APECジュニアフォーラムあいさつ、講評

最終更新日 2010年3月18日ページID 011076

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 このページは、平成22年3月18日(木)にプラザ萬象で行われた、APECジュニアフォーラムでの知事あいさつと知事講評をまとめたものです。

知事あいさつ

知事講評

【知事あいさつ】 
 皆さんこんにちは。今日は「APECジュニアフォーラム」に皆さまご参加をいただきまして、ありがとうございます。10分か15分くらい、ごあいさつを兼ねて、お話しを申し上げますので、リラックスしながら聞いてください。220318あいさつ写真1

 さて、今年6月19日、20日に福井県で開かれます「2010年日本APECエネルギー大臣会合」に向けまして、中学生の方は、APECに参加する国・地域のことや、エネルギー・環境問題など、さまざま勉強をしてこられました。今ちょうど玄関の左のほうで、作成された新聞を拝見いたしまして、沢山の勉強をしていることが分かりました。事前の学習では文献を調べたり、ホームページなどで情報を得たり、また、APEC参加国出身の留学生の皆さんとの交流などを通して、今まで知らなかったことを多く学ぶことができたと思います。

 今日は、県内各地の10の学校の生徒諸君に、その学習成果を発表してもらいます。大勢の人の前で発表することはちょっと勇気がいるかも知れませんね。ぜひ頑張ってほしいと思います。緊張せず思っていることを話すための練習として、今日はよい機会になると思います。また、発表の後に、科学ジャーナリストの東嶋和子さんのコーディネートで代表の皆さんが意見交換した後、6月の「APECエネルギー大臣会合」に向けた提言をまとめてもらう予定です。

 APECエネルギー大臣会合ですが、それぞれの国の大臣、政府の関係者など多くの人が参加をします。今日まとめた提言については、この6月の会合の本番で、各国からの参加者に直接アピール機会をつくりたいと思います。

 それではAPECについて、これからお話します。

 APECは、太平洋を取り囲む国・地域が参加する経済的な協力の枠組み、フレームです。今からちょうど20年前の1989年にこれができました。APEC発足にあたりましては、実は我が日本が大きな役割を担っていました。また、1994年のAPEC、これはインドネシアで開かれたのですが、その「ボゴール宣言」では、「先進国・地域は遅くとも2010年までに、自由で開かれた貿易および投資を達成する」、ちょっと難しいですが、こういう目標を掲げまして、日本が議長国となる今年はちょうどその目標達成年という節目の年にあたっております。

 今回のAPECでは、日本が再び力強いリーダーシップを発揮して、アジア太平洋地域における今後の新しいビジョンを打ち出していくことが期待され、この福井ではエネルギー部門を担当することになります。我が日本では、「チェンジ・アンド・アクション」をテーマに掲げまして、2010年のAPECにおいては、これからもAPECが重要なこうした問題に役割を果たすことができるよう「チェンジ」をして、それを具体的な「アクション」に移そうという考えであります。

 今申し上げましたように、APECのさまざまな議論の中で、「エネルギー」が非常に大きな分野となることは皆さん分かると思います。原子力・エネルギーの先進県「福井」で、世界的に大きな課題となっております、これからのエネルギー政策について話し合われることは、非常に有意義なことでありまして、新しいビジョンを期待しております。

 さて、このAPECジュニアフォーラムに参加するに当たりまして、各学校では「国際交流講座」として、APEC参加国・地域の留学生の人達と交流などをされたと思います。これらの国を身近に感じていただいております。今、地球上、世界には、国連に加盟している国は192の国があります。このうち、APECには、日本の近くでは中国、韓国、遠いところではペルー、また最近地震が起こりましたチリなど、192か国のうち21の国や地域が参加をしています。これらの国や地域は、地図を見ましても面積にも違いがありますし、人口、歴史、それからGDPの大きさなどもさまざまです。

 どのようにエネルギーを、これらの国・地域がまかなっているのか、石炭や石油はどうだろう、水そして自然エネルギーのバランスはどうだろう、原子力はどんな関係にあるだろう、ということを勉強していただいたことと思います。1人あたりの消費するエネルギーの量を見ましても、アメリカやカナダのように1人当たり年間で石油に換算しても6,000キロ分のエネルギーを使っている国もあれば、1,000キロ以下である国もまた7つあるのです。日本では、発電用のエネルギーの割合として、水力が約1割、火力が約6割、原子力が約3割であります。そして、原子力に日本が貢献しているということですね。

