職場のトラブルQ&A ~解雇権の濫用~

最終更新日 2020年3月27日ページID 000277

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 勤務成績が上がらない、上司の指示に従わないことがあるという理由で解雇通告を受けました。しかし、私には思い当たることがありません。解雇を撤回させることができるでしょうか。

 今回の解雇通告について納得できない場合は、詳しく理由を聞く必要があります。それで、解雇に合理的な理由がないと判断した場合は、会社に職場復帰の意志を明確に伝え、解雇を撤回してもらうよう求めたらよいでしょう。
 「使用者には解雇の自由がある」と考える人がおられますが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、解雇権の濫用として無効になると労働契約法第16条で規定されています。
 判例上、解雇権の濫用になるか否かの判断要素としては、

  1. 解雇に合理性または相当の理由があるか 
  2. 解雇理由とされた行為などの程度と解雇処分との均衡が取れているか 
  3. 同種または類似事案における取扱いと均衡が取れているか 
  4. 解雇手続きは適正か

といったことがポイントとなります。

解説

 解雇権濫用が争われた裁判で、解雇が客観的に合理性を欠き、社会通念上相当とは認められないと判断された代表的裁判例として次のものがあります。

高知放送事件(最高裁二小 昭和52・1・31判決)

 事件のあらまし
 労働者Xは、放送事業を営むY会社のアナウンサーであった。昭和42年、Xは2週間の間に2度、宿直勤務の際に寝過ごしたため、午前6時からの定時ラジオニュースを放送できず、放送が10分間と5分間中断された。また、Xは2度目の放送事故を直ちに上司に報告せず、後に事故報告を提出した際に、事実と異なる報告をした。
 Yは、上記Xの行為につき、就業規則15条3項の「その他、前各号に準ずる程度のやむを得ない事由があるとき」との普通解雇事由を適用してXを普通解雇した。Xは解雇の効力を争い提訴した。
 判決の概要
 Xの行為はYの就業規則の普通解雇事由に該当する。しかし、普通解雇事由がある場合にも、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的な事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、当該解雇の意思表示は、解雇権の濫用として無効になる。
 Xの起こした放送事故はYの対外的信用を著しく失墜するものであるが、

  1. 本件事故はXの過失によるもので悪意や故意によるものでない 
  2. 先に起きてXを起こすことになっていたファックス担当者が2回とも寝過ごしており、事故発生につきXのみを責めるのは酷である 
  3. 放送の空白時間はさほど長時間とはいえない 
  4. Yは早朝ニュース放送の万全を期すべき措置を講じていない 
  5. Xはこれまで放送事故歴がなく平素の勤務成績も悪くない 
  6. ファックス担当者はけん責処分を受けたに過ぎない 
  7. Yにおいて過去に放送事故を理由に解雇された例がない

などの事実に鑑みると、Xに対し解雇をもってのぞむことはいささか過酷に過ぎ、合理性を欠くうらみなしとせず、必ずしも社会的に相当なものとして是認することはできないと考えられる余地がある。したがって、本件解雇を解雇権濫用として無効とする。 

参考

 

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