高圧水素用ステンレス鋼に対応した国産溶接機利用の溶接技術(株式会社ナカテック)

最終更新日 2021年7月30日ページID 047384

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国産TIG溶接機で強度と耐水素脆性特性に優れるHRX19ステンレス鋼配管を溶接し、70MPa以上の気密・耐圧性能を持たせる技術を確立しました。

 

令和2年度
将来のふくいを牽引する技術開発支援事業補助金
「水素利用の促進を目指した高圧ガス配管・容器用溶接技術の開発」 

事業実施の経緯

自動車からの二酸化炭素排出量の削減を目指して、燃料電池自動車の普及拡大が行われ、水素ステーションが各地に設置されています。これらの設備では70MPaの高圧水素が利用されており、この水素環境での安全性確保は不可欠となっています。また近年、水素環境で使用される金属材料として、耐水素脆性に優れるHRX19ステンレス鋼が開発されました。水素環境下で使用する場合、機械的接合よりも溶接の方が水素の漏れを防止できるため安全性が向上します。そこで、HRX19ステンレス鋼における溶接技術の開発に取り組みました。
 

事業の内容

HRX19ステンレス鋼とSUS316Lステンレス鋼の鋼管(外径:17.3mm、肉厚:1.6~5.0mm)を入手し、国産の高性能溶接機で手溶接を行いました。そして、光学顕微鏡、高分解能走査電子顕微鏡、蛍光X線分析による接合部の組織観察と溶接欠陥の検出を行い、超微小荷重マイクロビッカース硬さ試験機による硬さ測定を行いました。また、溶接した試験片での引張試験、漏れ検査、耐圧検査を実施することで、70MPaの高圧ガス用鋼管の接合に利用できる開先形状、溶接電流などの溶接条件を見つけました。
 

事業の成果

HRX19ステンレス鋼はSUS316Lステンレス鋼よりもやや溶接が困難ですが、30°の開先加工を行えば、国産のTIG溶接機でも肉厚3.2~5.0mmの鋼管の溶接が可能であることを確認しました。それらの溶接試料は、母材とほぼ同じ強度を有し、70MPaの圧力を負荷しても破断は認められませんでした。また肉厚1.6mmの鋼管では、開先加工を施さなくても、溶け込み不良などの溶接欠陥が認められない良好な溶接を行うことができました。
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製品のPR

脱炭素社会の実現を目指して化石燃料から水素燃料への転換が急がれており、燃料電池自動車などで水素の利用が推進されています。燃料電池自動車や水素ステーションでは水素の漏洩対策が不可欠であり、配管での溶接技術の開発が急がれています。本事業の成果から、比較的安価な国産TIG溶接機でも、強度と耐水素脆性に優れるHRX19ステンレス鋼の肉厚配管での溶接が可能となり、各種高圧水素ガスプラントの製造、修理などに応用できます。

経営者の声

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代表取締役 
中山 浩行 氏

本事業には、高圧ガスプラント設計製作・検査・保全、機械保全・環境保全を行う(株)ナカテック、経済産業大臣指定の保安検査機関であり、県内唯一の高圧ガスプラント認定検査会社である日本海産業(株)、各種プラント施工、製缶・各種溶接、各種高圧ガス配管施工を行う(株)パイプラントが連携して取り組みました。それぞれの会社が今後の業務の基盤となる成果が得られ、これからの水素社会実現に貢献したいと思います。


開発者の声

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技術開発研究所長 
羽木 秀樹  氏
地球に優しいエネルギー源として「水素」が注目されています。水素が新しいエネルギー源として広く工業的に利用されるためには、安全な設備の構築が不可欠であり、従来は、(1)破断事故防止のために、高強度で耐水素脆性に優れる材料の開発と、(2)水素漏洩を完全に防ぐための溶接技術の開発が必要でした。近年、HRX19ステンレス鋼が開発されたので、その溶接法の確立が急務となっていました。本事業はこれに大きく貢献できたと考えています。


企業情報

企業名 株式会社ナカテック
業務内容 高圧ガスプラント設計製作・検査・保全、機械保全・環境保全
所在地 福井県坂井市春江町藤鷲塚37-9
担当者 羽木 秀樹 
問合せ先 TEL 0776-51-1666
HP http://www.nakatec.co.jp/

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