職場のトラブルQ&A ~出勤停止期間中の賃金~

最終更新日 2020年3月27日ページID 000302

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 私のミスが原因で取引先とトラブルを起こし、1週間の出勤停止処分を受けました。このため、会社から今月の給料は2割ほど少なくなると言われています。2割も減給されると生活に大きく響きますが、何とかならないでしょうか。

 出勤停止とは、職務規律違反に対する制裁として労働契約を存続させながら労働者の就労を一定期間禁止することをいいます。
 就業規則の中に制裁規定として出勤停止処分とその期間中の賃金不支給が定めてある場合には、出勤停止期間中の賃金が支給されないことは、制裁としての出勤停止の当然の結果であり、認められています。ただし、出勤停止の長さには制限があり、不当に長期になるものは許されていません。
 今回あなたが受けた出勤停止1週間という制裁措置が、あなたのミスの程度などを考慮し就業規則や過去の事例からみて適正に判断されたものであるかどうか、本人に弁明の機会が与えられているかなど適切な手続を踏まえた処分であるかどうかなどを検討する必要があります。
 今回の措置に疑問があれば、その根拠などを会社に確認するとともに、納得できるまで会社と話し合ってみてはいかがでしょうか。

解説

出勤停止期間中の賃金

 就業規則で労働者に対して減給の制裁を定める場合に、労働基準法第91条では「その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。」と制限しています。
 しかし、就業規則の中に制裁規定として出勤停止処分とその期間中の賃金不支給が定めてある場合には、労務の提供がされていない出勤停止期間中の賃金を受けられないことは、制裁としての出勤停止の当然の結果であって、前記の減給制裁の制限規定の対象外となります。

出勤停止期間の限度等

 労働基準法には出勤停止についての規定はありませんが、異常に長期にわたる場合には「公序良俗」(民法第90条)の見地から許されないものとなっています。
 また、労働者の過失に対し、使用者が7日間の出勤停止処分を行ったことについて、減給処分にすれば足りるものであり、出勤停止処分は裁量権を逸脱して無効とされた裁判例として次のものがあります。  

七葉会事件(横浜地裁判決 平10.11.17)

 事件のあらまし
 3歳児を担当していたA・Bの2人の保母が園児21名と散歩で近くの公園へ行き、その帰る途中にA保母が蚊に刺された園児4名に薬を塗っている間に、園児2名が勝手に駆け足で保育園に向かい、全体の見張り役であったもう1人のB保母は、よそ見をしていて、この園児2人がいないことに気づくのが遅れた。
 2人の園児は15分ほど後に保育園の嘱託職員に保護されたが、使用者は園外で園児を無防備のまま放置したことは保母として厳に慎まなければならないとして、就業規則45条2号の「正当な理由がなく、園の諸規定、指示に従わず、または、不正な行為があったとき」に該当するとして、A保母に対しては減給3千円、B保母には7日間の出勤停止の懲戒処分を行った。
 保母A、Bは、この処分に対して、就業規則の規定は故意に指示に従わなかった場合の規定であって過失の場合には該当しない、また、ミスの内容に比較して処分が重過ぎると主張し提訴した。

 判決の概要
 裁判所は、原告らの行為は就業規則45条2号には該当しない、園児が離脱した時間は15分程度である、両保母とも報告書で反省している、園において離脱しがちな園児2名がいることを認識していたことから、2人の保母への処分は重きに失し、使用者の裁量権を逸脱し両方の処分とも無効であり、B保母は減給処分にすれば足りるとした。 

参考

 

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