第5回福井県科学学術大賞受賞者

最終更新日 2011年2月9日ページID 013891

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廣石氏

おぎはら  たかし
荻 原   隆

  福井大学大学院工学研究科 教授

<略歴>
昭和36年 東京都墨田区生まれ
平成 元年 東京工業大学大学院理工学研究科博士後期課程修了
平成 8年 福井大学工学部材料化学科助教授
平成19年 現職
 



 業績名 『バッテリーとラムの開発』

 新たな電池材料の開発が国内外で様々試みられていますが、これらに先駆け、ナノ(10億分の1)粉体製造技術を基に安価なリチウムイオン電池材料の製造が可能となりました。バッテリートラムへの応用、実用化が図られる見込みとなり、運輸部門の省エネルギーや環境負荷低減に大きく貢献するものと期待されています。

≪開発研究の内容、成果≫
  鉄道のエネルギー消費量は航空機の約1/4、自動車の約1/6、CO2排出量は航空機の約1/6、自動車の約1/9と、極めてエネルギー効率の高い輸送手段であり、格段に地球環境保全に適していますが、将来の石油資源の減少に伴う電力需要を考えると鉄道においても一層の省エネ技術が必要です。電池による鉄道車両が実用化されれば、公共交通機関の低公害化や省エネ化を一気に高められるだけでなく、無架線化により、電圧や周波数の異なる鉄道の相互乗り入れや都市景観の改善等のメリットが受けられます。
 荻原氏は、リチウムイオン電池を鉄道用車両に用いることを考え、その諸課題の解決に取り組みました。同氏は電池の正極(+極)の材料であるマンガン酸リチウムを10億分の1m規模にまで細かくしてシート状にした電極を作製し、これを重ねることで、エネルギー密度を従来の電池の20%、出力密度を2倍以上に向上させることに成功したほか、鉄道用電池としては、他の試験研究機関、メーカーの製品に比べ、1/4〜1/3にまで軽量化を実現しました。電池走行により従来の約70%のエネルギーで走行できることを明らかにしたほか、ブレーキ時に発生するエネルギーをリチウムイオン電池へ充電しながら走行する鉄道車両技術を確立し、このことで、さらに29%の省エネ効果を実証しています。
 現在、電気自動車やハイブリッドカー向けに、軽量、小型、高出力の大型リチウムイオン電池の研究開発が多くの企業で盛んに行われており、その正極用の材料としては、コバルトやニッケルといった金属が用いられています。これらの金属は、電池の性能を高める上で最適なものですが、希少金属であり価格が高いことから、安価でかつ高性能の代替金属が求められてきました。荻原氏は、ナノ粉体製造技術によりマンガン系の金属でも正極材料としての性能を維持しつつ、低価格化、軽量化を達成することに成功したのです。
 これまで福井県内の2つの鉄道会社(えちぜん鉄道、福井鉄道)において、実際に電池で駆動する試験車両を運行させ、国内では初めて営業路線において電池のみで40km以上の往復走行および標高150mまでの登坂走行を実現しました。また、電圧を制御する装置を改善して、マンガン系リチウムイオン電池の耐久性を3000サイクル(約10年間の使用が可能)の寿命まで向上させることに成功しています。
 これまでの研究の成果により、バッテリートラム(電池のみで走る路面電車)の実用車両モデルが完成しており、現在は、この技術を基に鉄道車両メーカーが実用化への準備を進めています。この車両が実際に街中を走ることで国内外における省エネルギーおよび環境負荷低減への関心が一層高まることが期待されています。

アオコ 「車内積載用リチウムイオン電池」

 
ウイルス 「トラム内の装置スペース」

 

 

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