知事記者会見の概要(平成21年12月28日(月))
平成21年12月28日(月曜日)
10:30~11:30
県庁 特別会議室
【知事】
今日は仕事納めの日、本年最後の定例会見ということで、発表事項は「福井新元気宣言」の中間評価についてです。
今年は、マニフェスト「福井新元気宣言」の3年目の年ということで、折り返し地点に当たる年だったわけです。「福井新元気宣言」については、さまざまな事業の期限、財源、数値目標を主要な構成要素とする従来型のマニフェストからさらに一歩踏み込み、数値では十分捉えることのできない県民の「暮らしの質(クオリティ)」の向上を目指すことをもって新しいマニフェストを目指したものです。
マニフェストについては、この夏の選挙で国レベルでは非常にポピュラーになってきているわけですが、選挙でいえば地方では既に2回目であり、かなり成熟した状況にあります。このため、今申し上げましたように、単なる数値のみならず、それまで捉えられなかったものをできるだけ捉えたいというのが目標でした。
そのために、政策の数値目標の達成にとどまらず、もちろんそれは大切なことではありますが、それに加えて、県民一人一人が最終的に感じる満足感をより的確に把握し、これをもとに政策の充実を図る意味から、2期目の初年度である平成19年11月に、まずアンケートによる県民意識調査を実施し、結果を公表しています。
今回が2回目ですが、こうした調査結果に基づいて県民のニーズを把握しながら、さらに2年間、景気・雇用対策、福祉、教育、環境政策などさまざま分野で政策の充実を進めているわけです。
なお、前回の平成19年に行ったアンケートなどでは、嶺南地域の交通インフラを進めてほしいという話もありましたし、福井県をもっとPRしてほしいといった意見もあり、こうした意見に対しては、舞鶴若狭自動車道の整備あるいは国道27号線のバイパスの整備、若狭西街道の全線開通などを行ったところです。PRについては、ブランドの全体であり、例えば「ちりとてちん」の放映に伴うさまざまな対応、小学館のトレンド大賞など、そのほか、観光営業部をはじめとしていろんなことを進めてきています。
そこで、今回の中間評価ですが、これは1期目に続いて2回目になると思います。
今回は、前回と手法は基本的に同じであり、一つ目は県民アンケート調査、二つ目は有識者の評価からなっています。有識者については4人の方にお願いしていますが、お二人は変更しています。三つ目は、これは当然のことですが、マニフェストの数値目標の2年間の進捗に基づく形で政策の評価を行うという方法をとっています。
県民の「暮らしの質」を高めるというマニフェストの目的から、中間評価の第一の柱として改めてアンケート調査を今回行っているわけですが、これは、調査時点としては今年の8月下旬から9月上旬にかけて調査を行ったものであり、生活の各分野の満足度が向上しているかどうかを検証しました。つまり、19年度に行ったアンケートと同じタイプの調査を行い、比較ができるようにしているわけです。今回の調査と19年度の1回目の調査を比較することにより、県民意識の変化などを捉えることができるだろうと考えたわけです。
次に、今回のアンケート調査の結果概要を申し上げます。調査の仕方については、
5,000人の方を対象に行ったものであり、そのうち2,458人から回答をいただいています。
50%近い回答率ということであり、前回が48%でした。通常こうしたものをやりますと、二、三割が普通ですが、これだけのご協力をいただいたということですので、この点についても感謝を申し上げなければならないと思っています。
アンケートの質問数ですが、1つは暮らしの満足度に関する質問が25問、県の施設やサービスの利用状況や希望、今後の政策に関する質問が11問、記述式で意見を聞く質問が13問、最後に、それぞれの政策の現在と将来における重要性について一まとめに聞いており、その結果、質問数は全部で50問となっています。
そのうち、冒頭25項目については満足度を聞いているわけです。前回のアンケートに比べて満足度の変化を見ますと、満足度の上昇したものが17項目、低下したものが6項目という状況です。変化のなかった項目が2項目です。
