第9回福井県科学学術大賞大賞受賞者
かわいくにあき |
業績名 『多層構造織物によるクッション材の研究開発 』
素材にリサイクル可能なポリエステルを使用しながら、耐久性に優れた多層構造織物クッション材を独自の技術により開発しました。このクッション材は軽量で薄く、優れた通気性と体圧分散性を有しており、寝具用マットレスとして主に西川産業を通じて百貨店等で販売されている製品は、高い評価を受けています。この技術の応用により医療分野、スポーツ分野への用途拡大が期待されます。
≪研究の内容≫
クッション材の多くは、ポリウレタン系の樹脂で、車両用シートなど様々な分野で使用されています。この材料は、安価で優れた圧縮特性を有する反面、通気性が乏しい点やリサイクルができない点、燃焼時にガスが発生する点などの問題があり、これに変わる材料開発が望まれていました これらの、問題を解決するために開発された多層構造織物は、縮む糸とループとなる糸を複数組み合わせて織物とし、熱処理すると三角形を基本とするトラス構造が現れます。
当初大手原糸メーカーによって発明されたこの織物は、形状の安定性や優れた通気性は高く評価されていましたが、圧縮時に横倒れしやすいという難点があり、素材もナイロンとポリエステルが混在しており、リサイクル性に劣ることで改善が望まれていました。
河合氏は、この課題を解決するため、ループとなる糸を扁平断面にすることと、伸縮性復元性に優れたポリエステル糸の素材の組み合わせに成功し、新たなクッション材として特許を取得し、独自の原糸を製造して事業化しました。
この独自の技術により開発・製造されているクッション材は、空気層が96%以上と極めて軽量で優れた独自の通気性と体圧分散性によって大手寝具メーカーを介して多くのユーザーに販売されています。
この成果は、2008年に関西フロントランナー大賞受賞により高い評価を受け、2011年日本繊維機会学会技術賞も授与されています。
河合氏は、現在、この織物の特徴を活かし、介護・医療用褥瘡予防用マットの研究開発を進めています。既に、従来のマットレスとの併用により極めて良好な体圧分散性を実現し血行障害も抑制されることも分かっており、医療機関での実証試験を進めているところで、自宅介護者や介護施設への拡販も始めています。
さらには、手術中の体温低下、血行障害を防ぐマットの研究開発やアウトドアスポーツ用品など多方面への展開も進めています。
小規模な企業にもかかわらず、紡糸から製品までの一貫生産を行うというこれまでにない取組みを進め、新しい事業に挑戦しており、このような成功事例が多数出ることにより、本県繊維産業の永続的な発展が期待されます。
厚さ4ミリの織物が熱加工すると35ミリのクッション構造体となる。
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