知事記者会見の概要(平成20年6月4日(水))

最終更新日 2008年4月16日ページID 005909

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平成20年6月4日(水)
10:30~11:45
県庁 特別会議室

 
記者会見


【知事】
 今日は大きく申し上げますと発表事項は7点あります。

 まず、昨年4月26日に警察本部と県とで共同で策定した「福井治安向上プラン」の19年度の成果です。佐野県警本部長とともに発表いたします。

 この「プラン」に基づきまして、19年度は「わがまち安全・安心ロック&ライトアップ作戦」、「交通安全スロー・シグナル・シャイン(3S)運動」の展開、「子ども安心3万人作戦」の推進、「ポリス・スタンバイ作戦」などの強化に努めました。

 のちほど警察本部長からもお話があると思いますが、できるだけ住民の皆さんに近いところで警察職員が中心となって安全を守るという姿、そして、行政、地域の皆さんと力を合わせるという運動を一層レベルアップするということであったと思います。

 「治安向上プラン」の実施期間は平成19年5月から概ね2年ということになっており、19年度は前半1年間ということになります。この期間の結果としては、1点目は、刑法犯認知件数が平成15年から5年連続で減少していることが挙げられます。2点目は、刑法犯の検挙率が全国上位を維持したことであり、平成19年度は45.8%で全国8位です。3点目は、交通事故死者数が4年連続で減少し、昭和33年以降、過去50年間で最も死者が少ない状況にあります。治安の回復傾向を維持することができたと思います。

 その一方で、車上ねらい、高齢者の死亡事故、また、甚だ遺憾なことでありますが、強制わいせつ、子供に対する声かけ事案などの犯罪は増加しており、県民がまだまだ十分に体感治安の向上を実感できるとは言えない状況ではないかと思います。

 この「プラン」の実施期間は20年度末までなお1年あり、今後さらに県民の体感治安が向上し、全国一治安のよい福井となるように努めていきたいと考えています。

 詳細については、本日午後、県警本部において、県民安全課と県警本部企画課から説明を行います。

 私からまず以上のご報告を申し上げ、続いて佐野県警本部長からお話し願います。

【県警本部長】
 ただいま知事からお話がありましたとおり、刑法犯認知件数については5年連続で減少し、5年前と比べて昨年は約半数になるなど、成果は一応あったと思っています。しかしながら、いわゆる体感治安、治安情勢につきましては依然として厳しいという状況であると認識しています。

今後の課題として幾つかポイントを挙げます。

 とりわけ、子供を守る取組みとしては、不審者情報をリュウピーネット等でできるだけ多くの方と共有し、犯罪被害の防止を図るとともに、「ポリス・スタンバイ作戦」をはじめとする、街頭における「見える・見せる警察活動」を一層強化していきたいと考えています。

 また、高齢者対策については、今後の大きな課題です。高齢者交通安全リーダー等による安全活動の推進のほか、振り込め詐欺などの新手の犯罪から守る対策を強化していきます。

 さらに、犯罪に強いまちづくりについては、無施錠被害率が依然として大変高いことから、引き続き、「わがまち安全・安心ロック&ライトアップ作戦」、さらに、防犯ドクターによる防犯診断等を推進していきたいと考えています。

 加えて、暴力団対策については、犯罪検挙および暴排活動などを積極的に推進していきたいと考えています。

 県警察としては、今後とも関係機関、県民の方々と力を合わせ、この「プラン」に掲げられた各種施策を総合的に推進し、体感治安の向上を図るとともに、全国一治安のよい福井となるよう全力を尽くす所存です。

【記者】
 今でもリュウピーネットで丹南地方の不審者情報がいろいろ流れていると思います。それは丹南地域の情報が増えたためという声も多いのですが、ほかの地域では、逆に言えばあまり通報がなされていないのではないかという苦言もあります。情報の通報率の向上について、今後、市民に対してどのような呼びかけをしていきたいと考えていますか。

【県警本部長】
 リュウピーネットでは、丹南地域だけではなく毎日のように不審者情報が流れています。一般的に言うと、大きな犯罪の前には、こういった不審者情報等、何らかの予兆があるものです。こうした情報を多くの方と共有したいということであり、今まさにご質問があったとおり、いかにそうした多くの情報を集めて共有し合うか、早く集めるかということが大事です。特に子供でいえば、学校、PTA、教育委員会などと連携し、我々が出向いた時にそうしたことについて早く情報を入れてくれるよう会合等で促していくということがあると思っています。

