福井県中学校長会研究大会での講話

最終更新日 2010年5月14日ページID 011806

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 このページは、平成22年5月14日(金)にニューサンピア敦賀で行われた、福井県中学校長会研究大会での知事講話をまとめたものです。

220514講演写真1 県中学校長会研究大会でお話する機会をいただきありがとうございます。
 今日は福井県の子どもたちのために何かお役に立つことを校長の皆さんに一つでも話せればよいと思い、この会場に来ました。

 あらかじめ「校長等として学力向上のために具体的に進めている事業は何か」、またこの課題に対して「可能であれば新たに始めたいことは何か」についてアンケートをとらせていただきました。さらに、このアンケートの中で、今年の国民読書年に寄せて、後輩の教職員や子どもたちに薦めたい本を書いてもらいました。2日前に小学校の校長にも同じ質問でアンケートをとりました。
 (アンケートを見ながら)先生方にお薦めしたい本、それから子どもたちにお薦めしたい本、ざっと見ますと小学校と少し中身が違いますね。中学生らしく、小学生らしくというような意味じゃないですが、対象のお子さんが違いますから、薦める本も違うのだと思います。
 小学校の学力向上の対策としてどのようなものがあるかというと、一人一授業公開による授業の質の向上、それから基礎的な学力等への支援タイム、朝読書、白川文字学、あるいは職員会議などによる研修、地域・家庭との連携、こういう小学校らしい項目が多いように思います。このほか、他の学校との相互授業参観、あるいは大型テレビや電子黒板などのICTの活用、それから職員研修の充実、いろいろな項目があります。中学校の皆さんのアンケートを拝見しますと、もう少し具体的に書いておられます。
 問題は、アンケートに書かれた内容を具体的にどうすればよいかということです。技術的にこの問題をどう解決するかということでありまして、校長先生にそれぞれの学校で実行していただきたいと思います。

 さて、中学校で教えることは一番大変です。本屋の教育コーナーに行くと、校長先生の体験記が置いてありますが、小学校の校長は本当に楽しそうに書いてあります。中学校の校長になると、今はそうでもないかもしれませんが、20年ぐらい前の本を読むと、本当に悲惨な例が多いです。荒れた中学校をいかに克服したかという話ですね。
 基本的な構造として、中学校は問題が多いと思います。それは、生徒の数も中学校になると多くなりますし、何と言っても小学校から進学し、次は高校に進学するということですから、高校受験という進路指導が3年後に控えており、それ自体も大変苦労が多いことでしょう。また、子どもたちも思春期を迎え、父兄もナーバスになります。高校生になれば義務教育ではないので、ある程度柔軟に対応できますが、中学校はそうではありません。
 皆さん方は、小学校に対してもっときちんと教育して中学校に送ってほしいと思っているでしょう。一方、高校からはもっときちんとしてもらわないと困ると文句を言われるような仕組みになっており、兄弟で言うと真ん中の子どもみたいにストレスがたまるという状況ではないでしょうか。こういった中で、いかに良い教育をするかということです。
 そこで幾つか申し上げます。
 一番目は子どもと親のいろんな関係の問題ですね。二番目は学校全体としての管理と問題処理、先生と校長先生の関係。三番目は父兄との関係。この3つの話があると思います。そして学校全体の向上という大きな課題があります。
 それでは、校長としていろんなトラブルやアクシデントを防いだり、学力を向上したりするには、何をしたらいいのかということであります。校長の立場として一番何に気をつけたらいいのかということですね。
 もし私が校長であれば時間の許す限り、おせっかいかもしれませんが、各先生が行っている授業を一生懸命見ようとすると思います。
 今日出席されている校長の中には、1年を過ぎた先生も半分くらいはいらっしゃるのかしれませんが、20人なら20人、すべての先生の授業を1年間のうちに全部ご覧になりましたか(せいぜい1、2回の答えですか。もったいないですね)。ぜひ見てほしいのです。
 先生がどのように子どもたちを教えているのか、教え方はどうなのか、皆さんのこれまでの30年なら30年の経験を基にご覧ください。様々な子どもたちの様子なども見てください。そういったことをするのが最も良いと思います。
 そして授業を中心に、何が課題かということを取り出して、実行していただくのが最良の方法かと思います。校長にはきっとそれぐらいの時間はあるでしょう。1日1回としても、延べ200回は見られると思います。校長なりに一番合理的で良い方法ということになるのが良いと思います。

 さて、ここ3週間くらい、午後7時からラジオのNHK第二放送を聴きました。昨日は高校講座の社会と数学。一昨日は音楽でしたが、これは管楽器について、いろんな種類があるけれど、楽器がどの幅の音やどんなタイプの音を出せるのか、弦楽器とどう違うとか、それぞれのプレイヤーに「これはどういうことですか」と尋ねながら解説して、20分くらいで終わるものです。
 数学は、高次方程式の因数分解を放送していました。X3 +X2 …のような式を因数分解するときに、最後の定数がプラス12だったら(X-6)と(X-2)が因数の可能性があるということです。
 何を言いたいかと言うと、教える技術をもっと開発してほしいということです。もっともっと開発できると思います。ラジオで高校数学を教えるなんて大変なことです。全部一回言わないといけないのですね。「Xの3乗プラス3Xの2乗プラス5Xプラス3をP(X)とおいて」というように。それを20分で内容としては3つくらいのことを解説して、「今日教えたことをもう一回言いますよ」と繰り返すのです。音楽でもそうですよ。楽器が見えない私たちに、こんな楽器だと言葉で相手に言わせて、「こうだ、こうだ。これできますよね」と言って5種類ぐらいの楽器を全部一回演奏させて、番組が終了するのです。

