福井県小学校長教育研究大会での知事講話

最終更新日 2014年8月20日ページID 027999

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 このページは、平成26年8月20日(水)に越前町で行われた、福井県小学校長教育研究大会での知事講話をまとめたものです。

 こんにちは。今日は、第66回の県小学校長教育研究鯖丹大会、全県下の校長先生がお集まりです。鯖丹地区での開催をお喜び申し上げます。
 今日はお話をするというよりも、意見交換をしたいと思って参りました。今日は8つに分かれて分科会があるようです。分科会で提案者の方いらっしゃいますか。手を挙げてみてください。ではその人と意見交換していこうと思います。

 ちょうど今こちらに来る前に、藤島高校の2年生の理系クラスで40~50分程、英語の話をしてきました。「勉強は大変ですか」とか、「何が気になっているの」などです。
 その前には高志高校も行きましたが、皆さんも私の学生の頃とあまり変わらないようです。単語が分からないとか、面倒とか、まだ覚えていないと言っていました。また、長文読解では専門用語が難しいとか、一つのセンテンスが長いのが読みにくいなど。もう一つには英文法が覚えられないとも言っていました。
 今は小学校でも5年生から英語をやっているんですね。今後早まるようです。
【写真】知事講話 

 藤島高校の生徒たちと話していた英語の勉強の仕方の話をします。小学校とは関係ないかもしれません。ちょっと脱線しますがお許しください。
 英単語について、名詞とか動詞、助動詞、接続詞など、いろいろ品詞があります。藤島高校の生徒たちに「何の品詞が好きですか」と聞いたら、「特に好き嫌いはない」と言っていました。

 小学生だから難しいことは不要かもしれませんが、皆さんは校長先生ですから、子どもたちに英語を教えるときに、校長の立場で考えてほしいのです。皆さんだったらどんな答えを期待しますか。英語を勉強して何の品詞を好きになってほしいですか。

 今回の8つの分科会の中で、そんなことを検討する分科会はあるでしょうか。あまりないようですね。みんなよく似て抽象的なことをやるんですね。「育む」とか「よりよい」などの言葉が多いですね。抽象的なことが多いのは気になります。
 第2分科会はどなたですか。何の品詞が好きって言ってほしいですか。皆さんで相談して答えてください。第2分科会の代表方、どうぞ。

 「名詞です」

 名詞ですか。第3分科会はどんな答えですか。

 「動詞」

 動詞ですか。今日藤島高校では、私はこの動詞を好きになってほしいと申し上げました。藤島高校で辞書を出してくださいと言ったら、誰も持っていないんです。重いからでしょうか、学校には持ってこない。「家にあるのかい」と聞いたら、「家にある」と言う。皆さん電子辞書を持っているようです。先生が紙の辞書を持っているんですね。

 また、藤島高校の生徒は優秀で、まだ2年生だけど動詞を覚えるのが英語の基本のようです。私なりに英語の勉強をしたのですが、まれに省略して書いてない文章もあるけど、どの文章にも動詞はあります。この動詞が英語教育で一番大事で最も使われる品詞です。これが操れるかどうかによって、聞き分けたりしゃべれたりする、ということを頭に入れておいてほしいのです。

 どれくらいの英単語を覚える必要があるのでしょうか。高校で3~4千語くらい必要と言われていますが、動詞はそのうちいくつぐらいでしょうか。
 第4分科会の方どうでしょうか。皆さんで相談して答えてください。

 「100ぐらい」

 100? 小学校のときに、日本語英語でもやっている程度かもしれませんね。ドリンクとか、ペンとか、フラワーとか。動詞だけにしてもちょっと少ないかな。正解は、高校に入るまででだいたい250ぐらいです。

 辞書で英単語が載っているでしょう。一番長い解説が付いている動詞は何かご存じですか。第5分科会どうでしょうか。相談して言ってみてください。

 「get です」

 よく知っているね。

 「新採用校長研修の西川知事の講話のときに教えていただきました」

 ああ、そうですか。canでもhaveでもdoでもbeでもなくて、だいたい4~5ページに渡って書いてある。このget、「ものにする」ということです、人に与えるのではなく。アングロサクソン系の人々にとって一番大事な言葉だからだと思います。ちょっと意外ですね。

 最近英語の先生といろいろ議論してもなかなか言うこと聞いてくれないのです。「こうやったらどうですか」と提案すると、「すでにやっています」と返ってくる。そんな調子だから、私なりにいろいろ勉強しました。

