にあって、次の福井の姿を明らかにすべき局面を迎えていると思います。新たな経済戦略をこれからもう1回議論する必要があります。
 ポイントは、大きく3つあるのではないかと考えています。
 まずは、今申し上げましたような雇用の問題ですね。製造業に限らず、医療・福祉、農林漁業、観光・サービス業など、若者や女性の雇用を生み出す産業の創出が、最も重要なポイントではないかと思います。
 それから、県外からいかに稼いでくるか、海外から稼ぐかということです。県外・海外市場をとりこみ、その資金を県内に還流させる流れを県全体でつくる必要があります。
 それから、福井県が有する地域資源と結びついた産業をこれから育成していくかということです。一次産業はもちろんのこと、地場産業や伝統産業、さらには観光産業、原子力・エネルギー産業などが該当します。
 政府の新成長戦略との連携も図りながら福井県としての新たな経済成長戦略を、早期に作成したいと思っております。

(本県農業の課題と戦略) 
 次に、農業であります。
 農業については、農家所得の減少、高齢化、稲作偏重と米価の低迷といった状況の中で、福井米の品質・生産性向上や園芸の拡大を含む「食料産業への転換」を目指し、大きく舵を切ってきました。
 中でも、米については、この2年間、食味で最高ランクにあたる「特A」評価を2年連続で獲得するなど、顕著な成果を上げてきました。これは、「五月半ばの適期田植え」が98%と完全に定着したこと、それから食味検査に基づく区分集荷の体制づくりなど、関係者の努力が実ったものです。1等米比率も高い結果となっています。
 また、園芸については、契約栽培の拡大や農業法人の育成などにより、生産額は徐々に増加しております。昨年は、県が高浜町内に整備した6連棟ハウスにおきまして、県産ミディトマト「越のルビー」の1年を通しての生産が始まりました。ヒートポンプやICTを導入するなど、様々な技術を用いて生産コストを引き下げています。5月に農業先進国でありますオランダで、園芸団地を視察し、栽培技術に相当の資金を投入している様子を目にしました。本県は稲作中心に技術開発を行ってきましたが、施設園芸も十分できると実感しました。
 このような進捗にあって、TPP交渉の進展、米政策の見直しといった外的な要因を考え合わせますと、課題認識としては大きく3つあるかと思います。
 1つ目は、産業としての収益性をいかに上げるかということ。2つ目は、農村や景観、さらには生態系を維持する多面的な機能を保持すること。そして、3つ目は、以上2つの役割に応じた農業の担い手の確保です。 

(収益性の拡大) 
 今年3月、新たに策定した「ふくいの農業基本計画」においても、「利益の上がる産業へのステップアップ」と「自然環境やふるさと文化を支える基盤の保持」を柱に据えました。
 米については、今後産業として成り立ちにくいという課題もありますが、一方でコシヒカリ発祥の地としてこの分野をリードしていく役割もあります。このため、「高価格銘柄米産地としての地位獲得」を目標の一つに、高食味米の中で大粒を選りすぐった「限定コシヒカリ」や、生き物にやさしいなど栽培方法に特徴のある「こだわり米」の生産・販売を拡大します。また、JAとともに「秋の田起こし運動」も新たに開始させ、30年度までに1等米比率を90%にまで引き上げていきます。
 収益性拡大のためには、やはり園芸生産を増やす必要があります。農業基本計画では、現在140億円の園芸産出額を40億円増加させることにより、1.3倍となる180億円にまで拡大することを目標としました。先ほどの高浜のような施設を嶺南に計6か所まで増やしてのべ3haの規模に拡大したいと考えています。
 また、高浜には別の大規模園芸団地も整備を進めることとしており、今年度は、大型ハウスを、来年度は、植物工場とカット野菜加工施設を整備する予定です。さらに、坂井北部丘陵地でのキャベツ、ニンジン、ネギ等の大規模な契約栽培や、周年型の施設園芸を県下全域に広げていきます。

