実用化技術等(平成4年)

最終更新日 2023年3月13日ページID 052142

印刷

【平成4年度】

1.水稲早生品種「ハナエチゼン」の生育特性からみた栽培法
2.コシヒカリの全量基肥施用法における遅効性肥料の施肥位置
3.レンゲの鋤込み時期と後作水稲の施肥法
4.生産組織による中山間地水田農業の作業及び圃場管理方式
5.「ハープレディー」の特性を生かした無加温ハウス栽培の新作型
6.メロンのハウス半促成栽培における品種適用性
7.メロンのハウス抑制栽培における品種適用性
8.施設栽培におけるナスハモグリバエの生態
9.半促成栽培におけるキュウリの耐病性優良品種の選定
10.カーネーションのモミガラ培地栽培と被覆肥料の利用法
11.秋キクにおけるオオタバコガの発生生態
12.ナミテントウ利用によるアブラムシ防除
13.県内の園芸作物における薬剤耐性菌、抵抗性害虫の発生状況と対応
14.黒毛和種供胚牛の利用技術
15.ウシ体外受精における体外成熟培地へのFSHの添加効果
16.採卵鶏の産卵期における効率的な量的制限給餌法
17.ライ小麦の飼料特性

 

平成4年度

 

普及に移す技術

技術名

水稲早生品種「ハナエチゼン」の生育特性からみた栽培法

実施場所

福井県農業試験場 作物課

分類

A

契機

部門

水稲

                           

1.成果の内容

1)技術の内容及び特徴

 水稲早生品種「ハナエチゼン」の生育特性を「フクヒカリ」と比較し、品質、食味、収量向上のための栽培法を明らかにした。

 

(1)      ハナエチゼンは、生育初期と登熟後期の成育が旺盛で、有効分蘖終止期と登熟中期以降の地上部乾物重はフクヒカリを上回る(図-1)。同様に乾物増加率も、生育初期及び出穂期以降はハナエチゼンで大きく、生育中期はやや暖慢である。このように、乾物生産が生育中期にやや暖慢な点に着目して、基肥の増量と、食味を考慮した穂肥の早期施用を行う。

(1)     肥の増費によって、穂数確保が容易で、収量も高い。

(2)     基肥の少ない場合は、穂肥の早期施用によって穂数や籾数の増加をはかる。出穂前27日の穂肥施用でも倒状は認められず、登熟歩合や千粒重の低下は小さく、収量がやや増加する(表-1)。

(3)     玄米窒素濃度は全窒素施肥量をふやすにつれて高まる。また、第2回目穂肥の遅い施用は、玄米窒素濃度及び食味評価に影響を及ぼすので、早目に施用するとともに多用しない(図-2,3)。

(2) ハナエチゼンの刈取り開始は、出穂後34日頃以降籾水分が25%以下になる時期で、目安となる穂軸の黄化率は40~50%程度である。この時期は、籾摺歩合、精玄米歩合が高く、品質も良好である(図-4)。

 

2)技術・情報の適用効果

(1)       ハナエチゼンの安定多収および食味評価の向上が図られる。

(2)       ハナエチゼンの栽培管理および作業時間の目安が明確になる。

 

3)普及・利用上の問題点

(1)       穂肥の施用量は地帯別の施肥基準を守るとともに、第1回目の穂肥の施用が遅れないよう幼穂長(1~2mm)による穂肥時期の診断に留意する。

(2)       出穂期以降の早期落水を避け、登熟後半までの根の活力を高く維持する。

(3)       胴割れ、穂発芽などの発生は少ないが、刈遅れると品質の低下を免れないので、適期刈り取りに努める。

 

2.具体的なデータ(図表)

 

 
 

 

表-1基肥量別穂肥の早期施用効果 (1991)

窒素施肥配分(N成分kg/10a)

穂数

 

(本/㎡)

全籾数

 

(100粒/㎡)

登熟

歩合

(%)

千粒重

(g)

精玄

米重

(kg/a)

基肥

第1回

穂肥

第2回

穂肥

(27日)

(22日)

(8日)

3

3

-

2

414

264

91

22.4

54

-

3

2

376

249

90

22.8

52

5

3

-

2

468

290

87

22.3

56

-

3

2

399

259

91

22.5

52

7

3

-

2

469

294

88

22.2

57

-

3

2

447

289

88

22.3

57

1)( )内数値は出穂前日数。

2)第2回穂肥については無施用区を設けた。

 

図-1 ハナエチゼンの乾物生産の特徴

         (1990,1991)

3.その他特記事項

1)研究期間       平成2~3年

2)参考資料

 

普及に移す技術

 

分類 B

契機 研

部門 水稲

技術名

コシヒカリの全量基肥用法における遅効性肥料の施肥位置

実施場所

福井県農業試験場

 

1.成果の内容

1)技術の内容及び特徴

 一定期間を経過した後溶出を開始する遅効性肥料【被覆尿素(LPSS100)】の溶出特性と溶出した肥料が水稲に最もよく吸収される施肥位置を明らかにした。その結果、施肥田植機によるコシヒカリの全量基肥施用法(基肥・穂肥の移植時一括施肥)の実用化の身通しが得られた。なお、本研究で行った二段施肥法とは、側条及び隔条の条間部に粒状肥料を施用しつつ田植を行う施肥法である。

 

(1)    施肥位置(深さ)により地温の日較差はかなり異なるが、平均地温ではその差は極めて小さく、肥料の溶出に影響する積算地温も施肥位置による差は小さかった。遅効性肥料の窒素溶出率は、いずれの施肥位置においても、幼穂形成期頃までは極めて低く、それ以降急激に高まるいわゆるシグモイド型の溶出パターンを示した(図1)。葉色への影響も幼穂形成期頃から現れた。

(2)    Rbをトレーサーとして水稲根の部位別吸肥力を調査したところ、最高分げつ期頃では側条部が特に強く、条間部の下層深くなるに従って急激に低下した。幼穂形成期以降では、いずれの部位も吸肥力は低下したが、その割合は地表部(深さ1cm)が小さく、深い程大きかった(図2)。これは、施肥位置周辺部の水稲の分布と活力の差違が大きく影響していると推察された(図3)。

(3)    遅効性肥料の施肥位置別の利用率は根の吸肥力にほぼ対応しており、側条施肥や2段施肥の地表面施用で高く、深くなるに従って低下した。

収量は遅効性肥料の利用率を反映し、側条施肥や2段施肥の地表面施用で慣行施肥に近い収量が得られた。一方、玄米品質は遅効性肥料の各区が慣行施肥に比べ優った(図4)。遅効性肥料の側条施肥については、現地においても比較的好結果が得られた(図5)。

 

以上のことから、施肥田植機利用を前提とした遅効性肥料の施肥位置は、吸肥力の強い根群が分布する側条部、あるいは地表面付近が適当といえる。

2)技術・情報の適用効果

(1)   施肥田植機による全量基肥は慣行施肥に比べ、施肥の省力化と労働負荷軽減に有効である。

(2)   遅効性肥料の側条施用では、市販の肥料(速効性と遅効性の配合肥料)及び既存の側条施肥田植機が利用できる。2段施肥の地表面施用では、施肥量や肥料の種類を側条部と地表面で別々に変えることができるので、土壌の適用範囲が広い。

(3)   地表面に施用された遅効性肥料は溶出開始が遅く、また短期間に泥で覆われ、田面水中にはほとんど溶出しないため、側条施肥と同様に水質汚濁防止上有効である。

 

3)適用範囲                     県内一円の稲作

 

4)普及・利用上の留意点

  2段施肥の地表面施用には、既存の側条施肥田植機に専用の散粒器(写真)の装着が必要である。

 

2.具体的データ

                          

図1 遅効性肥料(LPSS)の深さ別N溶出率の推移                                   図2 水稲根の部位別吸肥力(Rbの施用位置別吸収量)

 

 

図3 遅効性肥料の施肥位置と施肥位置周辺                                                   図4遅効性肥料の施肥位置とN利用率

   部の根量(1000cc×3当り)

 

                                           

図5 現地の全量基肥施用における収量・倒状(1990~91年)     写真 遅効性肥料の地表散粒器(試作)

   (D60:Nの約60%がLPSS、D80:Nの約80%がLPSS) (風で圧送されるため、肥料が広がりやすい)

 

3.その他特記事項

研究期間              :平成元~3年

参考資料              :福井農試土壌環境課成績書(平成元年~3年)、研究速報第63号

                            :日本土壌肥科学会講演要旨集 第38集

普及に移す技術

技術・情報名

レンゲの鋤込み時期と後作水稲の施肥法

実施場所

福井県園芸試験場

分類 A

契機 研

部門 水稲

                           