 英語の辞書の250の動詞を全部読みました。毎日15分ずつ読んで、3ヶ月ぐらい掛かりました。これで分かったのは、一番解説が多いgetがよく使われるということと、getのイディオムなどが分かりました。重要性とはまた別です。重要なのはまた別の言葉だと思いますが、よく使われるのはgetです。

 ここで校長先生にお願いしたいことがあります。この動詞250を3ヶ月で読んでください。これから校長先生が若い先生に英語教育の話をするときに役に立つと思います。

 それほど難しいことではないのですが、注意することが一つあります。最初から長いgetをやらないことです。短い、最後の250番目の単語になると1ページが半分に分かれています。discussとかargueとかは数行しかない。簡単な単語を混ぜてやらないといやになります。小学生も校長先生も同じで、勉強はいやになったら終わりですから、是非混ぜながら、お正月ぐらいまでに250読んでください。そうするとその学校の英語教育は間違いなく良くなると思います。

 読み方を考えてみましょう。自動詞や他動詞など書いてあって、用例も書いてあります。I got it! とか。通常の会話で使う表現です。用例に線を引いてください。読んだ気になりますから。時々括弧で別の言葉があります。これは普通の動詞ですが、格式語というものがあります。「取得する」とか「把握する」とか、公の難しい言葉です。青など違う色で線を引くと、大体英語の考え方とか、名詞とか、何をgetしたのかなどが分かると思います。是非やってください。手をあげてもらえませんか、そうしないと英語が良くならないから。みんな一緒にあげましょう。

 (大多数の校長が手をあげる)

 もう一つは、英会話などラジオの番組を聞いておられますか。全員目を瞑って手をあげてください。ラジオ番組を聞いている人。(手をあげる)3人でした。それはまずいね。真面目に小学校英語のことを考えていないということになりかねません。今日から聞いてください。

 小学校ですから、基礎英語というのが一番良いです。1.から3.まで15分ずつあります。夕方は6:45からと9:00からがあります。どれでも良いですから、どれか一つは聞いてください。残念ながら基礎英語1が一番わかりにくいです。易しすぎて分からないのです。たくさんの言葉がないから、基礎英語1は中学1年生向きです。言葉だけが出てきて聞きにくいのです。意外に分かりにくいですから、逆から(基礎英語3から)聞いていただいても良いです。全部聞いても45分、今日から聞いてください。頑張ろう。「やらないと学校の英語が良くならない」と堅く決意してほしいのです。英語は大事ですから。

 そういうことを、高校生のお話に関連して申し上げたのですが、この語学番組はもっと難しいのを含めて15種類ぐらいあります。皆さんも一般的な生涯学習として、また教養として、学生時代や教壇に立っているときなどでも英語は役に立っていると思います。是非とも自分で英語を伸ばしていき、先生方を指導する際に「校長先生はちゃんと英語を分かって指導している」と思われるようにしておくべきだと思います。 

 英語教育を例に取りますと、大事なことは高校教育ではないのです。実は小学校の英語教育が一番大事なのです。正確な音を教える必要があり、それができるかどうかに掛かっています。残念ながら今のままでは正しい英語教育ができないのではないかと心配しております。ALTなどいろんな人がいますが、できるだけラジオ番組を子どもたちにも聞いてほしい。テレビにはありますが、ラジオには子どもの英語番組はないのです。来年ぐらいにはできるかもしれません。

 数学はお勉強的なところがありますが、英語はお勉強ではありません。数学はなぜ答えがそうなるのか、議論もありますし、一つ一つの積み重ねです。ところが英語は全く異なります。単なる言葉ですから、慣れが大事だと思います。

 最近外国の子どもが読む童話を調べてみました。小学生低学年が読む本の中に、すでに仮定法過去完了が入っていました。我々日本では仮定法過去完了は中学校では教えずに高校で教える。だからそんな文章は使わないと言うようなことは、外国では何の関係もないのです。文法などというものは、幼稚園児や小学生が仮定法や完了形を読んでいるのですから、難しいわけがなく、単に習慣の約束事なのです。そのようなことも校長として覚えていてほしいのです。
【写真】知事講話

 次は全然違う話をします。環境教育について、今日どんなことをされますか。次は第7分科会の方ですね。

 「日頃子どもたちに家庭や地域と連携しながら取り組んでいる環境に関する教育について発表します」

 そうですか。去年三方五湖の近くに「里山里海湖研究所」ができました。福井県出身の進士五十八先生がここの所長ですが、三方五湖の年稿など、福井県は非常に自然環境に恵まれていますので、こういうものを盛り上げていきたいのです。是非、環境教育について小学校で頑張ってほしいのです。