 さて、福井県の原子力発電の状況ですが、1970年、昭和45年に初めて商業用発電所である敦賀発電所1号機が運転を始めました。ちょうど数日前になりますが40年が経ちました。皆さんのお父さんあるいはお母さんが生まれた頃かと思います。こうした電気を最初に起こし、ずっと1秒とも一刻とも間を置くことなく、国民に原子力による電気を供給している大事な使命を各発電所の皆さんが負っておられていることを忘れてはいけないと思います。今は、福井県には13基の商業用の原子力発電所があり、また新しく2基を建設しているところです。福井県の原子力は、日本全体の原子力発電の4分の1、25%を発電しています。そして、関西地域、つまり大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀の半分以上の電気をこの福井県から供給しているのであります。

 ところで、原子力発電の燃料はウランが中心ですが、ウランは限りある資源であります。日本は資源が少なく、ウランも海外からの輸入に頼っておりますが、こうした限りあるエネルギー資源を有効に使っていく工夫が重要であります。こうした工夫の1つとして、この敦賀の地では、「もんじゅ」において、高速増殖炉の研究を行っております。ウランには燃えるウランと燃えないウランがありますが、燃えないウランを燃えるプルトニウムというものに変えて、使ったウラン以上のプルトニウム燃料を生み出すことができるという特徴があります。

 この「もんじゅ」は14年前に事故がありまして運転を停止しております。運転再開にあたっては、もちろん「安全の確認」が最優先であり、専門の委員会で、地震については大丈夫だろうか、機械や装置は正しく動くか、従事している皆さんはそのことをしっかり考えて行動するだろうか、こういうことを全部検討し、いろんな手続きをしているということであります。

 また、発電の面のさまざま貢献もしております。例えば、中国のように原子力発電にすでに取り組んでいる国もあります。インドネシアやベトナム、タイのようにこれから原子力発電を導入しようとする国もあります。アジアをはじめとする世界の国から技術者や研究者をこの福井の地に受け入れて、さらにトレーニング、研修をするこういう拠点の場所に福井県はならなくてはなりません。

 このように、福井県は原子力・エネルギー政策に力を入れておりますが、皆さんは「原子力」というのがどのようなものかご存じだと思います。「原子」は英語で「ATOMアトム」、鉄腕アトムのアトムですね、と言います。ギリシャ語ではこれは「ATOMONアトモン」と言ったそうです。これから言葉が来ている訳ですね。もうこれ以上分けることができないという意味だそうです。しかし、科学がどんどん進歩するにつれて、このアトムが「原子核」とその周りを回っている「電子」からできており、さらにその原子核も「陽子」と「中性子」でできていると、さらにそれが「クオーク」という粒子でできている、さまざまなことがこれまで何十年の間に分かるようになりました。

 さて、「若狭湾エネルギー研究センター」というのが敦賀にあります。「原子核」が「陽子」と「中性子」でできていると先ほど言いましたけれども、この「陽子」を使って、先端的ながんの治療の研究をしております。水素原子というのは、原子核に陽子が1つ、その周りを電子が回っている、これは習っておられるのだと思いますが、水素原子をアルゴンというガスの中へ通すことで、電子をはぎ取って、陽子だけを使う、こういうがん治療の方法であります。今、福井市の県立病院で本格的な装置が完成をしましたので、1年間をかけてさまざまな調整をして、来年の春から具体的な治療に使えるということになっております。この「陽子線がん治療」は、がんを切らずに治療できますので、先端的な医療になると思います。福井県としては、この成果を活かしながら、日本海側の県には今までなかった訳でありますので、唯一の施設として利用したいと思っております。

 ところで、先ほど、これ以上分割できない、究極に小さい粒子を「素粒子」というお話しをしましたが、ここで皆さんに少し、「素粒子」に関係する「さまざまな力」について、最後にお話しします。

 皆さんは「力」という言葉をいろんなところで使いますよね。力があるとか、力持ちとか、実力があるなど、これらはどういう意味で使っているかということですが、この「素粒子」の研究が進む中で、この宇宙、自然の中には「4つの力」があることが分かってきました。

 まず、1番身近なもの、これは「重力」ですよね。物が静かにしかし必ず落ちる「重力」、「引力」です。ニュートンが発見した「万有引力の法則」の重力ですが、地球が太陽の周りをまわっているのもこの重力があるからです。ものすごく大きい力のように皆さんは思われるかも知れませんが、宇宙の中では不思議なことに最も弱い力です。どこにでもありますけれども、「4つの力」のうち最も弱いものです。