【記者】
 IT系の犯罪についてどう感じていますか。また、今後どういう対が必要と考えていますか。

【県警本部長】
 IT系というと幅広いのですが、本県は必ずしもそう多くはありません。例えば今懸念されるものとしては振り込め詐欺がありますが、平成19年のみで見れば前年と比べれば件数も被害額も減っていますが、実は今年に入ってから多くなってきました。これは全国的な状況だと思いますが、特に医療費の還付などいわゆる還付詐欺が増えています。そうしたものもITという面に含めれば、当面そうした被害が拡大していることから、実は県警内で予防と検挙という両面から体制をとって強力に進めているところです。

 ポイントとしては、被害者となる高齢者の方への注意喚起と銀行との連携です。銀行においてATMの前で振り込まないような声かけなど、実際にはこうしたことが功を奏して振り込め詐欺を阻止した例が何件かあります。

 また、我々としてはやはり検挙していくことが重要です。ただ、こうしたIT犯罪等はなかなか本県だけで完結するものではなく、全国的に広がるものであります。振り込め詐欺で言えば、本県の人が被害者となって加害者が首都圏にいる場合、関係警察、全国の警察と連携しながら検挙を進めていくことを考えていかなければならないと思っています。

【知事】
 それでは、その他の項目として、地方分権改革推進委員会第1次勧告、エネルギー研究開発拠点化計画、防災対策の強化、北京オリンピック・ギリシャ代表の福井キャンプ、カー・セーブの推進、浙江省訪問の結果という6点についてお話しします。

 まず、地方分権改革推進委員会第1次勧告です。これは既に先月の30日に地方分権改革推進委員会から福田総理に提言されたところです。今回の勧告については、土地利用の権限の移譲や、国の同意の廃止、福祉施設の基準緩和など、従来から地方が求めてきた国から地方への権限移譲、国の関与義務づけの縮小が盛り込まれておりますし、一定の評価ができるものです。しかし、道路河川管理など一部の項目は省庁との協議が整わず、先送りされたものもあります。

 それから、市町村への権限移譲については、福井県が進めてきた市町村への権限移譲と方向を同じくするものであり、基本的には評価できると思いますが、市町村間の広域調整や小規模な市町村における専門的な人材の確保などについても課題がありますので、今後さらに検討を深めることが重要だと思います。

 地方税財源の問題がまだ十分に検討されておりませんので、真の地方分権社会の実現のために税源移譲など十分な財源移譲が不可欠であり、今後、勧告に具体的に盛り込むことを強く求めていきたいと思います。

 また、政府においては、1次勧告の速やかな実現に向けて努力すると同時に、残された課題について前向きな姿勢で取り組んでほしいと考えています。

 いずれにしても、仕事だけおりてきても、権限や財源がないと、次から次へと新しい仕事も日々発生しているわけですので、それでは困るということは大前提だと申し上げておきたいと思います。

 次は、エネルギー研究開発拠点化計画のステージアップの問題です。

 現在、さまざまな事柄を進めていますが、今回、「福井クールアース・次世代エネルギー産業化プロジェクト」を進めることにしました。これは、県、関西電力、京都大学、さらに地元にある田中化学研究所などの産学官連携の事業です。

 原子力発電所という、二酸化炭素排出の議論から言うとクリーンなエネルギーと評価されているものがあるわけですが、本県において集積されたこの技術や設備を活用して次世代エネルギーの研究開発を推進し、事業化・産業化を行おうとするプロジェクトです。

 具体的には、現在、電気自動車などの電源として期待されているリチウムイオン電池があります。数日前、三菱自動車工業の電気自動車の紹介もありました。そのほか燃料電池など、電気を効率的に利用する有望な技術について本年度中に具体的な共同研究テーマの検討を行い、事業化に向けた研究を進めます。各社、各分野でさまざまな研究の競争関係にあり、できるだけ小型化や低価格化を図る、あるいは長期間利用できるようにするなどの課題が進んでいますし、燃料電池などについては、自動車電源の利用、家庭用の発電装置などさまざまなことが今後の展開としてあります。

 そこで、6月17日に「福井クールアース・次世代エネルギー産業化協議会」の設立総会をエネルギー研の研究センターにおいて県内外の企業15社の参加をえて行いたいと考えています。県外企業としては、村田製作所、三菱電機、三菱重工、松下電池、東洋紡、第一稀元素、関西電力、岩谷産業という会社が参加します。また、県内企業としてはアイテック、清川メッキ、先ほど申し上げた田中化学、日華化学、日東シンコー、福井鋲螺、フクシン工業が参加することになっています。