このうち、暮らしに対する県民の実感を最も端的に表すものが、福井県に住んでよかったか、あるいは住んでよいかという趣旨の質問であり、前回も今回も聞いているわけですが、県民の大部分の方が福井に住んでよかったと答えています。81%から83%に上昇ということで、全体としてそうした意識を持っていただいているということです。なお、「楽しい」といったことについては、あまり変わっておらず、26%ということです。
それから、具体的には、医療、文化、子育て、教育、治安などの満足度が上昇しています。これは、厳しい経済状況の中でもこうした分野の「暮らしの質」がよくなっていると感じているのではないかと思っており、マニフェストにおける「元気な社会」、こうした暮らし、生活の質向上の政策を進めてきた結果ではないかと思っています。
前回のアンケートに比べて最も満足度が上昇したものは、学校の授業で子どもたちに十分な学力が身についているかという項目です。32%が40%になっています。これは、全国の学力テストで3年連続全国最上位だったことも影響していると思いますし、具体的な教育内容としては、白川文字学の漢字学習、理科支援員によるサイエンス教育充実なども学校の教育に対する信頼につながって満足度が上昇したものと考えられます。
一方、景気や働き方は前回に比べて低下しており、今回は有効求人倍率が第1次オイルショック時の水準まで落ち込むなど、世界的な雇用情勢の厳しさが、景気だけではなくて、働き方にも影響があるのではないかと考えています。
また、県民は、景気浮揚のための対策として公共投資の充実や消費刺激策の充実とともに、新しい成長産業の創出に期待を寄せており、成長するアジア市場、あるいは環境関連投資などの拡大に対応して、本県の次世代を担う産業をいかに育成していくかも大きな課題です。これから年が明けて、専門家の意見をいただきながら戦略を練り、実行していきたいと思います。
なお、アンケートを実施した時はちょうど総選挙が終わった8月30日に重なっているわけであり、景気は既に厳しいという状況が調査結果に出ていますが、政権交代によるさまざまな政策の影響はこのアンケートには出ていないと思います。
なお、関連して、今回のアンケートでは、高齢者、障害のある方、女性の活躍の満足度が低下しているということで、厳しい経済情勢があるという状況ですので、社会的に弱い立場の人たちの暮らしにさまざまな影響を与えているということです。雇用の場の確保、働きやすい環境づくりなど、セーフティネットの一層の充実が必要ではないかと考えます。
なお、全県を1つに捉えるだけではなく、地域別の課題やニーズも大事です。地域別では、医療、交通、文化・芸術鑑賞の機会などについては、奥越・嶺南地域の満足度が他の地域よりも低くなっています。
この問題を解決するためには、舞鶴若狭自動車道、中部縦貫自動車道、北陸新幹線などのネットワーク整備が欠かせませんし、医療機関の連携、また、芸術・文化に触れる機会の拡大も含めて、すべての県民が暮らしやすさを実感できるための環境づくりを進める必要があると感じています。
次に、有識者については、慶応大学の小林良彰教授、岡山大学の谷聖美教授、中央大学の工藤裕子教授、静岡文化芸術大学の田中啓准教授の4名です。
小林先生は住民意識の専門家であり、谷先生は地方政治の実証分析です。工藤先生は国や自治体の行政評価委員をされています。田中先生は、政策評価、行政評価の専門家であり、行政機関の経営の研究者です。
これら4名の方に、県民アンケートや県が自ら設定した目標数値の進捗状況を見ていただきながら、評価・提言もいただいたということです。なお、今回、谷先生と工藤先生が新しく替わられたということです。
有識者からいただいた意見をまとめますと、政策の進捗状況や内容についての意見と、もう1つは、政策の質をさらに高めるための手法についての意見の2つに分かれると思います。
まず、政策内容ですが、「元気な社会」については、県内外で福井の教育というブランドが確立されつつあるという評価があるわけですが、問題はそれにとどまらず、コミュニティ・スクールの機能の充実など、これはマニフェストにも書いてありますが、質の高い教育を目指すための具体的な政策をさらに強化する必要がある、また、これから女性や障害者の活躍を促進する企業を増やす方策も検討すべきとの意見ももらっています。