 次は「電磁気の力」です。これは電灯とか携帯電話、テレビ、さまざま今われわれが文明生活できる要因ですね。「電磁気の力」は電気であります。これは宇宙の中では2番目に強い力です。

 次には「強い力」というものがあります。これは先ほどのクオークと呼ばれる素粒子が結び付いている力です。これは重力の10の何十乗倍のものすごく強い力です。ですから、原子力の発電などができる訳ですね。もう1つ「弱い力」というのがあるのですが、これは同じく「素粒子」が分かれる時に出る力で、あまり詳しい話しはいたしませんが、「4つの力」があるということです。

 数年前に南部陽一郎先生がノーベル賞を受賞されましたが、この「4つの力」が、互いに関係があるのか、別々の原因によって生まれたのか、こうしたことを研究した先生なのです。今、さまざまな学者がこの力の関係を研究しているということですので、これからいろいろ勉強をしていただきたいと思います。

 さて、ここで皆さんに宿題を、ちょっとだけ頭に入れておいてほしいという意味ですね。例えば、皆さんがこのように物を持ち上げる力、これは「4つの力」のうち何の力だろうか、ということを一度考えてほしいと思います。福井県は体力日本一でしょう、あの体力は何の力だろうというのが1つ。それから学力も日本一ですよね。あの学力というのは4つのうちの何の力だろう、あるいは関係ないのかというのを1回ぜひ考えてください。そしてまた、機会があったら教えてほしいと思います。

 いろいろなことを申し上げましたが、どうか今日は、中学生の皆さんがこれまで研究した成果を発表していただいて、世界のこと、それからエネルギーのこと、福井県のこと、そしてこれが地球、われわれの生活にどのような関係があるのか、こういうことを研究する機会にしていただくとともに、皆さんのそれぞれのご活躍を心からお願い申しあげまして、冒頭のごあいさつにいたします。


【知事講評】

 皆さんご苦労さまでした。大変だったと思いますが、しっかり調べていただきました。学校はもちろん、学年も違いますし、研究の仕方も違ったと思いますが、それぞれエネルギーや環境、それぞれの国・地域の様子、また皆さんの住んでおられる身近な学校の周りのこと、家のことなど報告をいただき、大変勉強になりました。

 そして、外国のことも私自身あまり知らなかったことが多く、皆さんに教えられたと感じております。私は日本国内のことは随分勉強していまして、47の都道府県全てに行ったことがあります。そこにはどんな人がいてどんな方言をしゃべっているのか、何が盛んかだとかそうしたことは知っているのですが、外国のことはあまり知りませんでした。APEC参加国・地域で、アメリカ、ロシア、中国、韓国、中国香港は行ったことがありますが、他は行ったことがありません。皆さんもこれから、いろんな国へ行くと思いますが、できるだけ海外のたくさんの地方とか国を見ていただいて、皆さんのふるさとやそして福井県のことを、比較しながら考えてほしいと思います。220318あいさつ写真2

 それから、もうひとつ感じましたのは、ある国は資源が豊富だとか、環境はこういう様子だということを発表されました。

 それでは、日本で優れたものは何だろうかということを考えてみてください。先ほど、エネルギーの自給率などさまざまな報告がありましたが、日本で自給率が高いのはどういう種類のものだろうか、そうしたことを1度考えてほしいと思います。100%を超えるものは、きっと皆さんが持っておられるはずですから、それは一体何だろうか。そうしたものをさらに引き上げるにはどうしたらいいか。きっと皆さんの学力とか、あるいは技術、こうしたものが日本は優れているのかも知れません。そうしたものを日本が活かして、APECのいろんな国・地域と仲良くしながら、うまく助け合う、こういうこともあるのかなと思いました。

 それから3つ目は、先ほど「4つの力」の話をしましたが、石炭、石油、自然・新エネルギーなどは、どの力でできあがったものかということを少し考えてほしいと思います。それによって、また技術の力の使い方も違いますよね。あるエネルギーはあと何十年あるんだとか、あと100年あるんだとか、いろんなデータが出てきましたが、それも本当にそうなのかなとか、違うのかなといろんなことを研究してほしい。あるいは残っていても役に立たなくなるかもしれません。こんな気もいたしました。それから、今回かなり勉強していただきましたから、次の学年に進んだ時、あるいは高校、大学に行かれた時ですね、さまざまな選択があると思いますが、さらに勉強していただいて、グループであるいはご自身で、勉強の仕方を研究してください。どこかに書いてあるからそう思うということではなくて、自分は本当にそうだと心から思うというような学び方、そうした勉学の仕方が大事だと、私はこのように思っています。

 ありがとうございました。

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