 また、海外からの研修生も対象とした人材育成の拠点である原子力安全研修施設設備について、日本原子力発電株式会社が、国、県、地元経済界、大学などで構成する原子力安全研修施設整備構想策定委員会を6月22日に設置・開催します。この委員会において、平成24年度中を目途にこの運用が開始できるよう、敦賀市内の設置場所、研修施設の規模の検討を行い、本年秋に中間報告、年度末に最終報告を取りまとめる予定です。

 3点目は防災対策についてです。

 先月12日の四川省の地震、先月初めのミャンマーのサイクロン災害など、アジア地域で大きな災害が発生しており、お見舞いを申し上げます。

 本日午後1時から県庁正庁において防災会議を開きます。これまで毎年2月に開催しておりましたが、今回は災害対策の強化という観点から、梅雨の時期、出水期における風水害対策なども含めて徹底を図るため、この時期に開催することにしたものです。

 今日の会議では、今申し上げたアジアの災害、また、能登半島、中越地震の教訓も踏まえ、福井県の地域防災計画を修正する予定です。もちろん計画だけを修正して物事が解決できるわけではありませんが、計画を修正しながら具体的な行動も強化していくということです。

 修正の主な内容としては、災害時要援護者に配慮した避難所の確保、被災者の健康管理、住民への情報伝達体制の強化を図るものです。また、原子力事業者の自衛消防体制の整備ですが、これは中越地震などでも大きな問題になりました。原子力事業者の消防訓練の実施などについても原子力防災編に明記します。

 さらに、気象庁が今回の梅雨の時期から大雨洪水警報・注意報の発表基準について、新しく土砂災害発生の危険性を示す指標である「土壌雨量指数」と、洪水発生の危険性を示す「流域雨量指数」を市町ごとに導入するように改善しています。これらの新しい警報情報を市町長が避難情報を発令する際の参考情報として新しく位置づけることにしています。

 なお、6月28日は、福井震災60周年に当たり、フェニックスプラザにおいて地震防災セミナーを開催し、講演、シンポジウムの開催、体験コーナーの設置、震災の記録映画等の上映を行う予定です。

 また、少し先になりますが、9月7日は南越前町で総合防災訓練を、10月25日は、高浜町において原子力防災総合訓練を予定しており、これらについても今日の防災会議で報告をする予定です。

 4点目は、北京オリンピック・ギリシャ代表チームの福井キャンプについてです。8月8日から北京で開催される第29回オリンピックに参加するギリシャ陸上競技代表チームの事前キャンプを県営陸上競技場(福井市)で行うことが決定しました。ギリシャチームは8月3日に来日し、14日まで12日間滞在する予定です。

 なお、北京オリンピックそのものは8月8日から8月24日までの予定です。陸上競技は8月15日から8月24日までです。役員を含めて40名の方がお見えになる予定です。

 ギリシャチームは、昨年の世界陸上大阪大会の事前キャンプを福井県で行っており、ギリシャの皆さんからは、温かい歓迎や練習環境などが大変好評であったということから、今回も本県において事前キャンプを行いたい旨の希望が寄せられたということです。

 アテネ五輪では、女子400メートルハードル、20キロ競歩で金メダル、女子三段跳び、円盤投げが銀メダル、やり投げが銅メダルという成績が出ており、今回はそれ以上に頑張ってほしいと思っています。

 この機会に、県民がトップアスリートを身近で感じることができるように、子供たちやスポーツ競技者などとの交流を計画していく予定です。

 5点目はカー・セーブの推進についてです。ドライブ・セーブということでもありますが、車の使い過ぎの見直しということです。

 カー・セーブを推進する企業の参加を募ってきましたが、最終的な参加企業は約100社となる見込みであり、今月13日から民間企業の参加を得て本格的に実施することになります。

 車通勤の方がカー・セーブ・デー当日に電車・バスを利用して通勤する場合に、県がカー・セーブ参加証を交付し、運賃の割引をする予定です。カー・セーブ・デーは毎月第2・第4金曜日です。

 次に、「パーク・アンド・バスライド」についてです。既に、6月2日から福井市大和田地区のエルパと福井市西部のすかっとランド九頭竜付近に「パーク・アンド・バスライド」の駐車場を46台確保し、通勤形態の試行実験を行っています。

 さらに、越美北線については、今月13日から定期通勤利用者を対象に、京福バス大野線を通常運賃の3分の1で利用できる割引券の発行を開始する予定です。帰りが遅くなった時に、行きは越美北線、帰りは路線バスという利用が可能になります。バスターミナル発のバスは、午後8時50分、9時45分、10時30分の便が利用できることになります。今年は地球温暖化サミットの年でもありますので、マイカー利用の数を少しでも見直していくことができればと考えています。

