職場のトラブルQ&A ~職場でのいじめ・嫌がらせ(パワーハラスメント)~

最終更新日 2020年3月27日ページID 007714

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 先日、仕事上のことで上司に意見を述べたところ、「新米のくせに生意気だ。俺が仕事の仕方をきっちり教えてやる。」と言われ、以来、毎日、立たされたまま長時間注意を受けたり、罵声を浴びせられたり、時には無視されることもあります。かなり精神的にまいっているのですが、仕事上のこととして我慢しなければいけないのでしょうか。 

 あなたに対する上司の行為は、仕事上のことであっても、必要な範囲を超えて、いじめになっていると思われます。
 労働者は、労働契約に基づき、職場の規律を遵守し職務に専念する義務などを負いますが、会社には、労働者に対して賃金を支払うほか、労働者が業務を遂行する際に労働者の生命、身体、健康を守るよう配慮する義務(安全配慮義務)があります。従来から判例において認められていましたが、平成20年3月に施行された労働契約法(第5条)においては、明文化されています。
 職場におけるいじめは、個人的なものであっても、会社にはその具体的な状況に応じて必要な配慮を行うことが求められていますので、会社の相談窓口や責任ある地位の方に相談してみましょう。
 また、いじめを行っている上司が自分自身の言動をいじめと認識していない場合もあるので、相手に自分の気持ちを伝え、「やめてほしい。」とはっきりと意思表示することも必要です。
 今後、行為がさらに続く、エスカレートするのであれば、法的な手続をとることなども考えて、日時や内容などを具体的に記録しておくことも大事です 。

解説

 労働契約法第5条では「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定めています。
 使用者は、労働契約に基づいてその本来の債務として賃金支払義務を負うほか、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に安全配慮義務を負うことを規定したものです。「生命、身体等の安全」には、心身の健康も含まれています。また、「必要な配慮」とは、一律に定まるものではなく、使用者に特定の措置を求めるものではありませんが、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて、必要な配慮をすることが求められています。
 さらに、労働安全衛生法をはじめとする労働安全衛生関係法令においては、事業主の講ずべき具体的な措置が規定されているところであり、これらは当然に遵守されなければならないものです。
 こうした労働契約法第5条に違反するような行為があった場合、同法には罰則の定めはありませんが、債務不履行責任(民法第415条)、不法行為責任(民法第709条)、使用者責任(民法第715条)等を追及し、損害賠償を求めることも考えられます。

 職場のパワーハラスメントの防止については、これまで国の審議会等で議論が重ねられた結果、2019年6月に労働施策総合推進法が改正され、職場におけるパワーハラスメントは行ってはならないこと、国・事業主・労働者にはそれを防止する責務があることなどが明確に示されました。
 そして、その防止対策として雇用管理上必要な措置を講じることが事業主に義務付けられることになりました。適切な措置が講じられていない場合には是正指導の対象となります(2020年6月施行、中小企業は2022年4月施行)。
 改正法の中で、職場におけるパワーハラスメントとは以下の3つの要素をすべて満たすものとされています。
  (1)優越的な関係を背景とした言動であって、
  (2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  (3)労働者の就業環境が害されるもの(身体的又は精神的な苦痛を与えられる等)
 ここでいう「労働者」は、正規雇用労働者だけではなくパートタイム労働者等いわゆる非正規雇用労働者を含むすべての労働者が対象となります。
 また、法改正に伴って2020年1月に策定された「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」では、職場のパワーハラスメントの定義や事業主が雇用管理上講ずべき措置の具体的内容等が示されています。

 職場におけるパワーハラスメントの代表的な言動の類型としては次のものがあります。
 (当てはまる行為の全てを網羅しているものではありません。)

職場におけるパワーハラスメントの代表的な言動の類型
1.身体的な攻撃 暴行、侵害
2.精神的な攻撃 脅迫、名誉棄損、侮辱、ひどい暴言
3.人間関係からの切り離し 隔離、仲間はずし、無視
4.過大な要求 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
5.過小な要求 業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
6.個の侵害 私的なことに過度に立ち入ること

  指針ではこれらの言動の類型ごとに、典型的に職場におけるパワーハラスメントに該当し、または該当しないと考えられる例が挙げられていますが、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり、事業主は限定的にとらえることなく、適切な対応を行うようにすることが必要です。
 また、パワーハラスメント防止のため事業主が雇用管理上講ずべき措置の具体的内容としては、

 ・事業主によるパワハラ防止に関する社内方針の明確化と周知・啓発
 ・相談(苦情を含む)に適切に対応するための相談体制の整備
 ・相談等があった場合の事実関係の迅速かつ正確な確認と適切な対処
 ・相談等事案に係るプライバシー保護や、相談等を理由として解雇その他不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、周知・啓発すること
等が挙げられています。
 使用者側には、トップによるパワハラを職場から無くすという明確なメッセージの発信、就業規則に関係規定を設けるなどルールの策定、実態の把握、教育、周知、相談や解決の場の設置、再発防止研修などの実施が求められます。

 裁判例
  • 上司は、酒が飲めない体質であると知りながら部下に飲酒を強要したこと、部下が出張先から直帰したことを非難し、精神的苦痛を与える内容の留守電やメールをしたこと等により不法行為責任を負うとした。また、勤務時間外の行為も含め会社の業務に関連してなされたものであり、会社は使用者責任を負うとした(東京高裁判決 平25.2.27 ザ・ウインザー・ホテルズインターナショナル事件)。
  • 上司の部下に対する行為は部下のうつ病の発症、進行に影響を与えた違法なものとして不法行為責任を認めた。また、この行為は会社事業の執行について行われたものであり、会社には使用者責任が成立するとした(東京地裁判決 平26.7.31 サントリーホールディングスほか事件)。
  • 上司による厳しい指導・指摘を業務上の指導の範囲にとどまるとした(東京地裁判決 平21.10.15 医療法人財団健和会事件)。 

参考

 

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