平成20年度課長級研修での講話

最終更新日 2010年2月4日ページID 006717

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 このページは、平成20年8月7日(木)に行われた平成20年度課長級研修での講話をまとめたものです。

 Ⅰ 仕事の仕方について
 Ⅱ 人の育て方について 
 Ⅲ アイデアを出すことについて

 本日は、私のホームページのエッセイから特に仕事に関わるものを抜き出したものについて、説明を加えながらお話をしたいと思います。 

 【Ⅰ 仕事の仕方について】

200807講演写真1(数について)
 仕事をしていますと、現場ではあまり数字は出てきませんが、直接現場を見ることによって仕事の様子がどうなっているのかが直観的に分かるものです。しかし、皆さんは管理職になられて、いつも現場に行ってばっかりはいられません。やはり、一般職員が現場に行くことが多いと思います。ですから、どうしても間接的な統計とか、あるいはデータで話を聞くことになりますね。ある対象が何割ぐらいかとか、あとの1割がどうにかなりそうだとか、そんな話を聞くと思います。
 今日皆さんにお配りした研修資料には、まさにそういった数についての考え方が書いてあります。
 数字というのは案外大事なもので、数字がはっきりしてきますと、物事の大半が解決されるといってもよいくらいです。例えば、4、5年前までは都道府県ごとの失業率は統計上ありませんでした。北陸で何%、関東で何%、四国で何%というように、国の出先機関のブロック毎の統計しかありませんでした。それではいけないということで、福井県として全国に先駆け、その統計を一度取ってみようということになり、都道府県ごとに何%だということが分かりました。そうしたら、その1、2年後に厚生労働省が失業率を全国から取るようになったのです。
 失業率が分かるようになると、失業が下がってくるのです。それは雇用政策が効を奏したということもあるかもしれませんが、何か物事の背景や現状が数字的に明らかになると、問題が明瞭になり、また時間も経過することもあり、自然に事柄が改善されるということかもしれません。
 ですから、皆さんが行政を進める場合、数字があいまいなことを理由にして、そこでそれ以上分からないとして、壁にぶつかって決して戻らないことが大事です。まさに、そこからがスタートなのです。できるだけ数字を取ってみるとか、工夫をするとか、あるいはお金をかけて調べることが重要です。そこで初めて問題点が分かると思います。
 また、世の中に何々が幾つぐらいあるなど、皆さんが毎日行っている行政でも意外と数字のことを知らないのです。
 私は皆さんによく聞くのですが、課の中では職員の聞き役になってください。いろいろ聞いてみてください。そうすると、組織として分担している対象を、どんなイメージでとらえればよいかが分かると思います。
 自己評価の2割増の法則というのがあります。「私は100%の努力をしている」と思っていても、周りの人からみれば8割しかやっていないと思われているということです。自分自身では2割インフレに評価していると思ってください。逆に、他人に対する評価は厳しくて、8割で評価していると思います。
 ですから、決して他人の評価を「あいつはおれを評価していない」とか、「部下はおれをこんなふうに思っている」とか、「あの上司は自分をわかっていない」とか、そんなことは決して思わないことです。冷静に心静かに、うんそうか、と思って仕事をしてほしいということがここに書いてあります。
 私はよくイベントに出席してあいさつを述べます。行事予定表には出席者が500人と書いてあっても、実際は300人くらいしか集まっていないことがあります。よく見ると200人ぐらいしか集まっていないこともあり、これでは7掛けにもなりません。
 それから、2-6-2の法則というのがあります。これはよく言われることですが、10人いると2人がよく働き、6人は普通、残りの2人は何とかついてくるだけということだそうです。こういう冷徹な経営学的な考えはどうかと思いますが、できるだけ多くの人がいろんな事情を解決して頑張っていただかなければなりません。
 全国のイベントやまちづくりで成功するのは、全員が連携して気持ちを一つにしてうまくいくというよりも、実例を聞いてみると、1人か2人が一生懸命やって、それがだんだん広がっていくことが一般的です。2から残りの6に波及し、さらに2へと、全体の10に波及して行くということですから、あまり大々的な体制を敷いて全体を一気に動かそうというのは難しいことが多いので、「この人は」とか「ここがポイントだ」というところを押さえて広げていってください。
 また別の話になりますが、我々が一生懸命PRして、アンケートなどを取って「あなた御存知ですか?」と聞いても、意外と2、3割の方しか知らないことが多いですね。ですから、2割ぐらいが既に核としてどこかに芽があるという、そういう仕事の仕方をしてほしいと思います。
 また、計画を完成させてから何かを始めようというのではなく、大事なことは少しでも先に着手しておいて、皆さんの計画にそれを計画化して入れて、そしてしかるべき実行体制を取るという、そういうやり方でやっていただくといいかと思います。

【Ⅱ 人の育て方について】

(助言社会)
 次に、「人の育て方」についてお話します。課長は管理職ですので、ご自身のことのみならず、部下の問題が生じます。
 皆さん、毎日部下に助言をしていますか。「これはこうした方が良い」とか「自分の担当のときはこうだった。こういうことではないのかな」というようなことを言っていますか。家庭でも同じだと思いますが、「ワンポイント・アドバイス」をやっていただくと、課の中での教育にもなります。
 叱るのではなく、助言ですね。これを期待したいと思います。我々の行政の仕事でも、失敗したり、ちょっと停滞したりするときに、小言ばかり言わずに「なぜそうなのか」ということを助言することが大事で、そういったことはトレーニングにより自分でできることと思います。この点は、私自身のことでもあると思います。