 6点目は浙江省訪問の結果と今後の交流についてです。

 福井県と浙江省の友好提携15周年記念式典に出席するため、5月25日から27日まで5年ぶりに浙江省を訪問しました。これまでの包括的な友好交流の促進はもちろんですが、個別的なテーマである観光客の誘致、原子力などエネルギー分野での人材受入れ、恐竜をはじめとする文化面での相互交流、経済貿易の促進などについて、具体的な行動を開始していくことを浙江省側とも議論し、確認しました。

 これを踏まえ、まず、観光客・修学旅行の誘致については、今後、省政府や旅行社に対し、本県のエネルギー関連施設や、浙江省と本県の中高生・大学生の交流を絡めた観光モデルコースを具体的に提案し、誘致活動を継続していきたいと考えています。

 原子力については、本県がエネルギーの総合的な研究開発拠点であることをPRしつつ、国の研修制度等を活用して、できるだけ多くの研究者の受入れに努めていきたいと考えています。具体的に、原子力・電力会社にも直接要請をしています。

 また、ちょうど県立恐竜博物館が発掘の協力で浙江省に行っていた時期ですが、東副館長などと一緒に浙江省の自然博物館の康館長とお会いし、研修生をぜひ1名受け入れてほ しいという話がありましたので受け入れる予定です。康館長は、1年間、勝山で勉強された方でもあります。また、福井の恐竜博物館の恐竜の絵画の借用の要請などもあり、これに応じていきたいと考えています。

 また、先方のいろんな発掘物をこちらで利用することなどもこれから相談していかなければならないと思っています。

 なお、経済貿易の促進という点では、ジェトロ北京センターによりますと、「福井」という名前が、現在、登録・申請中を合わせて10件以上あるとのことでした。「福井」という商標は中国の人たちには非常に響きがよくて、好い印象の漢字であり、眼鏡などを「福井ブランド」として本県からの進出企業と連携して名前と実物を売り込んでいきたいと思います。

 ちょっと雑談ですが、「青森」という名前もよい感じを与えるそうです。「愛知」もよいと言っていました。我々の語感とは少し違うところがあるようです。

 なお、お手元に資料があると思いますが、ふるさと納税の寄附について、最初の1か月で一定の成果を上げています。継続的なプロジェクトですので、地道に進めると同時に、全国に広まるようにしなければなりませんので、そうしたことを心がけてPRも進めていきたいと思っています。

~ 質 疑 ~

【記者】
 地方分権の第1次勧告について、福井県として、ここは足りない部分があると感じるところをもう少し具体的に教えていただけますか。

【知事】
 あらゆる分野にわたることですが、これからこの勧告を具体化しなければならないわけです。約束というか、提案されたものを具体化することが大事です。また、先ほども申し上げたように、仕事だけがおりてくることは分権ではありません。それでは逆になります。権限と財源が来ることが真の分権ですから、そのようになるよう強く求めていきたいと考えています。

 なお、学校の先生の人事権については、市町に移譲するということですが、先生の確保は大変な課題です。福井県の例をとりますと、小さな市町がそこだけで先生を確保するというのはなかなか大変なことであり、不可能だと思います。この勧告は東京や大都市の視点での提案ではないかと思いますので、格差の問題についてもっと検討する必要があるだろうと思います。

 また、医療保険や生活保護などについても、国が責任を持つ分野です。国がやるべきことを観念的に考えて、県や市町村でやるべきだというような対応は、具体化に当たってそうした対処をしないことが重要だと思います。

【記者】
 第1次勧告には、直轄国道と一級河川の権限移譲も盛り込まれていますが、これまでどおり国の責任で整備なり管理をしてほしいという声も聞こえます。知事のお考えはどうでしょうか。

【知事】
 直轄国道は、具体的な箇所は2次勧告で示されることになると思っています。具体的な箇所が示されていないので影響を述べることはできませんが、道路は財源がないと整備やメンテナンスができませんから、そこはしっかりやってもらわないといけません。一部だけを県でやってくれと言われても困ると思います。

 また、一級河川ですが、本県については県内で関係する河川はないということですから、それはそれとして国で責任を持ってやってもらうということが重要かと思います。いずれにしても、特に河川や道路、橋梁なども含めて、これから相当の予算が要る時期です。単に、これからは県でやれという処理をするだけでは、権限や税財源も含めて三位一体でやってもらわないと大変具合が悪いと思います。管理しかねるという事態になると思います。そこは十分、知事会などとも連携して仕切りをすることが必要だと思います。