(ふくい園芸カレッジの開設) 
 そこで実際に園芸生産に携わる人材を増やさなければなりません。その拠点としてこの6月に、あわら市にある県の「ふくい園芸カレッジ」を開設しました。県の園芸振興センターを改修して現在研修を進めています。
 一期生として、研修期間が2年の「新規就農コース」には23名、県外からの11名を含みます。また4か月の「プラス園芸コース」には37名が入校しまして、計60名の研修生が入ったことになります。
 この施設では、実践的な技能研修に加えて、他県にない特徴的なものとして、農業・産業界のトップリーダーも招き、最近の農業情勢、経営戦略についても研修を行います。また、研修で使用した畑でそのまま就農できるようにしました。たくさんの意欲的な人材がここから育っていくことを期待しています。 

(観光新戦略の策定) 
 次に観光についてお話ししたいと思います。
 本県は、従来の観光資源のほかに恐竜、それから世界遺産になりました和食、さらには三方五湖の年縞など、他県に勝る「本物」の資源を有しております。交通ネットワークの進展、さらに福井国体、東京オリンピックなどタイミングの上でも、そのポテンシャルを開花させる好機だと考えています。
 このため、今、新たな観光戦略を策定する会議を設けまして、大体4、5回ぐらいの会合で結論を出していきたいと考えています。交通関係がよくなり、北陸あるいは関西とも競争関係にありますが、互いに助け合いながらこちらに誘客を図るということが大事だと思います。より高い目標に向けて努力してまいりたいと思います。 

(恐竜ブランドの強化と食の魅力発信)
 
そして、恐竜というダントツブランドをさらに充実し、周辺の観光資源と連携していくことが重要と考えております。
 恐竜博物館の昨年度の入館者数は、開館以来最も多い70万8千人を数えました。7月19日に北谷の発掘現場に「野外恐竜博物館」をオープンし、実際の恐竜発掘現場を眼の前にして、化石発掘体験や本物の足跡化石の見学ができるようにしました。次は奥越エリア全体でもっと子どもたちが滞在できるようにしたり、なお工夫が必要だと考えています。
 また、食というのが福井県の大きな取り柄ですので、これを活かしていきます。昨年のユネスコ無形文化遺産への「和食」の登録にあたっては、実は福井県が貢献しております。日本政府の提案書には和食保護などの事例が23件掲載されていたわけですが、このうち3件が福井県内のものでした。
 そうした和食文化を守り育てていくため、小学校で「だし」を学ぶ授業を行ったり、塗箸など伝統漆器を用いた給食を進めます。そして、来年の「ミラノ万博」にも出展し、禅の影響を受けた福井の食文化を強く発信してまいりたいと考えています。 

(福井型18年教育の充実) 
 今、福井県では「福井型18年教育」を進めています。政府はようやく今年になりまして幼児教育を含め小中高と連続した教育をしなければならないと言い始めましたので、我々のやり方が間違っていなかったと思います。小中学校の学力・体力日本一を高校にまでしっかりつなげていくよう努力したい。
 何といっても元気な子供たちを育てることが大切です。勉強だけしていてもいけません。スポーツでも頑張ってほしいですし、最近は芸術教育、文化教育も充実させていますので、ぜひとも多方面で活躍できる子供たちになるようにしていきたいと考えています。
 英語教育につきましてはさまざま課題がありますので、教育内容の刷新をしながら、高校を卒業したときにはしゃべられるようにということを実現したいと思っております。また皆さん方のご意見もいただきたいと思います。 

(中高一貫教育校の開設) 
 そのなかで中・高の連携ですが、来年の4月から高志高校に中高一貫教育校を開設することになりました。1学年3クラス90人です。もちろん他の中学校、高校と互いに競争ができるような形で運営していきたいと思います。授業は早目に進行するようにし、その分だけ時間に余裕が生まれますので、教育内容もかなり自由度が高まると思います。一貫校でない学校について、高志高校の例を参考に工夫をすれば同じような工夫ができるのではないかと思います。

(職業教育の充実)
 
