平成22年仕事始め式知事あいさつ

最終更新日 2010年2月4日ページID 010356

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 このページは、平成22年1月4日(月)に県庁で行われた、仕事始め式に当たっての知事のあいさつをまとめたものです。

 皆さん、新年あけましておめでとうございます。220104あいさつ写真1

 今年のお正月は、三ヶ日とも小雪が降り、窓の外の景色を見ているといかにもお正月らしい気分でありました。皆さんの中には外出した方もいると思いますが、多くの方は自宅でご家族と一緒にゆっくり過ごされたのではないかと推測します。

 今年に入り、もうすでにさまざまなことが起きています。新型インフルエンザで亡くなられた方もいらっしゃいますし、今日は早朝に美浜町で土砂崩れも発生しています。年末やお正月といっても、カレンダーどおりには進みません。行政や政治の場では、絶えずさまざまなことが次から次へと起こってきます。また一方で、我々がいろいろな政策を進め、それが政治や行政の場で実行されるということで、一刻たりとも気持ちを緩めることなくさまざまなことに対応しなければなりません。この1年、まさに大きな転換期ではありますが、皆さんとともに元気を出して、県政発展のために頑張りたいと思います。

 昨年末は雇用や金融などの面で心配があり、中小企業者に対する年末の経営相談窓口も開設しましたが、相談件数は100件に及ばず、一昨年と比べると減少しており、そう大きな混乱がなかったようです。また、本日は早速、ふるさと福井へのUターンを応援するため、帰省している学生を対象に合同企業説明会を開催します。今後とも気をしっかり引き締めながら、年度末に向け、新しい経済政策に取り組んでいかなければなりません。

 さて、私は正月三ヶ日、主にラジオを聴いたりして過ごしました。「新春・朗読への招待」という番組では、教科書に出てくる名作を1日4本、3日間で12本、それぞれ15分ずつくらい朗読するのです。森鴎外の「高瀬舟」、夏目漱石の「我輩は猫である」、島崎藤村の「夜明け前」、太宰治の「富獄百景」、梶井基次郎の「檸檬」など、さまざまな作品が朗読され、昔を思い出すような気分で聞いていました。

 それから、テレビはほとんど見ませんがたまたま目にしたのは、ちょうど歌舞伎でした。「与話情浮名横櫛」(よわなさけ うきなの よこぐし)という、お富さんと切られ与三郎の世話物の作品です。難しい題名の歌舞伎ですが、全体を見て初めて歌にうたわれたストーリーは、ああこれはこういう話だったのだな、と感じたところです。

 歌舞伎は、主役、脇役さまざまですが、よくよく別の観点で見ると、むしろ主役のお富さんや与三郎はともかく、脇役の旦那、番頭さん、遊び人などの方がよくせりふをしますし、盛り上げがうまいと感じました。われわれは仕事の上で、誰が主役で誰が脇役かなかなかはっきりしませんし、ある分野で自分は主役なのかそれとも脇役なのか、いろんなことを思ったりします。結局どっちでもあるのです。主役のせりふが流暢を欠いたり、目の配り所が違っていても、脇役がうまいとその芝居は引き締まる、そんな気持ちで芝居を見ていたところです。

 それから、昨日ラジオを聴いていると、日本と中国の経済や雇用の関係の問題が放送されていました。その中で、日本と中国のこれからのあり方が論じられており、今年は中国のGDPが日本を追い抜くのではないか、統計的にはあと数ヶ月で追い抜くのではないかと言っていました。中国も世界の経済体制の中に直接システムとして入ってちょうど10年が経ち、いよいよ日本と中国、そしてアメリカの経済状況が厳しいことから、アジアの課題がこれから出てくるだろうということでした。どのような解説をするのだろうと思って聞いていましたが、中国も日本の技術や人材、さまざまなシステムについて期待もし、不可欠なパートナーである、一方で、日本の方は少し躊躇をしている。中国では市場システムとか政治のデモクラシーとかがあるようですが、これからシステムが整っていくので、ある程度日本の中小企業も大胆に打って出る時期かと放送していました。

 今、まさに福井県は、中小企業の多い、また中小企業が頑張っている県でありますから、中国だけでなく、ベトナム、タイ、ミャンマー、インドなど、東アジアの国との具体的なお付き合いが始まっていくのではないかと感じました。

