内外情勢調査会知事講演~「幸福日本一」を土台に県民の総力結集を~

最終更新日 2016年8月8日ページID 034663

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 このページは、平成28年8月8日(月)にユアーズホテルフクイで行なわれた、内外情勢調査会の「『幸福日本一』を土台に県民の総力結集を」と題して行われた知事の講演をまとめたものです。

 今日のテーマは、初めに幸福日本一に関するお話。2点目が高速交通体系の整備と将来完全に開通したときの活性化政策をどう行うべきか。次に人口減少対策とこれからの福井の対策です。これらは産業や農林水産業などさまざまな分野の話になりますので、いくつかを取り上げて話します。そして明日の福井を支える人材の教育、最後は原子力・エネルギー政策です。
 夏の甲子園が始まっていますが、高校野球といいますと、敦賀気比高校が昨年春にセンバツ優勝し、また今年のお正月には競技かるたの川﨑文義名人が誕生、この夏のリオオリンピック・パラリンピックには、過去最多となる10人の県勢選手が出場するなど、小さい県ですが県民一人ひとりが頑張って「突破力」を発揮しています。
 2年後は明治維新150年であります。その年が「福井しあわせ元気国体・大会」、さらに2年後は東京オリンピックということになり、文字どおりさまざまなイベントが重なります。
 そして福井県では、6年後の北陸新幹線の県内開業、また中部縦貫自動車道の東海北陸自動車道との直結など、明治以来あるいは戦後進めてきたさまざまなプロジェクトの集大成という時期を迎えます。そういう背景の中で先ほどの5つのお話をしてまいります。

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1 「幸福日本一」ふくい

(都道府県幸福度ランキングの結果)
 まず、幸福日本一というお話をしてまいりたいと思います。
 先月末に発表された日本総合研究所の「都道府県幸福度ランキング」において、2年前の前回に続いて福井県が総合1位になりました。これは県民の日々の努力の賜物であり、改めて感謝を申し上げます。
 このランキングは65の指標により算出されています。5つの基本指標、それから5つの分野それぞれ10項目の指標で50指標、さらに前回と今回と社会情勢の変化に伴ってそれぞれ5つの指標を加えておりますので、全65指標となります。
 基本指標は、地域の体力とも言える地域力や行政力などを表す基礎的指標であり、「人口増加率」、「1人あたり県民所得」、「選挙投票率(国政選挙)」、「食料自給率(カロリーベース)」、「財政健全度」という5つです。この指標では、福井県は大体真ん中あたりの20位前後です。東京都は、「1人あたり県民所得」あるいは「財政健全度」では1位であります。食料自給率になると北海道が1位です。福井県は、ベスト5には入っていません。こういう指標が根っこにあるということです。
 福井県は幸福日本一だけれども、あまり感じないという話をよく聞きますが、その理由がどの辺にあるか、これからいろいろ分析しなければなりませんし、皆さんのご意見もあると思います。「人口増加率」など人口が多いということをメインにしますと、にぎやかだとか、元気だとか、おもしろい、そういうことが起こりますので、やはり東京がいいとか、大阪もまあまあだと、そんな話になりがちだといつも見ているわけです。しかし、今回の日本総研の調査では、「人口増加率」も含めた65指標で、福井県が1位、東京都が2位ということであります。

(幸福度ランキングをどう捉えるか)
 過去3回の結果の推移を見ますと、東京やその周辺の関東、中部・北陸のデータが良くなっています。一方、中国・四国、九州・沖縄、北海道・東北は相対的にあまり良くない状況になっております。なお、東日本大震災があったこともありましょうが、東北でも日本海側は、相対的に良くなっている。地域的には、こういう傾向があります。
 さらに細かくお話をしますが、分野別指標のうち、「教育」と「仕事」が1位、「生活」は7位です。「健康」が13位、「文化」は42位になります。
 「文化」の分野では、「国際」という領域が弱いという結果が出ており、こういうところを研究しなければならないだろうと思っています。特に「外国人宿泊者数」などがこの中に入っていますので、この数字だけを見ると「文化」の程度が何となく低く見えます。「外国人宿泊者数」については、昨年は新幹線金沢開業効果により、ほぼ倍増しており、今後、アジアだけでなく、永平寺など本県の観光資源をより好むヨーロッパの観光客もターゲットに加え、さらなる増加を図ります。
 もう1つは「書籍購入額」が少ない。福井県の人ははたして本を読まないのかということを議論したのですが、どうも図書館が発達しているので本を買わなくても読める、例えば県立図書館は、県人口比の入館者数や貸出冊数が日本一多いですから、そういうこともあるのではないかということです。
 前回(2014年)のランキングでは、地域の経済活動や寿命の観点から、「信用金庫平均利回り」、「平均寿命」、「女性の労働力人口比率」、「自殺死亡者数」、「子どもの運動能力」の5項目が追加されましたが、これらの項目については、福井県は1位や2位が多かったので、さらにランキングが上がったというようなことがあると思います。
 さらに、今回、地域コミュニティや世帯の経済的豊かさの観点から、「合計特殊出生率」、「自主防災組織活動カバー率」、「刑法犯認知件数」、「農業の付加価値創出額」、「勤労者世帯可処分所得」という5項目が追加されていますが、これは福井県は大体10位前後ですので、それほどプラスの影響はありません。