【記者】
 分権に関連して、道州制の問題ですが、自民党の道州制推進本部が道州制の区割り案を発表し、知事への意見聴取も進めたいということです。現状では区割りをどうするかという部分だけが先行し、住民の視点での議論がないように思えますが、現在の議論に対する考えと、道州制に対しての知事の基本的な考えをお聞きします。

【知事】
 以前から申し上げておりますが、私は道州制については現状のいろんな状況を考えると消極的です。道州制のいろんな課題、考え方の問題点、その拠ってきた所以、あるいは、本当は何を論じなければならないのかということについて、まとまった形ではあまり世の中に示されていないように感じました。道州制に消極的だというと、なぜそうなのか、ちゃんと構想を持っていないのではないかという批判もされます。それではいけませんので、道州制とはこういうことではないかということをまとめて『中央公論』に書かせていただきました。今月号で間もなく出ると思いますから、できればご一読願いたいと思います。

 道州制は個別にいろんな課題があり、それぞれについてさまざまな議論もありますが、依然として、基本的に何が問題かということを先に論じなければなりませんので、それを中心に論じました。要するに、道州制議論については、日本をよくしたいというような理想的な気持ちは分かるのですが、あまりにも抽象的であり、根拠があやふやで、都合のいいところばかりが論じられており、現実的な議論になっていないということです。抽象論であり、こうなるのではないかという期待論や、道州制になれば課税権や条例制定権をそこに移譲すべきだといった議論です。その「すべき」ということがなかなかできないことであり、そうした議論が多くあります。

 もう1つは効率論で、何か効率を優先しているような考えがあります。そうした点についてさまざまな課題があるのではないかということを論じました。

 道州制というのは、基本的には大都市から見た考え方かと思います。このままいけば、道州制といっても、基本的には東京一極集中になりがちだと思いますし、州都として、ブロックの中心都市にいろんな権限なり経済的なものが集中し、地方の地域というのはこれまで以上に格差が生ずることになると思っています。

 あれだけ大きな何千万人という人口の地域で、地方自治や民主主義を考えると、選挙や議会の問題として、政治に携わる人たちと有権者や納税者がどのように接触したらいいかということになります。基本的にはデモクラシーの議論が横に置かれ、法律一辺倒になるのではないかと思っています。

 歴史的に戦前も戦後も道州制の議論はありました。戦前は昭和の初めに議論が起こりましたし、昭和30年代にも起こっています。いずれも地方分権と関わりなく、むしろ中央集権的な脈絡で起こっていますから、道州制が地方分権と何か関係があるというものでは決してないと思っています。

 グローバル化時代の国家はどうあるべきかということもあります。EUなどを例にとって道州制がよいということがよく主張されますが、EUは、日本という国と他の国がたくさん集まって国家連合をつくるのに相当します。今の道州制について、それとの比較で言えば、それぞれの州に分け、その州は、何か国家であるかのように言っていますが、それでは国が分かれたことになるでしょう。こんな難しい時代に、日本の国を分けても産業政策や貿易政策などができるという議論は疑問に思います。

 国民が今期待していることは、道州制への評価も高くないことから分かるように、経済一辺倒の議論ではなく、それぞれ生活している国民のさまざまな課題、大都市問題、地方の問題、これは農業の課題なり集落の課題がありますが、これを一つ一つ地道に解決していくことが基本としてあるのではないかと思います。あまり抽象的な一般論を論じて、それによって万事すべて解決するなどということはあり得ないと思います。

【記者】
 福井クールアース・次世代エネルギー産業化プロジェクトについて、今回、特に原子力エネルギーの部門でいろいろ研究を進めていくということだと思いますが、改めてその理由や背景、今後具体的にどのような産業振興を考えているのかをお聞きします。

【知事】
 クールアースの燃料電池は、先ほど申し上げたように、競争関係が厳しいですから、他の研究とは性質が異なると思います。県外企業の名前も申し上げましたが、かなり研究を特化し、かつ、慎重ながらも急いでやるということが重要だと思います。福井県だけで何か物事を解決するようなものではありませんので、心構えとして、目標をはっきり定めて研究し、実現していくテーマではないかと思います。

【記者】
 具体的な今後の研究件数、例えば産業としての事業展望や数値目標はありますか。

【知事】
 特にリチウムイオン電池については、充電型の電気自動車用の電源の改善や新しい製品、電力を貯蔵するシステムの研究などを考えています。燃料電池については、発電型の電気自動車の電源としていかに使えるようにするか、また、家庭用の発電装置などについて事業化を目指したいと考えています。

【記者】
 拠点化計画の中で、日本原子力発電の研修センターの整備構想を20年度中に策定したいということですが、民間企業の施設に行政も加わっていくという整備構想策定協議会の設立の目的を教えてください。