「元気な産業」については、厳しい環境の中で検討しているという評価がある一方で、リーマン・ショックなどのいろんな悪影響がアンケートの結果に出ているということであり、その対策が必要ということです。今後の産業の発展のためには、厳しい中ではあるが、明確なビジョンのもとでの戦略が必要との提言、また、外国資本の導入についてもアタックすべきであるとの意見がありました。
「元気な県土」については、財政面の制約や景気悪化など厳しい環境がありますが、道路や公共交通に関する満足度は向上しており、着実な対策が実を結んでいるという評価がありました。また、今後の提言としては、自動車から公共交通機関への転換・促進が重要との意見が出ています。
「元気な県政」については、恐竜博物館などに対し高い評価がありました。今後も、地元発掘の恐竜のPRあるいは恐竜検定など、ソフトの充実が必要との指摘ももらっています。福井ブランドの発信に関しては、東京だけではなく、関西、中京など近場への浸透も重要との提言がありました。
政策の手法や評価の仕組みについても、専門家の観点から提言を受けており、モニター制度など満足度調査の制度の向上、分かりやすい目標数値の設定、地域による満足度の違いの原因究明など、評価の仕組みについて提言がありました。
さらに、福井県と隣接する府県との連携など、地政学的な位置を踏まえた政策の実施、マニフェストから一歩踏み出した構想の立案と推進が必要との意見、政策の選択と集中が必要であるとの提言がありました。いただいた提言については、来年度の予算や現在策定を進めている福井県の将来ビジョンの中で検討していきたいと考えています。
~ 質 疑 ~
【記者】
中間評価について、県民のアンケートを見ると、満足度10以上が17項目と非常に多い割合を占めている一方で、少しですが低下しているものもあるという中で、このアンケートを見て、どんなところに変化が出ているか、課題はどこにあったか、特徴的なものを教えてください。
【知事】
「元気な社会」という項目、つまり、医療や福祉、教育、子育て、あるいは治安、こうしたものについて、総じてそれぞれの分野で向上しているというのは、政策のウェイト、重点を置いたものに結果が出ていると思います。
一方で、最近の景気の状況など、あるいは制度改正の不安というものも感じられるわけですが、高齢者や障害者、また、子育ての一部についての満足度が下がっている、伸びていないということがあります。これは物事がはっきりわかる分野ですし、国の制度との関係もあるので重要ですが、子ども手当や後期高齢者医療制度、年金などさまざまなことがあると思いますが、そうしたことは福井県だけでは解決できないものがあります。私も知事会で後期高齢者医療制度を検討するメンバーになっていますし、自治体病院にも関わる問題でもありますから、知事会などでこうした問題に対応していくのは大事だと思います。
「元気な県土」では、県内の道路や高速交通体系を見ますと、少しは上がっていますが、問題は、現在よく展望が見えない中部縦貫自動車道や北陸新幹線などの問題は、福井県にとっても、また当然のことですが、とりもなおさず県民の方々の将来の生産や生活の基盤、条件になるわけです。こうしたものについては、なかなか感じにくい、事柄がまだ見えないし、事業が大きいということで、日々実感できるものではありませんから、少し上がっていますが、そうした基本的な問題についてさらに意識をみんなで共有し、高めるために、新幹線などの課題に取り組む必要があると思います。これは我々政治に携わる者のイニシアチブが極めて重要ですし、また、十分お知らせすることもあわせて必要だろうと思います。
公共交通機関が伸びてはいますが、もともと水準が低いですから、こうしたものに対してはかなり課題があると思いますので、これから鉄道の連結や、駅前にどうやって入れていくのかなどの課題があります。それから、バスの問題です。これは高齢者もありますし、高校生たちの交通の問題、交通事故の減少対策でもあります。最近は自転車の普及の運動も進めたり、歩道の整備、照明なども充実していく必要があると思います。