(助言者のいろいろ)
 次の話は、ゴルフプレーヤーの例をひいて、コーチという技術的指導者と、メンターという精神的助言者についての話です。皆さんも困ったときに、あるいは悩んだときに、あるいは壁にぶつかったときに、いい相談相手を見つけてください。本当にあなたたちの気持ちになって、「こうするのはこのためだよ」とか「こうなるからだよ」と親身になって言ってくれる人が世の中に一人ぐらいはいます。メンターというのは、必ずしも表面的に成功した人とは限りません。自ら深い信念を持ち、経験に基づく指導のできる、自他ともに認められた人をいいます。そういうメンターというのを大事にしてください。

【Ⅲ アイデアを出すことについて】

200807講演写真2(「関心」について)
 県庁は物事を始めるのが大好きなところです。毎年、予算を獲得し新しいことを始めますが、最後まで続けるのはほとんどなくて、大体2、3年で終わります。中には、知らないうちに終わっていたり、成果がよく分からずじまいということもあります。そうかと思うと、たまに延々と続けているものもあり、それはともかく、何か新しいことをやろうとするときには、嫌にならずに行政として続けていけるかということを常に考え、覚悟してやってほしいと思います。10年なら10年は絶対にやって成果を上げるのだというぐらいの覚悟ですね。適当にやることのないようにしてほしいと思っています。
 行政は、これからはアイデアが大事ですね。お金がそんなにたくさんあるわけじゃありませんし、行革もしなければなりませんが、何か物をつくれるのであればそれが一番強力ですし、インパクトもあります。物をつくるというのはすばらしいことです。よく箱物とかいいますが、これがないと会議もできませんね。これはすばらしいことです。問題はこれをどうやって使うかということです。
 しかし、今の時代は、残念ながら、こういった箱物はなかなかつくれません。この部屋にあるような立派なシャンデリアを今つくろうと思うと、ちょっと躊躇するでしょう。10年あるいは20年前であれば、それが気になりませんでした。これからはもっと厳しい時代ですから、限られたお金の中でハードなものはあまりつくれません。これからは創意工夫の時代です。アイデアが重要です。皆さんにはそれを大いに期待しているところです。

(ものの見方について)
 仕事をするときに、どこに関心を向けるかというのは非常に重要なことです。県には様々な分野があります。その際、組織というのがあり、また、皆さんの仕事と部下の仕事という役割もあります。同じ仕事を行う場合でも、立場によってちょっとずつ関心が違いますよね。皆さんの思っていることと私が思っていることでは全然違ったりもします。
 しかし、ここで少し考えてほしいのは、私の関心事とあなたの関心事とではどちらに価値があるかということです。組織ですから、間違っていなければ、上司の関心事に合わせるというのが組織的にパワーが発揮できるものです。もちろん、皆さんの関心事を上司に合わせさせるぐらいのパワーというのは大事ですが、いずれにしても組織的な関心事にベクトルをできるだけ合わせて、思うことを実行する方が成果が上がる最良の道だと思います。できるだけ意見をよく聞いて、おかしくなければ上司の関心事に合わせる。おかしいと思ったら皆さんの関心事にあわせて上司の考え方を変えさせるという力強さ、そのようなことを大事にしてほしいと思います。
 アイデアについてですが、できるだけ自分のアイデアを大事にしてください。県庁の人たちと議論をしているときに、私の言うことをメモする人がいますが、これは一番つまらないことです。なぜかというと、自分が考えたことではないので、あまり役に立たないのです。そして腑にも落ちないと思います。
 ですから逆に、自分の考えをメモしてください。我々がいろいろ仕事をするときには、場長の試験場であろうが、所長の出先機関であろうが、見る方向が正しくなければなりません。例えば、このコップを見るときにも、これではちょっとコップの見方としては正しくないし、これも正しくないし、丸にしか見えない。やっぱりこういう斜めの方向からの一定のアングルというのがあると思いますので、そこを押えてほしいということです。囲碁とか将棋でもそうで、着眼点、目のつけどころ、これが大事です。
 目のつけどころが悪い、と仕事をいくらやってもうまくいかないものです。労多くして益少なし、と言いますが、着眼点を訓練してください。
 例えば、この4月から「ふるさと納税」がスタートしました。これは客観的にみて着眼点がよかったから制度化されたのではないかと思います。着眼点が悪いと訳の分からないことを言っているだけにすぎないわけです。着眼を私は重視してほしいと思います。
 ですから、「何やっているんだ」というようなことを言わないで、「君の意見はそうかもしれないけれど、もう少し着眼を変えてこんなふうに考えたらどうか」と言ってほしいということがここに書いてあります。

(仕事と感情)
 仕事は冷静に進めなければなりません。しかし、人間としてそこに感情とか熱意というものがないと、決して立派な仕事はできません。冷やかな気持ちで、何かをやろうとしてもだめです。感情とか熱意を仕事に入れてください。「これをやりたいんだ」とか「これはいいと思う」とか、そういうことが大事です。
 我々公務員というのは、何でも一応解説したがります。本当は自分たちがやらなければならないのに、他人事みたいに解説する人が意外と多いものです。「これ誰の仕事?」、「あなたの仕事でしょ」ということが多いのです。情熱を持って仕事に立ち向かってほしいと思います。それでほとんどのことは解決するはずです。
 知識ではありません。足し算、引き算、そしてA、B、C、いろは、が分かっていれば、大抵のことはできるものです。あとは統計などいろいろなことがありますが、それは付随的なことです。これは大事だと思って、熱意を持って進めるというのが何よりも重要だと思いますので、ぜひ頑張ってください。

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