関西経済連合会での講演

最終更新日 2010年2月4日ページID 002830

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このページは、平成20年2月19日(火)、関西経済連合会の地方分権委員会広域連携部会で、「関西における広域連携」と題して知事が講演した際の発言概要をまとめたものです。

 Ⅰ はじめに
 Ⅱ 関西と福井県の歴史的なつながり
 Ⅲ 関西と福井県の位置付け
 Ⅳ 交通ネットワーク
 Ⅴ 道州制について
 Ⅵ 最後に

  [意見交換] 
 

【Ⅰ はじめに】

200219講演写真1 昨年10月から、NHKの連続テレビ小説「ちりとてちん」が放映されています。「ちりとてちん」は、福井県、特に小浜が舞台となっていて、嶺南と関西との関係が良く描かれていると思います。また、お父さんが鯖江で眼鏡の仕事をされているという設定で、嶺南だけでなく、嶺北も紹介されています。

 また、本県では、関西学院大学、関西大学との交流も積極的に行っています。関西学院大学とは、平成16年2月の大長山におけるワンダーフォーゲル部員14人が遭難され、救助をしたことが縁で交流を深めています。福井豪雨でボランティア活動をされたり、毎年山に登ったり、子どもたちとの交流も深められています。

 関西大学とは、学長が幕末福井藩の歌人・橘曙覧のファンであったことから、交流が始まりました。橘曙覧は、米国のクリントン大統領が天皇にお会いしたときに引用した歌の作者で、日本を代表する歌人です。関西大学は桂三枝さんの出身校でもあり、「笑い」の研究を一緒にやっています。

 私は今回の2回目のマニフェストに「笑い」を書きましたが、政治、行政の場に「笑い」という言葉を取り入れた最初の政策公約となったのではないか思います。「笑い講」などを開催して、「笑い」も利用した健康長寿、ブランド化を目指しています。

  この関西経済連合会においては、一昨年の4月にも役員会で「21世紀の関西と福井」と題して講演をさせていただきました。その折には、「福井は関西の一員であり、福井で起こったことは、関西で起こったことと思ってほしい」ということと、「広い地域を視点において関西を考えてほしい」ということを申し上げました。

 大阪と東京から同じ時間で他の地域へ到達できる距離を比較しますと、大雑把に申し上げて大阪は東京の半分くらいではないかと思います。距離で半分ということは、エリアで言いますと4分の1以下になります。

 現在、北陸で東京と大阪の、どちらにも同じ時間でいけるところは富山ではないかと思います。平成26年に北陸新幹線が金沢まで開通しますと、これが金沢になります。そして、北陸新幹線が敦賀まで来ると、さらに西に動きます。関西の皆さんも、このような状況を真剣にお考えいただきたいと思います。

 今回は演題が「関西における広域連携」ということですので、まずは、関西と福井県の歴史的なつながりからお話したいと思います。

【Ⅱ 関西と福井県の歴史的なつながり】

 5世紀中ごろから6世紀頃の方で、第26代天皇の継体天皇という方がいらっしゃいます。継体天皇は、50歳を超えるまで「越」の国、つまり今の福井県で育ったと「日本書紀」に記されております。また、昨年がちょうど1500周年になりますが、大阪府の枚方市にあった樟葉宮(くずはのみや)で最初に即位され、その後、3度目の遷都で大和の地に入られました。

 そのほか、高槻市の今城塚古墳や茨木市の太田茶臼山古墳など、ゆかりの地が関西にも多く、福井県と関西とは、継体天皇の頃からつながりがあったといえます。

 このころ、越前は、石川県、富山県、新潟県を含む地域として「越(こし)」と呼ばれていて、中心は越前にありました。

 皆さんもよくご存知と思いますが、源氏物語が書かれて千年を迎える、あの紫式部も福井県と大変ゆかりの深い人物です。彼女が、その生涯で唯一都を離れて暮らしたのが、福井の地だったと言われております。

 彼女の父の藤原為時が越前の国守に任じられ、父とともに国府があった現在の福井県越前市(武生市)に滞在されました。源氏物語の「浮舟の巻」にも「たとへ たけふの国府にうつろい給ふとも 忍びて参り来なんを、なほなほしき身ほどはかかる御為こそいとほしく待れ」と、都から少し離れた土地の例えに書かれております。

 為時は、はじめ淡路の国主へと任じられることが決まっていたようですが、天皇に句を献じて認められ、念願の越前の国主に任じられたということであります。当時の越前の国は、地位の高い大国の土地柄であったということがわかります。

