内外情勢調査会知事講演~これからの地方 人と国土~

最終更新日 2013年11月19日ページID 025042

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 このページは、平成25年7月26日(金)にユアーズホテルフクイで行なわれた、内外情勢調査会の「これからの地方 人と国土」と題して行われた知事の講演をまとめたものです。

 今日は、「これからの地方 人と国土」というテーマでお話しします。
 毎年この場で話をさせてもらっていますが、数日前には参議院選挙も終わり、今年はさまざま状況が違いますので、そういう変化も受けながら一緒に考えてまいりたいと思います。昨年は、大飯原子力発電所の再稼働や北陸新幹線の敦賀までの着工認可決定などの話が主であったと思いますが、それから1年を経過しまして、幸い政治的にも状況は安定感を取り戻しています。
 そこで、まず、今日の話のポイントです。大きな視点で冷静な目でもって、改めて最近の状況を押さえながら、次の10年に向けて、われわれ地方も方向性を見極めながら行政を進めなければならないという問題意識を抱いています。
 特に、この先の日本に懸念を感じておりますのは、長年培ってきた日本の良さといいますか日本らしさ、あるいは柔軟性をこの国は失いつつあるのではないかということです。
 東日本大震災の大きな被害を目の当たりにし、また将来において、南海トラフによる東海・東南海・南海地震のリスクという可能性も考えられるわけでありまして、太平洋側のみに基本的な国土軸を持つ日本の国土の危うさは、当然に問題として認識されなければなりません。しかし、こうした国土の問題だけを考えても、災害から2年半がたち、そうした教訓が本当に意識され、真剣に対応がなされているのか疑問に思うところがあります。
 新聞、テレビなどで南海トラフ地震では20万人以上が死傷見込みということが報じられていますが、これがどの程度の現実性というか実感を持って調査結果を出し、あるいは報道されているのか、またそれを関係する地域の国民がどう受けとめるか、あまり現実感がないような感じがします。そんなことではまた過去の油断の繰り返しになるのではないか、教訓が忘れられているのではないかと思います。
 そうなりますと、交通網や企業あるいは人口が、太平洋側に偏在しているという集中状況ですね、こういったいびつな姿や構造を早急に正さなければなりません。
 人と国土という話をしましたが、先般、自民党の国土強靭化の委員会に呼ばれまして、1時間ほど地方の立場からお話をしました。私はその際、国土のみならず人、「人と国土の強靭化」というのがまさに大事である。国土の問題だけを議論してはいけない。人と国土、これが我が日本の基本である、ということを申し上げました。今ほど国土の危うさを指摘しましたが、人についてもかなり危ういと思います。
 というのは、今日のグローバリズムの拡大の中で、市場主義あるいは効率化、すなわち市場が万能であるとか、企業は限りなく効率的に経営されねばならない、と言うのはその通りだと考えますが、お金で人を動かせるとか、安ければよいとか、すぐにお金や契約で問題を解決しようとする風潮になることは、また問題が違ってくると思います。
 特に日本人の場合ですと、勤勉あるいは誠実を尽くす、公に奉仕する、組織を大事にする、というような伝統的な美徳が残っていますが、グローバルの時代に世界を相手にしたとき、こういう感情は薄れてきているようです。人そのものの力強さ、あるいは美しさ、元来日本人が持ってきた原理的なものがかなりあやしくなってきています。国土の在り方と同じように、この点もしっかり強める必要があるのではないでしょうか。
 そして、こうした人間や人間関係の良さというのは、伝統的により多く地方に存在し維持されてきたのだと思います。しかしながら、最近の状況を見ますと、戦後の高度成長期にたくさんの若者が地方から上京したわけですが、彼らの二世・三世がそろそろ中心的な世代になってきました。今、東京・埼玉・千葉・神奈川といった東京圏で3,500万人が生活していますが、生まれたときから東京圏でという人がもうそのうちの7割を占めるようになった。日本の国土の人口配置のみならず、人々の生きる構造もそうなってくると、残念ながら都市的な重力が働いてしまうように思います。
 これまで東京や他の大都市で長年暮らしながらも、地方のことを思っていたり、あるいは齢をとったら地方に帰るつもりだったり、田舎の両親をずっと気にしていたり、といったような人々が世の中に多かったように思います。しかし、こういう暮らし方がだんだん減ってきて、東京や都会一辺倒の価値観が広がっているということも、グローバル化に加えて、人々の行動なり考え方が偏ってきているという背景となっているのではないでしょうか。
 東京の合計特殊出生率は1.09ほぼ1です。地方は1.6とか1.7であり、地方が多くの人材を生み出し大都市に送り出してきたからこそ、問題が顕在化をしなかったわけです。しかし地方に思いを馳せる人々が減ってきている傾向をこのまま放置しますと、日本の「ふるさと」が失われ国土も怪しくなり、人々の生活面でも安定さがなくなって来るだろうと思います。こうした状況では、国家の健全な永続もあるいは国民の豊かな生活も難しくなるのではないかという心配をいたします。
 そこで、市場主義や効率化の一方で、日本の強さとか日本らしさ、日本の心、ふるさと主義ですね。私はずっと「ふるさと」ローカル主義を言っておりますが、そういうことをこれまで以上に強調していくさまざまな地方での政治、あるいは提言や政策が必要ではないかと思います。
 そこで今日は、「これからの地方 人と国土」というテーマのもと、都市と地方の問題を一つ目のテーマ、二つ目にグローバル化する経済の変化、それから、三つ目は食料需給、原子力発電所の問題も含めたエネルギー安全保障の問題、この三つの観点で、県内外の状況をお話しし、その上に立って、国と地方の役割がどうあるべきか、国は何を為すべきかをお話しし、やや個別的に福井県は今何をやっていくべきかと見通しのようなことを申し上げたいと思います。
 【写真】知事講演


