新任校長研修講座での知事講話

最終更新日 2014年4月15日ページID 026489

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 このページは、平成26年4月15日(火)に教育研究所で行われた、新任校長研修講座での知事講話をまとめたものです。

 昇任おめでとうございます。
 本年度は、小学校では2割、中学校では1割、高校では3割の方が新しく校長先生になられました。

 皆さんは、ラジオ体操をしていますか。是非、ラジオ体操を10分やってください。また、ラジオの英語番組を聴いている方はおられますか。小中高とも校長先生が英語を聞くことはこれから大切だと思います。是非、ラジオの英会話番組あるいはテレビのそれを聴いていただきたい。『エンジョイ・シンプル・イングリッシュ』あるいは『おとなの基礎英語』という番組では、簡単な単語を扱っているのでお勧めします。まず校長先生が先頭に立って英語を学び、福井県の英語教育を進めていただきたいと思います。
【写真】知事講話

 先日、国立情報学研究所の新井紀子教授と話す機会がありました。新井教授は人工知能の研究者で、「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトに取り組んでおられます。研究の目的は意外に東大入試ではなく、ロボットには何が解けて何が解けないかということだそうです。ロボットにどうにも解けないことを探すことが主たるテーマだそうです。
 ロボットにとって入試問題を解くのに易しいのは、英語や数学であり、国語も難しくないそうです。一番難しいのは、日本史の記述問題のように、何がどうなったか、なぜそうなったかというような問題とのことでした。ロボットにできることは将来、児童・生徒がやる必要がなくなるでしょうから、先生も教える必要がないわけです。これからは、ロボットができないことを教えるべきではないでしょうかと言うのです。校長として、学校の中で、ロボットができないことは何かという視点で考えていただくのも一つの思考訓練になるでしょう。ロボットもやれるような仕事をいくらがんばってもあまり意味がありません。例えば、板書しながら、ただ説明するような授業をするのではなく、教材の開発のような、ロボットにはできないことをがんばっていただきたいと思います。
 子どもは一人では成長できません。子どもの成長のためには先生という援助者が必要です。その先生を援助し、先生を立派に成長させることが校長の務めです。ただし、先生は大人なので、先生が生徒に指導するようには、校長が先生を指導することはできないかもしれません。しかし、限られた学校運営の時間の中で、先生を導くことが校長の役割だと思います。
 子どもの教育については、子どもが自分で考え自分で物事ができるようになることが大切です。「啓蒙」という言葉がありますが、これは、子どもが自ら、暗いものから明るいものに導かれる、ひらいていくという意味があります。心が幼いときは子ども一人では戸を開けることはできませんが、それをできるだけ自分でできるように支援するのが先生の役割であり、その先生をさらに支援するのが校長だと思うのです。

 NHKの朝の連続TVドラマ『花子とアン』を見ている方はおられますか。子どもたちの境遇や未来に関する内容が大変勉強になるのでご覧ください。村岡花子さんという女性のドラマで、村岡さんは東洋英和女学校に入学されています。このドラマの大事なことは、きちんとした情報を持っていて、その情報を活用して境遇から脱出したということです。村岡さんのお父さんはドラマでは行商の仕事をしていたことから、その仕事を活かして情報を手に入れ、子供の能力を考えて娘を東京のミッションスクールに入学させました。明治終わりの甲府において、その判断と決意はドラマではあっても相当のことだったと思われます。
 私が申し上げたいのは、校長先生方も情報を収集し、情報を活用して学校運営に当たっていただきたいということです。教育関係の新聞や冊子など、情報は遠くにあるものではなく、実は近くにあるものです。足元をよく見ていただきたいのです。
 福井県の教育の情報を得るために、昨年度は全国から1,500人の方が本県の学校を訪れました。また、県外から派遣された教員も福井の学校で働いており、今年は茨城県、高知県、長野県などから8名が来られています。福井県としてはたいへん名誉なことです。
 その一方で、福井県の教員も他県に派遣しています。その中で熊本高校に派遣した教員からの報告によると、同校では無駄な時間を徹底的に省いており、職員会議は15分間で年に数回のみとのことです。進路指導の全体会議も15分間で、しかも4月1日に1回行うだけだそうです。皆さんの学校の職員会議はいかがでしょうか。また、熊本高校では、校内テストが年に5回ありますが、英語の作問では、一度も入試に取り上げられていない素材や、日本語訳のない英語素材を出題するようです。教員は、かなり勉強しなければ出題できないでしょう。