 例えば、小学校の担任の先生や理科の先生を中心に、里山里海湖研究所に来てほしいのです。子どもたちを連れて来てほしい。理科の先生全員が嘱託研究所員だというような気持ちで来てほしい。今日は理科の先生はおられますか。

 (4分の1ぐらいが手をあげる)

 意外に多いですね。今後大事な分野ですので、皆さんの学校の先生が里山里海湖研究所の先生を兼ねているような使い方をしてほしいのです。どんどん使ってください。最近里山の森なども作りました。夏休みも開いています。

 ラジオ番組の「夏休み子ども科学電話相談」を知っていますか。お盆過ぎまでの期間中、午前中に全国の子どもたちが、「なぜ宇宙は○○したのですか」とか、「なぜカブト虫はこういう行動をするのですか」などの質問をする番組です。聞いたことありますか。

 (かなり手をあげる)

 最近は聞いてもらっているんですね。5~6年前は誰も聞いていませんでした。今年はだれか福井県の子が質問しましたか。

 いないか。去年は1人2人あったのですが、だんだん環境教育に対する皆さんの気持ちも高まっているのでしょう。日々の生活とか身の回りに即した環境教育は大事だと思いますので、今回は第7分科会を中心に、校長先生自身がそういう気持ちになってほしいと思います。

 第8分科会はどんなことをしますか。

 「家庭・地域と連携しながら、いかに安全安心な学校づくりを進めていくかということです」

 安全安心ですか。私が申し上げるまでもないかもしれませんが、いろんな問題がありますから、安全安心な学校づくりに努めていただきたいと思います。極めて大事なところは警察にお願いしなければいけませんが。警察、行政、地域が一緒になって力を合わせてやっておりましたが、一度原点に戻ってやっていこうという動きを去年あたりから進めております。警察の取締りやパトロールなどを厳しくしてもらうのと同時に、行政・地域・学校などは子どもたちの安全、教育をやろうという協議をしておりますので、念頭に置いていただきたいと思います。

 第2分科会のしなやかな知性というのはどんなことをやるのですか。 

 「ユニバーサルデザインということで、最近落ち着かない子どもや発達障害などで 集中できない子どもが通常の学級に増えておりますので、そういう子どもたちが学習に集中できるようにするためにはどうしたらよいか、ということです。あるいは、先生方の年齢層が若くなっていますので、教育的な技術をどうやって高めるか、ということも含まれております」

 そうですか。全般を見ますと、冒頭申し上げましたようによく似たタイプのお話が多いようです。もう少し授業とか、子どもたちと直接向き合う、具体的な話から接近した部分があるともっと良いような気がします。最後にはこのような議論になるのかもしれませんが、最初から言葉が美し過ぎるような気がします。もちろん美しいのは大事ですが、もう少し普通の言葉で問題に接した方が良いかもしれません。

 それでは中高一貫の話をしたいと思います。ご存知のように来年の春から県内初めての県立の中高一貫の中学校ができます。高志中学校です。もちろん小学校ではありませんが、皆さんの学校教育と深く関わることになります。来年の1月中旬に適性検査があって、2月に選抜です。30人、30人、30人の90人になりますから、3クラスの高志中学校が中高で6年教育となります。

 もちろんこの学校が特別ということではありませんが、全国でいろんな動きもありますから、一度モデル的に中高を一貫させながら、授業時間の弾力的な運用とか、授業自体の中身の変革などをやりたいと思います。試験は適性検査と作文ですので、あまり塾に行って勉強しなければならないような試験です。

 塾へ行かなくても合格できることを教える塾というのがあるらしいのですが、それはちょっとおかしい。そういう所にいかなくても済むようにしなければなりません。皆さんの学校からも何人か合格者が出るかもしれませんが、こういうことに一喜一憂する必要は全くありません。これまでやってきた教育をしっかりしていただければ十分です。これだけは強く申し上げておきたいと思います。むしろそういうことに関わりなく小学校教育をより充実させる必要があるだろう思います。

 特に学力については、福井県は皆さんの努力によって学力・体力が全国から高い評価を受けておりまして、改めてお礼を申し上げます。去年は1,500~1,600名の教育や政治、行政の分野の方々が、県外から福井県に勉強に来ておられます。

 それから今年に入り、他の6つの県から8名の先生が小中学校へ実際の勉強に来られておりまして、皆さんの学校にも何人かおられると思います。福井県からも逆に交換で勉強に出しております。