【記者】
県外に出かける場合の高速道路や鉄道などに満足しているかという回答が65%、満足されている方が1ポイント増えていて、自由記述の意見でも新幹線の新駅を進めてほしいという方は79人とそんなに多くありません。むしろ、渋滞緩和や電車の本数を増やしてほしいという方が人数が多いのですが、どう見ておられますか。
県が新幹線の整備は必要だと強調しているわりには、このアンケートを見る限りでは、住民の方は意外とそんなに強い希望を望んでいるようにはとれません。むしろ、住民にとっては、もっと身近な電車網などを充実してほしいともとれます。
【知事】
これは先ほど申し上げた「元気な県土」で、公共交通機関に不満があるのは、少子高齢化の時代に身近な交通体系に対する不満からもっと充実してほしいという気持ちであり、これは極めて重要なことです。ですから、これからバスや私鉄の利用など、身近なところが重要だということです。
もう1つは、先ほども言いましたが、新幹線や中部縦貫自動車道などは、おそらくその半分ぐらいの感じで、意識に十分表れていない部分もあるかもしれません。これは、住民の皆さんのニーズが、どうしても日々起こること、つまり、通勤や病院へ通うといったことに対する関心が高いということです。それは重要だと思いますし、充実しなければなりません。
しかし、それだけでは、専門家の意見にもありましたが、地政学的な問題として、福井県の立地状況を他の北陸地域との関係の中でどうよくしていくかということもあります。中京、関西、東京などとの基本的な交通関係をよくしていかないと、これが「元気な産業」であるとか、さらには社会の問題にもつながるわけです。教育などを一生懸命していても、人が流出したり、不便であるというのでは話になりませんから、これは我々が政治の立場で喚起していくことが大事だと思っています。私の仕事としては2つあり、住民のニーズにしっかり応えること、ニーズにはまだ十分なっていないが将来に備えてそれをニーズ化することの2つであろうと思っています。
【記者】
身近ではないので、意識の上ではそれほど表れていない潜在的な意識を政治家として掘り下げるのが大事ということですか。
【知事】
最近、政権も代わって、「白紙」になったとか、90億円確保できたとか、いろんなことがあり、報道にもよく出ていますが、一般の方もそうした問題について心配し、気にしておられるということを私におっしゃる方が増えています。そうした問題がより現実化し、具体化してきているのではないかと思います。
【記者】
次はいつアンケートをとられる予定でしょうか。これでもう終わりですか。
【知事】
今回で新年度の予算を計上しますので、特段の事情がない限り、これが4年間のマニフェストの評価としてはおそらく最後になるのではないかと思います。もし評価をするとしたら、別の意味の評価になると思います。
【記者】
国の来年度予算案は先週の金曜日に固まりました。まず、ダムですが、直轄の足羽川ダムが検証の対象に選ばれました。本体着工していないことも国の判断材料にはあったと思いますが、県がこれまで予定されていたように、流域の住民にとっては安全に関わることであり、客観的に見ても必要なダムという見方ができると思いますが、検証の対象になったことについて、率直な感想と、今後、県としてどうするのか聞かせてください。
【知事】
足羽川ダムについては、事業の継続について再検証ということで、これは非常に残念なことですが、この事業については16年の豪雨災害もありましたように、その必要性を、地元、県、国も認めてきたものであり、平成18年には基本協定も締結し、事業を進めているものです。大ざっぱに言いますと、皆さんが賛成しておられるものであり、激特事業はこの11月に完了し、浚渫などの対応をしていますが、それだけでは十分ではないわけですので、地域の安全を確保するためにも早く結論を出すように国に求めていきたいというのが我々の考えです。
【記者】
国交省は都道府県が実施主体の補助ダムを検証の対象にし、福井県については河内川と吉野瀬川ダムの検証を要請することになるようですが、検証する考えはありますか。
