第62回福井県小学校長学校運営研究大会講話

最終更新日 2010年5月12日ページID 011636

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 このページは、平成22年5月12日(水)に嚮陽会館で行われた、第62回福井県小学校長運営研究大会での知事講話をまとめたものです。

200512講演写真1 県小学校長学校運営研究大会でお話する機会をいただきありがとうございます。
 あらかじめ「校長等として学力向上のために具体的に進めている事業は何か」、またこの課題に対して「可能であれば新たに始めたいことは何か」についてアンケートをとらせていただきました。さらに、このアンケートの中で、今年の国民読書年に寄せて、後輩の教職員や子どもたちに薦めたい本を書いてもらいました。

 さて、県教育委員会では、今年3月に定年退職された教職員に後輩の教職員や子どもたちにぜひ読んでほしい本を推薦してもらい、「退職教職員から後輩への80選」(教職員向け)、「心の豊かさを広げる80選」(児童生徒向け)という形にとりまとめました。この合計160冊の中で、私が読んだのはちょうど1割でした。どちらも8冊ほどということで、重なりが少ないことが分かり、嬉しいような嬉しくないような、そのような気がいたしました。
 160冊について拝見しますと、文系の本が多いですね。科学技術や自然、生命など、そういうタイプの本は全体の1割もありません。心の豊かさということで、薦める本が文系になるのかもしれませんが、理系の方がむしろ心の豊かさというものに深くつながっているのかとも思いますので、そのような本もあってほしいですね。

 (アンケートを見ながら)後輩の教職員に薦めたい1冊を「文藝春秋」と書いた方がいらっしゃいますね。「文藝春秋」で思い出しましたが、私は昔、公務員になって最初、広島県庁に勤めました。今から40年ほど前のことです。独身寮に入り、1年目は2人部屋で、先輩の農林部の技術の方と一緒でした。よく夜には先輩と碁を打ったり、またその先輩は東広島市出身で松茸の採れることで有名なところの方なので、松茸の山に案内してもらったりしていました。
 ところが2年目は、秘書課長と一緒でした。秘書課長が独身寮に入りたい、それも2人部屋がよいということを言われたのですが、県職員の方は敬遠をして誰も一緒に入ろうとしないので、その役が私の方に回ってきたのです。秘書課長という仕事は忙しく、朝早い、私が起きたときには部屋にはいない。夜は遅いから私の方が先に寝てしまう。今思うと恥ずかしく、反省しています。本当は、秘書課長より朝早く先に起きて、夜は遅くまで起きて待っていないといけなかったのです。
 寝てしまっていると時々起こされるのです。「西さん、スシを持って帰ってきたから食えよ」と言われて、酒を一緒に飲まされました。その時に聞いた話はどういう話だと思いますか。今から40年ほど前の課長さんですね。皆さんの40年前の先輩の先生方と想定してみてください。戦争の話です。その方は、20歳代にニューギニアのブーゲンビル島で苦労をされたということです。
 そして、その秘書課長の好きな本が「文藝春秋」だったのです。「文藝春秋」を読めと言われました。その当時はどちらかというと左翼的な思想の時代で、(「文藝春秋」というと「中央公論」よりもう少し右かなと思われていました。)「世界」や「朝日ジャーナル」を読まなければという時代でしたから、「文藝春秋を読め」と言われて「う~ん」と思いましたが、その方が買って読まれた後、私は読んでいました。その方は、阿川弘之が大好きでした。その小説家も広島県出身であり、良い小説を書いています。ご高齢ですが、お元気でおられると思います。世代も代わって娘さんは阿川佐和子さんという随筆家ですね。
 そういうことで「文藝春秋」を覚えています。最近は、世の中が中庸になってきており、内容もむしろ過激というか、そのようになっているかも知れません。話を元に戻しますが、「文藝春秋」も秘書課長に薦められている気分でまた読みたいなという思いがしています。

