知事記者会見の概要(平成19年1月4日(木))
平成19年1月4日(木)
10:00~10:40
県庁 特別会議室
【知事】 明けましておめでとうございます。
年頭ということで、若干、ごあいさつ、決意を述べさせていただきます。
ご存知のとおり、今年は継体大王即位1500年に当たるわけでして、昨年は岡倉天心先生の「茶の本」100周年、コシヒカリ育成50周年、また、福井城築城400周年など節目の年でしたが、今年はいろんな意味でも節目になると思います。
継体天皇のお話ですが、教科書などでは簡潔に名前が取り上げられているだけで、仁徳天皇や雄略天皇などと比べますと、それほど知られているわけではないと思います。しかし、日本史学といいますか歴史学の世界では、非常に多くの研究がなされており、また、論議の対象となっている歴史上のテーマであると思っておりまして、古代史の中では、1、2を争うほど話題の多い人物であると思います。
古代日本史学の専門家の直木孝次郎という先生は、継体大王についての論文の中で、継体大王のことを「風を望んで北方より立った豪傑」と呼んでおられるようです。北方とは、当時の都である大和から見て北にある越の国福井を指しているんじゃないかと思っておりまして、周辺の豪族と結んで勢力を培いながら、ついには大和に入り、名実ともに大王になったという推測をしているわけです。
地方から中央へという構図もあるわけで、郷土の先人といいますか、偉人という言い方は適当かどうかわかりませんが、大きな偉業でありまして、現代にも誇れるものを感じます。また、相当の年齢になられて、かつ慎重なるいろいろな政治をされたということも、何となく越の国という感じがして、いろんな意味で本年は顕彰をさせていただきたいと思います。
昨年12月に継体大王即位1500周年記念事業実行委員会をつくりまして、本年は、「発信」、「交流」、「継承」を3つの柱にして記念事業を展開してまいりたいと思います。
そして、県民の皆さんには福井人としての自信と誇り、こういうものをわかっていただく、ということかと思います。これが1つです。
もう1つは、分権改革についてで、今年は引き続き、継体大王のお話にもありましたが、地方から国へといいますか、さらに改革を進めていく必要があると思います。
マニフェストに基づく政治や行政の改革は、地方から始まった運動が政府を変えてきている例であり、これからも進めなければなりませんが、地方分権についてはなお不十分なものであると思います。
我々としては、いろんな課題がありますけれども、地方が力を合わせて、個別利害にとらわれずに、全体の分権、地方自治を進める必要があるだろうと思います。特に、税源移譲、地方共有税などの(地方財政制度の)見直し、国と地方の重複行政、あるいは関与の方法を直すこと、役割分担など、多くの課題があるわけです。
先月8日には地方分権改革推進法が成立しまして、これに基づく委員会で検討を進める必要があるわけですが、地方の代表もこの中に入ってもらって問題の解決をする必要があると思います。
これまで私も、税源偏在などの解消のために、地方教育税やふるさと寄附制度など、いろんな問題提起もしているわけですが、こうしたものを契機に国と地方を含めた税制などの抜本的な見直しが必要かと思っております。
なお、最近、道州制の議論がいろいろ行われているおり、また一方で国民のこの問題に対するいろいろな受け止め方もあるようですけれども、何といっても、歳出削減目的でなされてはいけないわけです。
地方自治あるいは民主主義の面で、いかに地域の中で物事を解決し、住民の声が身近に行政に届き、また、地方での政治の実践が行われる、という面では、道州制は課題が多いわけですので、我々としてはこういう問題を慎重に取り扱いながら、国のかじ取りに引きずられることなく、自治体が主導権を握りながら県議会や全国の自治体と力を合わせて必要な行政などをしてまいりたいと思います。
なお、私も任期が残り3カ月余りとなりましたが、残された課題、最後の仕上げの時期ですので、先ほど年頭の職員に対するあいさつで申し上げましたが、しっかり成果を出してもらうと同時に、新たな課題に向けて職員の皆さんが自主的、自発的に課題設定を考えながら仕事をしていただくように要請をしたところです。
昨年12月には「元気宣言」の達成状況を公表したところであり、目標のほとんどは達成または達成可能な状況にあると思っておりますけれども、これに満足することなく、一層の仕上げに取り組んでいかなくてはならないだろうと思います。
なお、つけ加えるならば、いろいろな成果は出ておりますので、さらに福井県全体の生活の質の向上、また、そのための我々の政策の質の向上を図っていく必要があるだろうと思っております。
その質の向上がどういうものかは、これからいろいろ詰めていく必要がありますけれども、1つは、本当の意味での喜びとか楽しみ、若い人が福井で生活できる、また、福祉なども温かみのある政策ができるということ。平均値は非常によくなってきているけれども、何かここに物足りなさがあってはいけないわけですので、楽しみとかそういう言葉をもとにしながら、政策の質の向上を図るのが1つの方向かと思います。
もう1つは、今、平均の議論を申し上げましたが、「福井県が日本一」というものが大分増えております。健康長寿や子育てとか、うまいものだとか、いろんなものがありますが、もっともっとこういうものを増やしていく必要があろうと私は思っておりまして、そういう突出した政策を考え出すということも大事だと思います。