1.成果の内容

1)技術の内容及び特徴

近年、レンゲの作付面積は増加傾向にあるが、後作水稲の収量は倒状などによって不安定である場合が多い。そこでレンゲの鋤込みの時期及び後作水稲(コシヒカリ)の施肥法について検討した結果。

(1)       レンゲの鋤込み時期としては、生草重が1.0~1.5t/10a前後の時期(4月10日頃)が俊作水稲(コシヒカリ)の健全な生育を図る上から適当である。

(2)       この場合の水稲(コシヒカリ)の施肥法は、基肥を施用せず、穂肥には窒素0.4kg/aを2回に分施する。

 

2)技術・情報の適用効果

  科学肥料が節減でき、環境調和型農業に寄与できる。

 

3)適用範囲

  中粗粒質が乾田タイプの水田に適用できる。

 

4)普及・利用上の留意点

(1)       レンゲの播種期は9月20日前後、播種量は2kg/10aとする。

(2)       田植えは、レンゲの鋤込み後約30日とする。

(3)       根付肥は、初期生育が極端に不良の場合のみ、窒素0.15kg/a施用する。

 

2.具体的データ(図表)

 

1)試験方法

(1) 供試品種及び土壌条件  コシヒカリ(5月15日田植え)、細粒黄色土

(2) 試験区の構成

 

表-1試験区別施肥量

No

区名

N成分量(kg/a)

基肥

根付肥

穂肥1

穂肥2

合計

対照(無鋤込み)

0.35

0.15

0.20

0.20

0.90

4月10日鋤込みA

0.15

0.20

0.20

0.55

〃    B

0.20

0.20

0.40

4月17日鋤込みA

0.15

0.20

0.35

〃    B

0.20

0.20

鋤込み生草重       4月10日1.22kg/㎡           4月17日2.00kg/㎡

 

2)試験結果

 

表-2 生育調査

No

草丈(cm)

茎数(本/㎡)

稈長

(cm)

穂長

(cm)

穂数

(本/㎡)

有効茎

歩合(%)

倒状

程度

6/7

6/25

7/11

6/7

6/25

7/11

29.6

47.1

65.7

237

547

461

82.4

19.5

382

70

2.0

28.3

50.0

69.9

210

537

467

86.2

18.6

389

72

3.5

30.4

52.0

72.6

270

696

541

90.9

19.2

425

61

3.5

27.6

49.5

74.9

236

643

554

91.8

17.4

431

67

4.5

28.7

47.7

69.5

184

541

484

93.4

17.5

378

70

4.5

 

表-3 収量及び土壌中のアンモニア態窒素残存量

No

玄米重

(kg/a)

収量比

(%)

屑米重

(kg/a)

千粒重

(g)

アンモニア態窒素残存量(mg/100g)

 

5/27

6/7

6/25

47.6

100

0.4

21.4

1.70

1.97

0.46

48.5

102

0.6

21.4

2.17

2.52

0.55

52.5

110

0.6

21.6

2.45

2.82

0.90

44.3

93

1.1

19.8

2.93

3.16

0.77

46.3

97

1.1

20.4

2.72

2.79

0.80

 

表-4 レンゲ草無機成分

(生草中%)

水分

N

P205

K20

Ca0

Mg0

91.3

0.32

0.05

0.35

0.10

0.03

 

3.その他の特記事項

 1)研究年次    平成2年~3年

 2)参考資料    なし

 

普及に移す技術

技術名

生産組織による中山間地水田農業の作業及び圃場管理方式

実施場所

福井県農業試験場

分類

B

契機

部門

農業経営

                           

1.成果の内容

1)技術の内容及び特徴

 中山間地域での担い手不足が深刻化するなかで、中山間地水田農業を確立することは、緊急の課題である。

 本情報は、受託経営にいよって、中山間地の農地資源を維持し、所得追及を図っている生産組織(組合員5名・内4名専従)によって取り組まれている中山間地特有め水田農業管理方式を提示し、そのモデル化を図った。

(1)     地域の概況―圃場は棚田(1区画15a、そのうち畦畔が1割前後を占める)で・谷間からの湧き水等により軟弱であるが、パイブラインが完備され、水利条件は良い。このため大型機械(トラクター43ps,6条高速乗用田植機、5条グレンタンク付きコンバイン等)による作業は可能である。しかしながら、中山間地特有の気象条件(朝露が遅くまで残り、日没が早い)により、年間を通じた作業では刈取り作業が一番のネックとなっている。このため、以下のような圃場作業管理方式を取り入れている。

(2)     作業管理方式―オペレータが少人数(3名)であるため、大型機械を駆使する一方、標高差(300m前後)がもたらす熟期の違いに着目し、地区外の平場圃場の部分作業及び経営受託を行い、作期の分散に努める。この場合、機械の1日当り作業単位量(約1ha単位)を目安に受託する。さらに品種をリンクさせ、機械施設の操業度を高める。

(3)     圃場コスト管理方式―圃場の条件に応じた地代を設定するとともに、部分作業にあっても、基本受託料金のほかに、倒状程度や機械作業能率に応じた割増し料金を設定し、一筆圃場毎のコスト管理に努める。

 

以上、(1)に立地する生産組織が、(2)、(3)の管理方式を取り入れることによって、専従者1人当り年間1,500時間前後のゆとりのある労働で、8ha前後の農地管理がなされ、500万円前後(地代含む)の所得が確保される。

 

2)技術・情報の適用効果

 生産組織が担い手となって、中山間地の農地資源を管理する上での参考になる。

 

3)適用範囲

 福井県内の中山間地域

 

4)普及・利用上の留意点

 地区外・町村外に圃場を求めるため・地域間、町村間の転作配分調整が必要とされる。

 

2.具体的データ(図表)

 

表1 品種別地区別刈取時期及び支払い地代  (平成3年)

 

 

平場

( )内は面積

地区内

( )内は面積

面積比率

刈取り手順

経営地

 

8/30~9/9

(5.7ha)

42.3

平場早生

地区内早生

平場中生

地区内中生

平場晩生

地区内晩生

部分作業

受託

8/28~30

(2.4ha)

8/30~9/8

(6.3ha)

経営地

 

9/11,9/18~23

(5.5ha)

41.8

部分作業

受託

9/10~11

(2.3ha)

9/11~18,21

(6.4ha)

経営地

9/25~10/4

(4.9ha)

 

15.9

部分作業

受託

 

9/29

(0.5ha)

面積比率(%)

28.2

71.8

100.0

圃場区画

地代

(員外)

2俵-3000円

1.5俵-3000円

 

 

23,000円

21,000円

19,000円

16,000円

14,000円

15.8

3.7

0.0

19.3

40.9

16.7

3.5

30a以上

〃未満

20a以上

10a以上

〃  

10a以下

5a以下

注1.地代の算定は、圃場区画のほか、日当たり、畦畔の大小、耕地の利便性、土質も考慮している。

2.部分作業受託の刈取りは倒状程度に応じて3段階(5,000円、3,000円、2,000円)の割増し料金を設定している。また、コンバインが圃場の深みに入り、レッカー車を借入れしたときは3,000円を割り増す。

 

3.その他特記事項

 1)研究期間                  平成元年~3年

 2)参考資料                  北陸農試農業経営研究資料第36号

 

普及に移す技術

技術名

「ハープレディー」の特性を生かした無加温ハウス栽培の新作型

実施場所

福井県農業試験場

分類

A

契機

部門

野菜

                           

1.成果の内容

1)技術の内容及び特徴

 

 当場育成アールス系メロン「ハープレディー(5-3×651)」は平成2年3月28日に品種登録申請し、平成4年2月6日付官報に内定公表された。

 本品質の産地化を図るため、適応作型について、検討した結果、果実の肥大性を生かした新作型を開発した。

 

図1 「ハープレディー」の肥大特性を生かした新作型

 

(1)     抑制栽培では8月中旬播種で、着果、果実の肥大性、ネットの形成が良好であり、12月上旬収穫が可能である。(表1,2)

(2)     半促成栽培では、2月上中旬の播種で、着果、肥大がよく、ネット等果実の品質も良好となり、6月中下旬の収穫が可能である。(表3,4)また、上位葉数が6枚でも1果重、糖度が良好で良品生産が可能である。(表5)

 

2) 技術・情報の適用効果

アールス系メロンの無加温ハウス栽培に市販品種に加えて「ハープレディー」を導入することにより、半促成では半月、抑制では1カ月作期拡大が可能となる。

 

3) 適用範囲                  県下一円

 

4) 普及・利用上の留意点

 

