日本青年会議所福井ブロック協議会メインフォーラムでの講演

最終更新日 2010年8月28日ページID 012847

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 このページは、平成22年8月28日(土)にハートピア春江で開催された日本青年会議所福井ブロック協議会メインフォーラムで、「『ふるさと』からの発想! 輝く『ふくい』の明日のために」と題して行われた知事の講演をまとめたものです。

220828講演写真1 私は家庭菜園を25年以上続けています。ちょうど今頃は、スイカも終わり、ウリが取れる頃ですが、今年は猛暑で作物の調子はあまりよくありません。
 それでも農作物は正直でありまして、手間をかければきちんと応えてくれ、不満をいわないのが何よりであります。また、有機・無農薬なので、身体にも良いのです。
 皆さんも趣味はいろいろあると思いますが、30歳ぐらいから自然に親しむということで、このような家庭菜園を始められたら面白いのではないでしょうか。ストレス解消にもなると思います。

 さて、今日は「『ふるさと』からの発想!輝く『ふくい』の明日のために」がテーマです。私は1年前に、岩波新書から「『ふるさと』の発想」という本を出版しました。この本は、福井県民の暮らしの特徴や地域産業の現状等を具体的に紹介しながら、ふるさとの再生、人のつながり、大都市と地方の問題などについて、私の考えをまとめたものです。
 最近の大学入試問題もこの本から出題されています。第4章に「『ふるさと』という発想」というところがあり、ここが試験問題に出ます。問題のタイプは大体決まっており、例えば論文問題ですと「新しいふるさととはどういうものか。文章の内容に即して600字程度で説明しなさい」、「この場合、新しいふるさとは、成立が可能と思うか、それとも成立不可能と思うか」。私は可能だと考えており、今日は可能だということで話をしていきます。

 私の本がどうということではありませんが、皆さんにはもう少し本を読んでいただきたい。皆さんと話をしていると、ご自身の考えはおっしゃります。それは重要ですし、大事にしていただきたい。しかし、ある分野での伝統的な考えと、ご自身の考えがどう似てどう違うのか、その関係が意識できるような本を読んでいただくと、さらに考えは立体的になり高まると思います。そうすれば、皆さんの企業も良くなり、福井県も良くなると信じていますので、ぜひ試してください。

 最近、「47都道府県の青年たち~わが県の明日を担う青年のすがた」という本が出版されました。著者は舞田敏彦という社会学の先生で、皆さんと同じ世代の方です。県民性に関する本はよく出ていますが、これとは一味違い、青年がどう考えているかという本です。
 この本では様々なデータを比較分析し、各県ごとの特徴と課題を示しています。福井県の青年世代の状況はどうかというと、学習やスポーツ、ボランティアなどの行動指標はいずれも全国上位で生活の安定性も高い。一方で、男女差が非常に大きいといった課題もあります。
 また、ここで大事なことは、日本の地域はそれぞれ多様性をもって、特徴があるということ、高度成長期のように一律ではなく、地域ごとに課題があり、行動様式も異なるということです。日本の行く道を、くしくもこの本があらわしているのではないかと私は思いました。

 福井県は福井県としての課題を見極めてそれに対処し、そして日本全体を盛り上げていくという気概が重要です。残念ながら、国にはお金もなく政策的にも難しいタイミングで、しばらくは期待できないかもしれません。
 そういう意味で、ますますいろんな制約の中で地域が頑張っていく必要があります。私自身にも課された課題であり、皆さんとともに頑張っていきたいと思います。

 今日は、特に福井県の人づくりをどうするかについて話をします。子どもの育て方、社員の育成にもつながります。

 福井県は人口が少ないが、一人ひとりの質は非常に高い県です。また、地域や家族のまとまりはきわめて良い。これらが福井県の強さですが、これらを意識しなければなりません。しかし、それを本県の本当の力にできるかどうかが我々の問題であります。

 何が課題かといえば、活力やエネルギーというのは、外に向くとき、内に向くときの2通りあります。福井県の場合は、最近は内側に向くときが多いのです。皆さんの会社でもあると思いますが、まわりに気をつかう、気兼ねをする、忠誠心が内に向いてしまわないかといったことです。

 「『ふるさと』の発想」では、とくに外向きに力を発揮すべきだと書きました。小浜市でのオバマ大統領の応援は外に力を発揮する典型だと思います。これは評価すべきです。自然に出来上がったものではなく、数年前の「ちりとてちん」などわりと内向きな活動が進みながら、外向きがでてきたということかもしれません。

 次に、外向きにはどのようなことを考えなければならないか。
 一つは、グローバルな競争関係に背を向けないでほしいということ。何らかの関心を向け、エネルギーの方向づけをしてほしいと思っています。
 県でも昨年、観光営業部を設けましたが、その精神は「営業」でありまして、いかに日本のみならず外国にも働きかけていくかということです。皆さんの先輩やお父さん、おじいさんは、やはりグローバル的であったと推測します。しかし、お子さんやお孫さんがグローバルに背を向けるとよいことはありません。それに立ち向かってほしいのです。

