新任校長研修講座知事講話

最終更新日 2013年5月8日ページID 023395

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 このページは、平成25年4月23日(火)に福井県教育研究所で行われた、新任校長研修講座における知事講話をまとめたものです。

 校長への就任、誠におめでとうございます。学校の教室では、様々な教育問題や課題が山積みとなっていますし、全国的にも教育に関する事件や話題が多くあります。また、政治的にも政権の再交代などの新しい動きがあります。

 こうした中、福井県の教育をどのようにしていくべきかを考えていかなければなりません。皆さんには、長年にわたる経験があり、皆さんの努力のおかげで福井県の教育が全国的にも名前が知られるようになってきました。
 平成23年度、24年度には、全国各地から1,000名以上の方が視察に来られ、福井県の教育の様子を勉強して、それぞれの地域に持ち帰って教育改善に取り組んでいる現状があります。他府県は、福井県の教育に追いつき、追い越そうとしています。

 私は10年前に知事に就任したときから、教育の問題が一番大切だと言ってきましたが、当時は、全国的に教育に重点を置いていたところはあまりありませんでしたが、現在では、教育問題が社会の注目を集める時代になりました。時代の動きは早く、全国的に教育に関心が持たれるようになってきました。校長先生には、教育を取り巻く環境をよく意識して、学校管理・運営に取り組んでいただきたいと思います。

 校長の仕事は極めて重要であり、学校を管理するとともに、学校問題全ての責任者でもあります。校長の考え一つで学校が変わり、いろいろな事柄が良くなったり悪くなったりします。是非とも強い覚悟と決意と情熱を持って教育問題に改めて校長の立場から取り組んでほしいと思います。
 皆さんが小・中・高校生のころには、記憶に残る校長先生はどれくらいいましたか。私は小学校、中学校、高校で3人の校長先生が記憶に残っていますが、特に深い印象はありません。校長というのは生徒への影響はそれ程ないですが、先生方への影響は大きいと思います。
 昔の小説の中の「坊っちゃん」などでは、校長先生はあまりいい役柄ではありません。それは、世間の目が校長先生をこのように見ていたからであります。このようなことになってはならないわけです。【写真】知事講義

1 教員の視野を広げるように指導を


 本年度の人事異動では、4名の教員を県外の併設型中高一貫校などに派遣され、また、13名の教員が県庁の様々な行政部門に配属されることになっています。他県(熊本県、長野県、茨城県、佐賀県)からは6名の派遣教員を受け入れ、吉野小、松本小、敦賀南小、進明中、丸岡中、朝日中に勤務します。これらのことは、先生方の視野を拡げ、互いの地域の特徴や教育現場を学ぶことを目的としたものです。

 教育には、職業教育、普通教育、特別支援教育その他様々な分野があります。福井の産業や地域を支えてくれる子どもたちを育てていくのが職業教育、生涯を通じて自分の力で生活していけるように支援するのが特別支援教育です。もちろん進学指導などの普通教育にも力を注いでいただきたいですが、職業系教育にも目を向けた教育をしていかないと福井県を支える子たちは育たないし、そういう子たちが育たないと福井県は良くなっていかないと思います。これから福井県を担っていただく子どもたちは、大多数が普通の子どもたちです。そういう意味で今後、職業教育がきわめて大切になってきます。職業教育を担当している先生方の意識を変えて、職業系の教育を抜本的に変えていく努力していただきたいと思います。現在、奥越、若狭、坂井で高校の統合をしており、職業系高校の改革をして新しい職業教育を実施しています。

2 自校の先生の授業を見る


 教頭の時に、皆さんは全ての先生の授業を見ていましたか。先生の授業をよく見ることは、校長の基本です。先生の授業をよく見て、先生方への指導をお願いします。

 平成19年度から、授業名人を選定しています。小学校に54名、中学校に38名、高校に41名、特別支援学校に11名、全部で144名を指定していますが、「わが校の授業達人」180名と合わせても324名で、第一線で子どもたちを教えている教員のわずか6パーセントに過ぎません。是非、教員一人ひとりが技能を磨くよう指導していただきたいと思います。授業をよく見るのと同時に、先生方がグループで勉強したり、他の学校の先生と一緒に勉強したりすることを是非とも支援すべきと思います。そして、気がついたことを、直接心をこめて助言していただくことは校長の大事な仕事です。

 先日ラジオで、グリム童話を聞きました。シンデレラ物語の一番大切なテーマについて、番組で取り上げていました。いわゆるシンデレラ物語、ハッピーエンドストーリーがこの童話の主題ではないそうです。それは援助者という者の意味と大切さがテーマです。シンデレラ一人だけでは幸せにはなれません。物語の中では人ではなく動物の小鳥が彼女の援助者だったのです。小鳥は亡くなった母の代わりをするのです。人生には援助者が大切である、ということを童話は暗に語っているというのです。
 校長は、先生方を援助・支援してほしいのです。そして、先生は子どもを援助・支援します。先生を励まし援助・支援しながら、子どもを育てていくことは大切な仕事です。そのことを頭に入れて教育をしてほしいと思います。
 子どもは自分一人では成長できません。個性だとか、自立だとか、自分で考えるとか、こうした類のことをいくら言っても、他人の援助や助言なしでは成長できないものです。