(1)     抑制栽培の8月中旬播種では、生育後半の草勢維持を図るため、内張りカーテン等を行い、保温に努める。

(2)     半促成栽培では茎葉伸長期から着果期の保温管理に留意し、良質雌花の着生及び着果安定を図る。なお、2月上旬播種では着果まで簡易な加温を要する。

 

2.具体的データ(図表)

 

表1 抑制栽培の播種期と着果前の生育及び着果、収穫との関係

播種期

品質

草丈

cm

葉幅1)

cm

着果日

月.日

着果率

収穫日

月.日

収穫率

7月25日

ハープレディ

113

22.6

8.31

100

10.16

100

 

アールスナイト夏2

108

22.6

8.30

100

10.25

100

8月5日

ハープレディ

138

24.5

9.11

100

11.01

100

 

アールスナイト夏2

133

23.1

9.11

100

11.11

100

8月15日

ハープレディ

160

25.2

9.25

100

12.02

92

 

アールスナイト夏2

145

23.6

9.23

100

12.03

23

8月25日

ハープレディ

127

22.6

10.13

23

0

 

アールスナイト夏2

109

22.1

10.12

76

0

1)  10位葉

 

表2 抑制栽培の播種期と果実の品質との関係

播種期

品質

1果重

 

kg

果形

指数

ネット1)

果肉厚

cm

糖度

日持ち

 

 

密度

揃い

盛上り

太さ

7月25日

ハープレディ

1.60

1.07

3.9

3.6

3.2

3.3

3.8

13.2

6

 

アールスナイト夏2

1.59

1.14

4.3

3.3

3.3

2.8

3.7

13.6

10

8月5日

ハープレディ

1.49

1.02

3.3

3.9

3.4

3.7

3.6

14.0

9

 

アールスナイト夏2

1.39

1.07

4.0

3.3

3.3

3.0

3.6

14.7

14

8月15日

ハープレディ

1.41

1.00

3.4

3.8

3.8

3.8

3.5

13.1

12

 

アールスナイト夏2

1.23

1.09

3.9

3.3

3.3

3.2

3.5

12.1

1)  密度1(粗)~5(密) 揃い1(不良)~5(良) 盛上り1(低)~5(高) 太さ1(細)~5(太)

 

表3 半促成栽培の播種期と着果前の生育および着果、収穫との関係

播種期

品質

草丈

cm

葉幅1)

cm

着果日

月.日

着果率

収穫日

月.日

収穫率

2月5日

ハープレディ

119

23.4

4.17±1.74

15

100

6.17

 

アールスナイト夏2

113

22.6

4.12±1.03

12

100

6.23

2月15日

ハープレディ

121

23.0

4.22±1.08

13

100

6.22

 

アールスナイト夏2

119

23.5

4.20±1.37

12

100

6.26

2月25日

ハープレディ

117

20.4

4.30±1.06

12

100

6.26

 

アールスナイト夏2

109

20.3

4.30±0.99

12

100

7.02

1)       10位葉

 

表4 半促成栽培の播種期と果実の品質との関係

播種期

品質

1果重

果形

指数

ネット1)

果肉厚

cm

糖度

 

 

密度

揃い

盛上り

太さ

2月5日

ハープレディ

1.61

0.99

3.5

3.6

2.8

4.3

3.9

13.4

 

アールスナイト夏2

1.14

1.09

3.6

2.7

3.9

4.4

3.3

13.8

2月15日

ハープレディ

1.85

1.02

3.5

4.0

3.4

4.0

4.0

13.6

 

アールスナイト夏2

1.27

1.05

3.5

3.2

4.1

4.4

3.4

14.6

2月25日

ハープレディ

1.89

1.00

3.7

4.0

3.6

4.1

4.0

13.6

 

アールスナイト夏2

1.41

1.08

3.8

2.9

4.0

4.4

3.7

14.1

1)  密度1(粗)~5(密) 揃い1(不良)~5(良) 盛上り1(低)~5(高) 太さ1(細)~5(太)

 

表5 着果節位葉数と果実の品質との関係

品種

上位葉数

葉幅1)

cm

着果日

月.日

収穫日

月.日

1果重

kg

果肉厚

cm

糖度

 

6

22

5.4

7.01

1.81

3.8

12.9

ハープレディ

8

22

5.4

6.30

1.85

3.8

13.0

 

10

22

5.4

6.30

1.75

3.8

13.9

アールスセイヌ夏11

8

20

5.5

7.05

1.28

3.8

13.1

1)着果期の10位葉 播種期:2月25日 着果節位:12節

 

3.その他特記事項

 1)研究期間         平成元年~平成3年

2)参考資料             野菜花き試験成績書 平成元年~平成3年

普及に移す技術

技術・情報名

メロンのハウス半促成栽培における品種適用性

実施場所

福井県農業試験場

分類B 

契機 研

部門 野菜

                           

1.成果の内容

1)技術・情報の内容及び特徴

 坂井北部丘陵地では、消費者の高級化指向への対応と農家の収益性向上のため、アールス系メロンの栽培が導入され、徐々にその作付けが増加しており、作型別の適品種の選定が望まれている。そこで、品種比較試験を行い、ハウス半促栽培に適する「アールスナイト春秋系」の適用性が認められた。

 

「アールスナイト春秋系」の主な特性は次のとおりである。

(1)     3月上~中旬播種で、5月上~中旬に着果し、7月上~中旬の収穫が可能である(表1、2)。

(2)     雌花着生率は、「アールスセイヌ夏II」と同程度であるが、「アールスナイト夏系2号」に比べやや低い。着果率は高く、「アールスセイヌ夏II」より優れ、「アールスナイト夏系2号」と同程度である(表1)。

(3)     半促成栽培において重要な果実の肥大性は、「アールスナイト夏系2号」、「クレスト春秋系」に比べ優れる(表2)。

(4)     果形は、「アールスナイト夏系2号」、「アールスセイヌ夏II」に比べやや球形に近い(表2)。

(5)     ネットの密度、揃い、盛り上がりは、「アールスナイト夏系2号」と同程度で優れ、ネットの太さは供試品種中最も太い。(表3)。

(6)     糖度は、「アールスナイト夏系2号」、「アールスセイヌ夏II」よりやや高く、供試品種中最も高い(表3)。

(7)     日持ち性は優れ、「アールスナイト夏系2号」、「アールスセイヌ夏II」と同程度である(表3)。

 

2)術・情報の適用効果

坂井北部丘陵地において、ハウス半促成栽培用のアールス系メロン品種として「アールスナイト春秋系」を導入することにより、高品質安定生産が図れる。

 

3)適用範囲

坂井北部丘陵地帯

 

4)普及・利用上の留意点

雌花着生率がやや低いので、花芽分化時の温度管理に留意する。

 

2.具体的データ(図表)

 表1 供試品種の着果状況1)

 

雌花着生率(%)2)

着果率(%)

着果日(月.日)

品種

平元

平2

平3

平元

平2

平3

平元

平2

平3

アールスナイト春秋系

89

73

62

80

100

100

5.9

5.15

5.16

アールスナイト夏系2号

100

83

84

87

100

100

5.8

5.17

5.17

アールスセイヌ夏II

84

54

70

67

85

100

5.9

5.16

5.18

クレスト春秋系

75

67

90

100

5.18

5.18

注) 1)播種日は、平成元年3月3日、平成2年3月12日、平成3年3月11日

     2)雌花着生節位は11~15節

 

表2 供試品種の収穫期、1果重及び果形

 

収穫期(月.日)

1果重(kg)

 

品種

平元

平2

平3

平元

平2

平3

果形指数1)

アールスナイト春秋系

7.5

7.12

7.10

1.26

0.99

1.71

1.04

アールスナイト夏系2号

7.5

7.13

7.11

1.03

0.95

1.50

1.07

アールスセイヌ夏II

7.5

7.12

7.13

1.34

1.00

1.53

1.07

クレスト春秋系

7.14

7.12

0.84

1.29

1.02

注) 1)果形指数=果高÷果径

 

表3 供試品種の収穫期、1果重及び課形

 

ネット1)

糖度

 

品種

密度2)

揃い3)

盛上り4)

太さ5)

平元

平2

平3

日持ち性6)

アールスナイト春秋系

4.6

4.4

3.4

3.3

13.0

13.5

13.9

5

アールスナイト夏系2号

4.7

4.4

3.4

2.9

12.3

12.3

13.4

5

アールスセイヌ夏II

4.4

4.3

3.8

3.1

9.5

13.3

13.5

5

クレスト春秋系

3.7

4.7

3.1

3.1

13.2

14.0

4

注)1)平成2年と3年の平均                     2)密度は、1(粗)~5(密)

  3)揃いは、1(不良)~5(良)                   4)盛上りは、1(不良)~5(良)

