第10回福井県科学学術大賞大賞受賞者
みやもとかおる (理学) 平成元年 国立循環器病センター研究所バイオテクノロジー 特殊実験室長 助教授 |
業績名 『幹細胞からのステロイドホルモン産生細胞の創出 』
副腎などの形成に必須の遺伝子を用いて、間葉系幹細胞を、ステロイドホルモンを作り出す細胞へ変化させる方法を開発しました。併せて、万能幹
細胞であるES細胞を、ステロイドホルモンを作り出す細胞へ変化させる方法も開発しました。将来、ステロイドホルモンを作り出す細胞を先天性ス
テロイドホルモン欠乏症の患者に移植することで、根本的な治療を行うことが期待されます。
≪研究の内容≫
先天性ステロイドホルモン欠乏症は1.5万人に1人の割合で存在し、低ナトリウム血症などの症状により、治療が遅れれば死に至ることもあります。現在、治療法としては、不足するステロイドホルモンを注射や錠剤投与により補うホルモン補充療法が行われていますが、生涯にわたり治療を継続する必要があるため、患者の負担は大きなものとなっています。
宮本氏は、近年、注目を集めている幹細胞を用いた再生医療により、先天性ステロイドホルモン欠乏症の患者の負担を小さくすることを考えました。再生医療は機能の失われた臓器を再生させようとする治療法で、さまざまに変化できる幹細胞から目的の細胞を創り出し、移動することで根本的な治療を目指す療法です。
宮本氏は、ステロイドホルモン合成酵素の発現を制御し、副腎などの形成に必須とされる遺伝子をヒト骨髄間葉系幹細胞で発現させ、刺激することで、ステロイドホルモンを作り出す細胞へ変化させることに世界で初めて成功しました。
併せて、原理的に無限に増殖させることが可能なため、大量の細胞移植が必要な再生医療に最も適し、iPS細胞と並ぶ万能幹細胞であるES細胞を、ステロイドホルモンを作り出す細胞へ変化させることにも成功しました。
また、先天性ステロイドホルモン欠乏症は、ステロイドホルモン合成酵素などの遺伝子変異が原因となっていますが、まだ多くの症例で原因となる遺伝子が特定されていません。
宮本氏は、自身が開発した幹細胞をステロイドホルモンを作り出す細胞へ変化させる方法を応用し、ステロイドホルモン欠乏症の原因となる候補遺伝子を新たに特定しました。
これらの成果は、国内外で高く評価され、米国生化学分子生物学会誌をはじめ海外の一流学術誌に論文が掲載されています。
将来、この研究で得られたステロイドホルモンを作り出す細胞を、先天性ステロイドホルモン欠乏症の患者に移植することで、根本的な治療を行うことが期待されます。
また、原因の分かっていない症例で、原因となる遺伝子を特定することで、先天性ステロイドホルモン欠乏症の早期診断に繋がることが期待されます。
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