 さて、ここ1ヶ月ぐらい県内の小学校、中学校、高校の授業等を拝見しました。子どもたちと一緒に給食も食べました。今日参加されている校長先生にお世話になった学校もあると思います。一学級につき一授業を5~10分ずついくつか参観するので、あまりじっくり見ているわけではありませんが、自分たちの時代と比べて、また想像していたのと比べて、違っている点が幾つかありました。
 一つは、行った学校が田舎ということもあるせいか、子どもの数がものすごく少ないということです。県内の子どもの数は、ピーク時に比べると半分以下の40%台になっており、実際、学校ごとにみると、子どもがすごく少ない環境で学習している、授業を受けているという印象を受けました。
 1学年2学級未満の学校は全体の68%、さらに複式学級の学校が全体の20%を占めています。少人数学級を進めていることは良いことですが、人数が少なくなっているのですから、如何にこの状況をうまく利用するというか、弊害の無いようにするというのは大事だと思います。学級数は少なくなっているだろうとは思っていましたが、改めてこれを実感し、この問題に教育委員会全体で対応する必要があるだろうと感じました。
 もう一つ感じましたことは、これは私の個人的な思いかもしれませんが、先生が生徒にすごく質問をするということです。これは良いことなのか、あまり良くないことなのか、私にはよく分かりませんが、これだけ1日のうちに何回も子どもたちが手を挙げて答えていれば、子どもも先生も疲れるだろうと思いました。子どもの参加を得て授業を盛り上げていく、そして理解をさせるというやり方をどのようにするかということは、極めて技術を要すると思いました。
 そしてさらに感じましたことは、これから学力を向上させるために、福井県は先進的な県であるはずです。小学校の例をとりましても全国で1、2位を争う県でありますから、次のステップに行く必要があります。このようなときにどのようなやり方を全体として取るか、そして個々の学校でどのような工夫をするか、一人ひとりの先生がその能力と意欲・工夫に応じてどのような方法をとりうるかということが極めて重要です。水準を高くしたいという気持ちを抱いたというのが実際であります。校長先生にそのような思いを抱いていただきたいと思います。そういう意味で、先ほどのアンケートに答えていただいたわけです。
 校長の心境はあまり分かりませんが、校長としてやりたいけどやっていいのかどうかいつも悩んでいるのではないかと私は想像します。何かやりたいのだがやって大丈夫かとか、校長の立場でこれを是非したいのだが子どもたちに影響が出ないか、不満が出ないか、家庭からクレームがつかないかなど、いろいろ思っておられるのでしょうか。まだ5月ですので、思い切って学校で何かやれることをお考えいただき、これからチャレンジをしてください。学校によって立地条件が違いますので、多少いろいろな問題が出るかもしれません。この問題に校長の立場でぜひチャレンジしようでないかと思われたらどうでしょうか。一人だけで考えると間違うかもしれませんが、今日みたいな研究会でいろいろ意見交換をしていただいて、実践してみるとよいかと思います。
 3つ目に思った話ですが、校長先生は担任の先生の授業を1年間にどの程度見られますか。全担任の授業を見られる方はどれぐらいですか。全員の方が挙手していますね。では、一人の先生の授業を何回見られますか。1回から数回という感じですか。助言はどうされますか。ほめるのですか、励ますのですか、どうなのでしょうか。
 いろいろな方法があると思いますが、それぞれの先生の一生のことでありますので、是非良いところと悪いところを、はっきりと一言ずつ伝えていただきたいと思います。県庁でもよく似たことがあるのですが、その方が先生のためであり、何といっても子どもたちのためであります。話が不明瞭であるとか、無駄な言葉が多いとか、あるいは教え方に落ち着きがないとか、いろいろあると思います。基本的な姿勢として校長が感じることを是非一言アドバイスしてほしいものです。そうすればきっと良くなると思います。
 そして、校長として学校をどうするか、さらに教育委員会がどうしていくかという、三段階でより大きな教育問題の解決を進めていただくと良いと思います。

 次に申し上げたいこととして、全国学力・学習状況調査で小学校の先生が将来の希望や期待について子どもにあまり教えていないという結果が出ていたことです。逆に、中学校の先生は教えているという結果が出ていますから、小学校の先生にはもっと教えてほしいと思います。小学校ではそのようなことを教える時間がないのかとも思いました。学習指導要領とは関係なく、子どもたちに希望の話をしていただきたいのです。それによって、希望を持つ小学生が増えたりモチベーションが上がるかどうかは別にして、何か働きかけないとそういう問題は解決しません。
 今年は、抽出による学力調査を国が既に実施していますが、福井県は皆さんの協力によって、全生徒全学校で残り7割近くの子どもたちも学力調査に参加しており、採点・集計も県が行うということであります。素晴らしいことであります。このような取組みを行っている県は全国47都道府県でも1割の4県しかないということですから、その結果を是非見てください。そうしないと17市町で全く調査のないところもあり、子どもたちの学習にも影響が生じるでしょう。

 それから先日、勝山市の「かつやま子どもの村小学校」という民間の学校に行きました。どちらかというと不登校だった子どもたちが全国から集まっており、いろいろな学習をしていました。この学校の条件はあまり良いと思いませんが、様々な工夫をして熱心に取り組んでいました。不登校の問題は福井県の一方の課題です。皆さんの学校で、子どもの自己決定や体験学習が出来ないことはないと思いますので、是非とも不登校問題、不適応の課題について対応していただきたい。

 私が先生とお話をしていて返事に困ることがあります。それは、このような話をいただいた時です。「自分のクラスには子どもが20人あるいは30人いて、性格や能力、発達段階がさまざまであり、教えるのが大変」、「一人ひとりの子どもたちに向き合わなくてはならないので忙しい」、「十分な時間がとれない」などというようなことです。これらは正しいことで、直さなければならないことだと思います。220512講演写真2
 しかし、大変だ、大変だと言っていてもどうしようもないので、解決するためにはもう少し問題を区分して、教え方や授業の持ち方を学校全体でどうしていくかということを考えて実践していくことが、これからの福井県の課題ではないでしょうか。そうしないと永遠に、どんなふうに良くなったとか、やったことの評価ができません。教え方の技術あるいはシステムを校長として考えていただきたいといつも思っています。

 最後に、ランダムに様々なことを申し上げますので、もしやる気があればやってみてください。全く独断と偏見で申し上げます。 
 ・ラジオやテレビの番組をもっと使って教育をしてはどうですか。
 ・外部の人たちをもっと活用されてはどうですか。
 ・先生の授業をもっとよく見て、助言をしてはどうですか。
 ・良い教材をたくさん学校で作ってはどうですか。
 ・教師のサークル活動を増やしてはどうですか。
 ・給食をもっとおいしくしてはどうですか。
 ・子どもたちに暗唱する訓練をしてはどうですか。
 ・音楽の教育を改めてはどうですか。(何か一つの楽器を弾けるように)
 ・「小学校6年間の目標、成果とは何か」を考えてほしい。(高等学校は大学受験、中学校だったら高校受験がありますから何らかの目標があります。)
などです。皆さんもいろいろ思うことがあれば実行してほしいと思います。

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