1 日本を取り巻く環境変化

(1)都市と地方の「人口問題」

(人口減少の経緯)
 まず、都市と地方というお話をします。
 人口問題で言いますと、日本の総人口は2008年から減少局面に入っています。福井県の人口はもう少し前の2002年に減少をし始めました。日本全体よりも6年早く人口の歴史的ピークを迎えたわけですね。2012年が80万人ですが2040年には63万人になると人口推計されていますから、大体17万人が減少します。これは、現在の嶺南全市町の人口と同規模であり、坂井市とあわら市と勝山市と大野市をあわせた人口に近い位、相当大きな人口数の減少になります。
 人口が63万人だったのはいつ頃かと、過去にさかのぼって見ますと、1933(昭和8)年頃です。日中戦争や太平洋戦争の直前の人口です。その頃、日本の総人口は6,700万人であり、今の半分ぐらい、子供が人口の約3分の1を占めていました。日本人の平均寿命は全体として40歳代、女性が40歳代後半、男性は40歳代半ばでした。子供はたくさん生まれましたが、結核などで一生を全うできなかったということです。今朝の新聞には、日本人の女性が平均寿命世界一で86歳と出ていますように、今日では平均寿命は大きく伸びています。しかし、そういう大きな変化の中での日本の長期的な人口減少の流れです。
 余談になりますが、だるま屋(現 西武福井店)のことが今日の福井新聞に出ていました。いま申し上げた昭和の初めは、だるま屋が非常に調子のよかった時代ですね。当時は2階建てで、年間130万人のお客さんがあったということです。現在の西武は年間330万人。ただ、今は8階建てです。
 出生率がだんだん下がる中で、大都市は地方からの人口流入で社会増となっているため、人口は急激には減りませんが、地方は自然減と社会減の二重に人口減少の問題に直面します。ですから我々としては、この二重苦という厳しさをいかに解決していくのかということが課題です。
 

(道州制の問題)
 この人口問題に関連して、道州制という議論がありますので、参考に申し上げます。道州制については全国の知事も消極的な意見が多いという状況です。先日の松山市で開かれた全国知事会議での方向もそういう状況でした。
 道州制を都市と地方の問題で考えますと、これは大都市からの発想だと思います。現に大都市を抱える知事が主に言っています。ただ、大都市を中心に地方自治体の組織を再編成するとは言わずに、道州制という一見目新しそうな議論を提起しているので分かりにくいのです。大阪府と大阪市の二重行政あるいは東京都と23区の関係、本当はこういう個別の問題を解決しなければなりません。仕事の重複やコストの無駄を解決しないままでも、規模を大きくすれば問題が解決できたように見えるでしょう。つまり周辺地域にお金を使わないで大都市の中心部に使えば、全体として運営はうまくいくだろうという思惑です。多くの県は、こうしたものを受け入れるわけにはいきませんし、将来の国土構造としても問題があります。
 かつ最近の状況として、アジアの中で様々な課題があります。中国、北朝鮮、韓国などとの政治的緊張がありますが、そうした切迫した状況の中で、国内の政治体制の不要な議論をやっているような暇は全くないと思います。そんなのんきなことを論じている国は、世界のどこにもないと思います。こういう議論は入り口で反対すべきだと思っております。全国知事会でもそういうことを申し上げました。本当の意味で国土や人の強靭化、力強さをいかに発揮するかということを考える方が重要だと考えております。
 お金を使わないで地方行政を行うということに限れば、道州制論は多少役立つかという感じはしますが、それでは本末転倒であり、本当の地方自治はないと思います。大都市にお金をかけて周辺の他の地域は知らないというような行政なら可能かも知れませんが、国民にとってそういう訳に行かないのは明らかです。
 