職業系学校は、そこで学ぶ多くの生徒が福井に残り地元の産業を支え、家庭や社会を築くわけですから大切な使命を持っています。このため、学校の再編統合も進め、職業教育の総合力を高める努力を行ってきました。既に奥越地域では奥越明成高校が統合しております。小浜地域についても小浜水産、若狭高校、若狭東などが統合、そして再編し、坂井高校へも再編しました。しかし職業教育の中身についてはまだ遅れているところがありますので、企業の協力を得ながら最先端の技術を使うなど、企業と密着した職業教育を福井県でつくっていきたいと思います。

(がん対策) 
 次に、がん対策について、中でも、本県が進めてきたがん検診の受診率向上と、陽子線がん治療の2点をお話します。
 がん検診は、すでに、市町間で異なっていた検診料金や受診券を統一し、自宅、職場の近くなどどこでも都合の良い場所で受診できるようにしております。また、昨年春からは、24時間いつでもがん検診の予約ができるシステム「がんネットふくい」の運用を始めております。
 受診率は、平成20年度には30%でしたが、25年度は45%まで上昇しており、29年度までに50%にまで引き上げたいと思います。今年度は、仕事を持つ女性が検診を受けやすいよう、「休日レディースがん検診」を4月下旬から開始し、3か月間で約200名が受診しています。併せて、パートの女性の皆さんが多いような100人未満の事業所に対し、職域がん検診の支援制度も創設しました。
 県立病院にある「陽子線がん治療センター」については、年々、利用者が増加し、昨年度は186人が利用しました。平成23年3月の治療開始以来の累計では、今日現在で518名に達しました。
 今年3月からは、がんの複雑な形状にあわせて陽子線を照射できる世界初の「積層原体照射システム」と、照射する患部の位置決めを自動で、しかも極めて高い精度で行う「CT自動位置決めシステム」という最新のシステムを備えた新しい治療室を運用開始しました。これらのシステムにより、がんの周囲の正常な細胞へのダメージを減らし、副作用を抑えることができます。これまでにすでに13件の治療を行いました。
 また、この秋ごろを目途に、国内初となる、初期の乳がんを対象とした陽子線がん治療の臨床試験を始めます。乳がんは、どうしても照射ポイントを固定する課題があるため、下着メーカーの協力を得て、乳房専用の固定具を開発中です。
 今後の利用拡大には、高額な治療費が課題ですので、県では県内患者への助成制度を用意しているほか、国に対し、陽子線治療への公的医療保険の適用を強く要望しているところです。
 
(里山里海湖(さとうみ)の保全・活用)
 環境分野については、福井県にはあまり雄大な自然というものはありません。むしろ、身近な里山里海湖がありますが、身近であるがため、かえってその良さは県民には見えにくい面があります。このため、外部の評価を得て、県民の関心と誇りを高め、守り育てる活動を強めてもらうことが重要と考えています。
 昨年度は本県の「里山里海湖元年」とも言える年でした。9月には「SATOYAMA国際会議」を県内で開催し、世界約30か国130名の政府関係者、研究者等が参加しました。参加者に長く本県に滞在してもらえるよう、本県独自に現地視察や、農村に滞在する「里山STAY」を企画しました。その他、国際会議やシンポジウムなど、期間中、県内外から延べ2千人が参加され、県民が福井の里地里山に誇りを持つよいきっかけとなりました。今年8月には、日本とドイツの研究者が参加する「日独SATOYAMA研究フォーラム」を本県で開催します。互いの発表や交流を通じ、研究レベルの向上を図るなど、昨年の国際会議の成果をさらに拡大・発展させていきたいと思います。
 また、昨年10月には全国初となる「里山里海湖研究所」を開設しました。進士(しんじ)五十八(いそや)・東京農大名誉教授を所長に迎え、子どもから大人までが気軽に集う「地域を元気にする実学研究」の拠点を目指して施策を展開しています。今春には新たに研究員4名を加えました。
 そして、三方五湖の一つ、水月湖の湖底に眠っていた「年縞」は、地質学的年代測定の世界標準として国際的に認められました。「年縞」は、本県の優れた里山里海湖のシンボル的な存在になると考えています。このため、その価値を県内外に広く知らしめる必要があります。
 今月1日から、年縞研究の第一人者である立命館大学古気候学研究センターの中川(たけし)教授の協力を得て、新たな円柱状のコアの採取を行っています。今回採取したコアは、研究用だけでなく、一部は展示用にも加工し、検討委員会をつくって、立命館大学との共同研究体制や、年縞を実感でき、教育観光等にも活かせる展示方法などを検討していきます。
 