 二つ目は、長い目をもって俗にいう損得勘定を考えてほしいということ。グローバル時代には特に必要です。
 福井県の欠点の一つは、目先にとらわれがちになるということではないかと思いますし、他の県を見ると長く粘り強くやっている県がある、ということに時々反省させられます。
 例えば、北陸新幹線や中部縦貫自動車道などは、皆さんの中にも本当に必要なのかと思われる方がいるかもしれませんが、外向きのビジネスの発想や子どもの将来とか、長い目でもった利益を考えてほしいのです。

 三つ目は、福井県の平均的な力が良い、ということからの脱出を図っていくことです。
 子どもたちの学力・体力日本一、失業率は日本一低い、有効求人倍率も日本一高い。これは平均の数字です。それからどうするのかという話になるわけです。
 現在、県の長期ビジョンを策定していますが、平均的な力をベースに、さらに突破力、いかに高い段階に物事を持っていくかが課題だと思っています。

 この夏休みの期間、NHKラジオ第2放送では、毎朝「夏休み電話科学相談室」が放送されています。ちょうど皆さんの子どもたちの世代からのいろいろな科学の質問に対し、一流の専門の先生が答えているのです。
 以前、私は一週間ほどこの番組を聞いたことがありますが、質問者の中に福井県の子どもは一人もいませんでした。学校の先生に聞いたら、この番組を知らないようでした。
 教科書がなくても聞いていると理科の授業ができますよ、ぜひ聞いてよ、そして子どもたちに質問してもらったらどう、と先生に提案したところ、ようやく今年になって福井県の何人かの子どもたちが鈴虫の飼い方などについて質問しました。
 これは、福井県の子どもたちが外に向いていないのではないかという一例です。先生も同じです。

 また、最近、学力関係の国際オリンピックが多いですが、福井県はこれまでほとんど参加してきませんでした。もっとエントリーすることが必要だと思います。

 もう一つは、外向きという時の手段の獲得です。特に外国語教育が重要かと思います。
 福井県は外国語指導助手(ALT)を全国でいち早く採り入れ、子ども当たりの外国語教師の数が日本一多い県であります。その結果、大学入試センター試験ではいつも上位です。受験英語のリスニング成績も悪くありません。しかし、学校を卒業してしまうと、やさしい英語や中国語でもほとんど話せないというのが実態です。受験英語にしか使っていないのでは困ります。
 一、二の例ですが、こうした点を直さない限り、外向きの活動はなかなかできないと思います。

 あと、外向きの話を二つほど申し上げます。まずその前提として、福井県の我々の心持ちを変えていかなければならないということに気がつきました。
 もっとも、県民の意識が変わるといったことは極めて難しく、一朝一夕にはできないことですが、気持ちをもう少し変えていかなければなりません。福井県民が福井の歴史や郷土のことを学び、話せるようになる、話せないことを残念に思う、そういう気持ちになる必要があると思います。
 地域が外向きに活動をする場合に、県民の心がどう育ち、アイデンティティとして日々どのように行動し、理解し、研究すべきというのは、メディア、大学、我々の自立的な行動が要るのかと思っています。そして、地元の大学が良くなって、文化や学術の拠点として活動することが、福井県としての良さとアイデンティティの成り立ちが感じられることになります。

 もう一つは、テレビやラジオ、新聞などの健全な存在とローカル性がなくなっては、地域の意識はおしまいということであります。

 最後に、我々が挑戦しているのは、人の生きがいや幸福という目的です。
 これまでは、福井県がすぐれた暮らしやすい県であるという指標を良くしたいと努力してきました。福井県は全国一だと思いますが、ある意味、限度に達しています。
 次は、希望に挑戦しようとしています。これは、将来のことです。
 一例ですと、おばあちゃんに幸せですかと聞いた時に、子どもたちが面倒を見てくれ、病気になったら病院にも連れて行ってくれるので幸せですというのが「幸せ」です。
 一方で、お孫さんたちが学校で良く頑張っているというのは「希望」に近いと思います。次の世代に期待を持って一生を終えられるからです。
 青年会議所の皆さんも、「幸せ」と「希望」は何なのかを考えていただきたいのですが、希望というのは可能性であり行動だと思いますので、そういう方向で話をつなげていただいたい。220828講演写真2

 最後に、日本における福井県の役割、使命が何なのかということが、残された課題であり、これから究明していかなければなりません。
 会社でも同様で、お金儲けや会社の継続ということはあると思いますが、結局、会社の使命を明瞭にしておかないと社員も頑張れないと思いますし、皆さんも指示をしたり、頑張りがききにくいと思います。

 以上で、私のお話を終わります。ありがとうございました。 

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