【知事】
全国の補助ダムについて、どのような手続きが要るのかということです。これはさまざまな事業について国の認可的な部分もありますし、補助金が来るわけですので、前提として、それがしっかりしていないと話になりません。地方だけでやっているダムではやはりないわけです。流域の委員会がダムごとの費用対効果の検証などもやり、また福井県は、全国的なやり方ですが、国ともさまざまな無駄を排除するための協議会を行ったり、あるいは評価もやっています。どんな手続きで全国のダムを検証するのかという問題もありますが、そうしたことを当然として、必要なことがあれば国にも言わなければならないというのが基本的な姿勢です。
【記者】
改めて検証を求められた場合にはどうしますか。
【知事】
抽象的に検証してくれと今ごろ言われてもどうにもなりません。何が問題かはっきり言ってもらわないといけません。非常に大きな事業ですし、技術的な事柄でもあり、国の負担もあるわけですし、半分は国の負担だと思いますから。
【記者】
子ども手当について、当初、全額国費でという形で進んでいたのが、結局、従来の児童手当分は地方負担を求めるという結論になったわけです。この点、知事はどのように評価していますか。
また、例えば神奈川県の松沢知事は、来年度の県の予算にその負担分は乗せないというような発言もしていますが、福井県としてはどう対応していきますか。
【知事】
子ども手当については、地方に負担を転嫁させない、国が全額負担すべきということを主張してきたわけですが、国の財源確保の点から、来年度は子ども手当と児童手当を一応組み込む、併給ということであり、折衷的な案です。中身自体まだはっきりしていない部分もありますので、釈然としないところがあるというのが今の感想です。あわせて、こうした地方財政に関わる大きな制度改正が、従来どの程度説明したかというのはありますが、地方に説明や相談なく進められているわけです。全部国で解決するのであればいいけれども、そうではないわけですので、これは地方分権的な方法ではありませんし、やめてもらいたいと思います。いずれにしても、子ども手当の地方負担の問題は、さらに次年度以降の予算で持ち越しになりますので、地方と十分な協議を行ってもらい、国が全額を負担するように求めていかなければならないと思います。
いずれにしても、いろんな制度ができますと、これは全部お金がついて回る話であり、マニフェストというのは普通、財源がはっきりしてマニフェストなのですが、それがはっきりしないとシステムや制度だけができ上がり、お金の用意がないとか不十分だということであれば、これは制度の仕組みとしてはおかしいわけです。これが地方に転嫁されるというのは不都合ですから、これまでと同様強く求めていかなければなりませんが、いずれにしても、日本の子どもたちのためのものだと思われますので、できるだけいろんな議論をしながら進めていくということだと思います。
【記者】
新幹線については、留保分として新規着工の事業費90億円が確保されたわけですが、どのように評価していますか。
【知事】
本来であれば、年内に方向が出ることを期待していました。そうではなくなったわけではありますが、一定の留保分として100億円近い財源を確保しながら、年が明けてできるだけ早く議論をして、方向性を出そうという前向きな気持ちが表れていると思いますので、これは評価したいと考えます。
しかし、ほかにもさまざまな課題がありますし、ともかく結論が遅れるということがあっては福井県にとって、さまざまなマイナス要因を生ずるわけです。これまでお金が十分ある時代であればみんなでやろうということだったわけですが、もちろんそれは長期的には必要ではありますが、福井県の根幹に関わる企画として、北海道や九州の新幹線に比べての北陸新幹線の必要性、熟度の高さ、優位性といったことを強く国に訴えて、優先順位をはっきりさせながら進めるということが重要だと思います。
いずれにしても、敦賀までの認可は1つの区切りだと思っています。
【記者】
平成22年度の国の予算案全体を見て、民主党の手腕、予算編成の評価を前向きに評価しているのか、それともマイナス面が大きいのか、評価を教えていただけますか。
