平成28年「仕事始め式」知事あいさつ

最終更新日 2016年1月4日ページID 031530

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 このページは、平成28年1月4日(月)に県庁で行われた、職員に対する平成28年「仕事始め式」知事あいさつをまとめたものです。

 皆さん、新年あけましておめでとうございます。
 今年は前年と比べると年末年始の休みがやや短かったようですが、一方で天気は悪くなく、ご家庭・地域でお正月を過ごされたのではないかと思います。
 年頭に当たって、仕事始めのごあいさつを申し上げます。

 ただ今福井県民歌を歌っていただきましたが、数年前に「ふくい いろはかるた」を皆でつくりました。「越前若狭」という言葉が県民歌には数回出てきますが、「ふくい いろはかるた」では「越前・若狭 いちの国」という言葉が出てきます。
 「いち」という言葉には、嶺南と嶺北ひとつにまとまった県であるという意味と、ナンバーワンという意味が掛けてあります。そういう県を、これからも目指そうという気持ちで、皆さんと一緒に仕事を進めたいと思います。

 さて、新しい年は丙申(ひのえさる)の年になります。十干十二支上は「かたちが明らかになる」年という意味だそうです。我が福井県の状況もその通りだと思います。
 60年前の1956年の丙申には、皆さんはほとんど生まれていないと思いますが、神武景気と言われていた時代でした。経済白書が出ていて、「もはや戦後ではない」という言葉が記録されています。外形的・物質的に戦後から離脱するという時代でした。私も小さな子供の頃のことで何もわかりませんでしたが、戦後復興が明らかになる頃でした。
 現在は、戦後から精神的にいかに離脱するかという話が出ていますが、今のお話からして、モノと心の時間的なギャップは実に60年の差ということになります。
 このほか、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸が政令指定都市に初めて指定されて大都市になったということがありました。
 これも今、東京など大都市の問題が出ておりますが、まさに60年経過して、都市と地方のあり方が再び違う意味で議論になっているということだと思います。
 そして北陸線では新幹線ではなく、60年前に敦賀・米原間の電化工事に着工していました。翻って今年は北陸新幹線九頭竜川の高架事業や森田地区の高架事業が姿を現しています。また、敦賀以西ルートの問題も本格化しており一回りしたわけですが、本年内にはぜひ結論を出す必要があります。

 そのほか、昨年来の人口問題、教育、経済戦略、観光など様々な計画を作っております。今年度は高速交通体系の具体的な活用計画や地域医療構想なども早々にとりまとめなければなりません。
 いずれにしても、今後5年ないし10年の方向性について、形が明らかになる年にする必要があると思います。

 さて、今年は「新福井県民歌」を斉唱しました。越前・若狭という言葉が2度出てきます。「ふくい いろはかるた」には「越前・若狭 いちの国」となっています。「幸福日本一」の方向がはっきりと見えてきました。県外の方々も、「幸福日本一の福井県ですね」とわかってくれています。
 皆さんの力で進めてきたいろんな事業の歯車がかみ合ってきたということです。
 福井県は新しい段階を迎えます。具体的な形としてかみ合った歯車を一つひとつ動かし、スピードを上げていくことが重要です。本県が全国のモデルになって物事を進める年にしたいと思います。

 さて新年で形を明らかにすべき課題としては、人口問題、原子力・エネルギー問題、新幹線交通などインフラ整備などがあります。また、産業・農業も含めて海外戦略などを総合的に進めること。そしてただ今は県民歌を歌っていただきましたが、福井国体や・東京オリンピックにどう備えていくかも重要な課題です。それぞれの担当の中で、自分たちの仕事はもちろん全力で進める必要がありますが、よく連携をして効果を上げていただきたいと思います。

 新年の心構えを2、3点申し上げますのでお聴き下さい。
 まず一つは、すべての地方創生の課題の進め方についてです。
 正月にコトラーという経済学・経営学者の本を読みました。資本主義社会に起きている様々な弊害例えば格差や環境などの問題を取り上げて、良い社会になるよう解決策を提示している本でした。60年前の対立の時代だったら修正資本主義と呼ばれるかもしれません。この一番最後の課題に、資本主義は人を幸福にするかという関係、我々が追及している課題について述べています。興味を持って読んだのですが、残念ながらはっきりした答えはありませんでした。つまり、幸福を目指すには、資本主義をうまく使いながら生活水準を良くする、しかし幸福と感じるかどうかは保証の限りではないと留められています。
 改めて幸福という課題は、福井県が挑戦していますが、挑戦のし甲斐のある難しい課題であると感じました。

 もう一つは、資本主義の弊害を直すために地方分権が役立つのだろうかという視点で興味を持って読んでみましたが、まったくこの本にはそういう観点は欠けていて書いてありませんでした。
 この本は主にアメリカを舞台にして他の世界の国々にも参考にされたいということでしょうが、国というのは一つであるという考えで書かれていて、地方とか国、分権・分散についてはどこにも書いておらず、コミュニティに少し触れられていただけでした。資本主義の弊害を直すときに地方自治体に何ができるか、ということも課題だと思うのですが、この本には載っていません。しかし、載っていないことが問題であって、我々はもっと考えていかなければならないと思ったところです。

