職場のトラブルQ&A ~年次有給休暇の時季変更権~

最終更新日 2020年3月27日ページID 005821

印刷

 社員が年休(年次有給休暇)を取りたいと申し出てきました。その日は当社にとって業務が多忙な時期で、人手が足りず休まれると困るのですが、このような場合でも年休を与えなければならないでしょうか。

 労働者が年休を取得する日を指定した場合に、そのとおりに年休を取得すると事業の正常な運営が妨げられる場合には、使用者は指定された年休取得日を変更する権利(時季変更権)を有しています。
 「事業の正常な運営を妨げられる場合」に当たるためには、当該労働者の年休を取る日の仕事がその所属する部・課などの業務運営にとって不可欠であり、かつ代わりの労働者を確保することが困難であることが必要とされています。日常的に業務が忙しいことや慢性的に人手不足であることだけでは「事業の正常な運営が妨げられる場合」に当たりません。
 労働者は年休をいつでも自由に取得できるのが原則ですので、使用者は労働者が希望した日に年休がとれるよう、状況に応じた配慮をすることが求められています。代替要員の確保や勤務割の変更を行い、できるだけ社員の希望通りに年休が取得できるよう努めましょう。
 なお、どうしても年休取得の時季を変更せざるを得ない場合には、社員とよく話し合いましょう。

解説

使用者の時季変更権

 労働基準法第39条第5項では、「使用者は、(中略)有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」と定めており、このただし書きの部分を年休の 「時季変更権」といいます。
 この時季変更権の行使事由である「事業の正常な運営を妨げる場合」については、当該労働者の所属する事業場を基準として、事業の規模、内容、当該労働者の担当する作業の内容、性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、労働慣行等諸般の事情を考慮して客観的に判断されるものでなければなりません。
 使用者は、できる限り労働者が指定した時季に休暇を取ることができるように、状況に応じた配慮をすることが要請されており、代替勤務者の確保、勤務割を変更するなどの努力を行わずに、時季変更権を行使することは許されないとされています(最高裁三小判決 昭62.9.22 横手統制電話中継所事件)。
 また、休暇の利用目的を考慮して時季変更権を行使することも許されません(最高裁二小判決 昭62.7.10 弘前電報電話局事件)。
 なお、長期で連続した年休取得に対する時季変更権の行使については、使用者にある程度の裁量的判断が認められる場合もあります(最高裁三小判決 平4.6.23 時事通信社事件)。
 2019年4月からは、すべての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者やパートタイム労働者、有期雇用労働者も含みます)に対して、その日数のうち年5日については、使用者が労働者の意見を尊重したうえで、取得時季を指定して与えることが必要となりました。
 年次有給休暇の取得は労働者の心身の疲労回復、生産性の向上など労働者・会社双方にメリットがあります。使用者は、年休取得計画表の作成や年休取得を前提とした業務体制の整備等により、年休を取得しやすい環境づくりに努めましょう。

参考

 

 職場のトラブルQ&A トップへ戻る

アンケート
ウェブサイトの品質向上のため、このページのご感想をお聞かせください。

より詳しくご感想をいただける場合は、roui@pref.fukui.lg.jpまでメールでお送りください。

お問い合わせ先

労働委員会事務局

電話番号:0776-20-0597 ファックス:0776-20-0599メール:roui@pref.fukui.lg.jp

福井市大手3丁目17-1(地図・アクセス)
受付時間 月曜日から金曜日 8時30分から17時15分(土曜・日曜・祝日・年末年始を除く)