(地方分散を促す活動)
 私は、こういう大都市中心の政治や行政を何とかして転換をしたいと思っています。これまで様々な活動をしていますが、何としても地方から新しい動きをつくり出すことが重要なのです。
 その解決方法の1つとして提案したのが「ふるさと知事ネットワーク」であり、全国13県の地方というか政令指定都市を持たない県の知事の集まりといった方が分かりやすいかもしれません。
 政令指定都市を中に持っているような県は道州制を主張することが多いのですが、もっと地方からの議論をしかけていかなければなりません。今月末に13県のメンバーである山形県で集まり、地方としてどんな独自の努力をするか、あるいは国土計画として人や企業の地方分散をどう考えるか、国に税制などどう提言をするかについて、2日間にわたって議論をしたいと思っています。
 この「ふるさと知事ネットワーク」は数年間の実績がありますが、最近、こうしたタイプのネットワークの動きも全国の知事の中に出ています。例えば子育て同盟というのがあります。10県の知事で構成されています。それから、若手首長ネットワークというのもあります。いずれも主として田舎の県同士の集まりですね。
 それから「ふるさと納税」も、そういう視点で提唱し、実行してきました。平成20年には73億円の寄付がありました。21年は66億円、22年は67億円でしたが、23年は大震災による寄付の増大により、一挙に桁が1つ変わって、650億円の寄付が全国で利用されているという報告が出ています。
 菅官房長官にも、「ふるさと納税」の仕組みをもっと簡単にしてほしいと要望しました。今は「ふるさと」に寄付をした場合には、個人住民税から軽減される額は、住民税のおおむね1割が上限となっていて、住民税を10万円納めている方が自己負担なしで寄付をしようとすると1万円だけしかできません。この上限を1割ではなくて3割ぐらいにして、3万円ぐらいはふるさとに寄付できるようにできれば上限を気にしなくて済む、また確定申告ではなく年末調整だともっと手軽にできるというような提案をしました。総務省がこの税制の所管官庁であり、全国の都道府県や市町村にどのような制度改善を希望しますかというアンケートが始まっております。おそらく年末には調査結果に基づいて「ふるさと納税」の改善が行われるかと期待しています。さらに、この「ふるさと」への寄付金の金額が増えていくのではないかと思います。
 この寄付制度は世の中の気持ちを変えていく制度でありますが、限界はあります。ですが普通だったらこういう行政用途には1,000万円のお金は使いにくいというようなことがあります。しかし、「ふるさと納税」でいただいたから、その趣旨を活かして使うのだったら認めていいという良さがあります。自治体としては「ふるさと納税」の寄付を歳出に組み合わせて新しい仕事ができるというメリットがあると思います。
 かつ、これはいいことかどうかは別ですが、ふるさと納税をしていただいた方に地元の特産品を、今だったらメロンやスイカを送るとか、あまり過度になってはいけませんが、故郷のことをわかってもらおうとするのも面白いと思っています。
 

(一票の格差論)
 この都市と地方の問題に関連して、「一票の格差」の問題についてお話をします。
 今回の参議院選挙の翌日でしたか、全国一斉に大都市と地方の一票の格差が大きいという訴訟が起こされています。前回の訴訟は衆議院が対象でしたが、今回は参議院について提訴されました。こういう現象をどう考えるかという応用問題です。憲法にいう法の下の平等論では、一票に格差があってはいけない。というのはそれで正しいのですが、ここでより深く問題を考えてみようと思います。
 冒頭に申し上げましたように、一票の格差が発生する原因は、都市と地方で人口が偏在してゆくからです。都市に依然として人口が集まり続けているからこそ、昔の定数が合わなくなるという帰結です。福井県は1議席減らされてしまいました。しかし都市と地方の人口の偏在の根本を直せば、こんな議論は必要なくなります。それがより正しい処理方法だと思います。
 裁判が起こされ一票の格差を直す→すると大都市の定数が増え大都市の議員が増える→増えた大都市の議員が大都市の立場で主張する→大都市側への投資や施策が増える→大都市の整備が進み、地方から大都市にまた人が動く→するとまた地方の人口が減る→また定数是正をしなければならない→裁判を起こす・・・。こういう現象的な追いかけを、これまで何回かぐるぐるやっているわけです。これはよくいわれる悪循環の典型ですので、大元を直さなければなりません。私はこの問題の基本的な解決は、人口の地方分散であろうと思っています。今日の講演の全体の基調もそうでありますが、これを大きな課題としてとらえなければなりません。
 村上春樹さんが書かれた本「遠い太鼓」に、1990年ごろの話だったと思いますが、ギリシャでは下院議員の総選挙になると生まれ故郷へ戻って投票しなければならない、と書いてありました。アテネで仕事をしていても、選挙になるとテッサロニキの田舎へ帰る。今もそうなのかどうかはまだ調べておりませんが、そういうギリシャの政治風習のことが書いてありました。
 すると、日本でもその種のことができるのかと考えたくなります。ふるさと投票、里帰り投票、あるいは帰郷投票、こういう面白い制度があり得るかもしれませんね。例えば本籍地で投票を認めますと、この講演の出がけに計算してみましたら、わが国の一票の格差をなくすため15増、15減になります。大都市が15減し、地方が15増します。福井県は1人増えます。技術的に難しいかどうかですね。わざわざ帰るのは大変だから大都市で不在者投票をするということもあるかもしれません。
 ただ、自分はいま東京に住んでいるから本籍地の方も東京に変えてしまうとあまり効果はないことになります。あるいは「ふるさと納税」のように自分がふるさとだと思っているところに投票するということになりますと、また可能かもしれないと思います。やや脱線をしてしまいました。
 いずれにしましてもいろんなことを考えながら、人を地方に移動させることを真剣に考える。どんな制度があり得るかというようなことが、これからチャレンジングな課題になると思います。



(2)グローバル化の変化とTPPなど

 2つ目が、グローバル化の問題についてであります。
 さまざま見方はありますが、明治時代にも「文明」のグローバル化であったように思いますし、大正時代は国際連盟加入など「政治」のグローバル化、そして現在は東西冷戦がなくなり「経済」の本格的なグローバル化が行われています。一方で、「人」のグローバル化というのも本格化しています。日本の結婚する人たちのうちどれぐらいが国際結婚かを調べますと、十五、六組に一組が国際結婚です。ですから小学校1クラスに2人は国際結婚から生まれたお子さんだ、というような想像ができます。人の国際化もかなり進んできているのだと思います。
 

(企業の海外進出)
 先ほども申し上げましたが、皆さんの企業が外国に多くの関連会社や工場を持ち、外国の人たちを雇っているとします。すると日本的な伝統とは違いますから、給料や契約という方法でインセンティブを与え、解決を図らなければ、社員が会社の方針に従って動かないという事態になります。日本人のもつロイヤルティとか誠実さの重要性についてグローバルの時代にどの程度重視し評価するかということです。
 