  5)太さは、1(細)~5(太)                       6)日持ち性は、1(不良)~5(良)

 

3.その他特記事項

1)研究期間       平成元~平成3年

2)参考資料

 

普及に移す技術

技術・情報名

メロンのハウス抑制栽培における品種適用性

実施場所

福井県農業試験場

分類 B

契機 研

部門 野菜

                           

1.成果の内容

1)技術の内容及び特徴

  坂井北部丘陵地では、消費者の高級化指向への対応と農家の収益性向上のため、アールス系メロンの栽培が導入され、徐々にその作付けが増加しており、作型別の適品種の選定が望まれている。そこで、品種比較試験を行い、ハウス抑制栽培に適する「アールスナイト夏系2号」の適用性が認められた。

 

「アールスナイト夏系2号」の主な特徴は次のとおりである。

 

(1)7月上旬~下旬播種で、8月中~下旬に着果し、10月上~中旬に収穫が可能である(表1、2)。

 

(2)雌花着生率は極めて高く、着果率も高い(表2)。

 

(3)果実の肥大性は、「クレスト春秋系」並であるが、「アールスセイヌ夏II」に比べ1果重がやや劣る(表2)。

 

(4)     果実は、「アールスセイヌ夏II」や「クレスト春秋系」に比べてやや腰高になり易い(表2)。

 

(5)     ネットの揃いは、「アールスセイヌ夏II」や「クレスト春秋系」より優れ、ネットの密度、盛上り、太さは「アールスセイヌ夏II」や「クレスト春秋系」並みに優れる(表3)。

 

(6)     糖度は、「クレスト春秋系」と同程度で高いが、「アールスセイヌ夏II」に比べやや劣る(表3)。

 

(7)     日持ち性は、「クレスト春秋系」より優れ、「アールスセイヌ夏II」と同程度である(表3)。

 

2)技術・情報の適用効果

  坂井北部丘陵地において、ハウス抑制栽培用のアールス系メロン品種として「アールスナイト夏系2号」を導入することにより、高品質安定生産が図れる。

 

3)適用範囲

  坂井北部丘陵地帯

 

4)普及・利用上の留意点

  果形が腰高になり易いので、果実の縦肥大期の灌水は控え目に管理する。

 

2.具体的データ(図表)

 表1 供試品種の着果状況1)

 

雌花着生率(%)2)

着果率(%)

着果日(月.日)

品種

平元

平2

平3

平元

平2

平3

平元

平2

平3

アールスナイト夏系2号

92

100

98

100

100

100

8.24

8.15

8.28

アールスセイヌ夏II

89

96

96

95

100

90

8.19

8.16

8.28

クレスト春秋系

87

96

100

100

100

90

8.23

8.16

8.29

注) 1)播種日は、平成元年7月12日、平成2年7月10日、平成3年7月22日

     2)雌花着生節位は11~15節

 

表2 供試品種の収穫期、1果重及び果形

 

収穫期(月.日)

1果重(kg)

 

品種

平元

平2

平3

平元

平2

平3

果形指数1)

アールスナイト夏系2号

10.14

10.4

10.15

1.40

1.85

1.50

1.13

アールスセイヌ夏II

10.11

10.4

10.15

1.73

1.86

1.65

1.09

クレスト春秋系

10.13

10.4

10.15

1.37

2.04

1.46

1.06

注) 1)果形指数=果高÷果径

 

表3 供試品種の品質

 

ネット1)

糖度

 

品種

密度2)

揃い3)

盛上り4)

太さ5)

平元

平2

平3

日持ち性6

アールスナイト夏系2号

4.1

4.6

3.1

3.1

13.4

15.0

14.4

5

アールスセイヌ夏II

4.1

4.2

3.2

3.2

14.1

16.3

14.5

5

クレスト春秋系

3.8

4.4

3.2

3.2

13.4

14.7

14.8

4

注)1)平成元年~3年の平均                      2)密度は、1(粗)~5(密)

  3)揃いは、1(不良)~5(良)                   4)盛上りは、1(不良)~5(良)

  5)太さは、4(細)~5(太)                       6)日持ち性は、1(不良)~5(良)

 

3.その他特記事項

1)研究期間       平成元~平成3年

2)参考資料

 

普及に移す技術

技術・情報名

施設栽培におけるナスハモグリバエの生態

実施場所

福井県農業試験場

分類 B

契機 研

部門 野菜

                           

1.成果の内容

 

1)技術・情報の内容及び特徴

 近年、施設栽培のトマト、メロン類にハモグリバエ類が多発するようになった。

このため、このハモグリバエの種の同定と施設内の発生消長およびその簡易な調査方法について検討し、以下の点について明らかにした。

 

(1)       被害の状況

食害痕のために葉が白化、生育が遅延し、果実の糖度が不足する。被害葉率は10%~80%に達する。

(2)       本県で施設栽培のトマト、メロンに発生するハモグリバエは同定の結果、ナスハモグリバエ(Liriomyza bryoniae Kaltenbach)と判明した。

(3)       促成トマト(2月中旬定植)では幼虫被害は定植直後からみられ、6月に入って急増し、収穫末期の6月末に最高になった。抑制トマト(7月中旬定植)でも定植直後から幼虫被害が見られ、8月中旬以降急増し、9月下旬~10月下旬に最高になった。この傾向は2か年とも同様であった(図-1)。

(4)       メロン(3月中旬定植)では5月初めから成虫および幼虫の被害がみられ、幼虫加害は、5月中旬から急増し6月初めに最高になった。

(5)       成虫発生消長を黄色粘着リボンでみたところ、促成トマトでは幼虫食痕数の消長とほぼ同傾向を示したが、抑制トマトでは両者の関係は明瞭でなかった。しかし、黄色粘着リボンによって成虫の発生消長を調査することができ、また幼虫加害がごく少ないときの生息確認に利用できるものと思われた(図-2)。

(6)       施設内に成虫を放飼して、どの作物に産卵、加害が多いかを調査した結果、ウリはトマト、ナス、ダイコンより早く幼虫の加害が見られ、成虫食痕、寄生幼虫数が多かった(表-1)。室内試験の結果をあわせると、種々の野菜がある施設内では、まずウリ科を好んで加害し、産卵するものと思われた。

(2)技術・情報の摘要効果

   施設栽培における本種の発生消長が明らかになったので、防除時期の目安がつき、密度把握に簡易な調査方法を利用できる。

 

3)適用範囲

 トマト、メロンの施設栽培地

 

4)普及・利用上の留意点

 発生調査用の黄色粘着リボンの変わりに黄色テープに粘着スプレーをかけたものでもよい。

 

2.具体的データ (図表)

図1 施設トマトにおけるナスハモグリバエの被害消長(1989)

 

図2 施設トマト内設置黄色粘着リボンによるナスハモグリバエ成虫誘殺消長(1989)

 

 

表1 施設野菜に対するナスハモグリバエの寄主選好

 

調査

月日

放飼後

白数

ウリ科

ナス科

アブラナ科

ダイコン

 

メロン(プリンス)

メロン(銀泉)

キュウリ

トマト

ナス

7/3

2

4/5

3/8

2/5

0/16

0

1

/6

5

0/5

0/8

0/5

0/16

0

0

/10

9

0/5

0/6

0/5

0/16

0

0

/14

13

0/5

0/8

0/5

0/16

0

0

/17

16

2/2

4/4

1/4

0/16

0

0

痕葉

 数

7/3

2

3/5

5/8

4/5

0/16

7

2

/6

5

4/5

7/8

5/5

3/16

2

0

/10

9

5/5

8/6

4/5

0/16

0

0

/14

13

5/5

8/8

4/5

0/16

0

0

/17

16

2/2

4/4

2/4

0/16

0

0

7/3

2

0/5

0/8

0/5

0/16

0

0

/6

5

2/5

0/8

0/5

0/16

0

0

/10

9

20/5

32/8

13/5

0/16

0

0

/14

13

11/5

28/8

9/5

5/16

0

0

/17

16

13/2

11/4

6/4

5/16

0

0

1)7月1日に♀♂各100頭放飼

2)メロン、キュウリ、トマトについては分母は調査葉(トマトは枝)数を示す

3)ナス、ダイコンについては全葉調査による合計数

 

3.その他の特記事項

1)研究期間       昭和63年度~平成2年度

2)参考資料       山崎昌三郎(1991)北陸病害虫研究会報38号

半促成栽培におけるキュウリの

耐病性優良品種の選定

福井県園芸試験場

 

1.成果の内容

 