(幸福日本一の活用と持続)
 そこで、我々としてはこれをいかに活用していくかということですが、観光あるいは移住拡大につなげるよう、あらゆる手段や情報媒体を使って発信を強化しながら、福井県に多くの人が来ていただくためのツールにしなければならないと思っています。
 今回、キャッチコピーとして「あらかじめ、幸せだったらいいな。」とロゴとして「幸せ度いちばん福井県」をつくりました。コピーとしてはあまり嫌味にならないように微妙な言い回しにする工夫がなされ、ロゴは「いちばん」とはっきりさせています。
 これは著名なコピーライターである仲畑貴志さんに創っていただきました。何千もヒット商品をつくっている方が、福井県としてこういうものがいいだろうということで創られました。
 今回、この日本総研の調査では、国の「地方創生」で取り上げられている「移住」を切り口として、斜め切りにしたデータを特に抽出しております。「移住幸福度」は、福井県に移住した人は幸福だという意味ではなくて、移住したら幸福であろうというデータになると思います。
 この「子育て世帯の移住幸福度」という横断のデータでは、今回、福井県が全国第1位になりました。福井県、石川県、富山県、秋田県、山形県の上位5県は全部が日本海側です、なお、関連しますが数年前に慶應義塾大学が調査した「子どもの幸福度」でも福井県が全国トップとなっています。
 さらに今回、「シニア世帯の移住幸福度」をあわせて調査していますが、福井県は5番目です。鳥取県、長野県、島根県、山梨県、福井県という順番です。日本列島の背骨から日本海側に向かっているという印象に何となくなっております。
 我々としては、これから行政レベルだけではなく市町あるいは企業と共動して、福井県の幸福という力を移住政策やビジネスでどう生かしていくか、さまざまな工夫を凝らして実行をしたいと思います。2回連続して日本一になっていますからうまくやれるのではないかなと思うのです。
 昨年6月に市町と一緒に「ふるさと福井移住定住促進機構」をつくりました。福井県内はもちろん、東京、大阪、名古屋にも設置しています。社会人になった後に、U・Iターンしてきた人たちも、前年度に比べると3割増えているという動きもありますので、そういう流れを強くしたい。また、移住政策ではありませんが、今日は、大企業の支店や工場に単身赴任で来ている方も少なからずいらっしゃると思いますが、家族一緒に赴任していただけないかという運動もしてまいります。
 先日、全国知事会が福岡県の博多でありました。お話を聞いていますと、博多というのは単身赴任者がもちろん多いのですが、家族が一緒に来て生活したいという人たちが多いということを聞きました。街の大きさもさることながら、教育や住宅などが整っていると見られて、家族の生活に心配することがないだろうということかもしれません。その証拠に懇親会がありましたが、そのオープニングとして精華女子高校によるブラスバンドの演奏がありました。その女子生徒の出身地を聞くと、九州はもとより、岩手県や新潟県、静岡県、あるいは四国つまり単身赴任のはずの家庭のお子さんたちが、女子高校生として福岡県へ両親と一緒に来ているということを感じさせる姿でありました。
 ですのでこれからそれぞれの地域で、数年なら数年、地方の良さを楽しんで教育にも支障のないようにして、将来の目標を地域で子どもたちに立てていただく、特にお母さん方も不満でない、そういう移住策があり得るのかなというようなことを思ったのであります。

(豊かさを測る新しい指標開発の動き)
 次に、この問題をもう少し発展させる話をします。幸福度により新しい基準を加えてはどうか、という考え方です。
 この幸福度というのは、大体はフロー流れのデータです。1年間の所得がどうだとか、そういうものが多いですから、ストックといいましょうか蓄積の程度を測るデータは少ないのでそういうものを加味してはどうかという点です。
 例えば1つの方法として、道路、鉄道、建物などの社会インフラを評価する、つまり交通あるいは時間やコストを少なくする効率的なストックのデータ、こういうものを考えていく(人工資本)。もう1つは、特に地方の場合には、農地や森林など自然の価値を有効に使うための指標を考えたらどうか(自然資本)。それから3つ目のデータが一番大事なのですが、付加価値を生むのは人間でしかありませんので、そういう人的資源の水準が高いか、こういうことを評価してはどうかということであります(人的資本)。
 先ほど申し上げましたが、特に福井県はこれから7、8年のうちにそういうデータが良くなる可能性がかなり高いですね。社会インフラとしては新幹線、中部縦貫自動車道などができてきます。ダムなども含めますと、これから7、8年のうちに1兆円近い投資が県内に行われるわけですので、交通資本といいますか人工資本が増えると思います。
 そして、これに福井県の誇る学力・体力日本一という人的資本を考えると、福井県は、文字どおり幸福度の新しい指標を開発するのにふさわしい県ではないかと思います。
 現在、こういうことを調査・研究している人たちがいらっしゃるということがわかりました。これは、国連が主導して研究・開発している「新国富」指標と呼ばれるものであり、九州大学の馬奈木俊介教授が研究代表者となられています。GDP(国内総生産)では測れない「経済の持続可能性」を、ストックに着目して考えていこうということです。

(豊かさとGDP)
 GDPというのは昔からあるわけではなくて、18世紀頃からこういう考え方が出てきたわけですが、特に第二次大戦期直前のアメリカで、経済学者のクズネッツを中心に確立された指標です。戦争を始めるあるいは戦争を続行するというときに、戦費を調達するため国家の生産力、国富はどれぐらいあるかということを把握しなければなりません。それを数量化して大丈夫だという見極めの基礎的なデータをとるために、GDP指標が歴史的には開発されたわけです。
 したがって、計算の仕方がさまざまで絶えず議論が起こります。例えば最近話題になっております一部の研究開発費はGDPの中に入っておりません。普通、これらはコストであるという観念が企業側としてあるわけですね。しかし、これこそ付加価値を生む投資であると考えますと、GDPの中に研究開発額として入るであろうということであります。ですからGDPというのはそれ自体としていろいろな捉え方をされるわけです。そこへさらに新しい国富という物差しを加えていってはどうかということであります。
 さて、やや違う方向の話ですが、豊かさの面でブータン王国は有名です。ブータンの幸福度指標(GNH)という考え方もあり、幅広く幸福の問題に取り組んでいく必要があります。このように思うのであります。