【知事】
 原子力の安全の問題は、福井県や日本のみならず、アジアなど全体を含めて、原子力そのものに対する信頼性、あるいは環境問題など、さまざまなことに深く関わるわけです。技術の改革ももちろんですが、それに従事する人材の問題が深く関わるわけですから、その能力をいかに向上させたり、働く人たちの意欲を引き上げていくかという研修が重要と思います。これを福井県が日本やアジアの中心となって実行していくことが我々の使命ではないかと思いますので、福井県としても経済界、大学などと一緒にやるということです。

【記者】
 県としてどういうバックアップができると考えていますか。

【知事】
 全体の調整という役割が大きいと思います。福井県の県民の安全を守るという基本的な立場です。ほかの関係者はそうした立場ではありませんし、そうした役目を負う立場ではありませんので、そうしたことを基本にやっていくということだと思います。

【記者】
 ギリシャチームのキャンプについて、本県のスポーツ振興を含めて期待感のようなものをお聞きします。

【知事】
 ギリシャはスポーツ発祥の国ですし、前回、世界選手権の際も来ていただき、継続してやるということが非常に重要だと思います。
 福井県民にとって、スポーツを実際にやっている人たちが身近に、オリンピックに出るような人たちはどういう人たちかを知り、どういうスポーツかということに接することが非常に重要だと思いますから、そうした機会としては貴重だと思っています。

【記者】
 ギリシャという国と県との交流体制をこれに関連してキャンプ後に整えていくという気持ちはありますか。

【知事】
 気持ちはないわけではありませんが、始めるのは易しいものの、ずっと続けられるかどうかがもっと責任を伴うことです。そうしたことを考えて、今度のキャンプの様子を見て考えたいと思っています。二、三年で終わるわけにはいきませんし、交流は継続していくことが重要です。両方の国の関係やいろんな関連性を見てやらないといけませんから、長続きすることが大事だと思います。

【記者】
 北陸新幹線について、6月1日に新幹線建設促進同盟会の総会がありましたが、改めて夏の概算要求までに道筋をつけるということですが、改めて知事の思いを聞かせてください。

【知事】
 これは約束してもらったことです。政治情勢や財源が厳しいという議論もあるかとは思います。しかし、我々としては、政治に携わる者として、国会議員を先頭に最善を尽くすということかと思います。あと一息ではないかと私は思っています。

【記者】
 国会議員が先頭ということですが、同盟会での発言の中で、山崎参院幹事長が、JRを含め、貸付料の算定などで、概算要求は難しいのではないかというような見解を示されたようですが、これについて知事はどう認識していますか。

【知事】
 その会議でも、市長や県議会、経済界からの発言があったと思いますが、みんなでやる気を持って当たっていくということだと思います。福井県は全体としては大きい県ではありませんから、人一倍頑張らないと、ほかの地域に競争で負けてしまいます。これは、やる気を持ってやるということしかありません。

 なお、実務的に、国会議員の方に国交省の話の詰めがどうなっているかを絶えず働きかけてチェックしてもらうことが重要だと思います。実務上の詰めが必要ですから、どうなったのかというだけではいけないと思います。

【記者】
 参院の幹事長があのような言葉をぽろりと言ったということですが、あくまで知事としては概算要求に間に合わせるという決意ですか。

【知事】
 年末の自民党の協議の場で、そうすると言っておられるわけですから、発言したことはすべてそれに基づいて動いてもらわなければいけません。それが政治です。我々もそうした立場で応援するということです。

【記者】
 高速増殖炉「もんじゅ」について、そのための交渉のカードにしたらよいではないかという意見もあるのですが、それについてはどのように思われますか。

【知事】
 福井県がエネルギー政策に貢献していることについては理解していただかなければいけませんが、いつも言っているように、直接関連することではありません。

【記者】
 福井鉄道について、名古屋鉄道が撤退した後の新しい経営主体となる企業あるいは団体の選定作業ですが、今までの経過と、どこまで決まっているのか、どんな検討をしているのかを教えてください。

【知事】
 前回の県議会で、基本的なフレームについて概ね理解を得て進めてきたわけです。その後、問題になったこととしては、債務の処理について、新たに確認された約4億円の債務の対応があったと思います。これは企業内での人件費などの処理の問題、あるいは名古屋鉄道の債権の返済猶予などについて、5月22日の第7回協議会で一応の整理をしているわけです。

 沿線市は、それぞれの市の6月議会で、これからの維持修繕費として、10年間にわたり12億円、毎年1億2千万円という予算も提案するということです。沿線市としては、さらに追加的に鉄道を維持する立場から対応をしているということだと思います。