それから、3点目は、全体性を持った政策をますますこれから進めていく必要があるだろう、トータルな課題ですね。一例を挙げますと、まちづくりがそうだと思います。個別の道路や新幹線がどうだとかいうことではなくて、全体として県都をどうするか、また、これから敦賀等々、まちづくりが今始まっているわけですので、全体性を持ったまちづくり、さらには農業や林業などを含めた環境問題なども全体性を持って取り組まなければならない課題でありますので、こうしたトータルな政策をさらに進めるのが質の向上の1つの切り口かと思っております。
それから、もう1つ挙げれば、行政が何か自分たちだけで物事を進めるということではなくて、県民の皆さん、住民の皆さんとよきフレンドシップといいますか、パートナーシップという部分があるかもしれませんが、一緒に、あるいはむしろ住民の方が中心となっていろいろな事柄を進めていく時代ではないかと思うんです。
特に団塊の世代の皆さんもそれぞれ地域に戻られて大いに力を発揮していただかなければなりませんし、まだまだそういう分野がこれから開かれると思っておりまして、そんな切り口などを考えながら、福井県の全体の質の向上を目指すのが新年以降に向けての課題かなと、お正月の中で新聞を読んだり、テレビを見ながら思ったことでありますので、ちょっと余談になりましたが、つけ加えさせていただきたいと思います。
【記者】 2点、質問させていただきたいと思います。
1点目なんですけども、今おっしゃられたことと一部重複するかとは思いますが、今年は、いのしし年ということで、知事ご自身の任期はあと3カ月ですが、改めてどのような年に知事として福井県を持っていかれようと考えていらっしゃるのか。
第2点は、昨年末に、福井県の過去のカラ出張訴訟で福井地裁の差し戻し判決があり、前知事に対して1億円強の賠償命令が出たんですが、これについて、改めて、当時副知事をされていたかと思うんですが、所見をいただきたいと思います。
【知事】 後段のことを先に申し上げますが、前知事はこの問題については訴訟においてもいろんなご主張をしておられると思いますが、県に一方的な損害を与えたり、個人の利益を得たという性質のものではないという主張をしておられると聞いております。控訴の方向であるということですので、おそらく控訴審においては、これまでの判例などを踏まえて、より問題点をしっかり主張されて、司法での理解を求めていくということかと思っております。
なお、県としては、裁判の対象となっている支出については、不適正と考えられる額については既に返還しており、議会等々いろいろな認定を受け、行政の手続についてオープンに進めたところです。
なお、この問題については引き続き、予算執行システムなど、見直しを行っており、公金でありますので引き続き適正な執行に万全を期したいというのが現状での感想です。
それから、2点目、最初におっしゃられました、この1年間といいますか、これからの課題ですけれども、やはり基本的には県民の皆さんの自信と誇りにつなげるのが究極の政治の課題です。ですから、政策をよりレベルを上げるといいますか、レベルの上げ方は今ほど申し上げましたが、連帯性なり、あるいはスピードといいますか、質の問題としては、スピードもタイミングと言ったほうがいいのかもしれません。さらには、行政だけではなくて、幅広く住民の皆さんと協働という方向をより強める必要があると思っておりまして、ある程度の段階に県政としては達していると思いますから、そういう方向で進めていくというのが重要かなと思っております。
【知事】 最近、いろいろ新聞などを見ますと、橘曙覧さんの「たのしみは」という歌がよく引用されています。食育などでもみんなで家族そろって、「たのしみは妻子(めこ)むつまじくうちつどひ頭(かしら)ならべて物をくふ時」とかいうのが引用されたり、個人の投書とかでもそういう言葉が引用されたりしていますね。
それから、これも新聞の記事だと思いますが、山内さんという歴史家が、履修問題に関連して世界史や日本史のいろんな課題を言っておりますが、この中でも橘曙覧の「たのしみはそぞろ読みゆく書(ふみ)の中(うち)に我とひとしき人をみし時」を引用し、これは「歴史の書物との出会いや先人との邂逅が楽しいことを若者たちに伝えたいと、江戸の先人も詠っているではないか。」と書いてありました。
いろんなところでそういう動きがあるように思っておりまして、先ほどのことを申し上げたところです。江戸時代の、福井の先人という感じで思っております。
【記者】 1月10日ごろに、美浜3号機が営業運転の再開に向けて起動するに当たって、試験起動の際には県の方でも何度か立入調査に入りましたが、今回は県として、どのようにされるご予定なんですか。
【安全環境部企画幹(原子力)】 具体的には起動の時点、それから100%出力の時点、そういった節目の段階で状況を確認していく予定をしております。
【記者】 何回ぐらい調査に入られるのかなと。
【知事】 また後ほどまとめて担当課からご説明するということで。
【記者】 先ほど、地方分権改革の項目で、重複業務の解消が課題とおっしゃいましたが、重複業務にどういった問題、課題があって、どのように改革されていくのが望ましいと考えていらっしゃるんでしょうか。