1)技術・情報の内容及び特徴

 近年、施設栽培用キュウリの穂木品種、ブルームレス台木品種が多数育成され、これらの品種の特性把握と、作型等の栽培条件に適合した品種設定が望まれる。一方、消費者サイドからは健康食品指向から省農薬栽培野菜が、生産者からは低コスト・省労力の面から農薬を使用する病害虫防除回数の低減が望まれている。このことから、半促栽培条件で、収量が高く耐病性に優れた穂木品種とブルームレス台木品種の設定を行った。

(1)   優良穂木品種の特性

(1)「よしなり」は、うどんこ病に対して最も強く、べと病に対しては「南極2号」、「南極3号」に次いで強い。収量は「シャープ7」並かやや少ないが、供試した品種では最も多収のグループに属する。

(2)「南極3号」は、うどんこ病に対して「よしなり」に次いで強く、べと病に対しては「南極2号」に次いで強く、「よしなり」より強い。収量は「シャープ7」や「よしなり」より少ないが、秀優果数は「シャープ7」や「よしなり」より多い。

(3)「シャープ7」は、うどんこ病に対しては中程度の強さであるが、ベと病には弱く、蔓枯病にも弱い。しかし、収量性は最も優れ、秀優果数は多い。

(2) 優良ブルームレス台木品種

 (1)「スーパー雲竜」は、うどんこ病に対して最も強く、対象品種の「キング輝虎」並である。べと病には最も強い、子蔓の発生はやや多い。

 (2)収量は「スーパー雲竜」が最も優れ、秀優果数も多い。

 

2)       技術・情報の適用効果

キュウリの半促成栽培に上記の有望品種を導入することにより、慣行の防除に比べて防除回数を減らす省防除体系でも、うどんこ病、べと病の発生を少なくすることができる。また、多収をあげることも期待できる。また、多収をあげることも期待できる。

 

3)       普及・利用上の留意点

(1)     うどんこ病は初発時防除で進展阻止できるが、べと病は阻止できないため、予防的防除が必要である。

(2)     上記の有望品種は多収であることから、肥効の維持や灌水の養水分管理に留意し、成り疲れしないように管理する。

 

 

2.具体的データ(図表)

 

表1  半促成栽培におけるキュウリ穂木品種の収量と耐病性

穂木品種名

収穫果数1)

病害発生程度2

平成2年

平成3年

うどん

こ病

べと病

蔓枯病

5月

6月

秀優

果数

4月下

~5月

6月~

7月下

秀優

果数

南極2号(対照)

(138)

(218)

(356)

(223)

(143)

(156)

(299)

(182)

33

20

南極3

93

112

103

113

24

22

トップグリーン

95

118

109

101

94

134

104

94

33

33

よしなり

104

109

107

106

97

135

108

104

18

24

SN-81-B

73

108

95

94

シャープ1

93

95

94

96

34

31

シャープ7

90

129

114

123

99

113

107

109

28

31

やや多

つばさ

76

105

94

84

T-35

90

95

93

96

No.537

52

96

79

76

おおとみAD

102

112

108

107

101

86

93

97

69

-3

ピーク

84

101

99

102

35

26

ウィンク

90

112

96

98

31

26

注)1収穫果数は「南極2号」を100とした指数。「南極2号」は10株当り実数。

  2平成3年5月下旬調査。葉身の病斑を、0(病斑なし)~5(病斑が葉身の1/2以上)の評点法で調査し、発病度で示した。

発病度=

0×nӨ+1×n1+2×n2+3×n3+4×n4+5×n5

nӨ+n1+n3+n4+n5=50葉

5×(nӨ+n1+n3+n4+n5)

  3うどんこ病の発生が多かったため、べと病の発生は不明。

栽培法等:(1)播種;平成2年2月26日、平成3年2月8日。(2)定植;平成2年4月2日、平成3年3月18日。

(3)台木品種;平成2年は「スーパー雲竜」、平成3年は「キング輝虎」。

(4)接木方法;呼び接ぎ。 (5)裁植密度;畦幅1.2m、株間0.3m(278株/a)。

(6)病害防除;初発時から防除開始。ダコニール1,000倍液を2週間毎に散布。

                  

表2 半促成栽培における台木品種の収量と耐病性

穂木品種名

収穫果数1)

病害発生程度2

子蔓

発生

平成2年

平成3年

うどん

こ病

べと病

蔓枯病

5月

6月

秀優

果数

4月下

~5月

6月~

7月下

秀優

果数

キング輝虎(対照)

(112)

(228)

(341)

(221)

(139)

(183)

(322)

(184)

18

24

 

 

スーパー雲竜

128

104

112

109

114

97

104

113

18

18

 

やや多

きらめき

121

106

111

106

103

97

99

104

23

19

 

やや多

ひかりパワー

104

89

95

100

31

35

 

 

台木15号

94

84

88

93

33

35

 

 

ストロング一輝

102

98

100

105

35

31

 

 

注)1収穫果数は「キング輝虎」を100とした指数。「キング輝虎」は10株当り実数。

  2表1に同じ。病害が発生しなかった反復があったため、病害の発生した反復の平均値を示した。

 栽培法等:穂木品種は「よしなり」。他は表1に同じ。

 

 

 

3.その他の特記事項

 研究期間 :平成2~3年                                        予算区分:県単

 研究課題名:半促成キュウリの生産向上

 

普及に移す技術

技術・情報名

カーネーションのモミガラ培地栽培と被覆肥料の利用法

実施場所

福井県農業試験場

分類

B

契機

部門

花き

 

1.成果の内容

 1)技術・情報の内容及び特徴

   カーネーションは土壌伝染病害の発生が多く、土壌消毒の効果や作業性については問題がある。更に、夏秋切り栽培では栽培期間が長く、施肥体系が複雑である。

そこで、茎腐病の発生がなく軽量で作業性に富み、入手が容易なモミガラを用い、全量基肥として被覆肥料を施用することで、カーネーションの省力化栽培法を開発した。

 

(1)       モミガラ培地は茎腐病の発生がないため、安全性が高い。配合割合は切り花本数からモミガラ90%+クンタン10%が最も良い。(表-1、2)

(2)       培地の量は切り花本数から株当り3・が最適であるが、作業性と経済性からは株当り2・でも可能である。(表-3)

(3)       施肥量は全量基肥としてロング270を130g/㎡施用する(表-4、5)

(4)       適応品種は「エリザベス」、「レッドバーバラ」が最も有望である。(表-6)

(5)       モミガラ培地の簡易ベット導入経費は6,000/3.3㎡必要であるが、ロックウール耕の約40%で安価である。(図-1)

 

2)技術・情報の適用効果

(1)       被覆肥料を全量基肥に施用しているため、設備費は少ない。

(2)       茎覆病の発生がないモミガラを土の代替に利用するため、省力的で、かつ、作業性が高い。

 

3)適用範囲                     県下一円

 

4)普及・利用上の留意点

(1)       定植苗は2~3ヶ月間ポット育苗したものを使用する。

(2)       潅水法は、定植後の1週間はポット土とモミガラ培地をなじませるため、十分に潅水し、その後は潅水時間5分間として、春秋期が朝夕2回、夏期が3回の潅水を行う。

(3)       肥料は被覆肥料の他に燐硝安加里s604(30g/㎡)、BM溶リン(150g/㎡)、過リン酸石炭(110g/㎡)、硫酸カルシウム(100g/㎡)、FTE(5g/㎡)を全量基肥に加える。

(4)       適応品種以外は高温時にカリ欠乏による葉枯れ症が発生するので葉面散布等の対策を行う。

 

 

2.具体的データー(図表)

 

表1 もみがら培地の配合割合が切り花収量、品質に及ぼす影響

配合資材1)

切り花本数

(本/㎡)

枯死株率

(%)

1番花

2番花

切花長(cm)

切花量(g)

切花長(cm)

切花量(g)

粒状綿

189

20

70

30

75

25

わら堆肥

188

10

70

29

74

25

パーライト

221

0

74

32

75

26

エノキ粕2

183

30

71

32

71

26

くん炭

284

0

72

30

76

23

バーミキュライト

209

0

72

29

77

23

慣行(土耕)

217

0

73

34

68

22

注) 1):もみがら70%+配合資材30%。2)エノキ茸菌床粕。 3月27日定植、品種「フェアリーピンク」

 

表2 くん炭の配合割合が切り花収量、品種に及ぼす影響

配合資材1)

切り花本数

(本/㎡)

1番花

2番花

切花長(cm)

切花量(g)

切花長(cm)

切花量(g)

くん炭30%

251

69

36

66

21

くん炭20%

224

72

37

70

21

くん炭10%

279

71

37

72

23

注) 1):もみがらに、くん炭を配合した割合。3月7日定植、品種は表1と同じ。

 

 
 

 

表3 もみがら培地量が切り花収量、品質に及ぼす影響

培地量

切り花本数

(本/㎡)