 これから新規の投資というのも必要ですが、そのためには国の補助が要ると思います。3つの市で利用促進団体を設立しないとそうした計画も作れませんし、国の応援も得られないということです。そうしたことに着手したという動きがあるわけですから、徐々に環境が整いつつあるとは思います。しかし、こうした状況は県議会にもまだ説明しておりませんから、前回の議会からこうした動きがある、さらにどうするか、ということも説明していく必要があると思います。

【記者】
 ふるさと納税の寄附について、件数的に多いか、少ないか、どう思いますか。

【知事】
 かなりいただいているとは思います。ただ、これは一月ごとにして分かりやすく見ていただいているわけですが、1年単位で見るような状況にはまだなっていません。全国的には早くからやっておりますが、本県は見返りに何かを差し上げるというやり方もしていません。しかし、市町と力を合わせてやっていますから、動きとしてはいいのではないかと思っています。

 私としては、この金額が大きくなることと、全国でスムーズに、もっとどんどん広がるというのが最大の関心ですので、そこを努力したいと思っています。

【記者】
 福井鉄道について、徐々に環境が整いつつあるという話ですが、新しい経営陣についての現在の状況を聞きたいと思います。

【知事】
 福武線の再建は、沿線市の取組みなどに対応しながら、地元の住民の皆さんも大分動きが出ています。経済界などが鉄道運営を安定的にバックアップできるような体制が必要ですが、今はまだぎりぎりの状態です。徐々に体制も整いつつありますが、多額の税金を投入するものですから、その辺をはっきり確かなものにしないといけないわけです。

 ですから、経営陣をどうするかという課題ももちろんありますが、今申し上げたようなことをさらに詰めていくということが必要であり、現時点ではまだ具体的には決まっていないということです。

【記者】
 6月議会の開会前に福鉄の株主総会が開かれると思いますが、新しい経営陣が確定するのは、県議会の了承がなければ認められないという空気になると思いますが、どう思いますか。民間の会社であるがゆえに、行政のお金を投入するわけですから。

【知事】
 了承というような捉え方ではないと思います。県民の理解と協力の中で民間の鉄道会社を何とかして存続するということですから、前回の議会で大筋決められたことを基に、その間に進められたことを県議会で議論し、問題点は何か、この点はよいのではないかなどを決めるのが筋であり、それを着実にやっていくということです。

【記者】
 県議会との関係は、了承を得なければいけないという内容ではなく、議論をしてもらう必要があるということですか。

【知事】
 法律上、予算を通すといったことも必要ですが、県民の代表である議会の皆さんと話を一つ一つ詰めていかなければならないということを申し上げているのです。それぞれの市も同じようなことをしておられると思います。

【記者】
 新規役員の選定というのはいつ頃までに終わりたいと考えていますか。

【知事】
 私が何かを決めるというものではなく、皆で決めていくことだと思います。まず事柄を確定し、ここまではよいということを決めなければいけません。そうしたことが決まってもいないのに、役員の選定をやるというのも大変ではないでしょうか。

【記者】
 福武線について、これまで県は、金融機関に債権放棄の協力を求めてきたわけですが、今後どのように対応していくのかをお聞きします。

【知事】
 これは、これまでの福井鉄道の債務の処理と裏腹の問題です。しかし、なお整理中の問題がいろいろあります。今後は、今まで決まったことに加え、鉄道事業者、名古屋鉄道、銀行、沿線市、住民、経済界を含め、福武線の再建のためにさらにできることを考えてもらうことが必要だと思います。出資や寄附などいろんな活動もあると思いますが、そうしたことを考え、実行することが大事だと思います。

【記者】
 ということは、債権放棄はもう求めないということですか。場合によっては、債権放棄という選択肢もあるということですか。

【知事】
 その点についてはまだ整理が必要です。さまざまな方法を皆で考えることが、福井鉄道を存続させる上で大事ではないかということです。

【記者】
 環境を整えないと新しい経営陣が決まらないというのも分かりますし、議会なりが適正な手続をとった上で決めなければならないというのも分かりますが、だからといって、ずっと決まらない状態というのもまずい状況であり、できる限り早く経営陣を決めなければいけないと思うのですが、いかがですか。

【知事】
 一つ一つ決まってきていると思います。

【記者】
 そうだと思いますが、いつ頃その経営陣を決めるのかという目途はどうですか。

【知事】
 今申し上げたように、議会での議論もありますし、さらに何ができるか、最終的に何ができるかということを皆で議論しなければいけないでしょう。そうした中で、経営者の議論もどうするのかということが出てくるのではないでしょうか。

