職場のトラブルQ&A ~職務内容の変更を伴う配置転換~

最終更新日 2020年3月27日ページID 000249

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 私は、ある病院に看護師として採用され、勤務しています。先日、病院の経営者から、事務職員が退職したので来月から経理事務の仕事をしてくれと言われました。自分としては看護師の仕事を続けたいのですが、これを断ることができるのでしょうか。

 使用者との労働契約の中で、特に労働の職種・職務内容・勤務場所について合意がなされている場合、その合意を変更することとなるような配置転換の命令は、本人の同意がない限り効力がない(一方的に命令できない)とされていますので、基本的に断っても問題はありません。
 引き続き看護師として働きたいという意志を強く使用者に伝え、もう一度話し合ってみてください。
 ただし、経営不振打開のため企業を維持していく上で特に必要性が認められる場合で、これまでも職務内容の変更を伴う異動が行われていたり、そのことで労働条件が向上することになったりする場合には、異なる職種への配置転換であっても正当な業務命令であるとして使用者が一方的に行うことができるという事例もあります。

解説

  裁判例による配転命令の規制をより具体的に見ると、労働契約の締結の際に、または展開のなかで、当該労働者の職種が限定されている場合は、この職種の変更は一方的命令によってはできません。医師、看護師、ボイラー技士などの特殊の技術、技能、資格を有する者については職種の限定があるのが普通と考えられます。
 典型例として、アナウンサーの他職種への配転命令については、当該労働者が大学在学中よりアナウンサーとしての能力を磨いて難関のアナウンサー専門の試験に合格し、しかも20年近く一貫してアナウンス業務に従事してきたという事情から、職種が採用時の契約からアナウンサーに限定されていたと認められ、それ以外の職種への配転を拒否できるとされています(東京地裁決定 昭51.7.23 日本テレビ放送網事件)。
 しかし、このような特殊技能者であっても、長期雇用を前提としての採用の場合には、当分の間は職種がそれに限定されているが、長期間のうちには他職種に配転されうるとの合意が成立している、と解すべきケースも多くあると思われます(最高裁一小判決 平10.9.10 九州朝日放送事件)。
 また、特別の訓練、養成を経て一定の技能・熟練を習得し、長い間その職種に従事してきた者の労働契約も、その職種に限定されることがあります(東京地裁判決 昭42.6.16 日野自動車工業事件)。
 しかし、技術革新、業種転換、事業再編成などの激しい今日では、このような職種限定の合意は成立しにくいと思われます(最高裁一小判決 元.12.7 日産自動車事件)。
 (菅野和夫著『労働法』より抜粋(第12版 729ページ))

参考

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