(中間財による供給網の国際化)
 モノづくりの点で見ると以前は日本国内で、自動車やテレビなどいろんなものを一から作っていましたが、今日では世界中から部品を調達しています。グローバル・ネットワーク化が行われています。そういう背景のところからTPPの問題も出てきているのではないかと思います。
 そして、これが地域の農業の将来に関係します。まさにTPPというのは、あらゆる国のいろんなものが関係しているということです。オーストラリアからは小麦を輸入するだけというのではなく、国々が互いに複雑な交易のやりとりをしているから、TPPという多国間の包括的な議論が出てきているのだと思います。今回のTPPについては、あらゆる問題を一挙に解決するという点に着目すればTPPの議論があるのでしょうが、コメをはじめとする農産物など、特定の地域と1対1の関係でしかないものは、多国間の枠組みで議論することだけがベストではないと思います。だからこそ、特定の5品目は除外するということにより、アメリカなど輸出国側に有利な方向への議論に結びつけることはしない、ということではないかと考えます。
 

 このように、グローバル化の問題は、見方としては、人間関係のグローバル化つまり日本的な信義とか誠実さとかが重視されにくくなる中、多元的なグローバル化つまり物流の国際的なネットワークがどんどん拡大し複雑化・多層化していく中で、日本企業がいかに生き抜いていくかということを、個々の企業だけでなく日本として考えるべきことになります。
 


(3)エネルギーの安全保障


 次に、3つ目の話として、エネルギー等の安全保障の問題について申し上げます。
 中国などの経済成長により、世界の石油消費量は過去20年間で1.3倍に増えています。新興国が全体の5割の原油を消費しています。
 一方で、シェールガス革命により世界のあちこちの国で資源が確保されるようになり、エネルギーの資源配分地図が大きく様変わりしてきました。資源の持てる国の偏りが変わってきたということです。そして、これまでは互いに関心の薄かった小さい島の帰属であっても、利害がより対立するホットな場所になり得ます。だからこそ、日本と周辺諸国との問題も出てきているのです。かつ日本は島国ですし資源がたくさんはありませんから、日本として資源政策を誤るとこれは大変なことになり、それだけで日本の立場は低下してしまうだろうと思います。
 私は、政府の「総合資源エネルギー調査会」の委員を仰せつかっております。すでに何回か出席し数日前も経産省で開かれました。これは原子力発電所の問題に関係するのですが、原子力を進めるべきと思う方は「資源の乏しい我が国において」と言いますし、そうでない人は「資源の乏しい我が国」という表現は正しくないとおっしゃる。日本には美しい自然もあり、太陽も輝き、季節風も吹き、あらゆる資源があるからそういう表現は使わないでくださいと言う方もおられます。日本は資源が乏しいか乏しくないか、しかし、どう考えても資源という名前を使う以上、乏しいじゃないかと考えざるを得ません。
 

(原子力発電の意義の明確化)
 そこで、原子力の問題についてお話をします。
 これまで原子力について、決して福井県だけに特有の課題と思っていたわけではありません。しかし実際は福井県はこういう条件と境遇にあるのだから、原子力発電の問題を県民の安全のため日本のエネルギーのために、しっかりやらなければならないという地元の意識で原子力発電所の問題に対応してきました。
 しかし今回の福島事故以来、これが日本全体のエネルギー問題としてはっきり広がってきた。さらに世界のエネルギー安全保障の問題に広がって行ったという印象があります。また、立地地域の周辺の府県との関係もそんなふうになっていると思います。したがって問題が難しくなっていると同時に、これを宙ぶらりんにしておくと、我々の立地地域としては大変なことになるだろうと思います。
 ですので、この福島事故と原子力発電の問題について、これを人類が解決不能な問題として受けとめるのか、あるいは日本人の知恵と技術・科学の力で解決できる課題と思うのか、この点が判断の分かれ目になると思うのであります。私としては解決が可能と考えて、最大の努力をなすべき仕事だろうと思います。
 ただ残念ながら今回の選挙を通じても、十分に深い議論がなされているとは思えません。賛成ですか反対ですか、原子力発電所は要らないんですか必要なんですか、という皮相な賛否論になっている。だから国民の間で物事の理解が深く進まない。消費だけをしている大都市ではその程度の感覚で済むのかもしれませんが、長年にわたって原子力発電所の安全の問題に真剣に対峙してきた原子力発電所の立地地域としては、こうしたあやふやで無責任な状況は避けなければなりません。消費地にも性質上いずれそのツケと責任が回ってくる問題なのです。
 いまほどグローバル化の話もしましたが、諸外国に対しても日本が曖昧な態度のまま、いい加減なことをやっていては、日本というのは一体どういう国だというようなことになります。原子力発電技術の輸出という問題もあります。そういう中で、日本として国内で物事をはっきりさせないでいて、エネルギー問題に対応するというわけにはいかないのです。決して安易に考えてはいけない問題であります。この際ぜひとも、日本のエネルギーのバランスやベストミックスはどうあるべきか、あるいは基幹電源は何か、国際的にどう貢献するのか、という重要事項をはっきりさせることがポイントかと思います。
 