【知事】
不透明というか、よく分からない部分もありますし、実行に当たって本当に地方
にとって県民益にはっきりつながっているのかということがあります。地方交付税の増額など、各分野で「地域主権」に配慮した予算になっている部分については、概ね評価をしたいと思います。
北陸新幹線などについては今申し上げたことですが、先ほどのダムなどについては結論が出ていないということでもありますので、引き続き地方の実情をよく理解して事業や予算を確保していただかなければならないと思います。何といっても国土全体の計画、バランスを新しい政権に十分考えていただかないと、結局、日本全体としての力が発揮できないことになると思います。
中国では広州から武漢までの高速鉄道などがどんどんできているわけであり、そうした中で、日本がこのような国力の中でできないというのは不思議なことです。必要なものを高密度の社会の中で進める、完成するということは、これからのアジアの中の競争を考えると極めて重要だと思います。
【記者】
原発関連のさまざまな予算は例年並み、または増額といった結果が出ていますが、福井県はこれから全国に先駆けて原発のさまざまな課題に直面することに対して、今回の予算編成をどのように見ていますか。
【知事】
「もんじゅ」あるいは地域振興のための交付金などについては、必要な額が基本的には確保されているようですので、国のエネルギー政策あるいは福井県のいろんな実情などについて十分理解をしていただいているものと考えており、これについては評価をしたいと思います。
ただ、これから「もんじゅ」の問題や高経年化をどうするかということは、おそらく福井県が最初に判断をする立場になるかと思いますので、そうしたことについては何度となく新政権の関係大臣などにも申し上げているところです。基本的には来年のAPEC大臣会合の開催、あるいはエネルギー研究開発拠点化計画のより充実した実行などについて十分進めていただくことが必要ですし、先ほど福井県の立地上の問題について地政学ということを申し上げましたが、福井県がそうした立場のエネルギーに貢献している県であるということは国においてもさまざまな面で考慮することが重要だと思います。
【記者】
敦賀原発の運転継続の問題について、政府予算案に示された国の姿勢は十分に判断材料として受けとれるものと考えればよろしいですか。
【知事】
敦賀1号機は来年3月14日に運転開始40年を迎えるということです。したがって、敦賀市の意見も十分お聞きしなければなりませんし、12月の県議会では、運転継続についてさまざまな意見もあったところです。そうしたものを踏まえながら、40年を超える運転は国内初めてですし、今申し上げましたように、福井県の判断が、今後、他のプラントにも影響を与えますし、これから数年後に次々と起こってくる高経年化炉に対する全国各地域の対応、政策にも影響を与えますので、十分慎重に対応する必要があります。福井県の原子力三原則、「安全」、「住民の理解」、「恒久的福祉」の原則に沿って然るべき時期に判断していくことになると思います。
【記者】
新幹線に関して、いろいろ紆余曲折がありましたが、最終的に、年内ではあのような形になり、それについては今どういう感想を持っていますか。
【知事】
金額がはっきりしてきたとか、年が明けるといろんな議論をスピードを持ってやろうとしている姿勢が感じられるところは、おそらく早く方針が出るのではないかという期待があります。
ただ、年内に結論と、はじめは思っていましたので、それについては残念なところですが、結果として全体に完成が早くなればいいわけですので、ぜひ早く着工して早く完成することを強く期待しているということです。
【記者】
新幹線問題や中部縦貫自動車道のような県政の重要課題は、今までは県会レベル、県議レベルで、超党派で新幹線促進議連などをつくってきたわけですが、民主党・一志会のメンバーが抜けるなど分裂状態にあると思います。この点に関して危惧もしくは心配を抱いていないのか教えてください。
【知事】