2 高速交通体系の整備進展

(北陸新幹線の整備促進)
 次に、高速交通体系の話を申し上げたいと思います。
 まず、北陸新幹線ですが、おかげさまで平成34年度末までに必ず敦賀まで新幹線が整備できるということになりました。用地取得率が7月末時点で約3割でありますが、年度内には用地取得をほぼ完了したいと思っています。
 なお、先ほど1兆円と言いましたが、そのうちのかなりの部分は新幹線の建設費であり、これから完了までに7,000億円の予算が県内に投入されるわけです。今年、来年でそれぞれ5~600億円、その後ぐっと上がらないと7,000億円の工事を完成できません。県内の工事着手率も大体5割を超えておりますので、槌音がだんだん大きくなっていくと思います。
 また、福井駅は大体姿が出てまいりましたが、高架化したえちぜん鉄道と在来線の間に新幹線の駅舎ができるので、これをどのようにするか。さらに駅前の昔のままの市街地ブロックの再開発が課題になってくるだろうと思います。もちろん、あわら駅、南越駅、敦賀駅もそれぞれ整備が必要です。
 特に敦賀駅については、新幹線と在来線の乗り換えをしなければならない駅ですし、乗り換えの利便性向上が必要です。在来線のホームから約200m離れますので、今ある駅と新幹線の駅の間を、重い荷物を持って歩く必要のないように、「動く歩道」を整備するということが課題になっています。
 特に大切なことは敦賀から先の問題でありまして、京都、大阪に早く安くつながなければなりません。北海道新幹線の札幌開業がこれから15年後(平成42年度末)ですので、それよりも早期に完了しないといけないと思います。
 ルート案については「小浜京都」のほか舞鶴経由、米原という考え方もないわけではありませんが、国土交通省は3ルートの調査結果を10月末頃までに取りまとめるとのことです。我々は、小浜と京都・大阪とつなぐルートで必ず結論付けないといけないと思います。他のルート案はどうだろうかという計算もきちんとやって、年内にこれを決めるということです。
 一方、リニア中央新幹線であります。名古屋までがこれから約10年後の平成39年、敦賀開業から5年後に開業する計画ですし、それからさらに10年以内今から20年内には大阪までという考え方が先般国の経済戦略で示されたわけです。これは従来の考えよりも名古屋・大阪間をさらに8年前倒ししようとしていますから、いよいよ北陸新幹線はもっと早くしないといけないわけです。敦賀まで利用できるようになって、やおら敦賀から先の工事をする、というような悠長なことはやっておれません。並行して直ちに着手すべきだということを我々はこれから強く申し上げてまいりたいと思います。
 ルート問題については、これまで富山・石川両県それぞれ考えもあり、各県内の政治情勢もありましたが、ほぼ福井の考えである敦賀から小浜を経由して京都、大阪にできるだけ直線的につなぐルートで決まっていくのではないかと思いますし、そうしたい。
 なお、その際に、付随する案件として、中京圏とのアクセスを確保することが大事ですので、敦賀から名古屋へどうやって早く行けるかということをあわせて考える必要があります。「しらさぎ」が通って、米原で乗り換えたり方向転換をして、関ヶ原を越えて行くということはもちろんあるのですが、それではあまりに高速交通体系のアクセスとしては悠長ではないか、ここを一工夫する必要があるだろうと考えます。
 この問題に関連して、フリーゲージトレインで敦賀から先にそのまま乗って行けるのではないかという議論がありましたが、どうも開発が難しい状況にあります。また、福井や南越(仮称)の駅から乗った方は敦賀駅ですぐ乗り換えるなど不便があります。敦賀駅の利便性をしっかり確保しながら、将来を見越して、福井県全体としてどのようにうまくやっていくかということが課題であります。知恵の出しどころとして、また皆さんのお考えを十分に聞きながら、良い結果が出るように努力してまいりたいと考えます。

(中部縦貫自動車道の整備促進)
 次に、中部縦貫自動車道については、来年春には大野まで開通いたしますので、新幹線が敦賀まで開業する頃には、中部縦貫自動車道も岐阜県境の油坂峠まで開通するようにしたいという考えが国政レベルで上がっています。ただ、これから6年間の猶予期間がありますが、1,200億円ぐらいの工事費がかかります。そうすると毎年200億円の予算が必要となります。この中部縦貫自動車道は有料道路ではなく、国直轄の道路事業であり、我々が負担金を払って整備するわけですので、国庫事業が確保できるかという課題があり、毎年の予算額をいかに獲得するかということを検討しているわけです。参議院選挙中も、県選出国会議員の方からしっかりやりたいという声がありましたので、これが成功するように地元からも努力したいと思います。

(若狭さとうみハイウェイの高機能化)
 なお、舞鶴若狭自動車道「若狭さとうみハイウェイ」が2年前に開通しましたが、ほとんどが2車線のままであります。2車線のままですと、トラックがゆっくり走ると前ががらがらに空いてしまう、あるいは事故が起きると通行止めになりますので、用地は4車線で買ってあるわけですから、できるだけ早期にできるところから4車線化を押し進める必要があります。現在、舞鶴若狭自動車道の県内区間の約9%6kmは追い抜ける区間ですが、もっとその割合を高めていきたい。