(使用済み燃料の中間貯蔵・放射性廃棄物の最終処分)
 以上に関連した問題をさらに幾つか申し上げます。
 まず、これまで40年間にわたって発電してきた使用済み燃料があるわけです。現在は各原子力プラントの使用済み燃料ピットで貯蔵されています。一部、青森の六ヶ所での再処理もあります。廃棄物問題に国として真剣に取り組み、国民の信頼を得る必要があります。これは原子力発電をこれからどうするかにもかかわると同時に、既に運転開始から40年間のものがあるわけですから、どのように解決していくかということになります。
 この問題の考え方ですが、使用済み燃料の問題についてこれだけを単独に取り上げて、これが原子力発電のデメリットだと考えてはいけません。原子力発電全体としての国民のメリット・デメリットを総体として考えながら、どう解決していくかという問題提起をしなければならない性質のものなのです。
 さらに、いま全世界には420基余りの原子力発電所がありまして、同じような問題を抱えております。そうしますと世界的な共通の課題として、この問題に取り組まなければなりません。「もんじゅ」などのプラントを使って放射性廃棄物の減量化を図ったり、放射能の低減をする期間を早くすると、低毒化といっておりますが、こういう科学技術をどこまで展開できるかなのです。
 ただ、これは着手してもかなり年月がかかります。当面は様々な対応を一方で考える必要があります。これまで多くの電力を消費してきた大都市において、中間貯蔵などについて然るべき協力をすべきと申し上げています。既に関西電力がプロジェクトチームを設置し、県外立地に向けた体制を整えたという状況です。また、国でも組織をつくり始めたという現状です。
 これに関連しまして廃炉の問題もあります。例えば40年たったから廃炉にしろという議論がありますが、これもこの発言の意味をしっかり考えなければなりません。原子力発電所については、廃炉というのはどういう事態かということです。原発の廃炉というのは、原子力発電所が稼働を止めるということではありません。プラントの立地サイトは更地にして地元に返していただくことを意味します。更地にすると同時に中間貯蔵燃料の処理をどうするか、全体計画はいつまでに終了するのか、全ての工程がセットになって、初めて廃炉の計画ができたということになります。単に廃炉になります、後は地元で考えてくださいというのは廃炉ではないのです。
 

(原子力規制委員会のあり方)
 一方で原子力規制委員会のあり方の批判が出ています。現在は活断層の問題がよく話題になりますが、活断層というのは地震の話です。原子力プラントの安全そのものの議論が後回しになっています。自然現象の地震については、地震の問題自体として議論されなければなりません。海溝型の地震の研究もありますし活断層の研究だって日本として不十分です。これは全部を科学的に総合的に行うべきものでして、規制委員会で数人の方だけが集まって地震だけの議論をするのでは、活断層委員会になってしまいます。
 アメリカの実践例をとりますと、規制委員会に相当するのはNRC(Nuclear Regulatory Commission)という組織です。つまりアメリカ原子力規制委員会であります。地震調査や検討はこのNRCがやるわけではなく、USGS(United States Geological Survey)がやります。これはアメリカ地質調査所であり、原子力発電所を設置する場合の地質や地盤にかかわる事項は、このUSGSが行います。この結果に基づいてNRCが、個別プラントの耐震性を見るというように手分けをしてやっているという制度比較の理解です。
 現状のように、にわかに活断層がどうかなどと個別に議論してもどうしても煮詰まりませんし、間違いの元かと思っています。議論をもっとしっかり進めるべきだ、体制を直して行うべきだ、ということを政府にも申し上げています。
 ともかく曖昧なまま日本中の原子力発電所が放置されますと、立地地域の経済や雇用にも影響しますし、安全技術や人材の先細りにもなります。そのこと自体がまた発電所の安全に極めて影響が大きくなります。日本の政治がリーダーシップをとるということを実行していただきたいと思います。
 

(LNG関係インフラの整備)
 エネルギー問題については、一方でエネルギーの多元化、多角化ということも重要です。現在、国あるいは関係する事業者の皆さんと、LNG(液化天然ガス)のインフラ整備について研究会を設けて相談をしています。
 現在、LNGのインフラ設備は8割以上が太平洋側に集中していて、日本海側には2割しかありません。日本海側にも整備しなければ、国土の災害リスクも高く、ロシアなどからの将来の輸入にも差し支えがあると思います。福井県は日本海側にあって、関西・中京に近い有利な条件にあり、敦賀・福井の2つの港を持ち、なんといってもお金のかかる送電網がすでに整備されています。このLNGの広域ネットワークは、先ほど申し上げた国土の複軸化という点でも大きな意味があります。
 現在、LNGのパイプラインは北陸は富山県近くまで来ており、関西の方は滋賀県・彦根近くまで来ています。したがって福井・石川・富山のパイプライン網は、整備が空白のミッシングリンクになっています。単に空白になっているから埋めなければいけないという意味ではなくて、LNGのラインを確保すれば、都市ガスや企業が使うガスなどの利用に便利でしょうし、また日本海側からのLNGの供給にも役立つことになります。
 

 以上、日本を取り巻く人口問題、グローバル化の問題、エネルギーの問題と福井の課題についてお話ししました。



2 これからの国の役割

 次に、地方と国がそれぞれなすべきこと、また今後の関係というお話を申し上げます。この黄色いカバーの新刊本(「希望学 あしたの向こうに」―希望の福井、福井の希望 東京大学出版会)を見てください。
 福井県をこれからもさらに良くしたい、豊かな県であり幸福度は日本一、福井県の子供たちに希望を持って学んでほしい、企業の皆さんも将来に明るい展望を持ち、積極的なベンチャー精神を持って事業を展開してほしい、こう願うのは知事として当然です。「希望学」は東京大学の先生方と数年来進めてきましたが、今回その成果が出ました。この本は今日発売をしたものです。40名もの様々な分野の大学の先生方が中心になって、福井県というこの特定のフィールドで4年間にわたり、自治体や企業、団体、住民の皆さんのアンケートか意見を聞き、分野ごとに分析してまとめたものです。日本で初めてだと思います。特に福井県を担ってくれる子供たちに読んでほしいのです。
 