 そういうことですから、福井県はより先導的な教育をしなければならないだろうと思っています。あまり学力の順番を気にする必要はないのかもしれませんが、最近全国の都道府県もかなり教育に力を入れているようです。福井県に負けるなとか、秋田県を追い抜こうとか。そういう気持ちを心の中に持っておられると思います。

 福井県とその後に続く県の差が縮まっております。そういう点はやや注意がいりますし、一つのテストという意味では学力テストも客観的数字で参考になりますから、結果をご覧いただきながらより教育内容を充実してほしいと思っております。

 それには校長先生のリーダーシップが極めて重要です。また、小学校の場合は、福井県と秋田県との差はあまり縮まっておりません。これは中学校になると違いますから、やはり子どもたちに実力をつけていかなければならないと思います。

 今日高校生に会いましたし、何週間か前にも高志高校で話しましたが、やはり小学校・中学校のときによく鍛えるトレーニングをしておかないと高校ではあまり伸びないかもしれないという印象を持ちました。

 小学校では良いかもしれないけど、中学校や高校になると、自分の能力を十分に発揮できないような状況が見られます。高校の教育をしっかりしていないのではないか。せっかく小学校から教育をして中学生になり、中学校から高校に行ったのに、それではつまらないという見方もあります。しかし、現に小学校時代に自分でできること、はきはきものが言えることや、友だち関係が良いことなどができていないと、年を重ねるごとにいろんなことが難しくなります。私はそこがこれからの課題だと思います。

 今日はそういうことは第3分科会で、「人としてよりよく生きようとする心を育む心の教育」という話をされるようです。

 「豊かな心の育成のために、どのような教育を学校教育として進めていくか。また、地域・家庭を巻き込んで心の教育をどのように進めていくかについて話し合います。」

 今ちょうど夏休みですから、ご父兄と一緒に県庁見学に来られる子が多いのです。今日もお会いしましたが、「どこの小学校?」「何年生なの?」などと聞いても、答えない子がいます。お母さんの顔を見るんです。校長先生はどう思われますか。

 そういうことがあって、ハキハキしていない子はちょっと残念だなと思います。学校ではどんな様子かわかりませんが、ハキハキしたところを持ってほしいと思います。

 また、小学校の子どもたちが県庁見学に来ると、先生と一緒に来ることがあります。なかにはあまりしゃべらない先生もいます。先生がいらっしゃってもしゃべらないのです。「どこの学校」とも「こんにちは」とも言わない。「先生は誰だろうか」と探さないといけないことがあって困ります。「~~学校です」とか、「こんにちは、さようなら」など、シャキッと話してほしいところです。子どもたちを前に出して、自分は後ろに下がってしまうんです。子どもたちの自主性は大事にしているのかもしれないけれど、何か違和感があります。

 今の話は、第4分科会のテーマ「新しい時代に対応するための豊かな人間性と専門性を高める教職員教育」に少し関係するかもしれませんね。

 「子どもたちを伸ばすための教師としての力量をいかに高めるかということで、個 人の優れた能力を学校全体あるいは市全体の財産として皆で共有しながら、さらに磨きあって伸ばしていこうということを提案させていただきます。」

 そうですか。いろんなことを話していたら時間がなくなってきました。

 話を変えて、4年後には国体があります。スポーツ選手の面や役員としても、今の小学生が国体のときには高校生や中学生になっているでしょう。いろいろな立場で参加が必要だと思いますので、少し念頭に置いていただきたいと思います。

 時間をかけて子どもたちにお遊戯やら、ダンスを教えるつもりは全くありません。小さい頃こういうことは非常にいやだった記憶があります。夏休みに運動場など暑いところで、旗を持ったりなどの練習は、私はさせるつもりはありません。皆さんもそういうことは合理的にやってほしいと思っていますが、スポーツとか芸術活動などの参加には十分ご努力をお願いしたいと思います。

 特に最近、音楽や美術などについて、小さい頃から親しむ予算を組んだり人材を投入するようにしています。特に小学校の4・5・6年生頃が芸術などに極めて重要な時期です。将来こんな仕事をしたいとか、音楽家になりたいという気持ちが起こる時期ですので、そこを見逃さないようにしながら子どもたちにきっかけを持ってほしいと思っています。念頭に置いていただければありがたいと思います。

 以上、とりとめのない話になりましたが、福井県は学力体力日本一と言われております。内容をより充実していただいて子どもたちの教育のためにがんばってほしいと思います。

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