(高速交通開通アクション・プログラム)
 今年3月、北陸新幹線敦賀開業や中部縦貫自動車道の開通効果を高め、県内全域にくまなく浸透させるため「福井県高速交通開通アクション・プログラム」をまとめました。
 このプログラムは、県民一人ひとりの期待と決意をかたちにした「県民の行動計画」であり、県のみならず市町、民間企業、県民のそれぞれが、どのような準備を行っていくかを具体的に明らかにしたものです。
 これからは行政が主体となった事業のみならず、「県民の活動」と「民間の投資」をいかに活発化していくかということが、高速交通の整備効果を生かすことにつながります。
 今後6、7年間は、住むひとにも来るひとにも楽しくて便利な、魅力ある福井県の実現をめざす極めて重要な期間であり、アクション・プログラムに基づくプロジェクトを推進し、高速交通体系の開通効果を県内全域に浸透させていきます。
 アクション・プログラムに基づくプロジェクトの柱として、1.「交通の革新」による地域交通ネットワークの強化、2.「都市の改造」と地域の魅力を高める基盤づくりの大きく2点を重点的に実行していきます。
 まず、交通の面では、県民の移動手段の確保や高齢者の交通事故抑止の観点から、利便性の高い公共交通ネットワークを実現し、「日本一の車社会」からの転換を進めていきます。
 例えば今年春、福井鉄道とえちぜん鉄道の相互乗り入れがついに実現しました。これにより、乗車状況はいずれも約5%増加しました。
 このような地域公共交通の新しい体系とシステムをつくり、これと一体的に日常生活におけるクルマ利用の縮減を促す政策を強めていきます。
 そのためには、市町間の連携が必要であり、現在、県内のエリアごとに各市町が集まり、交通事業者などと二次交通を含めた地域公共交通の強化について協議をしているところです。
 高速交通開通の効果を引き出すためには、北陸新幹線の駅が設置される4市をはじめ、県内各都市と地域の魅力を高めることが重要です。
 中でも県都である福井市では、戦災・震災から70年前後が経過し、都市全体がリニューアルの時期を迎えており、「県都デザイン戦略」に基づき、再整備を進めています。
 福井駅西口では、再開発ビル「ハピリン」も開業いたしましたが、さらに駅西側のエリアでは、金融機関などを中心にさまざまな再開発の動きも出てきましたので、これを加速する必要があるだろうし、福井城址の復元などもこれから具体化をしていくことになろうかと思っております。

(周遊・滞在できる観光地へのレベルアップと投資)
 都市の改造と並行し、各地域の魅力を高めるため、アクション・プログラムでは、各地の歴史・文化など「ふるさと資産」を生かして、重点的な投資を行う方向性を示しています。
 市町を応援しながら敦賀の赤レンガ倉庫など、各観光地やまちなみの整備に力を入れてきました。この約7年間で市町負担と合わせて100億円近い規模の投資を行っており、そのうち約3分の1は県が負担しています。
 幸いに観光客数も増加していますが、先ほどお話ししたように外国人の宿泊者数が少ないなどまだまだ不十分なところもありますので、交流がもっともっとできるような投資をしてまいらなければなりません。
 そのためには個々の観光地の魅力をさらに高めることと並行し、それらを結びつけより周遊・滞在しやすい観光エリアをつくることが重要です。ハード投資を含め全体で60億円余りの事業費を投じて、周遊・滞在型の広域観光ルートを確立してまいります。
 また県としても独自に新たな観光施設の整備の検討を行っていますので、主なものを3つ紹介します。
 恐竜博物館は、私が知事に就任したときには20万人だった年間入館者数がいよいよ100万人近くになっております。
 恐竜は本県のダントツブランドであり、その中心となる恐竜博物館は、今後も、これまで以上に恐竜の魅力を発信する拠点として、機能の充実を行います。
 一方で、現状の恐竜博物館では手狭になってきており、恐竜渓谷100万人構想の実現に向け、プロジェクトとして第2恐竜博物館があり得るかどうか基本構想・計画の策定に着手しています。
 世界トップレベルの学術研究・展示など本物による魅力アップに加え、子どもから大人まで誰もが楽しみながら学べるよう、アミューズメント機能をあわせもつ、世界一の恐竜博物館の可能性を検討します。
 昨年度は、新幹線金沢開業効果が一乗谷朝倉氏遺跡に直接及んで、過去最多となる観光客が訪れました。一乗谷についても多くの歴史資源があるのですが、現在の資料館では十分展示できていないので、日本最大の戦国城下町「一乗谷ミュージアム」の新たな拠点施設として、中世都市遺跡の研究拠点となる「一乗谷朝倉氏遺跡博物館」を平成32年度中に整備します。
 今後、庭園の再生などを進めて遺跡全体をレベルアップし、本物の歴史遺産として今後も魅力を高め、一乗谷ミュージアム化を推進してまいります。
 また地質学的年代測定の世界標準であり、福井県の豊かな自然が育んだ水月湖「年縞」は、福井の宝です。
 これを教育と観光両面に活用するため、新たに「年縞研究展示施設」を三方湖畔に整備し、楽しみながら学ぶための施設として、平成30年度のオープンを目指してまいります。

3 ふくい創生・人口減少対策戦略

(地方創生-ニッポン一億総活躍プラン-)
 国の進める地方創生については、東京圏を強めることにより地方も恩恵を受け、地方が活性化するといういわゆるトリクルダウン的な考え方がベースとして見られます。国は最低限の支援をし、あとの責任は地方に任せておく、という発想が感じられます。
 例えば地方創生交付金は当初の10/10から現在は1/2へ半減され、政府機関移転は結局、移転ではなく研究者らの派遣型がほとんどであるなど不十分です。
 今年5月には「ニッポン一億総活躍プラン」を国がとりまとめています。国民全員が活躍できる社会の実現を目指すという理念の下で、具体的には働き方改革による生産性の向上や少子高齢化の克服などを掲げています。
 しかし、その内容を注意深く読み取ると、7月の参院選に合わせて、保育所の待機児童解消など既に地方が先行して解決している課題など、大都市寄りの施策がより強調されており、地方としては非常に物足りない印象があります。例えば保育士不足に対する政策などは、不足が発生していない福井などの地方への予算はゼロとなり、不足が生じている大都市に予算を集中して配分できる仕組みとなってしまいます。
 大都市寄りの政策に偏っている証拠として、全国の建設投資の推移があります。バブル崩壊以降、日本全体の建設投資は5割減少していますが、東京には建設投資が集中化しており、東京オリンピックや国際競争力の強化という大義により、東京一極集中を加速する官民の投資拡大が懸念されます。
 いずれにしても、地方の立場からみると、国の一連の国土政策に後退の感があります。
 したがって、ここからは、地方と大都市の問題に関連して、政府機関移転、ふるさと納税、参院選の合区問題の3点についてお話ししたいと思います。