 昨年から、本県の教員を東京に派遣し、進学校や進学塾、中高一貫校の視察や、文科省等の主催する研修に参加するなど、情報収集に取り組んでいます。校長先生方も、その情報を活用していただきたいと思います。
【写真】知事講話

 自分の学校の先生の授業を見られましたか。常に授業を見るようにしてください。ある高校では、先生に見に行ってよいかの了解を得ないと授業が見られないという話を聞いたことがあります。冗談かもしれませんが、校長がそのようなことではいけないと思います。また現在、授業名人が171名おられますが、授業名人も今後増やしていきたいと考えています。

 英和辞典で、もっとも長い説明が書いてある単語は何だと思いますか。 〔答え〕「in」、ほとんど正解です。私もはじめは前置詞かと思いましたが、でも実はそれは「get」です。説明文が5ページ分もあります。学校に戻ったら「get」の説明をすべて読んでみてください。英語の引用文に赤線を引いたり、辞書での「get」の類似語には青線を引いてみるとよいでしょう。そうすることで英語というものがどういう言語かがわかってきます。こうして体験したことや学んだことを、校長先生が英語の先生と話をしてほしいのです。「get」は英語の中でもっともパワーのある言葉です。「get」が済んだら、できれば基本的な動詞250語を読んでください。おそらく2か月くらいはかかるかもしれませんが、その学びが他のことにもつながっていくと思います。試験に出る英単語の本を読んでも試験には出ませんし、ある単語の総体的な意味を理解できません。
 明治時代の日本人で、英語がうまかった人は誰だと思いますか。新渡戸稲造、内村鑑三、岡倉天心です。どうして彼らは英語がうまかったと思いますか。天才なのか、あるいは、才能があったのでしょうか。明治の人は偉かったからでしょうか。一般的には偉かったからとか才能があったからとか、そういう理解があるようですが、どうもそうではないらしいのです。
 明治10年くらいから西洋の学問が流入してきました。そして、東京英語学校では英語教育が始まりましたが、同校では、教科書は全て外国の教科書であり、先生は全て外国人でした。つまり、英語の教科書を使い、英語で授業を行っている同校において、彼らは英語ずくめの教育を受けていたのです。そのため、かえって新渡戸稲造は大人としての十分な日本語の手紙が書けなかったらしいのです。きちんとした日本人としての教育が受けられなかったために、彼の有名な本の内容も、日本人が読むとおかしいと感じる部分が多く、それは、日本人の発想でもなければ、日本人の文章の書き方でもないらしいのです。つまり、一定の大切な時期に英語ずくめで学ぶと、日本人でない日本人ができるが、すばらしい英語は使えるようになるということです(このことが彼らの名誉を損なうものではありませんが)。英語というのは、環境がよくないと、ものになりませんので、学ぶ環境を整備していただきたい。併せて、しっかりとした日本語教育をしないと、日本人でない人になってしまうということも忘れないでいただきたいと思います。

 また、スポーツ、芸術を充実して子どもたちの能力を最大限に伸ばしていきたいと思います。

 高等学校については、職業教育や進学教育に対して馬力を出していただきたい。小中学校での学力・体力日本一であることが高等学校につながっていないので、成果が出るよう、それぞれの学校の校長先生にはがんばっていただきたい。県としても真剣に取り組んでいきたいと考えています。
 皆さんのがんばりを期待しています。

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