 また、芥川龍之介の小説「芋粥」のもとの説話は「今昔物語」であります。この面白い話の中で、ごちそうを期待する五位の役人をいざなった藤原利仁たちは、馬で京都を出発して、次の日の夜には敦賀の利仁の屋敷に到着しています。畿内から越前までは、昔からそれほど遠い距離とは思われていなかったことを示すエピソードだと思います。

 その後も、いろいろございますが、幕末には、松平春嶽や由利公正、橋本左内といった偉人が活躍されました。
 司馬遼太郎の「龍馬がゆく」、皆さん、龍馬は一体「どこに行った」のでしょうか。この小説の最後の大事なところに、「越前に行く」と書かれています。
 由利公正は、龍馬がわざわざ福井に訪ねて登用を願いにくるほどの人物で、有名な五箇条の御誓文の起草者でもありました。この起草文がオークションに出されましたので、本県で落札をいたしました。

 ここから、少し福井県の政策の紹介をさせていただきます。私は5年前にマニフェスト「福井元気宣言」を掲げて知事になりました。二期目の現在は、「新」を加えてマニフェスト「福井新元気宣言」を掲げ県政を進めています。

 5年前には、政治用語として「元気」という言葉は使われていなかったと思います。しかし、最近は、全国の知事の半分くらいがスローガンなどに「元気」と書いております。それなりに普及してきました。

 福井県は、平均寿命が常に全国最上位のグループにあり、平成12年には男女ともに全国2位でした。長寿の秘密を様々な観点から研究したところ、特に福井の食生活が大きく関係していることが分かりました。

 例えば、1日当たりの米類摂取量は全国1位です。大都市では兵庫県(38位)、大阪府(42位)、奈良県(43位)と、あまり食べないみたいですが、これは若い人が多いためかもしれません。このほかにも、芋や豆腐、油揚げを良く食べるとか、塩分が控えめであるとか、体に良い食習慣があります。

  また、1人の女性が生涯に産む子どもの人数の目安となる「合計特殊出生率」という指標がありますが、福井県は一昨年この数値が最初に上昇した県です。平成17年には1.50で全国第2位となっています。大阪府や奈良県は40位台です。

 福井県では、子育て支援として、現在、特に効果があると思われる3人目の子どもを産む人たちに強いインセンティブを提供しております。

 若者の結婚の解決についても、「めいわく・ありがた(迷惑だけど、ありがたい)」事業をしています。婦人団体や理容・美容院さんと連携して、「おせっかい」を焼いています。都会では、なかなかやりにくいことだと思いますが、福井県では、今年から企業にも取り組んでもらおうと思っています。

 福井県は暮らしやすさが日本一でもある豊かな県です。「お金の使い方を知らないのではないか」とよく言われますが、1世帯当たりの貯蓄現在高も全国第1位です。

 また、県出身の全国で活躍する社長の数はどこよりも多く、帝国データバンクの調べでは26年連続で人口当たり第1位となっています。

【Ⅲ 関西と福井県の位置付け】

 関西といえば、一般には、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の2 府4県を指しますが、行政の広域の観念としては、福井、三重、徳島を含めて2府7県とされています。

 いずれも関西とは強いつながりがある県ですが、本県は、関西で使用される電力の5割以上を供給しています。現在、新潟県内の原子力発電所は地震のため運転を見合わせていますが、福井県内の原子力発電所の運転が止まると、関西は大きな打撃を受けることになります。

 また、本県の原子力発電所の発電量を火力発電で発電しようとすると、二酸化炭素の排出量が全国で5%増えることになります。

 このような原子力発電による地球環境への貢献をわかるようにするため、東京の大学と連携して、原子力による貢献度を数値化しようと思っています。

 関西と福井県とは人の出入りも活発です。福井県から関西へは3,800人くらいの人が転出していますが、逆に、関西から福井県へ3,300人くらいの人が入ってきていますので、差し引き500人が流出しているということになります。

 関東の方への転出は、関西より少ない2,800人ですが、転入者も1,800人と少ないため、差し引き1,000人が流出しています。関西とは行ったり来たりの関係で、関東へは出超という感じです。

【Ⅳ 交通ネットワーク】

200219講演写真2 次に、交通ネットワークについてお話します。

 現在、北陸新幹線の福井県内への延伸に向けて、力を入れています。北陸新幹線が西に伸びるにつれ、東京-富山間が2時間強、東京-金沢間が2時間20分程度、東京-福井間が2時間40分程度となり、ますます首都圏が身近になります。

 金沢から敦賀まで8,500億円かかります。この財源をどう工面するのか、政府・与党に期待しているところですが、皆さんの応援をいただければと思っております。

 高速道路の整備につきましては、舞鶴若狭自動車道が関西を経て小浜から敦賀で北陸自動車道に結ぶ工事をしており、金沢まで新幹線がつながる年と同じ、平成26年度に全線が開通する予定です。