(県都のまちづくり) 
 北陸新幹線開業を控え、県都福井市は金沢、富山との都市間競争も厳しくなってきますし、それら二つの市とは違う福井らしさというものをデザインし、具体化していく必要があります。
 福井市においては福井駅西口再開発の議論が進み、県庁や市役所の建物など中心市街地の建物が戦後から随分経って更新時期を迎えるタイミングでもあります。福井市とともに昨年3月「県都デザイン戦略」を策定しました。この大きな構想のもとで、可能なものから着手し、皆さんの目に見えるように動かしていきます。構想の観点としては3つありました。
 1つ目は、歴史的な資産の掘り起しと活用です。
 福井県、さらに福井市は、戦国のころから幕末・明治にかけ、我が国の歴史を少なからず前進させた歴史があり、由利公正をはじめ偉人も多い。これは、石川、富山にはない福井の特長だと思います。しかし、残念ながら戦災・震災もあり、それらの歴史が目に見える形で残っていません。それら埋もれた歴史を掘り起こし、光を当てるとともに、点ではなく線になるよう、ルート化することを目指しています。第一弾として実施した足羽川幸橋南詰の「由利公正広場」の整備や、現在復元設計を進めている旧福井城の「山里口御門」、今後福井市を支援して浜町に整備する予定の「グリフィス記念館」は、先行整備する第一グループになります。
 2つ目は、まちなかに残る自然の活用です。
 今、足羽川や足羽山の活用は、必ずしも十分ではありません。歴史資産とも関係させながら、にぎわいづくりに活かしていきます。
 3つ目は、人口減少や郊外化による中心部の空洞化の問題です。より具体的に言えば、例えば駐車場が目立つということです。
 福井市とともに、歴史の継承、持続可能性、自然との共生という戦略の理念が実現できるよう、施策を進めていきたいと考えております。 

(福井しあわせ元気国体) 
 最後に、4年後の福井国体のお話を申し上げます。
 平成30年の福井国体ですが、開催地にふさわしい成績ということを現段階では言っておりますので、よい成績を収めなければなりません。開催県は、例年出場するときの倍以上の選手を出場させられますので、約900名の選手を確保する必要があります。特に成年の部においてUターンなどの県内就労については、4年間で大体200名ぐらい確保する必要があると思います。そこで、7月24日に「スポジョブふくい」というネットシステムを立ち上げ、県内企業への就職を希望するスポーツ選手を支援するサイトをつくりました。自分はこういう能力とこういう経歴とこういう得意技がある、ぜひ福井の企業で活躍したい、というような情報のサイトです。民間の企業の皆さんには求人登録をしていただきたいと思います。幸いと言っては何ですが、これからデフレを脱却して、たくさんの人に来ていただく時代になりますので、ぜひとも元気な選手の雇用にご協力をいただければ、福井も元気になりますし、企業も元気になり、また国体の成績も上がるのではないかと考えております。
 なお、国体やオリンピックについては、いろんな商品の調達が必要であり、既に国体については調達会議を設けています。企業とともに営業に全力を挙げていきますのでよろしくお願いします。
 今度、日本代表のサッカーチームの監督に、2002年日韓ワールドカップサッカーの時に、福井県の三国でキャンプをしていただいたメキシコ代表のアギーレ監督が就任することになりました。大変よいことですし、またサッカーなどで応援していただけるのではないかと思っています。

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