 現在の国の地方創生の対応の仕方は、東京や中央の目線になりがちです。これに調子を合わせているだけでは十分な問題の解決にならないのです。そこで、地方独自の力を発揮し、独自性を持つ気構えが必要です。
 それには、我々自身が仕事の中で福井良さをいかに感じ発揮させるか、仕事の中で絶えず自覚をし、仕事を通じて福井県の良さをどうアピールできるかということを念頭に置いてほしいのです。
 その際に考えるべきは、我々には、福井県の歴史や文化への誇りや愛情に、やや足りないところがあるように思われるのです。気持ちにやや熱がない、薄いところがないでしょうか。関心を寄せ、誇りや自信を高く持つ気持ちが大事だと思います。
 春になると選抜高校野球が始まります。昨年は敦賀気比高校が優勝してくれました。県外での福井の関係者が非常に喜んでくれています。福井の誇りや愛情に火をつけてくれた一つの大きな出来事でした。その他にもスポーツ、ドラマなどで同様のことがあったと思います。これは大事なチャンスですので、活かしていかなければなりません。そのためには一人ひとりの活躍も大事ですが、互いに連携し、つながりを持ちながら力を発揮することが大事です。
 皆さんそれぞれの所属で先頭に立たなければなりませんし、私も皆さんと一緒に先頭に立っていきたいと思います。大きな県民運動が必要だと思います。県民歌などもその一つです。県民の意識を高めていく努力をし、それぞれが先頭に立つ一年であってほしいと思います。

 二点目に、長期的な心構えが必要ということです。
 先ほど、インフラの整備、交通体系、原子力などがテーマにあるというお話をしました。例えば、交通条件は段々と良くなります。一昨年は若狭さとうみハイウェイが開通し、昨年は中部縦貫道が永平寺まで通り、北陸新幹線は金沢まで来ました。しかし、交通条件が良くなってくるのだから自然に福井も良くなるだろう、と安直には思わないでほしいのです。
 経済成長や社会が自然に伸びる時代には、一つひとつの手を打てば、それなりの成果・方向が出てきた体験を持っています。しかし、今後はそうはいかない。人口減少の問題、年末にようやく方向性が見えた原子力問題、新幹線のルート決定など、これらをいかに活用するかが課題なのです。簡単に考えてはならないわけであり、長期的な関係を念頭に置く必要があります。つまり、ここ数年の対応はもちろん必要ですが、20年あるいは30年後の長期の姿を描こうと努めること、実際に明白に頭に描けないかもしれませんが、描こうとして考え抜いて仕事をしてほしいと思うのです。
 例えば人口問題では、大体の公式はできてきましたが、公式にとどまらず応用が必要な時代です。新幹線については、若狭にとって新幹線とは何なのかということを根本に立って考えなければなりません。原子力については、さらに難しい仕事であり、福井県の将来にどう意味づけるのかということが重要だと思います。そうなると一つひとつの市町では困難ですので、福井県が市町と協力しながら、仕事に応じてリーダーシップをとって物事を進めなければなりません。職場でもそのようにしなければ問題が解決できないと思います。関係する団体・国・市町村・民間など、役割をもう一度見直して、関係をどう作り直すかを考えてほしいと思います。
 その際、難しいかもしれませんが、長期的な姿を描いていこうという気持ちで問題に当たってほしいと再度言いたいと思います。

 以上2点が、私が年頭に申し上げたい事柄です。

 なお、正月にもう一冊本を読みました。
 宮崎市定という方、1990年代に亡くなっておられる東洋史学者ですが、全集を拾い読みしました。その中で感じたことをいくつか申し上げます。
 文明はいろいろなところから発生するのではなく、いちばん条件の良いところから生まれ出て、伝播して伝わっていくものだという考えです。大きな文明はメソポタミアから出たという発想です。メソポタミアでは青銅器時代とその次の発明品である鉄器時代との間は2000年あったそうです。中国ではこの差が500年余しかなく、近いギリシャでは1000年近くあったそうです。もっと遠い日本では青銅器と鉄器がほとんど一緒に伝わって来たらしいです。メソポタミアから遠い文明ほど後の文明が追いかけて早く伝播するということかと思います。
 我々が生きている文化では、誰かが発明したり、創造したりするとすぐにそれが伝わります。「ふるさと納税」も発明すると伝わりますが、変な伝わり方もしますし良い伝わり方もします。どんどん変わってくる。恐竜も同じようなことが起こるでしょう。現代では伝わるスピードはとても速いのです。
 ここで、伝わるという意味ですが、発明するのは大変ですが真似をするのは易しいということです。そして真似は次善であっても、上手く真似をしなければそれすら遅れることになります。

 もう一つ、この方が書いた本に中国人の政治論集の評論があります。中国の歴史の中での政治の提案集です。
 王安石から毛沢東まで1000年の間で、代表的な15人くらいの人たちが皇帝やリーダーに対して命を掛けた提言です。
 共通するのは、いかに官僚・公務員にうまく協力し、良い人材をそろえて仕事を進めるかの問題を不変の課題として論じています。何をするかではないのです。その前に組織をいかに機能させるかの提言ばかりです。
 これを今の我々に当てはめると、いかに適材適所で合理的に協力して仕事を進めるか、さらに一人ひとりのモチベーションということに掛かってくると思います。
 国も時代も違いますから同じかどうかわかりませんが、1000年間の変わらぬ問題意識、提言はその種のものです。それだけこの問題は実行が難しく、実行し甲斐がある課題のようです。もって他山の石、それぞれ皆さんの組織の中でいかに体制を整え動くかということを念頭に置いて仕事を進めていただきたいと思います。

 意外にあいさつに時間がかかってしまいました。皆さんが他の人に伝える際には、時間を短縮して伝播してください。
 この一年、皆さんが公私ともにお元気で仕事を進めていただくことを祈念して、年頭のあいさつといたします。

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