(国による“緩やかなコントロール”政策)
 それでは、国と地方の関係を申し上げます。
 一つは国はどういうことを為すべきかということです。そのポイントとして、国は「緩やかなコントロール」政策を行うべきであると思います。規制を緩和して、企業が自由に活動できるようにしたことは大事です。しかし同時に、市場原理や経済原則に任せておいては、適切に進まない政策があります。企業の地方分散やエネルギー・リスクの分散は、国は放っておいてはいけません。国があまり規制しすぎるのはいけませんが、緩やかなコントロールを国に期待したいと思います。
 

(地方の競争条件の整備 -北陸新幹線や高規格道路の早期完成-)
 もう1つは、地域の競争条件を平等に整備すべきということです。新幹線や高速道路が競争条件を左右します。舞鶴若狭自動車道は、来年夏ごろの完成を目指しております。完成によって北陸自動車道と直結さらに中部縦貫自動車道を通って来年度は永平寺まで、さらに2年後には大野まで一挙につながる予定です。
 経済活動を考えましても、新幹線や高速道路整備など基本的な条件が大都市と著しく劣っていては、地方の我々がいくら頑張っても競争の中で実力を発揮できません。早期に整備を進めてほしいわけです。地方が力を出せないような状況のまま国が放置していては、日本の発展はないわけです。以上2つの役割は、国としての大きな仕事だと考えます。
 新幹線についてはもう10年なんて言っていないで、10年以内にできるだけ早くやるべきです。工法あるいは財源の面から努力をし、働きかけてまいります。
 それから、新幹線について付言しますが、敦賀以西はルートの問題があります。
 先般、関西広域連合が米原ルートが優位ではないかという案を提示されましたが、残念ながら建設負担金を誰が負担するのか、並行在来線をどうするのかという議論が全然なされていない。米原で東海道新幹線へ乗り換えることを想定していて、直接京都や大阪まで乗り入れできない。米原乗換えではそこで30分無駄になる、ゆっくり眠ってもおれない、荷物も運び直さないといけない、冬だったら寒いでしょう、これではどうにもならないと思います。
 若狭ルートがもともと国の計画ルートなのですから、速やかに必要な調査を行って、本来の計画どおり実行することが望ましいと考えています。
 また中部縦貫自動車道と舞鶴若狭自動車道については、唯一まだはっきりしない部分が中部縦貫自動車道の大野から岐阜県までの35キロです。これについて、今後10年以内の財源確保を要請しており、できるだけ早く完成することが課題と考えております。



3 これから福井県が進めること

(1)全国をリードする次世代の人づくり

 一方で、我々は自分でやるべきことはしっかりやらないと地方自治ではないと考えています。
 希望学の話をしましたが、教育、子育て、農業などは、我々で進めなければ問題の解決はないでしょう。幸い福井県はこの10年間、この分野では独自の仕事を進めてきました。
 

(併設型の中高一貫教育校)
 中でも、教育の問題は極めて重要です。子供たちが将来とも、大都市へ流出するのか福井でとどまって暮らすのかという問題はなお残っていますが、高校卒業までは我々は重要な責任を持っています。
 数年来、ゼロ歳から高校卒業までの「福井型18年教育」を進めています。さらに中高一貫教育を導入する予定です。高志高校に1学年3クラス・90名の県立中学校を併設します。学力体力日本一の福井県ですから、さらに次の段階に教育レベルを向上させることと、生徒の皆さんの選択性を高めるためです。高校受験が不要ですのでかなり融通がききますし、新しい教育ができると思います。決して受験本位のものではありません。
 

(芸術教育の強化)
 次に、芸術教育が重要です。
 まず今年度は音楽教育の強化に着手しています。福井県は、ブラスバンドで管楽器は頑張っていますが、バイオリンなど弦楽器が不十分ですので、弦楽の振興を進めています。ふるさと納税のお金を使ってバイオリンを買うとかですね。そういうことで音楽教育を強化してまいりたいと思います。
 ちょうど5年後には福井国体があります。一昨日、日本体育協会の張会長から内定の通知をいただきましたが、国体などを考えますと、多くの人たちが音楽に親しみ、参加していただくことが重要です。
 小学生、中学生は、短期間ですごく上達すると聞いております。しっかりした指導者がいれば決して3歳からやらなくても、本当はその方がいいのかもしれませんが、小学校、中学校でも頑張っているというのが実際であります。芸術教育により、幅広い人格を形成したい。
 

(白川文字学を活かした漢字教育)
 もう1つは白川文字学。これは白川先生の漢字学であります。今年度から「白川静漢字教育賞」を創設しました。全国の優れた漢字教育、国語教育を実践している人たちに応募いただき、毎年数人を表彰します。福井県が全国の漢字教育あるいは国語教育の先頭に立って進めていく、そして、文字学の福井県を広めてまいります。
 