 つまり、中学校の50分の授業は、無駄なことをしないで有効にそして興味を持って楽しく教えることができれば、その技術は極めて最高のテクニックと知恵とアートを要する仕事だと思います。こんな素晴らしい仕事は他の世界にないと私は思っており、それを担当しているのが皆さんですから、ゆめゆめ時間を大事にしてもらわないといけません。
 明日からでも授業の技術を良くしてください。3年生だったら来年の2月か3月には試験があるわけですし、不登校になりかける人もいるかもしれません。時間をおくことなく最高の技術を使ってできることから教えてください。
 なぜ私がこの場でそのようなことを話すかといいますと、福井県の中学生は日本一学力が平均的に高いわけですので、それをやれる資格が福井の先生にありますし、義務もあると思います。出来の良くない場合であれば、このようなことをやる前に基礎的な内容を教えなければならないでしょうが、皆さんの中学校はそのようなことはありません。校長にそれを指導してほしいと思っています。

 中学校になると、特に数学、英語、理科ではいろんな教え方があります。理科では実験をしますか。実験を教える技術は難しいと思います。私がもし校長であれば、実験というのは、通知表を渡した後の夏休みの直前ぐらいに、集中的に面白いものをまとめて、全校生徒の前で行うといったことを思いつきます。授業で1回1回やっていると、時間の無駄で、そんなことをしていると教える暇がなくなるかもしれません。
 英語もそうですね。何校か中学校の英語の授業を拝見しました。英語の授業は、今は全部英語で教えていますね。皆さんの頃はそんなことはなかったでしょう。授業を拝見して、先生が英語を話すときに、どういうセンテンスをどうやって選択して喋ることにより教育効果を高めたらよいのかということに関心を持ちました。例えば「分かった?」という時の言葉、だいたい決まっているのでしょう。しかし、何でもOKって言っていても変ですし、あらゆる種類の言葉、よく似た言葉をいろいろ用いて工夫するとか、子どもたちにこういう時はこういう言葉を使うなど、子どもたちの英語能力・レベルが上がるよう、限られた時間で最大限の効果を上げる英語教育でありたいと思いました。

 最近「基礎英語」も聴きました。中学1年生レベルですが、聴いても分からないことがあります。
 なぜ分からないかということですが発音が違うのです。となると、先生が授業中に話される仕方について、余程注意をしないと英語がいくら聞いてもよく分からない結果となります。
 例えば「Look at a blackboard」と言う時、「Look at」というのは「ルッカ」としか聞こえませんね。tは発音しません。聞いているとほとんど「Look a black」と聞こえるのです。前置詞やit、them、which、thenなど、誰でも知っている言葉が聞こえないことが、ラジオを聴いていて分かりました。また「チャロチャロ」と聞こえたのです。なぜ「チャロ」と言っているのか、「チャロ」が出てくるのかと思ったら、チャールズさんのことなのですね。ミスター・チャールズが「チャロ」と聞こえてしまうのです。それを授業中に「チャールズ」と言っていると、先の問題に戻るかもしれません。

 一つひとつ教える技術というのは極めて重要です。サイエンス教育もまた難しいのではないでしょうか。そして解決すべきこととして極めて大きいと思います。学校の授業時間も限られていますので、授業や実験の時間配分や教え方など、いろいろお願いしたいと思います。
 どこかの学校で授業を見ていたら、電池の直列と並列を2つ並べて議論していました。面白いと思いました。本当に腑に落ちるのは難しいと思いますね。電球はプラスの出っ張りのところからマイナスの方へ流れると教えますが、何故逆さまじゃないのかと。そうしないと科学原理の意味を覚えられないと思いますね。

 最後に、中学校では、小学校と違って子どもたちに将来への希望や、こんな人になりたい、というようなことを十分教えているということです。もっと授業を楽しく分かりやすくして、希望や将来のことについて教えるよう先生に指導してほしいと思います。
 全国の学習状況調査で「将来の夢や目標を持っている」と回答した児童の割合は、小学6年生では全国の都道府県の中で44位です。中学3年生では何位だと思いますか?39位です。多少県ごとの土地柄もあるのかもしれませんが、やはりうまく教えることにより意欲が出ればと考えます。

 そして、学校運営では部活動もあるでしょうし、先生方は教材の研究で大変でしょうが、学校でよく使う様々な常套文句から脱出を図っていただきたい。多忙だとか言っているだけでは何も解決しませんし、一人ひとりの子供と向き合うと言うだけでは向き合えません。そういう言葉だけ言っていても、問題は解決しないと思います。生徒が一人ひとりみな違うので、教え方がむずかしい、無理だという話で終わってしまいます。
 授業の中身にできるだけ時間をうまく使う教育方法を編み出してほしいのです。福井県の先生なら必ずできると信じていますし、だからこれまで子どもたちの学力が高いのです。
 これから未来を切り拓いていく子どもたちが少しでもたくさん出てくるよう、皆さんの頑張りに期待します。



 

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