(政府機関移転)
 政府が移転対象とした34機関のうち、22機関は国や独立行政法人の研究機関や研修施設であり、かつ、移転ではなく研究者らの派遣型となっています。これでは東京一極集中の是正策にはほど遠いと言わざるを得ません。
 福井県は、国に移転を提案した6つの政府機関のうち、現在、理化学研究所、教員研修センターなど4機関の移転が決定しています。
 理化学研究所は、若狭湾エネルギー研究センターなどの本県研究機関と共同研究を行う活動拠点の設置、教員研修センターは、教育研究所における国の研修の共同開発など、機能部分の一部移転を軸に検討を行っているところです。
 政府は、今後5年以内の移転実現を目指すとしており、4機関の本県移転が実現するよう強く求めてまいります。

(ふるさと納税)
 「ふるさと納税」は、地方で育った若者が都市へ出ていき、大学などに進学して一人前になり、就職をして勤務地で税を納める、というライフサイクルに見合った税制として、地方と都市のバランスを取る解決策の1つです。
 寄付者の負担を増やすことなく、税を都市から地方へ還流させる制度として、私が提唱し、平成20年度に導入されました。
 全国ベースでみると、初年度80億円余りだった寄付額は徐々に増加し、昨年度は制度の改善などもあってその20倍にあたる約1,700億円に達しました。累計でも、2,600億円余りとなっています。
 今年発生した熊本地震では、ふるさと納税による寄付が全国から約200億円集まりました。これは、ふるさと納税の本来の趣旨に沿う新たな活用法であると思います。
 個人住民税の総額は12兆円であり、もし納税者の半分がこの制度をフルに使うなら、ふるさと納税の総額は1兆円になります。今ほど言いましたように累計額も増えています。先月、福岡県で開催された全国知事会議において、このような背景から「ふるさと納税1兆円運動」を提案しました。また、先日、勝山市で開催した、地方の13県で構成する「ふるさと知事ネットワーク」の会合の場でも、各県に運動への参画を求めました。
 志をともにする自治体が集まり、民間事業者と協力し、優れた事例を増やすなど、官民が一体となって運動を進め、ふるさと納税をさらに拡げてまいります。

(参院選の合区問題)
 もう1つは、7月に実施された参院選において初めて導入された合区の問題、「一票の格差」の問題です。
 今回の参院選から導入された合区は、有権者の関心を低下させる(投票率の下落)、候補者と有権者との距離を遠くする(有権者と接する密度の低下)、隣県間で意見が異なる政治課題に直面した場合の調整を難しくするといった問題があることがはっきりしました。
 合区については全国知事会議の中心的な話題の1つとなり、約2時間に及ぶ議論が行われ、この議題だけで28人が発言し、私も発言しました。このうち23人が合区解消に賛成で、ほとんどが地方圏の知事でした。
 結果、合区の早期解消を求める決議が採択されましたが、改めて、さらなる合区を懸念する地方と大阪・神奈川など大都市との意見の違いが明確となりました。
 合区をずっと進めれば道州制になりますので、注意が必要です。
 思うに、東京都の年間予算規模は13兆円超。2位神奈川県と比べても4倍以上とずば抜けており、スウェーデンに匹敵します。「日本には2つの別の国が存在しているかのようだ」と指摘されるなど、明らかに次元が違います。
 このような東京を中心とした巨大都市圏と地方が、これまでの歴史的経緯から「都道府県」という地方自治体としてひとくくりにされ、法の下の平等という形式的な理念のみで選挙制度において同一に扱われていることに、そもそも無理があります。
 現代は、本当の平等とは何か、本当の格差の意味は何か、ということを社会経済学的に考えて追求すべき時代です。
 一票の格差が最も重要な不平等の問題であり、あらゆる問題に先行するという人口比だけによる平等のパラダイムを変えることが極めて大事です。
 デモクラシーの「デモス」とは人民のことではなく、もともとの意味はポリスの「地域」のことです。これからも「地域」特に長い伝統と国民意識の下にある「都道府県」を元に、憲法改正の働きかけと並行して、まず公職選挙法などの法改正によってこの問題を解決するという動きを知事会としてもなすべきです。ぜひそういう流れに持っていきたいと思います。

(福井県の地方創生戦略)
 国に対し、東京一極集中の是正を求めるとともに、福井県としても独自に人口減少対策を実行していく必要があります。昨年10月には「ふくい創生・人口減少対策戦略」を策定しました。
 この中で、他県が真似することのできない「幸福日本一」を人口問題解決の原動力と位置付けました。人口減少対策の究極の目的は、人口の増加とともに、住むひと・来るひとの幸福を高めることにあり、本県はどこよりも目標実現に近い環境にあると考えたためであります。幸福度を高める政策と人口対策との間に良い循環をつくりたいと思います。創生戦略にはさまざまな政策を盛り込んでいますが、今年度新たに取り組んでいる政策を中心にお話しします。
 本県は、結婚への支援や少子化対策などがまだ行政の課題と考えられていなかった10年以上前に「めいわくありがた縁結び」活動や「3人っ子応援プロジェクト」を実施するなど、独自の結婚・子育て政策を全国に先駆けて実行してまいりました。
 こうした努力が実り、今回の幸福度ランキングでは、「子育てに最適な県」との高い評価をいただきました。
 また、これまで、結婚相談員や地域の美容師の方などにご活躍いただいてきた縁結び活動に、新たに職場の方やお坊さん、退職した先生方を加え、さらに拡大しています。
 U・Iターンの面では、昨年、福井と東京における生涯コストを見える化した「ライフデザイン設計書」を作成するなど対策を強化し、初めて年間400人を超えるU・Iターン者(新ふくい人)の誘致に成功しました。
 若者の県内定着を増やすためには、大学の魅力向上と若者の雇用確保が重要であります。
 大学の魅力アップと若者の定着を促進するため、県内の5つの大学と連携して、アオッサに「大学連携センター Fスクエア」を4月に開設しました。
 教養科目の共通開講や学生の県内就職支援などを県内大学が連携して行っており、異なる大学の学生が集い、交流できる拠点となっています。これまでに、福井の歴史文化をテーマとしたコンテストや、大手予備校講師による県内大学進学アドバイス、県内企業の経営者が学生に直接、企業の魅力を語るミニセミナーの開催などにも活用されております。こうした取り組みを通して、県内の大学生に福井県の魅力を知ってもらい県内定着を高めてまいります。
 U・Iターン者増加の流れを加速するため、企業にもう一人採用を増やしてもらう「プラス1雇用」運動を推進しています。
 中でも、女性のUターンが10年前に比べて半減しているため、女性の「プラス1雇用」を実施する企業を支援する制度を今年度新たに設けました(プラス1女性雇用企業支援事業)。第1弾として7月に15社を「プラス1雇用」宣言企業として認定し、現在18社まで拡大しております。
 今後、これらの認定企業が、福井Uターンセンターを通じて、県外の女性を中途採用した場合、3か月分の給与等の半額を支援します。
 これからも「プラス1雇用」宣言企業の募集を続けていくので、多くの県内企業に参画していただきたいと思います。

