自治体の借金 PART 1・地方債

最終更新日 2012年4月10日ページID 000029

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 福井くんは、4月に入庁した総務課所属の新入職員です。職場の雰囲気には慣れてきたのですが、実務の方ではまだまだわからないことがいっぱいあるようです。

 今日はある午後の会話から・・・


【福井くん】
 わかんないんだよなぁ。

【課長】
 福井くんどうしたんだい。ずいぶん難しそうな顔をしてるじゃないか。

【福井くん】
 あ、課長。実は、昨日発表された来年の予算の資料を見ていたんですけど、地元の新聞やニュースでは、「地方の財政状況は厳しい」なんていう記事をよく見かけるじゃないですか。私なんかは、「今月厳しいな」っていうときは、ちょっと知り合いから借りちゃったりしちゃうんですけど、そういうことってできないんですかねぇ。

【課長】
 うーん、ちょっとそれは難しいな。都道府県や市町村といった地方公共団体は、法律で決められた、限られた場合にしか借金ができないようになっているんだよ。

【福井くん】
 え、どうしてですか。

【課長】
 実は、地方財政法という法律の中で、地方公共団体の歳出は、地方債以外のその年の歳入をもって賄うことが原則とされているんだ。

【福井くん】
 地方債って、自治体の借金のことですよね。では、地方公共団体は借金が一切できないということですか。

【課長】
 もちろん、違うよ。考えてみてほしいんだけど、その年度の歳入のみですべての事業を行うということは、その年度にそこに住んでいる人の住民税や、その年度にそこに土地を持っている人の固定資産税で事業を行うということだよね。ゴミの収集や消防関係の事業は問題ないように見えるけど、道路や学校を新しく作るときに、これをあてはめるとどうだろう。道路が完成した後にその人が引っ越してしまった場合はどうかな。

【福井くん】
 不公平じゃないですか。だって、道路や学校はその人が引っ越した後も、ずっと使い続けるものですよ。たまたま、道路をつくった年にそこに住んでいた人だけが負担するのはおかしいです。

【課長】
 だから、道路や学校、図書館などのいわゆる公共施設をつくるときには、「地方債」という借金を財源にすることが、さっきの地方財政法で認められているんだ。住民の負担を平準化しているんだね。

【福井くん】
 平準化ってどういうことですか。

【課長】
 借金をすると、その後10年・20年という長い期間をかけてその借金を返すことになるよね。公共施設の建設にかかった経費を分割して払っていることになるということは、後年度の住民にその負担を求めることになるから、建設費の負担を平準化しているということになるよね。

【福井くん】
 何となく、わかりました。でも、どうして限られたものをつくるときしか、地方債を借りられないんですか。後年度に負担を求めるべきような経費って、もっとあるんじゃないかと思うんですけど。

【課長】
 確かに、後年度に負担を求めるような経費は、他にもあると思うよ。でも、なんでもかんでも「後年度の住民も利用するから」といって、地方債を財源としてしまうと、後年度の住民に過度の負担を強いることになるし、当然、借金である以上は利子の支払いもあるから、法律で制限を設けることにされているんだ。

【福井くん】
 なるほど、ところで、ちょっと前にどこかの市で「一時借入金」を使った赤字隠しをしていたという報道があったと記憶しているんですけど、一時借入金は地方債の一種なんですか。

【課長】
 全然別のものだよ。地方債は、さっきから言っているように後年度に負担を求めるものだから、当然年度を越えて借りる「長期借入金」だよね。一方、一時借入金は、「短期借入金」なんだ。地方公共団体の予算は当然、年度を通してつくるんだけど、税金や補助金が実際に収入される時期は、歳出の時期とはずれることがあるよね。歳出の方を先にすることもあるから、その場合、足りなくなった資金を「一時的に」借りるものなんだ。

【福井くん】
 では、赤字隠しって、どういうことですか。

【課長】
 地方公共団体の決算は、単年度主義だけど、実務上は、すべての事務を年度内の処理として3月末日までに行うのは難しいよね。たとえば、3月末日までの委託業務の請求書が3月末日に提出されても、実際支払うことはできないだろう。そこで次の年度の最初の2ヶ月、つまり5月末日までを出納整理期間として、支払や収納業務を行うことができることになっているんだ。この出納整理期間を利用したんだね。

【福井くん】
 意味がわかりませんが・・・。

【課長】
 一時借入金は、短期借入金で年度内に返さないといけないといったよね。しかし、この出納整理期間があるから、実際は5月末日までに返せばいいんだ。普通は、税収や補助金などの歳入があるから、それで返すんだけど、足りない場合はどうすればいいかな。

【福井くん】
 一時借入金ですか。

【課長】
 そのとおり。翌年度の一時借入金をその年度の一時借入金の返済の財源にしてしまったんだね。いわゆる自転車操業のような状態だ。これを繰り返すと、短期借入のはずの一時借入金が実質的には長期借入金になってしまっているんだ。しかも、決算上の歳入や歳出には一時借入金は記載されないから、一時借入金による赤字隠しが完成するというわけさ。

【福井くん】
 うーん、難しいですね。では、赤字が出たらどうすればいいんですか。

【課長】
 地方財政法にもあるけど、その年度の歳出は、その年度の歳入で賄うのが原則なんだ。だから、赤字が出そうなら、歳出を減らすしかないね。サラリーマンなら営業成績を伸ばして給料があがるように頑張ることもできるけど、地方公共団体が税収を自分の努力で増やすことは難しいからね。こうした意味からも、安易に地方債をメインにした事業ばかりをして、後年度に過度な負担を先送りすることのないよう、われわれがしっかりと財政運営をしていかなければならないんだよ。福井くん、頑張ってくれよ。

【福井くん】
 わかりました。(何か、最後はお説教みたいだな・・・。)

 

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