このページは、平成２０年３月４日（火）に福井農林高等学校で行われた卒業証書授与式でのあいさつをまとめたものです。

　本日、ここに、晴れの日を迎えられた卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。

　皆さんは、高校生活を通して、多くの先生方や友人と出会い、学業に励むとともに、豊かな心を育んでこられました。

　そして今、一層の飛躍を目指し、新たな一歩を踏み出そうとしておられます。その門出に当たり、一言、お祝いの言葉を贈りたいと思います。

　皆さんが誕生されたのは、昭和が終わり、平成の新しい歩みが始まった頃でした。世界では、ベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦の終結が宣言されて、グローバルな時代が始まったときでした。

　一方で、日本の状況を申し上げますと、バブル経済がはじけ、これまでの社会の秩序や価値観が大きく揺らいだ頃でした。皆さんが高校生活を過ごした期間においても、政治や社会は大きな変革を迎えた時期だと思います。

　こうした時代に、晴れの門出を迎えられる皆さんには、大きな夢や志を持って、その実現のために力強く生きてほしいと思います。これからの皆さんのご活躍を期待しています。

　さて、現在、ＮＨＫの連続テレビ小説「ちりとてちん」が放送されています。皆さんは、ちょうど自転車で通学の時間でもあると思いますが、「ちりとてちん」をご覧になっている方はおりますか。お父さんやお母さんはご覧になっているかもしれません。福井県から関西に出た主人公の女性が落語家になる話です。

　主演は貫地谷しほりさんで、この他、落語家など多数出演しております。この貫地谷さんが演じる主人公は、小・中学校や高校の時にはＢ子さんと呼ばれました。Ａ子さんじゃありません。決して一番になることはなく、また、多くのヘマやドジ、つまり失敗をする生徒でありました。しかし、「徒然亭」という落語の一門に入って、五番目の弟子になり、様々な失敗と立ち直りを重ねながら、めげず、へこたれず、一人前の落語家を目指して一生懸命に努力します。この番組には、優等生的なＡ子さんも出てきます。Ａ子さんは、最初の頃は調子がいいのですが、途中調子が悪くなってきます。しかし、この二人は友人ですので、きっといいお話になることを期待しております。

　そして、番組の最後に、毎日、福井の先生とお弟子さんが５秒間ほど登場します。今日は、表具屋さんのお師匠さんとお弟子さんが登場していたかと思います。つまり、この番組は、先生と生徒といいますか、失敗を重ねながらもいろいろ努力して、やがてひとかどの人物になるというお話です。

　皆さんはあまり意識されないかもしれませんが、勉強でもスポーツでも何でも、こっそりうまくなることはできません。隠れて練習をしてアッと言わせてやろうなどということは、空想することはできますが不可能です。大勢の前で失敗をし、「おまえおかしいぞ、下手だな」と言われながら、長い時間をかけて上達していくものと思っております。私も皆さんに、今申し上げたようなことを期待しています。

　世の中で、「名人」や「スーパーマン」と言われるような人も、若い頃は多くの挫折を繰り返し、鍛えられて、今日に至っておりますので、ぜひそういうお考えで頑張ってほしいと思います。

　皆さんが国語（古典）の時間に学ばれた「徒然草」の中にも、今私が申し上げたこととよく似たことが書かれています。先ほど申し上げた「徒然亭」というのも、きっと何か関連があるのではないかとひそかに思っております。

　皆さんは、学校で園芸作物を作られていましたね。そして、毎年、県庁にも来られ、シクラメンなどの花を販売されていましたね。シクラメンなども、毎年同じものを作っていてはいけないと思います。花の色や形は毎年進歩します。皆さんが工夫して、毎年いいものを作っていくことが大事です。これからの皆さんの人生においても、毎年工夫をしながら前へ進んでいくことが必要だと思います。

　さて、福井農林高校は、昨年夏、全国高等学校総合文化祭の和太鼓部門で文部科学大臣賞を受賞し、韓国でも公演されたと聞いております。誠におめでとうございます。また、昨年度、文部科学省から「目指せスペシャリスト」の指定を受け、健康長寿日本一の食材づくりをテーマに福井の伝統野菜の研究に取り組んでいただいております。その他、多くの分野でも皆さんは頑張ってこられたと聞いております。

　今日門出される卒業生の中には、福井を離れる方もいると思いますが、これまでの福井での経験を大切にし、郷土福井を想う気持ち、自分たちを育んでくれたふるさとに恩返しをするという気持ちを持ち続けてほしいと思います。そして、県外に出られる方には、願わくは、一定の時期にまた福井に帰っていただくことを期待しております。

　今回、福井の素晴らしさや歴史・伝統などをコンパクトにまとめた「福井ブランドハンドブック」を旅立つ諸君にお渡ししますので、ぜひご覧になって福井のことを知っていただき、また多くの人に福井のことをお披露目いただきたいと思っております。

　最後になりましたが、皆さんを育ててこられましたご家族の皆様の限りない愛情に深く敬意を表しますとともに、校長先生をはじめ、教職員の方々の温かなご指導、さらには同窓会の皆様や関係各位の多大なるご厚情に対し、心からの感謝とお礼を申し上げまして、お祝いの言葉といたします。