1番花

2番花

切花長(cm)

切花重(g)

切花長(cm)

切花量(g)

1|/株

207

72

36

73

23

2|/株

251

69

36

66

21

3|株

270

70

36

67

20

注)定植時期、品種は表2と同じ。

表4 施肥量が切り花収量、品質に及ぼす影響

施肥量

(g/㎡)

切り花本数

(本/㎡)

1番花

2番花

切花長(cm)

切花重(g)

切花長(cm)

切花量(g)

70

192

73

32

75

25

100

209

72

29

77

23

130

261

74

35

75

25

注)定植時期、品種は表1と同じ。

表5 肥料の種類が切り花収量、品質に及ぼす影響

肥料の

種類

切り花本数

(本/㎡)

1番花

2番花

葉枯れ率

(%)

切花長(cm)

切花重(cm)

切花長(cm)

切花量(cm)

ロング1401)

251

69

36

66

21

7

ロング2702)

280

68

36

67

23

3

IB化成1)

252

72

38

68

21

44

注)1):基肥50%+追肥50%。2)基肥100%。施肥料:N-P2O5-KO=130-82-110g/㎡。

  定植時期、品種は表2と同じ。

表6 もみがら培地栽培における適応品種

品種

1番花

開花日

切り花本数

(本/㎡)

1番花

2番花

葉枯れ率

(%)

切花長(cm)

切花量(cm)

切花長(cm)

切花量(cm)

フェアリーピンク

7.6

230

68

26

70

20

8

フランシスコ

7.3

237

64

25

61

18

6

エリザベス

7.9

354

64

30

55

21

1

アリセッタ

8.5

135

64

32

65

33

28

ナティラ

7.11

232

61

24

63

23

7

バカテル

7.11

306

62

25

62

21

44

レッドバーバラ

7.13

280

56

25

576

23

1

注)定植時期は4月2日

 

3.その他特記事項

1)研究期間             平成元年~平成3年

2)参考資料             野菜花き試験成績書 平成元年~平成3年

普及に移す技術

技術名・情報名

秋キクにおけるオオタバコガの発生生態

実施場所

福井県農業試験場

分類 B

契機 研

部門 花き

 

1.成果の内容

 1)技術・情報の内容及び特徴

 県産の秋キク、施設トマト・カーネーションなどに被害を与えている鱗翅目害虫の種を確定するとともに、本虫の発生消長や生態について、以下の点を明らかにした。

(1)   被害部の症状

頂芽、花蕾を幼虫が集中的に加害し、側芽が叢生する。

(2)   加害種の同定

同定の結果、オオタバコガ(Helicoverpa armigera Hubner)と判明した。

(3)オオタバコガの発生消長

 秋キクの2圃場で被害消長を、また寄主植物として栽培したホオズキで被害消長と幼虫の発生消長を調査した。その結果、秋キクの2圃場では、それぞれ8月5半旬と9月4半旬に被害のピークがみられ(第1図)、ホオズキではこれらの他に7月4半旬にもピークが認められた(第2図)。ホオズキにおける幼虫発生の山もこれらの被害のピーク時期とほぼ一致したことから、オオタバコガの加害時期は第1世代が7月上~下旬、第2世代が中旬~9月上旬、第3世代が9月中旬~10月上旬と考えられる。

 ホオズキはオオタバコガの発生を草期に確認できるため、発生予察に利用できる。

(4)産卵・成虫寿命

 オオタバコガは早い個体では羽化後2日令から産卵を開始し、7日令に産卵のピークがあった(第3図)。産卵数の平均値は400弱であったが、多く産んだ個体では800近くに達した。成虫寿命は雌9.2日、雄8.5日であった。

(5)発育期間(25℃、16時間日長)

オオタバコガの幼虫期間は雌雄間でほとんど差がなく、平均約26日であった。キク、トマト、ピーマン、ホオズキの食草間ではホオズキが他より長かった。蛹体重は雌雄間、食草間で大差がなく、280mg前後であった。

(6)飛翔能力

 オオタバコガの飛翔能力(飛翔距離・時間・速度)は雌が雄と同等以上であるが、本種は100km以上の長距離移動はしないと考えられた(表略)。

2)技術・情報の適用効果

 オオタバコガ防除の参考資料となる。

3)適用範囲

 秋キク栽培地域

4)普及・利用上の留意点

 トマト、カーネーションなどの施設栽培が、オオタバコガの発生源となっているときは、近辺の秋キク圃場でのオオタバコガの発生量に影響を与えると考えられるので注意する。

 

2.具体的データ(図表)

 

第1図 オオタバコガのキクにおける被害消長(1990)

(被害ピーク率は被害ピーク時期に対する各

調査時期の被害の比率、幼虫も同様)

第2図 オオタバコガのホオズキにおける被害消長(1990)

第3図 オオタバコの1日1頭当りの産卵数

 

 

3.その他の特記事項

1)研究期間       平成元年度~平成3年度

2)参考資料       平成元年度病理昆虫課試験成績書:107~111

                            平成2年度病理昆虫課試験成績書:55~66

                            平成3年度病理昆虫課試験成績書:63~66

                            北陸病害虫研究会報第39号:77~78(1991)

 

普及に移す技術

技術名

ナミテントウ利用によるアブラムシ防除

実施場所

福井県園芸試験場

分類

B 契機

部門

花き

 

1.成果の内容

1)技術・情報の内容及び特徴

 

人工飼育下で産卵したナミテントウの放飼によってハウス栽培のキクに発生したキクヒメヒゲナガアブラムシの防除効果が期待できる。

 

ナミテントウの産卵方法

(1)     ナミテントウは雄蜂児粉末を餌として人工飼育する。

(2)     シャーレ内に山折りしたら紙を入れ、これに産卵させる。

ナミテントウの放飼

(1)     産卵後、卵を25℃で3日間管理し、ふ化直前またはふ化直後の状態でら紙ごと放飼する。

 

2)技術・情報の適用効果

ナミテントウの放飼を行うことでキクヒメヒゲナガアブラムシを防除することができる。

 

 

3)適用範囲

福井県下のキク産地

 

4)普及・利用上の留意点

 本技術は、バイブハウス内において白寒冷紗張りのケージで遮断してものであり、さらに放飼方法について検討する必要がある。

 

2.具体的データー(図表)

 

 
 

 

 

表-1人工飼育下の産卵経過  

飼育日数

(日)

産卵数

(個)

0

0

39

16

51

18

飼育虫は場内圃場で採集した          

飼育温度:25℃ 自然日長             

飼育開始日:1991.6.3               

飼育虫数:6頭                               

 

 

図-1 飼育方法

a:雄蜂児粉末 b:湿らせたスポンジ片

c:山折りした紙片 d:成虫

e:カバーグラス f:9cmシャーレ

g:ろ紙裏に産卵する成虫

 

 

表-2ナミテントウの放飼によるキクヒメヒゲナガアブラムシの防除効果

放飼虫態

寄生虫数(匹/7株)

処理前

処理3日後

処理7日後

処理10日後

処理14日後

ナミテントウ成虫

103

43

26

18

5

 

 

(36)

(27)

(15)

(2)

ナミテントウ卵

95

56

7

7

0

 

 

(51)

(8)

(6)

(0)

無処理

71

81

67

83

169

 

 

(100)

(100)

(100)

(100)

                             注)    キク品種;金天神;定植:7月3日;放飼日:7月26日

                                          寄生虫:キクヒメヒゲナガアブラムシ

放飼成虫数:3頭;放飼卵数:16個;ふ化数:14頭

                                          使用ケージ:0.6×0.6×1.8m/7株

 

3.その他の特記事項

1)研究期間       平成3年~年

2)参考資料

 

普及に移す技術

技術名

県内の園芸作物における薬剤耐性菌、抵抗性害虫の発生状況と対応

実施場所

福井県農業試験場

分類 A

契機 研

部門 園芸

 

1.成果の内容

1)技術・情報の内容及び特徴

 

(1)       これまでに、チオファネートメチル剤のスイカつる枯病菌・炭そ病菌・ウメ黒星病菌、ポリオキシン剤のナシ黒斑病菌に耐する耐性検定や、アブラナ科野菜を加害するコナガの各種薬剤に対する抵抗性検定を行い、いずれも耐性菌や抵抗性害虫の出現を確認した。

(2)       前年度、三方町農協西部支所館内では、ウメ黒星病防除剤をチオファネートメチル剤から他剤中心に変更した結果、秀品率が向上した(図-1、2)。

(3)       本年度、イプロジオン剤に対するトマト灰色かび病菌の耐性検定を行った結果、本剤に対しても耐性の灰色かび病菌が施設によっては高率に発生している(図-3、4)