それぞれ議会の会派の判断ですので、私の立場でとかく評価するような性質のものではないというのは基本的にあると思います。そうした結果になりましたので、やり方はあると思いますが、全体としてみんなで総合的に力を発揮して、福井県の意志をさまざまなルートを通して貫いていくというのが重要です。新しい政権は新しい政権の立場にありますし、自民党の皆さんについては、これまで培ったいろんなルートもありましょうし、さまざまなことがあると思います。そうしたものを全力で伝えていくと、すべてが県民益につながることではないかと思います。私は私でやれることをご一緒にやり、また、私どもとしてもやるということです。
【記者】
新幹線について、前原大臣がぎりぎりの段階まで来年度の予算計上は見送るということを言っていて、本当に年末の予算編成のぎりぎりになってから留保分という形でついたということになりました。お聞きするようなことではないかもしれませんが、どのような要因でこうしたことになったのかと思いますか。
【知事】
常識的に判断されたものと思います。地域が望んでおり、これまでの経緯があり、国としても急がなくてはいけないと思うものについては、そうした判断を出すべきだと思います。何か大きな原則や考え方などはお持ちかと思いますが、それぞれのプロジェクトごとに違う性質を持っていますから、それに合わせた対応をしないといけないし、何か一辺倒ではできないと思います。
【記者】
民主党の小沢幹事長の方から何か強く直前にプッシュがあったとか、そうした報道なども出ていますが、その点についてはどうですか。
【知事】
私は分かりません。
【記者】
自民党政権時も、着工調整費という形で9億円付いたわけですが、今回も留保分という形で90億円がついています。前回のものと今回のものは、何か違うものと考えているのか、同じような意味合いのものだと考えているのか、どうですか。
【知事】
金額が大きいから、違うのではないかと思います。
【記者】
その予算の持つ意味合いということでいくと、認可をされたら着工のお金に使えるというのが前回だったわけですが、今回はどうですか。
【知事】
桁が1つ違いますから。これから年を明けていろんな議論をする中で、それも分かってくると思います。いずれにしても、認可を受けなければ話になりません。
【記者】
新政権の整備方針としては、優先順位をつけて、留保分の90億円をどこに充てるかを厳しく精査するという方針ですが、今後、未着工区間同士での競争という形になっていくと思います。先ほど言われた優位順性は前から訴えてきていることだと思いますが、その辺を強く前面に打ち出していくのでしょうか。
北陸の長所は、フル規格といったことがある一方で、沿線自治体の取組みも検証の対象になっています。並行在来線の問題や敦賀以西の問題なども、民主党の国会議員の言い方を借りれば、宿題のような感じで捉えられている部分もあると思います。その取組みとあわせて、今後どのように運動に取り組んでいかれるのかお聞かせください。
【知事】
北陸新幹線は、ルートの交通量、沿線の人口、あるいは効率性、日本全体の国土に与える影響など、格段に優位性を持っていると思いますが、一方で、石川県南部と福井県が今の段階で残っている部分ですから、声の大きさなどがあるでしょう。そうしたことは合理的な判断に影響しないようにというのが重要ですから、その意味で、今回、客観的に必要な、早くやるものはやるべきだという判断を行ってもらえるのでないかと思っています。
さまざまな負担の問題などについては、少なくとも富山、石川、福井には共通の問題ですから、共通の認識で当たっていくということだと思います。もちろん、改善すべき問題もあると思いますが、共通して対応する、あるいは判断すべき課題ではないかと思います。
【記者】
共通して判断というのは、今まで共通している立場があったし、違っている部分があって、陳情する際にも地方負担の問題などで意見の相違があるといった経緯がありますが、その立場は同じだということですか。
【知事】
富山、石川、福井では何も違わないと思います。何か格段に違う部分はないと思います。そこで止まっているところが違うだけです。
【記者】
並行在来線の問題についても、一緒の立場で働きかけていくということですか。
【知事】
基本的にはこれからも一緒の立場で行われるべき課題だと思います。