(産業のイノベーションの促進)
 今日は企業の方も参加されておりますので産業の話を申し上げますが、産業、特にものづくりについては「イノベーションの促進」ということを掲げたいと思います。昨年6月に、「ふくいオープンイノベーション推進機構」を設けて、産・学・官・金の技術開発情報の共有化を図っており、会員は301団体(7月末現在)になっております。
 自動車産業への参入を目指したボディ用炭素繊維素材や、チタン材料を使用した手術器具の開発などの支援を実施しています。今後、県内外の企業の技術を結集し、「超小型人工衛星」の開発・打上げなど、宇宙産業への参入促進といった重要プロジェクトを通して、研究開発や具体的なビジネス展開を支援してまいります。
 また、政府機関の地方移転に関連して、茨城県つくば市にあります産業技術総合研究所が福井県工業技術センター内に「産総研福井サイト」を開設しました。サイトには、産総研のコーディネータが駐在し、県内企業の支援を行っているほか、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)も含めた連携協定により、航空・宇宙、ライフサイエンス、ロボットなどの成長分野において、研究開発から事業化まで一貫した支援を行っていきます。

(小さな企業の応援)
 地域の雇用を支える、小さくとも身近にある優れた企業の応援をしなければなりません。認知度向上を応援するため、昨年度から「ふるさと企業表彰制度」を設けて、シャープに切れる刃物をつくる会社や、非常に薄い老眼鏡をつくる会社、うまいお酢を300年つくる会社など、特に優れた企業を表彰しております。
 また、「ふくいの老舗チャレンジ応援事業」を創設し、老舗企業の店舗リフォームなどの費用を支援するなど、頑張る企業の事業継続を応援してまいります。
 本県の代表的な地場産業である眼鏡産業は、昨年、産地生誕110周年を迎えました。その記念事業として、今年5月、産地の若手経営者が企画した「サバエメガネ メッセ」が開催され、期間中、想定の2万人を大きく上回る約3万人が来場しました。今後も、国内はもとより、欧州や成長著しいアジア市場への海外展開に対する支援を戦略的に進めてまいります。
 伝統工芸品については、後継者を養成するため、「伝統工芸職人塾」において、伝統工芸品製造に関する全般的な基礎知識や技能習得のための実習を実施しています。
 また、「サンドーム福井」の管理会議棟を「福井ものづくりキャンパス」として改修し、デザインセンターを設けて、この秋にオープンします。あわせて「伝統的工芸品月間国民会議全国大会」も開催されます。
 なお、サンドーム福井は、こうした本来の目的のほかに、コンサートなどイベントの会場としても最近人気を呼んでおります。大勢の若者たちが見えますので、そこで彼らが買い物をしお金を落としやすいような仕組みを作り、県産品の展示・販売ができるようにし、サンドーム福井を全国の人に知っていただけるようなことも考えてまいりたいと思います。

