自治体の借金 PART 3・実質公債費比率

最終更新日 2012年4月10日ページID 000039

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PART 2からつづく)


【課長】
 そう、実質公債費比率だよ。この指標が平成18年度から導入されることで、地方公共団体の財政状況をより的確に把握できるようになったんだ。

【福井くん】
 先ほどのお話では、起債制限比率との違いは、普通会計以外の会計も含めた指標とのことなんですけど、具体的にはどういうことなんですか。

【課長】
 まず、公営企業から説明しよう。
 公営企業というのは、まあ字面のとおりなんだけど、「公」の団体が経「営」する「企業」のことだね。具体的なイメージでは、下水道や上水道、ガスといった事業は、地方公共団体の事業として行っているけど、基本的には、住民が料金を支払って、その経費で運営しているよね。この部分だけを抜き出してみると、民間企業のような形態をとっている。

 地方債の中には、公営企業債といって、水道事業の配水管や介護サービス施設の建設を行う場合にも財源としているものがあるんだ。この公営企業債の元利償還金は、原則としてその料金収入を充てることとされているから、これまでは公債費比率や起債制限比率には算入されていなかったんだ。
 もちろん、料金収入を財源として運営しているから、会計上も本来は切り離されているんだけど、特に地方での公営企業会計の経営は非常に厳しい状況にあるんだ。

【福井くん】
 どうしてですか。

【課長】
 たとえば、下水道事業なんかがわかりやすいかな。下水管を敷設する場合、都市部と地方では経費に違いがあると思うかい。

【福井くん】
 基本的には同じじゃないですか。だって、1メートルあたりの排水管の単価って、地域差がさほど生じるものではないんじゃないと思います。

【課長】
 そうかもしれないね。おそらく、整備費自体では、大きな差はないのかもしれない。けれども、マンションのような集合住宅に敷設するのと、郊外の戸建て住宅に敷設する場合は考えてごらん。延長あたりの金額は同じでも、その整備費を利用世帯で割ってみるとどうかな。当然、一世帯あたりに換算すると、戸建て住宅の方がコストが高いよね。

 さらに、過疎地域だとどうだろう。集落と集落の間が何百メートルも離れているところもあるし、その間も排水管は通さなきゃいけないよね。すると、各世帯あたりの整備コストのコストは、何十倍、何百倍にもなってしまう。これを利用料金だけで負担しようとしたらどうだろう。とてつもなく高額な料金を設定しないといけないよね。でも、そんなことはできない。

 だから、多くの団体が、一般会計から公営企業会計に不足額を繰り入れて補填しているんだ。そして、もちろん、繰り入れる額の中には施設の維持管理や運営のための経費もあるけど、公営企業債の元利償還金に充てているものもあるんだ。この公営企業債の元利償還金分の繰入額は、まさに公債費的に性格のものだよね。

【福井くん】
 そうか。さっきの公社への負担金みたいなものですね。直接的な経費じゃなくても、公債費的な性格のものを基準に入れることで、実態により近いものになるってことですね。

【課長】
 そのとおり。公営企業債の繰入金以外でも、同じような性質のものがいくつかあるから、これを「準元利償還金」として起債制限比率の分子部分に加えているんだよ。公営企業への繰出金以外にどのようなものがあるかというと、

(1)満期一括償還地方債の年度割相当額
 地方債の償還の方法は、一般的には元金均等か元利均等方式で毎年償還していく場合が多いんだけど、借入期間の最終年に一括して償還するケースもあるんだ。
 これの元利償還金をその年度に一括して計上してしまうと、その年度の公債費比率が著しく高くなってしまうだろう。だから、その借入期間に応じて、各年度に均等に償還があったものとして、その額を指標に算入しているんだね。

(2)一部事務組合の地方債の元利償還金に対する負担金等
 地方公共団体は、その事務の一部を複数の団体で組織した組合で行うケースがあるんだ。具体例を挙げると、消防組合やゴミ収集と行う環境衛生組合が馴染み深いな。
 この一部事務組合で公共施設の整備を行った場合、その組合で地方債を起こしているんだけど、後年度の元利償還金はその構成団体が負担金を支払っているんだ。これも実質的には公債費的なものとして算入しているんだ。

(3)その他
 この2つ以外にも、国営事業の負担金や利子補給などがあって、詳細は省略するけど、公債費に準ずるものは指標に算入されていると考えていいね。

【福井くん】
 結局、いろいろとある、歳出の中で、公債費的な要素があるものをすべて盛り込んだんですね。つまり、後年度に負担を求めているような経費の負担分については、全部指標の対象にしてしまったということだ。
 概ね、標準的な収入で負担している公債費を網羅しているということでよろしいんですね。
 しかも、公営企業債については、料金収入によって賄っている部分は算入されていないから、地方公共団体として負担している状態を表している指標としては的確ということですね。

【課長】
 合格だよ、福井くん。さて、指標のことは大分理解してきたみたいだけど、実際重要なのはこの指標をどう使うかということだ。後年度に過度な負担を強いるような起債をしないために、これらの指標を利用しなければならないんだよ。

【福井くん】
 そうでした。この指標がどれぐらいの数値だと、起債を抑制すべきなんですか。

【課長】
 それは、難しいな。結局のところは、指標はあくまで目安でしかないし、さっき福井くんがいったとおり、現状分析に加えて将来予測をある程度しないといけないよね。
 逆に言えば、これらの指標だけを見て、現状で余裕があるからといって、地方債を増やすというのは避けなければならないよね。将来の予測ができないからこそ、将来の負担が過度にならないよう充分注意しなければならないんだよ。

【福井くん】
 責任重大ですね。気を引き締めないといけないな。

【課長】
 そうだね。でもまあ、起債の制限について一応の目安は設けられているんだ。起債の制限については、実質公債費比率以外の指標によるものもあるんだけど、一般的には稀なケースが多いから、実質公債費比率での制限について説明しよう。

 まず、実質公債費比率が18%以上の団体については、都道府県知事の許可を受けなければならなくなる。ちなみに18%未満の団体は、都道府県知事の同意を受けるのみで起債できるし、場合によっては同意を受けない場合でも起債できるんだ。

 次に、25%以上35%未満の団体については、一部の起債が制限される。具体的には、一般単独事業債のうち一般事業、地域活性化事業、地域再生事業、公共用地先行取得等事業債が起債できないんだ。それぞれがどんな性質の地方債かは、自分で勉強するように。
 その次は、35%以上の団体では、大幅に増えて、災害関連事業を除く一般公共事業債、公営住宅建設事業債、教育・福祉施設等整備事業債のうち義務教育書学校に係る学校教育施設等整備事業、一般単独事業債のうち臨時地方道整備事業、臨時河川等整備事業、臨時高等学校整備事業、首都圏等整備事業債、公営企業債のうち普通会計に属する出資金、貸付金、補助金に係る地方債が起債できなくなる。かなり厳しいね。
 つまり、災害復旧事業のようにどうしても必要な事業や辺地・過疎対策事業のような条件不利地域のために公共施設を整備する事業など、限られたものしか起債できないということだ。それに加えて、18%以上の団体については、あくまで自主的といいながらも、公債費負担適正化計画を策定することが求められているから、実際は、さらに新規の起債は抑制が求められることになるね。

【福井くん】
 一応の基準という感じですね。結局は、各団体がしっかりと現状分析と将来予測をした上で、必要な起債を可能な範囲で行うということを常に心がけることが大事なんですね。

【課長】
 そのとおり。合格点をあげるよ。これからも頑張ってくれよ。

 

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