(子育て応援の新展開)
 続いて、子育ての応援政策についてお話をします。
 従来から保育所を充実してきましたし、待機児童もいないわけです。しかし、お母さん側はもちろん保育所側も、ゼロ歳児や乳児のころは家庭で育てるのが望ましいという気持ちが強くなってきたようです。子どもにとってもその方がよいかと思います。
 幼い子どもほど手間がかかるので、特にゼロ歳児の場合は、保育士さんを多く雇わないといけません。子ども何人に保育士何人必要と決まっていますから、ゼロ歳児は大変だと保育所も困っているんですね。そんなに人も雇えない、むしろ家庭で見ていただいたほうがありがたいというご意見もあります。保育水準の高い福井県であるからこそ、大都市のように保育所を増やすという話ではなくて、逆に、家庭で面倒を見ていただく部分についての応援をしようという方向に展開しようと考えています。
 そうなりますと、共働きのお母さんが多いですから、会社に復帰する時にうまくいかないようだと、安心して家庭で育てるという選択ができません。
 そこで企業の応援をして、お母さんが子育てを終わったら元の会社がまた雇用してくださいねという制度を今年からつくりました。国も、福井県のこういう様子を見て同様の制度を導入しようということです。これが国において導入されれば、福井県独自の制度はやめてもいいか、あるいは上乗せしてもいいということになります。
 また、「企業子宝率」といいまして、社員の皆さんが在職中に持つことになる子どもの数を調査しています。そして調査の結果、数値が高く、子育て支援の取組みが評価できる企業を子育てモデル企業に認定し、応援しています。



(2)福井県に人を呼び込む発信力の強化

(恐竜ブランドの展開)
 福井県の良さを発信するということでは、恐竜ブランドを一層強化してまいります。恐竜博物館の入館者数は、3年連続で50万人を達成しました。10年前に知事になったときには年間25万人でしたので倍増しています。これは、研究施設として専門性を高めたというのが1つありますし、楽しさといいますかエンターテイメント性を高めたという両面からの実績だと思います。
 今年は恐竜学研究所を県立大学に設けました。そして、アジア恐竜協会を設立しその事務局を恐竜博物館に置きました。
 また、1989年に福井で初めて恐竜発掘を開始して25年目に当たりますので、日本、中国、タイにおける発掘成果の集大成として、恐竜博物館で「発掘!発見!1億年の時を越えて」という特別展を開催しています。
 さらに、野外恐竜博物館を来年度にはオープンします。また、子どもたちは今が夏休みです。大野・勝山を中心に今年はとりあえず3日か4日間になりますが、恐竜を楽しんでいただく滞在型のツアーを行うなど、新たなプロジェクトを開発しました。
 

(食の魅力発信)
 北陸新幹線金沢延伸を前に、首都圏の皆さんに福井県の食べ物のおいしさ、食材の豊富さを、もっと知らせることが必要です。
 4月には、銀座に都内2店舗目となるアンテナショップ「食の國 福井館」をオープンしました。名前のとおり、福井の食の専門店で、厨房やイートイン・コーナーも設けましたので、焼き鯖寿司の試食や地酒の試飲などもできます。この銀座店だけでなく、既存の南青山291さらに都内に数多い福井ゆかりの飲食店、ホテル等とも連携し、福井の食のPRと販路拡大を進めていきます。
 

(里山環境の保全と活用)
 今年はSA(さ)TO(と)YA(や)MA(ま)国際会議を開きます。そして、その会議開催後に「里山里海湖(さとうみ)研究所」を開設します。
 里山といいますと、日本中にあるのではないかということですが、福井県の里山の特徴を皆さんにお考えいただきたいと思います。全国に比較した場合、福井県の里地里山は、歴史的に非常に手入れが行き届いているということです。他県の人の意見では、福井県の山や田んぼのように手入れが行き届いているところは少ないと言う方が多いです。
 それから、水系が福井県の中で基本的に完結をしていることです。水が豊かな県なのです。嶺北地方は全てこれが三国の河口に流れていますし、若狭地方はそれぞれ谷ごとに短い河川があって特徴があります。また、福井県の里地里山には長年の歴史の中で、信仰のようなものが込められているのではないかと思います。お寺と神社の合計は人口あたり最も多い県です。季節感も豊かですから、我々としてはそういう特徴を生かす必要があります。
 さらに今回、三方五湖の水月湖の年(ねん)縞(こう)が世界的な評価を受けることになりました。これは、水月湖の湖底に過去7万年間の地層がきれいに累積されているのがわかったのです。水月湖の地層は1年間に約0.7ミリ堆積します。7万年間ですから、湖底に厚さ約50メーターの年縞があるわけです。
 昨年の国際的な学会で、水月湖の年縞が年代測定を行う世界標準と決められました。これがどういう役割を持っているかということですね。堆積した層の中にある化石等には炭素14が含まれますが、この量は年月の経過とともに減少します。年縞に埋もれている地層に含まれる炭素14の値が、物差しになるわけです。世界中の遺跡、たとえばマヤのこの遺跡は何年に滅んだというようなことが分かるのです。
 また、年縞の中に花粉の量や種類が幾らあるかによって、その年の気温などが推定できます。花粉の量が多い年は温度が高かったということになります。これまで、気温などの変動の推定にはグリーンランドの氷床を使っていましたが、水月湖を使った方が精度がよいということです。
 さらに、偏西風は湾曲して吹いています。ゴビ砂漠とタクラマカン砂漠は北と南にありまして、水月湖まで飛んできたゴビ砂漠の砂とタクラマカン砂漠の砂の配分量によって、毎年の偏西風の湾曲の様子が分かるということであります。そのほかも研究によって分かるでしょう。
 そういう意味で、この年縞を使って、湖、あるいは科学、あるいは地球の環境問題のメッカにしていきたい。学者の皆さんもそんな期待で、場合によってはこれが世界遺産になるかもしれません。恐竜が数億年前の話、年縞の方は数万年前の話ということになるのです。
 