【記者】
先ほど敦賀までが一区切りだという話がありましたが、そのあたりはなかなか決めるのは難しいと思いますが、取組みとしてはどういうことを考えておられますか。
【知事】
これはまず、敦賀まで認可を行ってもらわないといけませんし、まず国が考えるべきことです。
【記者】
補助ダムについて、政府はダムを使わない治水を各自治体に求めるということですが、福井県はこの点に関しては政府の方針に従い、受け入れるのか、もしくは、あくまでダムによる治水、吉野瀬川ダム、河内川ダムを進めていくのか、どうお考えでしょうか。
【知事】
もう使わないというのは一般的な姿勢を表していると思います。やはり個別に見て、何百もダムがある中で、多数のダムがある地域とでは差がありますから、本当にそうした場所があるのかもしれませんが、福井のダムは必要なダムだと思っています。
【記者】
大臣の会見の中で、県が判断されることだが、国には補助金の裁量の余地があるということを幾度も幾度も言われていたのですが、そうした国の言い方に対してはどう見ていますか。
【知事】
大臣がおっしゃっている趣旨がよく分からないところがあります。計画をつくって国土や住民の安全を守るわけですから、事業自身は大きな事業ですので、両方でちゃんと意見を合わせてやらないと困ります。結果としてはそうしたことが行われるのではないかと思いますし、我々もそうしたことを求めていくことになると思います。これはつくっていいダムだが、お金がないというのは変だと思います。
【記者】
子ども手当の地方負担について、県が今負担している児童手当の分がそのまま残る形になるそうですが、本年度の予算でどれくらいありますか。
【総務部長】
21年度で17億円ぐらいです。
【記者】
農水省の灌漑排水事業について、これも減額の対象になりましたが、どう思われますか。
【知事】
具体的な予算がどれくらい来るかにもよりますし、この問題については、かねがね農水省の出先機関と協議組織を設けていますから、そこでまずどの部分を先にやると効果が発現するかといったことを具体的に強化してやっていくことになると思います。
福井県ではお金が十分ないという状況の中でそうしたやり方を進めていますから、そこで幾つかのルートがありますので、次はここだとか、ここまではできる、できないというやり方でやると思います。
【記者】
敦賀1号機の運転の延長について、予算でも、交付金なり拠点化の額を見ても、先ほど知事が言われたように、基本的に県の要望は理解している額だと思います。そうした条件が揃ってきた中で、知事はいつぐらいまでに県としての了承をするのか目途は立てておられるのでしょうか。
敦賀市の意見があると思いますが、敦賀市は現在どこまで検討してどう考えているのか分かりませんが、敦賀市長と県とで、例えば年明けにでも会談して話し合うとか、そうした予定はありますか。
【知事】
敦賀市の意見もまだ聞いていませんし、その確認などが要ると思います。いずれにしても年内ではないと思います。
【記者】
1月中とか、そうした目途は今のところ何もないということですか。
【知事】
はい。
【記者】
今年を振り返ってどんな1年でしたか。
【知事】
今年は、物事を固めて、次の飛躍と思ってきたところですが、政治の様子も変わるし、白紙になるようなものも出たりしていますが、それはそれとして、次の段階に行く飛躍にしなければなりません。そうした意味で、特に感じたのは、いろんな制度が変わったり、政治の様子も変わりますが、我々地方団体一つ一つが、特に都道府県の場合はそんなことが言えると思いますが、自分たちが何をなすべきかを大事にして、国にもいろんなことを申し上げなければいけませんし、逆にそれを応援するのが国の役割だと思います。今年は「新」という漢字が選ばれたということですが、「新」は、地方が新しくなると国の方もきっと新しくなるだろうという感じでしょうか。国が新しくなっても、それだけでは世の中はよくならないし、地方が新しくなって国が新しくなるということが本当の新しいことではないかと思います。
── 了 ──
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