職場のトラブルQ&A ~長期欠勤者の解雇~

最終更新日 2020年3月27日ページID 004840

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 当社の製造ラインの従業員Aは、仕事中に誤って機械に巻き込まれ、骨折等のけが(負傷)をしたため、長期にわたって欠勤していました。
 最近ようやく出勤し始めましたが、それでもそのけがの治療を理由に欠勤がちです。当社はAを解雇することができるのでしょうか。
 

 Aの欠勤が機械に巻き込まれたことによるけがが治癒するまで(症状が固定するまで)の療養のために休業する期間およびその後30日間は、欠勤がちであっても、貴社はAを解雇することはできません。
 ただし、次のような場合は、例外として解雇することができます。
 第1は、Aの療養開始後3年を経過後に貴社がAに打切補償を支払った場合です。打切補償とは、業務上災害によって療養補償給付を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷または疾病がなおらない場合において、使用者が支払う平均賃金の1200日分の補償のことです。
 また、けがをしたAが、1.療養開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合にはその日において、また、2.療養開始後3年を経過した日より後に傷病補償年金を受けることとなった場合にはその受けることとなった日において、解雇制限との関係では、打切補償を支払ったものとみなされ、貴社はAを解雇することができます。
 第2は、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合です。この場合には、労働基準監督署長の認定を受けなければなりません。
 なお、使用者は、Aの健康状態を常に把握し、作業内容の軽減や配置転換等について配慮することが求められます。
 

解説

 不幸にして事故が起こった場合に、事業主は、被災労働者等が記載する労災保険給付等の請求書の証明や、労働者死傷病報告を労働基準監督署長に対して行わなければなりません。
 

1 労災保険給付等の請求書の証明について

 労働者が労働災害により負傷した場合等は、労働者(または遺族)が労災保険給付の請求を労働基準監督署長に対して行うことになりますが、その際、事業主は、1.負傷または発病の年月日、2.災害の原因および発生状況等について証明をしなくてはなりません(労働者災害補償保険法施行規則第12条の2第2項等)。

 なお、労災保険給付の概要は次表のとおりです。

給付の種類 請求できる場合
療養補償給付
療養給付
業務災害または通勤災害による傷病により療養するとき
休業補償給付
休業給付
業務災害または通勤災害による傷病の療養のために労働することができず、4日以上賃金を受けられないとき(休業初日から第3日目までについては、事業主が自ら労働基準法に基づく休業補償を行わなければなりません。)
障害補償給付
障害給付
業務災害または通勤災害による傷病が治った後に障害が残ったとき
遺族補償給付
遺族給付
業務災害または通勤災害により死亡したとき
葬祭料
葬祭給付
業務災害または通勤災害により死亡した方の葬祭を行うとき
傷病補償年金
傷病年金
業務災害または通勤災害による傷病が療養開始後1年6か月を経過した日または同日後において次のいずれにも該当することとなったとき
 1 傷病が治っていないこと
 2 傷病による障害の程度が傷病等級に該当すること
介護補償給付
介護給付
障害(補償)年金または傷病(補償)年金受給者のうち第1級の者または第2級の者(精神神経の障害および胸腹部臓器の障害の者)であって、現に介護を受けているとき

 (注)「給付の種類」欄の上段は業務災害、下段は通勤災害に係るものです。

 

2 労働者死傷病報告の提出

 事業者は、労働者が労働災害その他就業中または事業場内等における負傷、窒息または急性中毒により死亡し、または休業した場合には、労働者死傷病報告を労働基準監督署長に提出しなければなりません。
 休業日が1日以上の場合から提出する必要がありますが、休業が4日以上となる場合には、遅滞なく届け出る必要があります。これは、労災保険の請求を全くしない場合でも、同様です。(労働基準法施行規則第57条、労働安全衛生規則第97条)
 なお、故意に労働者死傷病報告を提出しなかったり、虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を提出する等のいわゆる「労災かくし」は、処罰を含めた厳正な処分がなされます。(労働安全衛生法第100条、120条)

 

「労災かくし」の送検事例(厚生労働省ホームページより引用)

(事例1)
 ○○労働基準監督署は、運送会社Aと同社社長を労働災害5件を隠した労働安全衛生法違反の疑いで、○○地方検察庁に書類送検した。
 同社は荷物を扱う作業中に発生した社員の骨折など、1年1か月で起きた5件の労働災害について「労働者死傷病報告」を提出しなかったもの。社長は「荷主に知られたくなかった。」と供述。
 

(事例2)
 ○○労働基準監督署は、虚偽の「労働者死傷病報告」で労災かくしを行ったとして、労働安全衛生法違反の疑いで建設会社Bと同社の専務取締役を○○地方検察庁に書類送検した。
 同社は元請建設会社から2次下請けしたビル建設工事を行っていたが、同社労働者が同建設現場で熱湯を浴び全治3週間のやけどを負った労働災害が発生した際、「自社の資材置き場で起きた。」と同労基署に虚偽の報告をした疑い。
 工事現場での労働災害は、元請建設会社の労災保険で補償されることになっているが、同社専務は「元請けの労災保険を使うと迷惑がかかり、仕事がもらえなくなると思った。」と供述。

 

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