  残るのは岐阜県境に向けての中部縦貫自動車道ということになりますが、この整備に当たりましては、現在、ガソリンなどの暫定税率の問題があります。これが延長されないと、道路関係予算が半分くらいになり、福井県では、おもに維持補修費にしか充てられなくなります。これほど各地に大きな影響がある話を、3月に期限が切れるからと言って、唐突に持ち出すのは問題だと思っています。この10年程度は延長し、その間に道路整備のあり方を見直すとすべきだと思っております。

【Ⅴ 道州制について】

 道州制については、先日、日本経済新聞に道州制に対するアンケートの結果が掲載されていました。たしか、関西の各府県の中では、「強く反対」が滋賀県と兵庫県で、奈良県と福井県は「どちらかといえば反対」でした。

 よく、道州制を導入すれば、地方分権が実現するかのように議論されています。また、連邦制を引き合いに出して、経済発展を達成するために道州制を主張する向きもあります。

 しかし、アメリカ合衆国やその他の国は、イギリスなどの母国や強力な隣国に対抗し、国を守るために、統一をさておいて、止むを得ず連邦制をとったのでありまして、歴史上、経済の発展や地域の独自性の発揮のために連邦制を導入しようとした例は知りません。

 また、最近、ベルギーが北と南が民族や言葉が違って、半年間内閣を作れないなど、統一できないという問題がありましたが、どの国も、国家の分裂を回避し、統一を維持するための窮余の策として連邦制をとるのであります。

 このように、日本のように統一している国が連邦制のようなものを導入するのは逆であって、わが国をさらに弱体化させるものであり、歴史のみならずグローバル経済における国家の役割を看過しているものだと思います。

 もともと政治的にまとまりのある一つの国家が新たに連邦制を採ることは、国家の政治的意思としても本末転倒のあり得ない考えであると思います。

 現在の都道府県の規模が、広域地方政府として適当かどうかの議論も真剣に行われていないことも気になります。

 最近行われる大都市の選挙を見ても、投票率は低下の一方ですし、住民と政治家の方々が、互いにしっかりと顔を見て投票行動をしているのか気がかりです。

 これを、道州制になって関西州で選挙をすると、知事選では、選挙運動の期間は17日間ですが、とても17日間では回りきれず、有権者の方々と接触するのに何ヶ月もかかると思います。デモクラシーと考えたときに、それでいいのかと思います。

 現在の県の大きさは、何をするにしてもほぼ適当な規模ではないかと思います。現在の「県」ではできないことがあるのか、道州の大きさになった時に果たして何ができるのか、冷静に考えてみる必要があると思います。

 唯一、コストの面では削減が計られるかもしれません。7人の知事が1人で済んだり、議員も道州全体で100人くらいでしょうから、福井県だと5人くらいにまで減る計算になるのかと思います。しかし、住民の意思や自治はどうなるんでしょう。

 そもそも、昭和の初期に道州制が議論されたときには、官撰知事の時代でした。現在のように、民意を汲み取りながら地域を統治するには、道州というのは大きすぎると思います。子どもたちの学力調査や生活保護の実態、失業率などを見た場合に、大きくなればなるほど目も届かなくなり、解決もままならず、社会的な不安が増すものと思っています。地方の良いところも、悪い意味で平準化されてしまうと思います。

 規模を大きくして囲い込むエンクローズよりも、大都市はまわりを引き付けるアトラクトの方が課題であろうと思っております。

 また、大阪くらいの規模であれば、もっと多くの人材を育てられてもしかるべきと思います。東京一極集中が進み、東京に人材が集まっていますし、大阪と比べると、むしろ中京の方が人づくりが盛んだと思います。もっと、人を育てなければならないと思っています。

【Ⅵ 最後に】

 私は、国民が広く地域に目を向けてもらいたいと思って、「ふるさと納税」を提案いたしました。  1人の子どもが生まれて高校を卒業するまでに、教育費や福祉などで県や市町村が負担する金額は、1,700万円から1,800万円くらいになります。せっかく税金を使って育てても、県外の大学に進学して、大都市圏で就職すれば、そちらで税金を納めることになります。

 福井県の場合は、だいたい年3,000人くらいの人が、高校を卒業して県外の大学に就職し、本県に帰ってくるのは1,000人くらいですから、3分の2は県外に行ったきりです。

 このようなライフサイクルを通じた行政サービスと税負担のアンバランスを放置すれば、地方の財源が枯渇し、優秀な人材を育てることができなくなります。

 それで、皆さんもご存知だと思いますが、「ふるさと納税制度」が、今国会で審議されています。これは、私が一昨年に、日本経済新聞の経済教室というコラムに提案したものがきっかけで、前総務大臣など皆さんが共感され、実行していただきました。人の一生を通じて行政サービスと税負担をバランスさせる新しい税制「ふるさと寄付金控除」を提言したのです。