(4)       三国町、福井市産のラッキョウのネダニはジメトエート剤など、既存の有機リン剤に抵抗性の個体群が広く分布している。これら抵抗性ネダニに対してプロチオホス剤やピラクロホス剤の効果が高く、良品質のラッキョウが安定生産できる(表-1)。

 

2)技術・情報の適用効果

 上記薬剤を使用している園芸地帯の防除体系確立の基礎資料となる。

 

3)適用範囲

 本県の園芸地帯

 

4)普及・利用上の留意点

(1)   異なる成分の薬剤のローテーション散布をさらに進める。

(2)   輪作などの耕種的防除を含め、総合的な防除対策を実施する。

 

 

2.具体的データ(図表)

     

図-1 福井梅の秀品率(三方町共同選果場扱い)         

図-2 ウメ黒星病防除剤の出荷量

(三方町農協西部支所扱い、1991、二州農改)

 

  

図-3 トマト灰色かび病菌のイブロジオン、 図-4イブロジオン剤耐性トマト灰色かび病菌の推移

ベノミル剤に対する感受性

 

表-1ラッキョウネダニの殺虫剤抵抗性検定結果

供試薬剤

三国町

福井市

新保

山岸

米納津

石新保

浜島

ジメトエート(43%)乳

 

MPP(50%)乳

 

 

マラソン(50%)乳

 

 

 

MEP(50%)乳

 

 

 

ダイアジノン(40%)乳

 

DNTP(40%)乳

 

プロチオホス(45%)乳

 

ピラクロホス(35%)

 

注1)R/S (抵抗性係数=供試個体群のLC-50粒/感受性個体群のLC-50粒)

 2)〇(感受性系統:R/S=4.9以下)  (抵抗性発達系統:5.0~9.9)

   ●(抵抗性系統:同10以上)

 

 

3.その他の特記事項

1)研究期間       昭和63年~平成3年度

2)参考資料       岩泉俊雄(1990)平成2・3年度福井農試病理昆虫課試験成績書

                            本多範行(1990)平成2年度福井農試病理昆虫課成績書

 

普及に移す技術

技術名

黒毛和種供胚牛の利用技術

実施場所

福井県畜産試験場

分類

A

契機

部門

肉牛

 

1.成果の内容

1)技術・情報の内容及び特徴

 過剰胚卵処理を行うと、牛によって発情の回帰が遅れ、供胚牛を効率良く利用することができない。そこで黒毛和種供胚牛35頭の過剰排卵処置・胚回収直後(FSH-P24-28mg,3~4日間漸減法)にプロスタグランディンF2a類縁体(PG)800µgを投与し、発情回帰の早期化を図り1胚採取による回収胚の発育ステージと品質及び供胚牛の受胎性について検討した。

(1)     その結果、平均8.6±2.9日で初回の発情(PG投与日を0日)が回帰した。

(2)     発情が回帰した時点で35頭に人工授精を行い、7~8日後に24頭に1胚採取を行い、19頭(79%)より胚(卵)が回収され、うち14個(74%)が移植可能胚(Aランク6,A’ランク4,Bランク2,Cランク2)であった。

(3)     回収胚の移植により、2頭(2/4)が受胎した。

(4)     受胎を目的にした9頭は、1回目の発情で4頭が受胎した。

(5)     過剰排卵処置・胚回収直後のPG投与は、発情を早期に回帰させ、その発情は受胎可能な正常卵子の排卵を伴っていることを示した。

 

2)技術・情報の適用効果

(1)     供胚牛を高率的に利用することができる。

(2)     1胚採取は繁殖障害牛の診断指針(排卵の確認、受精の有無、胚の発育ステージなどから卵管、子宮環境を推測)に応用できる。

(3)     1胚採取は受精卵移植技術者の採卵・移植技術の向上に役立つ。

 

3)適用範囲

 

4)普及・利用上の留意点

(1)     1胚採取のための時間と人員を確保する。

(2)     スタンディング発情を確認する。

 

 

2.具体的データ(図表)

 

 

表1 試験成績

過剰排卵処置頭数

35

平均回収胚数

11.0±6.2

平均移植可能胚数

7.4±5.9

平均発情回帰日数

8.6±2.9

1胚採取実施頭数

24

1胚採取成功率

79%(19/24)

1胚採取移植可能胚率

74%(14/19)

回収胚移植の受胎率

50%(2/4)

初回発情受胎率

44%(4/9)

 

 

 

3.その他特記事項

 1)研究期間    平成3~5年

 2)参考資料 

              CristerらTheriogenology1980,13,397-406

              GreveらTheriogenology1979,9,353-361

普及に移す技術

技術名

ウシ体外受精における体外成熟培地へのFSHの添加効果

実施場所

福井県畜産試験場

分類

A

契機

部門

肉牛

 

1.成果の内容

5)技術・情報の内容及び特徴

ウシ未成熟卵胞内卵子培養における体外成熟培地(TCM-199+5%子牛血清)に卵胞刺激ホルモン(FSH,アントリン)添加群0.01~1.0mg/ml)無添加群を作成し、体外受精後の卵割率、胚盤胞率、胚盤胞への発生日について比較検討した。また、発生した胚盤胞を卵丘細胞と共培養、または凍結融解後卵丘細胞と共培養し、脱出胚盤胞への発育について検討した。

(1)     体外受精後48時間の卵割率については、FSH添加率と無添加群との間に差はなかった。また、胚盤胞率にも差は認められなかった(表1)。

(2)     成熟培地へのFSH添加は胚盤胞の発生日が早める傾向にあった(表2)。

(3)     共培養の結果、胚盤胞期への発生日が早い胚ほど、新鮮胚、凍結融解胚ともに脱出胚盤胞への発育率が高くなる傾向にあった(表3.4)。

 

2)技術・情報の適用効果

 

 

  FSHの添加は胚盤胞への発生を早めることから、FSHは胚の発育を促進し体外受精由来の良質胚盤胞の生産に利用できる。

 

3)適用範囲

 

 

4) 普及・利用上の留意点

  FSHの溶解後は力価の低下防止のため、できるだけ早く使用する。

 

2.具体的データ(図表)

 

表1       卵割率および胚盤胞率(%)

FSH

供試卵数

2cell≦

胚盤胞

+

753

463(61.5%)

189(25.1%)

877

577(65.8%)

197(22.5%)

 

表2       胚盤胞の日別発生割合(%)

FSH

7日目

8日目

9日目≦

+

54.0(102/189)

31.7(60/189)

14.3(27/189)

36.5(72/197)

39.1(77/197)

24.4(48/197)

 

表3        胚盤胞(新鮮胚)の日別発生割合(%)

発生日

7日目

8日目

9日目

脱出胚盤胞数(%)

78.4(40/51)

75.6(31/41)

45.5(15/33)

 

表4        胚盤胞(凍結融解胚)の発生日別発生割合

発生日

7日目

8日目

9日目

脱出胚盤胞数(%)

52.5(21/40)

38.6(34/88)

4.2(1/24)

 

 

3.その他特記事項

 1)研究期間    平成2~6年

 2)参考資料 

              SaekiらTheriogenology1990,34,1035

              堀内敏孝ら第84回日本畜産学会講演要旨

採卵鶏の産卵期における効果的な量的制限給餌法

 

福井県畜産試験場

 

1.成果の内容

 1)技術・情報の内容及び特徴

 採卵鶏の産卵期における効果的な飼料給与量を検討するため、2銘柄(ゴトウ360、バブコックB-300)を用い、不断給餌を対照区として量的制限給餌(5%、10%制限区)と日本飼養標準による代謝エネルギー要求量(ME区)で比較した。なお、供試飼料はCP17%-ME2,750Kcal/kgを用いた。

(1)     量的制限給餌では制限率が高くなるほど産卵率が低下したり、卵重が小さくなる傾向がみられた。この低下は採卵鶏の銘柄により異なった。10%制限では2銘柄とも産卵日量は有意に低下した。しかしながら飼料要求は率が高くなるとともに改善された(表1)。

(2)     日本飼養標準による代謝エネルギー要求量の計算式から求めた飼料給与では対照区とほぼ同じ産卵率、飼料要求率などの成績がえられた(表1、表2)。

(3)     卵規格割合は、2銘柄の量的制限給餌(5%、10%)ともL卵率以上が対照区に比べて極端に低かった(表2)。

(4)     飼料価格変動による1羽当たりの粗収益を試算したところ、量的制限給餌は、飼料価格が高くなった時に効果が見られるが、銘柄、制限率により効果は異なった(表3)。

 

2)技術・情報の適用効果

 前期の2銘柄の採卵鶏には適用できるが、銘柄によりその結果に差がある。

 