【記者】
 その議論が煮詰まるまでは、経営陣は急いで決定される必要がないということですか。

【知事】
 物事がはっきりしないと、経営者の選定といっても相談のしようがないでしょう。

【記者】
 債権放棄について、先日の官民協議会で再建スキームについては確認したのですが、債権放棄が実現しない限りスキームは最終確定しないのでしょうか。それとも、走りながら債権放棄については問題を解決していくという考えなのでしょうか。

【知事】
 さらに何ができるかということを、皆で知恵を出して考えないといけないのではないでしょうか。みんなの福井鉄道でしょうし、我々も昔から利用しているわけですから、何ができるかということを考えていただくということです。

【記者】
 議会の開会までには、ある程度、役員選定や新しい社長の選定等は、案を上げるのが望ましいという考えですか。

【知事】
 何でも早く決まるのが望ましいと思いますが、今言ったことをさらに皆で議論していかなければなりません。

【記者】
 目途としては議会開会の時点ですか。

【知事】
 それは絶対の目途というものではありません。

【記者】
 1つの目安にはなるのでしょうか。

【知事】
 そうですが、スケールの大きい事業ですし、継続的にやらなければいけないことですから、皆で最大の努力をして、「これで行こう」ということにしないとだめです。

【記者】
 採血器具の使い回しが話題になっていますが、厚生労働省が、医療機関等で使い回しがなかったかどうかについて、都道府県を通じて医療機関等に対して調査を始めています。この期限が6月末となっています。もし採血器具の注射針そのものが使い回されていた場合は、健康被害という可能性も出てくると思いますが、それが判明した時点で公表していく考えですか。それとも、国への報告までは差し控えるということですか。

【知事】
 厚生労働省は、都道府県等に報告があったものを公表するということですから、原則は厚生労働省が公表することではないかと思いますが、それは具体的に起きた時に考えます。

【記者】
 勝山市からは、県から文書の連絡を受けていなかったと言っているのですが、そのことについて、県としての連絡体制に問題はなかったと思いますか。

【知事】
 厚生労働省の課長を通じた通知だと思いますが、県から医師会や実際に医療に従事する人には通知しています。「医療機関等」へ通知せよと言っている場合、厚生労働省の指示事項としてはっきりしないところもあります。全国の他の自治体も同じ事態になっています。注意はしなければなりませんが、どの範囲までやるかということですから、具体的な通知先の指示が十分でなかった点もあると思います。

【記者】
 厚生労働省の指示の仕方が悪かったということですか。

【知事】
 そこまでは申し上げませんが、そうした状況があるから、多くの都道府県でも同様な状況が起こっているのだと思います。おおもとに戻れば、薬事法上の製造販売者に対して、こうした使い方をせよとその器具に明確に書いておかないから、分からない面も出てくるのだと思います。

 そうした問題もありますので、今日、健康福祉部から厚生労働省にも要請に行っています。器具の使用方法については、使用する人たちの課題ですし、製造販売者がこれをどうやって使うかということを明確にすることが必要です。あらゆる現場において器具を使用する時に、市町村が使用について指示をするにも、専門ではありませんし、しかねると思います。根本の問題はそこにあると思います。ただ、皆で十分に注意しなければいけないことは事実です。ですから、国に対しても、国民の健康を守るために重要なことですから、製造販売者の指導強化や、医療従事者への情報提供の際の周知の手法や範囲について、何となく漫然と出されても、十分な対応がいざという時にできないことになるので、その点について早急に検討してもらうように要請したわけです。

 それから、先ほどの福鉄の経営陣については、いろいろ議論していく中で決まる話だということを念のためもう一度申し上げておきます。議会前に必ず決めなければならないというものではないということは再度申し上げておきます。よろしいでしょうか。

【記者】
 先日、柏崎刈羽原発の耐震安全性評価に使用する基準値震動を当初の5倍に引き上げたわけですが、県内の原発について、地質の再調査や、そういった対応を追加する考えはありますか。

【知事】
 柏崎刈羽発電所についての耐震の基準については、5月の末に出ています。福井県の原子力発電所などについては、3月に出ているわけで、さらに今、一部、国も検討しておりますが、中越地震の知見などでなお考慮すべき事項がありや否やということが1つのファクターとしてありますから、そうしたものがもしあれば、そこに加えなければならないと思っています。国が追加的に海上の活断層の調査もしていますし、陸上の活断層を具体的にボーリングするなりして調査していますが、そうした知見も加える必要があるのであれば、そこに加わっていくということになると思います。


── 了 ──

 

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