 例えば、住民税を100万円納めている人が、自分の生まれ故郷やお世話になったところに1割を限度に10万円を寄付すると、これを限度に住民税から税額控除されます。住所地には90万円納めることになり、本人の負担は増えないわけです。

 私も、担当者の一人として、国の研究会の委員をしておりましたので、何とか実現してほしいと思っておりますが、この法律(地方税法)は、先ほど申し上げました道路特定財源の暫定税率を延長する法律と審議手続が一緒に動いておりますので、どうなるか予断を許さないところです。

 いろいろと申し上げましたが、この辺りで私の話を終わらせていただきたいと思います。どうも、ありがとうございました。 

[意見交換]

・最近、北へ旅行することが多いが、安全・安心について、福井県がこんなにすばらしいとは知らなかった。芦原温泉に泊まって感心したことをひとつ。部屋に鍵がかかっていないので、仲居さんに大丈夫か尋ねたところ、うちにはそういうお客さんはおられませんという答えが返ってきた。
・話の内容は、「関西は福井から見て遠くなっている」という警鐘であったかと思う。道路整備が進んで中京と近くなる。関西は、もう少しがんばれということを、もう少し具体的に聞かせてほしい。

(西川知事)
・関西は、最近、内向きになりすぎていると思う。瀬戸内や周辺など、まわりのいろいろな地域に、もっと目配りをしてはどうかと思う。かつての都市としての支配力や吸引力が相対的に弱くなっているのではないかと思う。北陸新幹線や原子力発電所の問題については、自らのことと思っていただきたい。
・福井県は、首都圏では全然知られていないので、関東での知名度を向上しなければならないと思っている。
・北陸新幹線の敦賀以西のことであるが、東海のJRは、自前で5兆円つぎ込んで東京~中京のリニアモーターを建設するという。われわれは、北陸新幹線の整備を、国や他のJRの力を借りて、何とか整備できないかと考えている。そういったところのパワーが、関西は弱くなっていると感じる。北陸新幹線の整備は、大阪から始まらなければならなかった。きっと、以前なら、そのようにしていたと思うし、関西は、それくらいの経済力や政治力があったと思う。

 

・道州制については、道州ができたからと言って地方がうまくいくとは限らないとか、現状の中で地方分権を徹底すべきという考えだと思う。現在、関西では、兵庫県と滋賀県が「反対」、福井県と奈良県が「どちらかといえば反対」であった。北海道は特区で道州制を行っているし、九州も道州制を視野に入れた動きをしていると思うが、仮に九州のどこかで知事をしていたら、道州制についてどう思うか。

(西川知事)
・地方分権について言えば、仕事自体は、すでに地方にこなしきれないほど来ている。何が足りないかといえば決定権限である。中国製のギョウザや年金の問題など、地方も巻き込まれているが、何も主体的にできないのに、報告が足りないと言われている。
・国の出先機関や人員は減らせばよいと思っている。
・道州制については、首都移転の一種のような印象で、かつての首都移転論がうまくいかなかったように、これもうまくいかないように思う。
・例えば、北海道や九州が道州制をやりたいならば、一度やってみればよいと思う。やってみて良ければ、他の地域もまねをするだろう。

 

・道州制は、公務員をリストラするひとつの手段だと思っている。
・北陸新幹線については、まだ計画の段階なのに福井駅だけができるというのは、少し不思議な思いで見ている。


(西川知事)
・新幹線はバラマキだというような、このような論調で全国版のメディアが報じていることが多い。この問題に対する、公共事業の成熟度も世論も、いまが過渡期であり、10年ほどすればクリアになり、次の判断ができると思っている。まだ、ネットワークを結ぶ必要が残っている。
・北陸新幹線については、金沢で止めて、米原まで空白というのは、国土整備の観点でも、国としてあってはならないことだと思っている。

 

・前の任地は函館支局であり、その経験からも、その地にいなければ見えないものがあると思っている。福井に行かなければ見えない問題があり、これがとても重要である。
・福井県と関西との距離が離れてしまったのは、根本的に、どこに問題があるのか。

(西川知事)
・関西が離れたというより、むしろ他が近くなったということである。関西は、なんとなく目先のことばかり考えておられたのではないか。東京と違って政治的な力が働かないので、皆さんが10年先を見越して、大都市と地方の相互の結び付きを意識し、関心を喚起してもらわないといけない。

(西川知事)
・日本人は根本論・観念論が好きである。道州制もそのような感じだ。個別・具体的な議論をもっと深めるべきである。

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