(幸せを支える農林水産業)
 農林水産業は、県内総生産に占める割合は1%程度ですが、地方創生に深く関わるとともに、福井県の豊かさ、幸福を支える大事な産業であります。
 現在、TPP発効に向けた手続きが参加各国で進められていますが、TPPによる安価な輸入農産物に対抗するためには、自分の目の届くところで、きちんとした作り方で、地域の地力を生かして、農産物を作っていくということが1つの武器になります。
 そこで、県では、農・林・水産業それぞれについて、計画に基づく高い目標を策定し、新たな政策を強力に実行しています。
 今年度予算では、県産米のブランド化や経営の大規模・多角化、里山里海湖ビジネスの推進や人材育成、海外販路拡大など、総額50億円余りの規模の対策を盛り込んでいます。また、国の経済対策も注視していかなければなりません。
 今後の農林水産業の振興を図る上で、重要となる点は大きく3つあります。
 まずは、農林水産物の販売強化へとつなげていくための、商品価値を高めるブランド化について申し上げます。
 県では、コシヒカリを超える新しいお米として「ポストこしひかり」を5年前から開発中であります。当初20万種あった候補品種から、今年度は1種に絞り込みます。新品種が日本を代表するジャパンライスとなるよう、6月には「ポストこしひかりブランド化戦略会議」を設立しました。料理評論家の服部幸應委員長をはじめ、雑誌編集者や有名料理人など、各界からの意見を反映してブランディングの方法などの戦略を検討してまいります。
 今後、名称を公募する予定ですので、コシヒカリ発祥の地「福井」のブランドを米の消費拡大と結び付け、全国へ浸透させてまいりたいと考えています。
 消費拡大のためには、地元農業団体の果たすべき役割、頑張りが特に重要です。積極的に生産に関わっていただき販路を拡大していく必要があり、県としても応援してまいります。
 昨年、越前がにのブランドイメージを高めるため、最上級ブランドである「越前がに 極」をつくりました。
 これは全国的な注目を集め、越前がにの評価が一段と高まり、「極」以外のカニも含め、全体としての価格が2割増しになりました。
 今年度は、さらにブランドイメージを高めるため、地元漁協の協力を得て、越前がにの出漁式や漁船団のダイナミックな操業風景、初セリまでの一連の過程や釜茹での風景などこれまでにない映像を撮影し、インパクトのあるPRを行います。
 県では、農林水産業を担う新たな人材を育てるため、園芸カレッジ、林業カレッジ、水産カレッジをそれぞれ開校しております。
 2年前に開校した「ふくい園芸カレッジ」では、年間108人の研修生を確保し、作物の模擬経営と座学により、園芸の担い手を育成しています。新規就農コースでは、県外出身者22人を含む31人の研修生が、作物を自ら栽培、収穫し、各自の判断で出荷しております。
 また、今年4月に越前市に「ふくい農業ビジネスセンター」をオープンし、7月には栽培技術や経営力を向上するため「農業経営力向上塾」を開催しました。集落営農リーダーに企業的な経営能力を身につける研修を進めてまいります。
 林業では、今年5月に「ふくい林業カレッジ」を開校しました。研修生9人には将来の本県林業の担い手の中心となるよう期待しています。
 水産業では、昨年6月に「ふくい水産カレッジ」を開校しました。今年6月には、海女コースで初の修了生が誕生し、次世代への橋渡し役を担うことになります。
 大規模経営が困難な中山間地域では、複合的な農業・農村経営を進め、地域資源を生かしたビジネスの展開を図ることが重要です。
 今秋から、「里山里海湖ビジネス研修」を新たに開催し、中山間地域の地域資源を活用した新たな農業ビジネスを生み出す人材の育成や、異業種間交流を図ります。
 このほか、施設園芸やクルミ、カリンなどの果樹栽培の導入とともに、歴史文化や豊かな自然環境を生かして、農家民宿、農家レストランやオーベルジュ、トレイルコースの整備など、里山里海湖ビジネスの展開を支援してまいります。

4 明日の福井を支える人材の教育

(福井の教育モデルを取り入れる動き)
 次に、教育のお話をさせていただきたいと思います。
 教育については、福井県は「学力・体力日本一」であります。先ほど、子どもの幸福度日本一と言いましたが、「福井型18年教育」ということを進めており、全国的にも高い評価を得ています。皆さんあまりご存じないかもしれませんが、国の学力テストは以前に一度中断して、最近復活したのです。福井県は、国が中断していた間も、昭和26年から変わらず小中学校での独自の学力テストを続けてきました。そういう地道な結果がここに表れているのではないかと思います。山形県など他県においても独自テストを始める動きも見られます。

(高校学力向上)
 小中学校ではいろいろな工夫ができるのですが、高校になりますとかなり専門化しますので、先生も独立的であり、教え方も非常に難しいですね。高校の学力テストというのはありません。入試の一部として大学入試センター試験があるだけです。今年から、センター試験の問題を加工しながら、県が独自で高校のテストをするということを始めております。そうすることによって、高校の先生がどうやって教えたらいいか、あるいは受験指導で何がポイントか、センター試験というのはどのようなものかということを、よりしっかり頭に入れていただいた上で、高校の教育をしようと教育委員会が思っています。
 また、今年から、浪人生のために、東京の予備校に行かなくてもいいように、福井駅前に自習教室を設けて、退職した先生の協力を得て、英語や数学・理科の質問に対応するという制度も設けております。7月末時点で77人の受験生が頑張ってくれています。

(教育研究所の機能強化と授業改善)
 なお、福井国体が2年後に開催されますが、福井運動公園の前にあった教育研究所を春江工業高校跡地に移して、大学入試制度改革の研究や教員の研修、あるいは全国初となる全ての公立小中学校を対象にした遠隔通信研修などを行います。
 あわせて、「学力・体力日本一」に相応しい福井の教育の歴史などを、県内外に発信する教育博物館を研究所内に整備します。

(英語力の向上)
 私が知事に就任したときに、高校を卒業したら英語で日常会話ができるようにしたいと考えていたのですが、どうもまだうまくいっていないような感じなのです。センター試験の成績は悪くないので、ぜひこれを達成したいと思います。
 日常的な会話能力を高めるにはどうしたらいいかというのが、福井県のこれからの英語教育の課題かなと思います。
 まず「話す力」を含めた「使える英語力」育成のため、本県では、小学4年生の外国語活動を1年前倒して3年生から英語教育を始め、日常的にラジオ講座などを聴くことにより、英語のリスニング量を増やしています。
 聞き取りができる英単語を、話す際に使用する英単語の5倍ぐらいにする必要があり、こういった指導体系を新しく、特に高校の中で作っていく必要があります。
 英語は、他の教科とは違い言語であり、やれば必ずマスターできるはずです。これまでのような「勉強」ではなく、ある意味「習い事」のように、長い期間をかけて積み重ねていくような、一大改革が必要だと考えています。

(福井国体に向けた選手育成)
 人材育成に関連して、2年後に迫った福井国体に向けた選手の確保・育成についてお話しします。
 少年選手については、福井国体で390人の選手の出場を計画しており、3年前から育成してきたジュニアアスリートと、県外の中学校を卒業した有力選手の合計約260人が、4月に強化指定校に入学し、強化を実施しております。
 成年選手については、440人の出場を計画。県内選手に加え、「スポジョブふくい」や「特別強化コーチ」、さらには「ふるさと選手」という形態で選手の獲得を目指しています。
 「スポジョブふくい」では、既に110人の有力選手を獲得しており、今年度は、さらに60人を獲得し、最終的には合計200人の選手獲得を目指します。
 「特別強化コーチ」では、既に30人を獲得しております。コーチという肩書ではありますが、実際は、国体において選手としての活躍を期待しています。
 また、バドミントンの山口茜選手やバレーボールの清水邦弘選手といった、福井国体で「ふるさと選手」として出場する確約をされた選手が既に85人おり、今後、この数を倍の160人程度まで増やしてまいります。