(歴史を活かしたまちづくり)
 歴史ということでは数百年から数千年の話ですが、福井県には各時代の歴史的遺産や人物ゆかりの地が数多くあります。
 それらは、古来わが福井の地が、奈良、京都に近く、朝鮮半島などアジアに開けた土地柄であることに由来しているのだと思います。
 このような歴史の重厚な積み重なりは、同じ北陸でも石川や富山にはない福井県の実力です。北陸新幹線金沢開業や舞鶴若狭自動車道全線開通、さらには新幹線県内延伸の効果を引き出すためにも、県内各地にある歴史的な遺産を活かし、町並みや景観の整備を進めていきます。
 今年3月には、福井市とともに「県都デザイン戦略」を策定しましたが、今年度から実行に移しています。まず、福井城址周辺の歴史的景観を復元するため、城址の中央公園側にある「山里口御門」の復元に着手しました。この御門は、1606年の結城秀康公による福井城創建当時からあったものです。時代が下って幕末、松平春嶽公の時代には、藩主が生活される御座所が現在の中央公園あたりにありましたので、春嶽公はこの御門を通って登城したと考えられます。山里口御門の復元により、御廊下橋、内堀、天守台跡との一体的な価値が高まります。
 今年度に御門の建築形態や石垣の修復方法などを決定する予定です。また、前回の御廊下橋の整備と同様に寄付を募るなど、県民・市民の協力を得ながら進めてまいります。
 それから一乗谷朝倉氏遺跡については、国内で唯一の戦国城下町跡であり、中世から近世にかけて繁栄した重要な遺跡です。戦国城下町跡により相応しい景観復元となるよう電線地中化に着手します。
 また、来訪者が遺跡内の詳細な情報を入手しやすいよう、スマートフォン用のアプリケーションを開発し、今月から導入しました。これによりガイド面も充実させていきます。
 このほか、旧北国街道の今庄宿、若狭・小浜西組、敦賀の金ヶ崎など県内各地において、訪れた人が落ち着きと魅力を感じ、また来たいと思える町並みの整備を、市町とともに進めていきます。
 

(舞鶴若狭自動車道全線開通を活かした観光客等の誘致)
 一方、舞鶴若狭自動車道の活用については、小浜、敦賀といった観光まちなみづくりや、県が進めている若狭歴史民俗資料館、海浜自然センターのリニューアルといったハード面の整備に加え、発信力を強化するソフト面の対策を進めなければならないと考えています。
 その一つとして、市町や民宿等の事業者とともに、豊富な食材を活かした昼食メニューを開発し、「若狭路ご膳」の統一名称でPRしています。
 

(平成30年福井国体の準備)
 先ほども国体のお話を若干申し上げましたが、まちなみ整備といった少し将来のことに関連して、国体の準備状況について触れたいと思います。
 国体を盛り上げていくために、それぞれの市や町のスポーツ施設の整備、あるいはまちづくり、団体の活動などを応援することによって、これから4年、5年とそれぞれの市町がよくなるように役立てていきます。また、小中学生約500人をジュニアアスリートとして認定し、指導を強化したり、種目ごとの重点強化校を指定するなど、競技力の向上も進めています。さらに、先日、500件近い応募の中からマスコットキャラクターを決定しました。恐竜をモチーフにしたデザインで、8月からは愛称を募集します。



(3)グローバル化と外国語教育

(英語教育の充実)
 最後に、グローバル化への対応として、主に英語が中心かと思いますが、外国語教育を充実してまいります。受験勉強という話もありましょうが、例えば県内で企業に勤め仕事をしていくときに、外国語の能力を高めることは極めて重要です。外国語によるメールや会話がどの程度できるのかという話であります。こういう教育を普通科高校だけでなく職業系の高校でも行います。商業高校なども含めて県内の高校生約100人をアメリカへ15日間の語学研修に派遣していますが、研修前後のTOEICの成績を比較したところ、平均で40点ほどよくなるなど、成果が着実に表れています。
 一方、小学4年から外国語学習がもう始まっていますので、小中高とそれぞれの段階に応じて、あまり指導要領といったものにはとらわれず、実践的に進めていきます。また、NHKと共同でオリジナル教材を作成するなどいろんな英語教育の皆さんとも協力しながら進めております。
 この本は東進ブックスの「一億人の英文法」という本です。先生とお話をするときに、本を読んでいないとなかなか言うことを聞いてくれないんですね。読むのに1か月ぐらいかかりました。この本には「高校生は1週間で読め」と書いてありますので、皆さんお忙しいでしょうが。本当におもしろい本です。普通の英文法の本じゃありません。我々が小・中・高と習ってあまりマスターできなかったものを解決してくれるタイプの本かと考えます。例えば「This is a pen.」と言いますね。これは学校で真っ先に習いました。「Is this a pen?」と聞きましたら、「Yes, it is.」とか「It is a pen.」と言いますが、なぜ質問でthisと言って、そうだと言うときにはitを使うかということですね。itは「それ」だからitと言うと我々は習ったような気がします。どうもそうでないらしいですね。thisとかthatとitは、ネイティブな頭の中では意味が違っている、thisやthatは指すときの言葉である、itは答えるとき主張するときにしか使わないという意識があるようです。この本にはそのようなことが書いてあります。教育に携わったり、関心がおありであれば、自己教育も含めてご一読されるとおもしろいかなと思います。
 

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