No.9 乳酸発酵による梅酒の酸味改変技術(H25.7.29)

最終更新日 2013年5月27日ページID 023619

印刷

  福井県は日本海側最大の梅産地として知られています。福井県の主要品種は「紅サシ」で、実の片側にほんのりと赤みがさします。梅干しに加工した場合、一般的な梅に比べて、種が小さく肉厚で、食感がよく、色鮮やかな梅干しに仕上がります。
  「紅サシ」は梅干し以外にも適しており、「紅サシ」を使用した梅酒は、地域特産品になっています。 この研究においては、乳酸発酵による新しい梅酒の開発を目指しました。

 紅サシ1  紅サシ2
写真1  紅サシ
  酸とアルコールに強い乳酸菌の育成

    一部の赤ワインでは、酸を減らし、まろやかさを付与するため、乳酸菌による発酵が行われています。
  このワイン技術を梅酒に応用すれば、酸味の変化した特徴ある梅酒の製造が可能になります。しかし、梅は酸が強いためワイン用の乳酸菌では発酵は起こりません。
  福井県が育成した乳酸菌FPL2は、酸に強い性質を持ち、梅果汁を発酵する能力がありますが、アルコールに弱いために、梅酒を発酵することが出来ませんでした。
  そこで、FPL2に改良を加え、酸とアルコールに強い乳酸菌「FPL2-2」を育成しました。 

   乳酸発酵で酸味が変わる

  梅酒の酸味の主体はクエン酸ですが、FPL2-2で乳酸発酵を行うと乳酸の比率が高まり酸の組成が変化します(図1)。
 クエン酸はシャープで強い酸味を呈するのに対し、乳酸はソフトで柔らかな酸味を持つため、発酵を終えた梅酒の酸味は穏やかでまろやかになり、従来とは異なった特徴を付与することができます。 

 酸の組成
図1 乳酸発酵による酸の組成変化

  

 発酵期間は30日

    乳酸発酵の原料には、通常の梅酒を使用します。効率良い乳酸発酵が行える成分の目安はアルコール5%以下およびpH 3.5以上のため、原料梅酒のアルコール濃度およびpHを調整した後、FPL2-2を添加して発酵を開始します。
  発酵温度の厳密な管理は必要なく、20~25℃付近で問題なく発酵します。発酵期間は30日程度で、発酵が終了すると乳酸生成が停止し生菌数が減少します(図2)。
  発酵終了時期は、酸度上昇の停止や菌体の沈降で判断することができます(写真2)。

発酵期間と生菌数  発酵開始時   発酵終了時
図2 乳酸発酵期間と生菌数、乳酸生菌数          写真2 
左:発酵開始後、右:発酵終了時

   なお、ここで紹介した乳酸発酵技術は福井県保有特許「ウメ乳酸発酵飲食品および製造方法(特許第5212641号)」を使用しており、許諾契約が必要です。また、事業者による技術の実施には酒類製造免許が必要です。

申し込み、問い合わせ先

食品加工研究所(担当:久保義人)
TEL:0776-61-3539  Mail:shokuhin@pref.fukui.lg.jp  

アンケート
ウェブサイトの品質向上のため、このページのご感想をお聞かせください。

より詳しくご感想をいただける場合は、noshi@pref.fukui.lg.jpまでメールでお送りください。

お問い合わせ先

農業試験場

電話番号:0776-54-5100 ファックス:0776-54-5106メール:noshi@pref.fukui.lg.jp

〒918-8215 福井市寮町辺操52-21(地図・アクセス)
受付時間 月曜日から金曜日 8時30分から17時15分(土曜・日曜・祝日・年末年始を除く)