ジェロントロジー共同研究成果報告会 知事あいさつ

最終更新日 2013年2月25日ページID 022725

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 このページは、平成25年2月21日(木)に繊協ビルで行われた、ジェロントロジー共同研究成果報告会での知事あいさつをまとめたものです。

 本日は、福井県と東京大学高齢社会総合研究機構によるジェロントロジー共同研究の成果報告会にご参加いただき、お礼申し上げます。また、東京大学高齢社会総合研究機構の鎌田機構長、辻先生、岩本先生、甲斐先生をはじめ、ご多用中にもかかわらず福井にお越しいただき、厚くお礼申し上げます。

 急速に進む社会の高齢化の中で、元気な高齢者、ケアが必要な高齢者がともに活き活きと暮らせるよう、自宅でいつでも医療や介護を受けられる体制や、高齢者の移動手段の確保など、これまでとは違った仕組みづくりが必要です。

 このような課題について、既存の学問の垣根を越えて解決しようとするジェロントロジー(総合長寿学)に共鳴して、県では、東京大学と共同研究を進めています。これまでの共同研究は、その成果として県の政策に実を結んでいます。

 一つ目の成果は、在宅ケアの仕組みづくりです。
 坂井地区において、在宅での医療・介護を地域で支える仕組みを「福井型の在宅ケア体制モデル」として昨年10月からスタートしています。【写真】知事あいさつ

 県民の約半数は、住み慣れた家で最後まで暮らし続けるという「在宅ケア」を望んでいますが、一方で「急に体調が変わった時どうしたらいいのか」、「家族への負担が気になる」といった不安があります。
 こうした不安を解消して在宅ケアを進めるために、「在宅でのケアを支える確かなチームづくり」と、「利用者の理解を進めていくこと」の2つの仕組み作りを進めています。

 具体的に申し上げますと、「在宅でのケアを支える確かなチームづくり」については、次の4項目の取組みを行っています。
 第一は、地元の医師会を中心とした主治医と副主治医によるチーム医療の実践です。
 次に、緊急時における身近な病院での受け入れ体制を整備しました。坂井地区では全ての病院と地元の医師会が協定を締結し、この1月から受入体制が整っています。
 第三には、看護師、ヘルパーなどのチームづくりを行っています。昨年12月に、坂井地区全域の医療・介護従事者150人が一堂に会し、意見交換の場を設けたところであり、今後、定期的な場として関係を深めていきます。
 第四には、在宅ケアを受ける方についての医療や介護情報の共有化です。坂井地区では、2月からITシステムによる情報の共有化について試験運用を始めています。

 また、「利用者の理解を深めていくこと」については、地元医師会の協力を得ながら、集落単位で在宅ケアへの不安と対応策について、住民と医師や自治体がひざ詰めで語り合う出前講座を開催しています。

 今後は、こうした仕組みを「福井型のモデル」として、全県下に普及していきます。
 このため、健康福祉センター圏域ごとに、在宅ケアに携わる医療・介護の実務者が交流し、それぞれの地域の在宅ケア体制を話し合う場を設け、市町とも協働して、それぞれの地域の実情に合った、在宅ケア体制をつくっていきます。

 二つ目の方向ないし成果として、市町ごとの健康づくりがあります。
 健康づくりの分野では、これまでの研究で、福井県民は全国に比べて健康度が高いが、市町ごとに健康度に違いがあり、地域別の健康づくり施策が必要なことが判明しました。例えば、メタボ関連では嶺南・丹南が悪く、糖尿の疑いでは福井・坂井・奥越が悪いということが分かりました。

 このため、県では、東大との共同研究による健康診断データと医療データの分析手法を活用して、「わがまち健康づくり推進プロジェクト」を昨年11月にスタートしています。
 市町ごとに健康診断と医療のデータベースを構築し、分析することにより、市町ごとの健康づくりへの課題を明らかし、例えば「高血圧の人が多い市町では、塩分の問題をどうするか」など、その特徴に応じた健康づくり対策を行うことができます。また、個人ごとにも、こうしたデータベースを設け、その経年変化を分析し、健康づくり対策の効果を明らかにすることが可能となります。

 三つ目の方向として、交通の分野において、高齢者の自動車運転の安全対策のための新しい運転教育の手法の開発や、高齢者向けの新たな移動手段として、大野市で、低速の小型電気自動車「コムス」の運行実験を行っていただいています。
 小型電気自動車は、近距離での日常的な移動手段や観光時の移動手段としての利用の広がりも期待されています。県としても、新年度、市町とも協力し、普及に向けて進めていきたいと考えています。

 今後も、東京大学の知見をお借りしながら、福井県として高齢者の暮らしに役立つ政策を企画立案してまいりたいと思います。
 本日お集まりの皆様には、研究内容をお聞きいただくことで、ジェロントロジー(総合長寿学)への理解を深め、それぞれの分野でご活用していただければありがたいと思います。
 本日の報告会が、実り多いものになることを期待して、ごあいさつとさせていただきます。


◎当日は、テーマごとに研究成果の報告がありました。
  「移動・交通に関する取り組みの現状報告」
    発表者:東京大学高齢社会総合研究機構  鎌田実 機構長
  「レセプトデータから見た介護サービスの改善」
    発表者:東京大学大学院経済学研究科  岩本康志 教授
         富山大学経済学部          両角良子 准教授
  「『地域力』と高齢者・介護者の健康」
    発表者:東京大学             甲斐一郎 名誉教授
         国立長寿医療研究センター  斎藤民 室長
  「地域単位での在宅ケア体制づくり ~坂井地区の在宅ケア体制~」
    発表者:東京大学高齢社会総合研究機構  辻哲夫 教授

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