3)普及・利用上の留意点

 産卵期における量的制限給餌は銘柄によりその効果は異なる。自由摂取前週の摂取量の5%を目安とし、産卵初期には制限給餌を行わない。しかも卵価と飼料価格とを考慮しながら行う。また、日本飼養標準による代謝エネルギー要求量の計算式を利用する際は、産卵初期に体重、産卵共急激に増加することを考慮してこの計算式を利用する。

 

2.具体的データー

 

表1 産卵期の成績 (20-72週齢)

銘柄

試験区分

1日1羽当

飼料消費量(g)

飼料

要求率

期別海の産卵率(%)

20-32

35-52

52-72

20-72

ゴトウ

対照区

119.1(100)

2.33

74.2a

88.6

82.9

82.8

5%制限区

111.5(93.6)

2.26

74.2a

88.2

82.6

82.7

10%制限区

105.7(88.7)

2.24

69.8b

85.9

80.2

80.0

ME区

117.3(98.5)

2.34

66.3b

89.6

80.2

80.6

バブコック

対照区

110.8(100)

2.27

84.3a

82.4a

76.7

80.6a

5%制限区

103.1(93.1)

2.25

74.5b

77.1b

74.0b

75.9

10%制限区

98.0(88.4)

2.19

69.8c

74.3b

76.7

74.2b

ME区

105.7(95.4)

2.24

70.0b

81.6a

80.1a

78.3

注 ME区は、日本飼養標準1日1羽当ME要求量=115kcal×体重(kg)+2.2kcal×産卵日量(g)

注) 異符号前に有意差あり(P<0.05)。

 

表2 産卵期の成績 (20-72週齢)

銘柄

試験区分

期別海の産卵率(%)

産卵日量

生存率(%)

卵規格割合

L卵以上(%)

20-32

35-52

52-72

20-72

ゴトウ

対照区

55.1a

61.9a

65.2a

61.8a

51.1a

100

48

5%制限区

52.4b

60.0

63.3

59.9

49.4

97.9

27.1

10%制限区

51.8b

59.3b

62.6b

59.1b

47.3b

100

29.1

ME区

53.9

62.2a

65.9a

62.2a

50.1

97.9

57.4

バブコック

対照区

53.2

61.3

64.7

60.6

48.8a

100

49.1

5%制限区

52.8

61.2

64.4

60.4

45.9

95.8

44.0

10%制限区

52.3

61.3

63.7

60.3

44.7b

97.9

45.0

ME区

52.6

60.8

63.5

60.1

47.1

95.8

38.7

注) 異符号間に有意差あり(P<0.05)。卵規格割合は44週齢時である。

 

表3 1羽当たりの粗収益(20-72週齢)  (円)

銘柄

試験区分

卵価208円/kg

飼料45円/kg

卵価208円/kg

飼料60円/kg

粗利益

差(比率)

粗利益

差(比率)

ゴトウ

対照区

1,917

-(100)

1,267

-(100)

5%制限区

1,910

△7(99.6)

1,301

34(102.7)

10%制限区

1,848

△69(96.4)

1,271

4(100.3)

ME区

1,859

△58(97.0)

1,223

△44(96.5)

バブコック

対照区

1,884

-(100)

1,279

-(100)

5%制限区

1,764

△120(93.6)

1,207

△72(94.4)

10%制限区

1,780

△104(94.5)

1,245

△34(97.3)

ME区

1,827

△57(97.0)

1,252

△27(97.9)

注)1羽当たり粗収益=(卵代一飼料費)/20週齢時の羽数

 

その他特記事項

研究期間:           平成2年-平成3年度                     予算区分:県単

研究課題名:       採卵鶏の産卵期における制限給餌

 

ライ小麦の飼料特性

 

福井県畜産試験場

 

1.成果の内容

 1)技術・情報の内容及び特徴

   ライ小麦の成分特性を明らかにするため、ライ小麦2品種(ライコーン早生、ライダックス)及びライ麦晩生1品種(サムサシラズ)を用いて検討した。その結果ライ小麦は、ライ麦と比較して以下の点で異なる性質を示した。

 

(4)     乾物収量が120kg/aと高く、茎葉収量はほぼ同じであるが子実では1.5倍以上の収量があった。倒状はライ麦より少なかった。サビ病は刈遅れのためライ小麦がやや多かった。(図1、表1)

(5)     一般成分では、CP(粗たん白質)、EE(粗脂肪)が同じかやや高く、NFE(可溶無窒素物)が7%高く、ADF(酸デタージェント繊維)は7%低かった。サイレージにすることにより品種による差は小さくなる傾向があった。(表2)

(6)     サイレージの品質は、ライコーンの乳酸比率がわずかに高い各品種に大きな差はみられなかった。(表2)

(7)     酸素分画では、NCWFE(可溶無窒素無繊維分画)で6~9%高く、OCW(細胞壁物質)は8~10%低かった。Oa(易消化性繊維)、Ob(難消化性繊維)についてはライ小麦の品種間で差がみられ、ライダックスはOaが低く、Obが高かった。(表3)

(8)     これらの成分値からの推定栄養価は、ライ小麦がTDN60.7%。DCP2.3%、ライ麦がそれぞれ55.0%、1.3%であった。サイレージ化によるTDN,DCPの変化はほとんどみられなかった。(表3)

 

2)技術・情報の適用効果

 日本標準飼料成分表を補完し、ライ小麦の給与・試験時の参考になる。

 

3)普及・利用上の留意点

(3)     ライ小麦はサビ病にやや弱いため、刈遅れないよう収穫期に注意する。

(4)     栽培に関しては少雪年のデータのため耐雪性の検討が必要である。

(5)     普及のためには嗜好試験および消化試験が必要である。

 

2.具体的データ(図表)

 

 

品種

草丈

(cm)

穂長

(cm)

稈径

(mm)

茎数

(本/㎡)

倒状*

病害*

ライコーン

131

16.2

5.0

300

0.8

1.8

ライダックス

148

17.6

6.7

250

0.5

2.5

サムサシラズ

156

11.3

5.0

333

2.3

1.3

表1 生育特性

 

 

 

 

 

 

 

 

 

播種2年10月23日、収穫3年6月18日(糊熟期)、畦幅50cm条播

サムサシズ;ライ麦晩生、病害は主としてサビ病

*     )無(0)~甚(5)

 

表2 一般飼料成分(%/DM)及びサイレージ品種

 

品種

DM*

OM

CP

EE

NFE

ADF

pH

乳酸/総酸

生草

ライコーン

45.1

93.8

6.2

1.7

49.2

31.2

ライダックス

45.7

95.0

6.3

1.4

49.7

31.9

サムサシラズ

40.9

94.0

5.2

1.0

42.6

38.2

サイレージ

ライコーン

46.1

93.3

7.5

2.0

48.7

29.5

4.0

63.9

ライダックス

43.5

03.2

7.3

2.0

46.2

31.9

4.1

57.6

サムサシラズ

40.1

94.3

7.1

2.3

42.0

36.8

4.1

56.1

*)%/FM

 

表3 酵素分画及び推定栄養価(DM%)

 

品種

OCW*

OCC

Oa

Ob*

NCWFE

DCP**

TDN**

生草

ライコーン

57.2

36.6

8.4

48.8

30.4

2.2

60.8

ライダックス

57.7

37.3

6.0

51.7

31.3

2.3

60.6

サムサシラズ

65.5

28.5

5.0

60.5

23.9

1.3

55.0

サイレージ

ライコーン

57.4

36.0

7.6

49.8

28.3

3.5

59.7

ライダックス

57.7

35.5

6.4

51.3

28.0

3.3

58.8

サムサシラズ

67.2

27.2

9.1

58.0

19.5

3.1

56.6

*)OCWは混合酸素法、Obは2段階法(混合酵素法+セルラーゼ処理)による

**)TDN=1.111(OCC+Oa)+0.605(Ob)-18.8、DCP=0.924(CP)-3.5の推定式による

 

 

3.その他特記事項

 

研究期間                          :平成3年度                                                 予算区分:県単

研究課題名           :ライ小麦の栽培と調製に関する研究

 

アンケート
ウェブサイトの品質向上のため、このページのご感想をお聞かせください。

より詳しくご感想をいただける場合は、noshi@pref.fukui.lg.jpまでメールでお送りください。

お問い合わせ先

農業試験場

電話番号:0776-54-5100 ファックス:0776-54-5106メール:noshi@pref.fukui.lg.jp

〒918-8215 福井市寮町辺操52-21(地図・アクセス)
受付時間 月曜日から金曜日 8時30分から17時15分(土曜・日曜・祝日・年末年始を除く)