3 学習指導要領にとらわれない


 学習指導要領は、教育課程全般にわたる基準を示すもので、その内容には準じなければならない部分があります。ただし、その内容をさらに深めたり、新たに加えたりして指導することは、自由であると記載されています。今の小中高校において、学習指導要領を超えて弾力的にやる方法もあるはずです。それを形どおりに済ませて子どものために役立つようにしないということは、先生が自らを甘やかし、また子どもたちをも甘やかし、成長させない元になるのではないでしょうか。

 例えば漢字学でいうと、学習指導要領では小学校で1,006字しか教えないことになっていると言われてきました。でも本当はもっとたくさん教えてもいい、と文部科学省は考えています。文部科学省や他人が決めたことにとらわれて、子どもへの援助を躊躇すべきではないのです。
 例えば、「きへん」の漢字を教えるときに「梅」を教え「松」を「桜」を教えたのに、「杉」は何年生でどのような漢字を教えるかなどの理由で教えないというのはおかしいと思います。ここで一緒に教えてしまったほうがより理解できると思うのです。教育は系統的に行うことが大事なのです。

 これに関連して、全ての教育場面であまり易しく教えることは、返って解りにくいことが多いのであって、よろしくないケースがあると思います。易しく、分かりやすく、興味のあることから教えるということだけでは、子どもの成長を妨げますし、子どもたちはそういうことを期待してもおりません。むしろもっと難しいことを教えてほしいとさえ思っています。

4 英語に関心を


 選挙のときのマニフェストに、福井の子どもたちが中卒、高卒の段階で英語が話せるように、と書きましたが、依然として成果が出ていません。小学校から英語教育が始まっていますが、読み書きということよりも、聞いたり話したりする教育がより重要です。ようやく政府でもALTを増やすなど議論がでています。福井県では先駆けて10年間やっていますが、十分にはできていません。
 現在、教育委員会では様々な英語教育の取組みを進めています。英語教育は、職業教育で大事ですし、受験でも当然大事です。小中高校で共通します。英語は粘り強くコツコツ時間をかけて、指導をすれば必ず身についてくるような性質の学科です。家庭科や体育科とも似たところがあり、努力すれば誰でもうまく話せるようになりますので、英語教育を進めてほしいと思います。【写真】会場全景

 ところで、皆さんはNHKの英語番組を聞いたことがありますか。あまりないようですね。わずか15分の番組なので、さっそく今日から毎日聞いてみてください。基礎英語などは朝昼晩、1日に3回放送されています。番組の視聴をすると先生方に指導される話の種が出てくるはずです。私も3年間続けて聞いていますが、いちばん難しくて聞きにくいのは意外と基礎英語Ⅰです。例えばI got it.(わかった)が、あがりたいに聞こえたりします。
 先生方はインプットをしますが、アウトプットが足りないと思いますので、アウトプットをしていただきたいと思います。

5 理科教育に興味を持つ工夫を


 福井県は理科の成績があまりよくないです。授業と実験をうまく組み合わせていないからか、先生が得意ではないという訳にはいきません。夏休み前にまとめて本格的に理科実験をするなど、できるだけ子どもが興味を持てるように、効率も考えながら教育してほしいと思います。

 夏休みには、ラジオで子ども科学相談室という番組をやっていて、4歳から10歳頃までの子どもたちが全国から科学に関する質問をする番組です。そこで福井県の子どもからの質問がほとんどないのが残念です。子どもたちの理科離れをなくすためにも先進的な事例を活用して、まずは先生方の理科教育への苦手意識をなくしてもらいたいと思います。

6 最後に


 白川文字学や英語教育など、「言葉の教育」を全体的に進めてほしいと思います。英語教育は日本語に関わるもので、きちんとした言葉遣い、人前で話せるようにすること、文章が書けるようにすること、そういう基本的なことがあらゆる教育の基礎になります。福井県を教育の基本である言葉教育や日本語教育で全国のトップの県を目指してほしいのです。

 教育委員会では今年から、国語、日本語、漢字などの言語力教育に貢献している先生方を全国から表彰する白川文字文学国語賞を実施することを考えています。
 本県は福井型18年教育を掲げ、幼稚園・保育園と小学校との接続、幼稚園・保育園の小学校の教科書を学ぶ会、カリキュラムの継続性、中高一貫、中高の授業の接続等を行っています。県の施策との統一性の取れた取組みをそれぞれの学校で考えてもらいたいと思います。

 様々な学校改革、教育改革をする場合に、システムが変わったり研修が変わるだけでは意味がありません。授業が変わらないと何も変わりません。校長は授業をよく見て、生徒とともに先生も校長も同じ時間を歩んでほしいと思います。来年度から、あるいは2学期からと言わず、明日から時間を大切にしながら学校運営に着手していただきたいと思います。



 

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