5 原子力・エネルギー政策

(福井県の立場と役割)
 原子力発電所については、福井県は現在、5つの課題を抱えています。1つは再稼働問題。高浜3、4号機が、一度、再稼働しましたが、裁判所による運転差し止めがありまして、やや複雑な状態になっております。また、40年を超えるプラントの運転期間延長について、規制委員会が認可しているものがあるのですが、これをどうするか。それから廃炉になる原子力発電所があります。さらに、使用済燃料の中間貯蔵をどうするか。そして「もんじゅ」の将来。この5つです。これだけいろいろなものが重なっているのが福井県なのであります。

(高浜3、4号機の再稼働)
 再稼働については、今年2月に高浜3、4号機が再稼働をしたのですが、1か月後、大津地裁において運転差し止めの仮処分決定がなされました。これは法律的といいましょうか政治的といいましょうか、個人の利害に関わる争いの仮の決定をするそういう手続きを用いて、国家の原子力・エネルギー政策という大きな課題に対して、一種の政策訴訟を行うような感じに見え課題が多いわけです。
 特に三権分立という問題に対する判断をこれからどうしていくか。もちろん三権は分立なのでしょうが、国政の中で立法あるいは司法、行政が理由なく分裂してはいけないわけです。一定の枠組みの中で役割を果たして正しいか正しくないかの議論が必要だと思います。ですので裁判の管轄の問題や大きな国益に関する事案を裁判としてどう手続化するかというのは、これから課題だろうと思います。なお、高浜3、4号機の仮処分については上級裁判所で審議されていくと思いますので、そういう中でできるだけ遅滞なく判断し、この問題に対応することになると思います。

(40年超運転)
 40年を超える運転というのが課題になるわけであります。これはこれまでにないことですので、よくよく慎重に判断しなければなりません。40年を超える運転をすべきかどうかという判断は、現在、高浜1、2号機と美浜3号機という3つの原子力発電所がその対象になります。高浜1、2号機について、規制委員会としては運転期間延長を認めるとの判断をされたようですが、本当に大丈夫だろうかと、いろいろな気持ちは皆さんあると思います。極めて厳正に審査する必要があると思います。その際に、特に原子力事業者あるいは国においては、この40年超運転というのはどういう意味があって、安全上何が違うか、まだまだ説明が足りない。そういうこともしっかり進めていただく必要があるだろうという状況かと思います。

(使用済燃料の県外搬出と新たな核燃料税)
 次に、使用済燃料の県外搬出という話であります。福井県は、原子力発電は役割を担ってきましたが、使用済燃料については県外できちんと貯蔵するなり処理をしてほしいという考えを従来から持っております。県内の使用済燃料の貯蔵量は3,600トンで、全国の4分の1を福井県内の原子力発電所で貯蔵しています。そこで今回この我々の主張を税制面から具体化するために、5年ごとの核燃料税の見直しに当たり、政策的な税制として、この使用済燃料を県内から県外へ搬出、持ち出してほしいという「搬出促進割」という制度を設けることを提案しています。使った後に貯蔵して5年を超えるものについては安定化しますので、どこかほかの場所で貯蔵したらいいということであります。

(廃炉の着実な管理と廃炉ビジネス)
 今回廃炉になる原子力発電所は、美浜1、2号機、敦賀1号機の3基あります。
 核燃料税については、従来、運転中のプラントにはもちろん停止しているプラントにも同じように課税しています。しかし、廃炉になっても引き続き住民の安全対策が必要であるため、廃止措置中のプラントについては、その半分を課税する。使用済燃料については搬出していただくように課税をする。4つの仕組みをつくったと思ってください。
 我々としては、廃炉というのはすべて終わったもういいのだというようなものではなくて、廃炉も運転の一部だと思っておりますので、同じように対応するという「安全協定」を、今年2月に県と立地市町、事業者とで結びました。
 また廃炉については、廃炉自体のビジネスが生じます。これは、美浜1、2号機であれば、30年間で約700億円のプロジェクトと見込まれています。敦賀1号機も、約25年間で400億円近いプロジェクトと見られます。先月、電力事業者による工事概要の説明会が開催され、200社を超える企業から約400人が参加されました。廃棄物の処理、あるいはレーザー除染などいろいろな事業が可能であると思っています。

(「もんじゅ」と核燃料サイクル)
 最後に、「もんじゅ」については、原子力機構に代わる運営主体を示せとの規制委員会による勧告(27年11月)を受け、文部科学省は有識者検討会において議論を重ね、今年5月に提言をまとめています。
 提言では、原子力以外の分野の専門家を運営に加えてガバナンスを強化することなどが挙げられ、具体的な運営主体について、文部科学省が中心となり、関係省庁とともに検討しているところです。
 「もんじゅ」は、日米協定を前提とした核燃料サイクル政策の中核施設であり、国においては、この「もんじゅ」を生かすか否か、最後の機会と認識すべきであります。
 県としては、国に対し、関係閣僚による責任体制を整え、原子力政策の方向を明確に示すよう繰り返し要請しており、政府一丸となって「もんじゅ」を含む核燃料サイクル政策の将来に真剣に取り組むよう、引き続き強く求めてまいります。
 以上が原子力発電に関わる課題でございまして、一つ一つにそれぞれ適確な判断が要求されますが、県民に本当の理解を深めていただき、安全を第一に、そして福井県の原子力政策にしっかりした方向性が出るようにしてまいりたいと思っています。

 以上でございます。ありがとうございました。

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