【知事】 これは現状にもありますし、また、次から次へと新しい法律ができ、いろんな指示が来て、それが国の仕事の部分もあるし、地方の仕事もあって、はっきりしない。責任が生じたときに、その部分は地方だということが多いんですよね。そういうシステムを直さないと。問題が起こると国の関与だけが生じて、平生は全然議論がなされない。そういうものが次から次へと再生産されますので、そういうものをまずなくす必要があるだろうという観点なんです。現状でもあるんです。あまり完璧にはなくせませんが、あまりにも多過ぎるというのが実際です。次から次へと新しく生ずるというのも課題なんです。
【記者】 その例として挙げられたのが、先ほどの福祉ですか。
【知事】 福祉でもありますし、教育問題などでも多いと思いますね。どこまでが国の権限、責任で、どこまでが地方だというのが制度としてはっきりしないんです。それをもっと明瞭にする必要があると思います。できるだけ、ということですね。完全にはなかなか難しいと思います。
【記者】 マニフェストは、政治的な約束なんだけれど、一方でそれが県の行政の進め方の道しるべであり、行政が税金を使って評価をしていくという部分もあって、行政と政治との、マニフェストの整理というか区分けについてどういったお考えをお持ちでしょうか。
【知事】 ちょっと誤解があったかもしれませんが、次期マニフェストは、選挙にかかわることですので、この席で申し上げないほうがいいのかなと思います。また別の場で具体的に申し上げたほうがよろしいのかなという意味で申し上げただけでありまして、行政と政治が別々に動くわけでは決してありませんし、マニフェストによって政治も行政もなされているというのは事実ですし、それが姿だと思っております。
【記者】 お伺いしたかったのは、知事の政治的な約束と行政の仕事を進める上での政策と、どこから行政の約束になって、どこから知事の政治的なものになるのかということなんですが。
【知事】 それはなかなか区分できないと思いますね。マニフェストというのは、政治の場でお約束をして、4年間、行政でいかにそれを実行するかということですから、その成果は行政的に発表するといいますか、まとめていくことになると思います。私が申し上げたのは、選挙にかかわることですから、この場でいろいろ申し上げるのはどうかなと思いまして、また別の機会にということを申し上げただけで、こういう場で申し上げることは、あまりよろしくないかなと思いました。そういう意味で申し上げたんです。
【記者】 新幹線のことなんですけれども、年が明けて調査会も見直しの検討に入るというお話で、政府予算の際も、今年はすごく大きなはずみになるという評価をされていましたけれども、年が明けて、改めて今年、新幹線の課題についてどのように具体的に取り組んでいこうと考えていらっしゃるんでしょうか。
【知事】 新幹線は今年の最も大きな課題の1つだと思います。何としても、本年、できるだけ早い時期に見直しを開始して、スキームの新しいバージョンを、国においてつくってもらうという要請を強くする、その成果をかち取る1年でなければならないと思いまして、全力でこの問題に取り組む必要があると思います。これは行政のみならず、県を挙げてその1年になるのではないか、そういう年にしなければならないだろうと思います。
【記者】 知事がとらえていらっしゃる今年の最大の行政課題ということをお伺いしたいのですが。
【知事】 難しいご質問ですね。やはり、先ほど申し上げた新幹線の課題をぜひアタックしなければなりませんね。これは我々だけでできない大きな課題ですから。この問題に何とかめどをつければいいんじゃないかと思います。
あと、教育問題とかいろいろ課題がございますね。
【記者】 教育というと、いじめ問題もありますが。
【知事】 福井県は幸いにして、現状では、他の県みたいに大きなトラブルが生じているわけではないと思いますが、やはり教育には、学校だけで物事を解決しないとか、いろんな人が教育に参加するとか、あるいは家庭、親たちの教育の問題とか、いろいろなものがあると思うんです。
もちろん学力ではなくてスポーツや文化などについても、子供たちにもっともっとそうした機会を持ってもらう必要もあります。教育委員会の専門的な分野もありますね、教授法というんですか。ずっと戦後60年経過して、以前の方法を使って教育している部分もありますから、そういうものを直せるところから直す。かつ、教育というのは、子供は毎日生活しているわけですから、抜本的に物事を解決してそれでできるとか、3年後にどうだというのではなくて、その間に子供たちは一年一年、現状の制度で大きくなっていくわけですから、できるころから手をつけながらうまくやっていくという、非常に難しい課題ですよね。
ほかの問題だったら、一度に変えて次はこんな制度だということもあるでしょうが、教育はそんなわけにはいかないわけです。そういう難しい課題に取り組む必要があるんだろうと思います。
要するに、教育には学校を中心とした教育もあるし、我々が育てた子供たちが、福井でちゃんと生活できるようにとか、都会に行きっぱなしにあまりならないようにとか、いろんな課題がその中に含まれておりますし、かつて都会に行った団塊の世代の皆さんを、どう福井にまた来てもらうとか、そういう広いスパンでの教育もあります。そういう人づくり、人に着目した課題が大きなテーマのもう1つだと思っております。
── 了 ──
※知事選挙に関し、立候補予定者の立場での質疑応答については、公平・公正を期すため、掲載しておりません。
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