 この新しい年には、経済戦略をもう一度立て直す必要がありますし、新しいビジョンも大事だと思っています。ビジョンについては、昨年末から既に検討を始めていますが、いよいよこういう問題に着手をしなければなりません。

 新幹線や高速道路、ダムなどについては、昨年のうちに十分な決着を見ませんでしたが、本年はその方向性が出るのではないかと思います。新幹線の例で言えば、金額、予算の留保が明示され、一つひとつ手続きを取って進めるようでありますから、結果として物事がスピード感を持って早く進められ、これが国民の実際の利便に役立つという状況になることが必要ですし、皆さんもそう思っているのではないでしょうか。我々としてはそういうことをある程度期待もし、実現するということを前提に、次の段階への仕事を進める必要があります。

 いずれにしても、これから協議や相談の場があると思うので、福井県の県民益をしっかり伝えるということを、皆さんとともに進めていきたいと決意しています。

 それから、6月19日、20日には、アジア・太平洋の21の国・地域からエネルギー担当大臣など多くの方々をお招きし、福井県で「APECエネルギー大臣会合」が開催されます。これはアジアの話と先ほど申し上げましたが、文字どおりこれからの東アジアとの関係、あるいは環境、エネルギー、原子力といった重要なテーマを論ずるにふさわしい場でもありますし、また適した時期に行われるのです。

 この会議の開催を単なる一過性のイベントとして終わらせてはいけません。福井県の将来にどのようにつなげていくかということが大事です。具体的には、エネルギー研究開発拠点化計画のレベルアップ、エネルギー政策面での国際的な貢献、そして福井の子供たちがこのような国際的な会議に参画をし教育に役立てる、ということを行いたいと考えています。さらに、アジア諸国との人的交流とこれらの国・地域からの観光客の誘致なども強化する必要があります。

 それから、今年は「恐竜王国ふくい」を代表する県立恐竜博物館が、開館10周年の節目を迎えます。昨年、カマラサウルスという恐竜の全身骨格化石も購入しました。こうしたものを有効に活用しながら福井県を売り込んでいく、極めて重要な時期になって来ます。

 昨日の新聞に、橘曙覧の和歌が載っていました。「たのしみは ふと見てほしく おもう物 辛くはかりて 手に入れしとき」という歌でした。

 これは有名な「独楽吟」52首の一つです。何かあれが欲しいな、あれを実現したいなというときに、「辛くはかりて」というのは昔の言葉でありますが、「やっとやりくりして」ということのようであります。「口をうまく使ってある物を手に入れる」という意味かと思っていたのですが、もとの全歌集の解説を読んだら「お金の工面をちゃんとして」という意味でした。財源、あるいはさまざまな工夫をして欲しい物を手に入れることが大事であると、私も思ったところであります。

 我々も「あれがやりたい」、「これをしなければならない」ということがありますが、なかなかすぐには実現できません。「辛くはかる」ということですね、これが仕事の仕方としては一つの方向性かと思います。

 新政権は「地域主権」の実現を主要施策の一つに掲げています。その言葉づかいはともかく、地方が自らさまざまな政策を進めて日本の姿を変革していくということが重要です。新しい地方、これは福井県でなければなりませんが、「新しい地方が新しい日本を創る」のだという強い気概をもって、地方からさまざまな仕事や仕事の仕方、考え方を提示すべきだと思います。国もいろいろ目論んでいると思いますが、これを待っていては地方の利益につながりません。220104あいさつ写真2

 今、大都市や周辺の自治体からの意見というものが多く出ていますが、これはともすれば、地方という名ではあるが中央的な政策が多いのです。大都市は人口も多いし、発言力も強いので、同じことを言っても大都市の話は通用しますが、地方の話は、地域の都合であるとかエゴであるとかその地域だけの話だ、というふうにとらえがちのことが多いのです。福井県のような地方の中の地方から、ある考えある政策を提示するときは、強い説得力を持って発言しないと、全国の人たちに分ってもらえないことが多いわけであります。これからまた予算が始まりますが、政策を考えるときにはそういうことも考えていただき、福井県からプロジェクトを進める、そしてそのプロジェクトを国が支援する、こういう気持で仕事を進めていただきたいと思います。

 お正月にあれこれ思いついたことを中心に申し上げましたが、どうかこの1年ご家族ともども健康で公務に全力で奮闘されることを心から期待し、新年のごあいさつとします。

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