職場のトラブルQ&A ~パートは昇給できない?~

最終更新日 2021年3月31日ページID 007017

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 今の会社にパートタイマーとして勤めて10年になります。最初3年は昇給があったのですが、その後は同じ金額のままです。同じような業務に従事している正社員の方は定期的に昇給があるようですが、パートタイマーの場合はなくても仕方がないのでしょうか。 

  パートタイム・有期雇用労働法では、パートタイマー・有期雇用労働者であっても、正社員と業務の内容、責任の程度、人事異動の有無などが同じである場合には、賃金などでの差別的な取扱いが禁止されています。業務の内容などが正社員と同じでなくとも、賃金の決定にあたっては、正社員とのバランスを考え、パートタイマー・有期雇用労働者 の職務の内容、能力、経験などを踏まえて決めるよう努力しなければなりません。
 さらに、事業主は、パートタイマー・有期雇用労働者を雇用する際、基本的な労働条件に加え、「昇給、退職手当、賞与の有無および短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口 」を文書で交付することが、また、現に雇用している者から求められた場合には、待遇の決定にあたり考慮した事項などを説明することが義務化されています。
 昇給の有無について労働条件通知書を確認するか、相談窓口担当者に、あなたの賃金の決定方法、昇給の有無を尋ねてみてはいかがでしょうか。

解説

 パートタイム労働法は、「パートタイム・有期雇用労働法」(「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)として2018年7月に改正され、パートタイム労働者だけでなく、有期雇用労働者も法の対象に含まれることになりました。改正法は2020年4月1日から施行されています 。(中小企業への適用は2021年4月1日から)
 改正法の対象であるパートタイム労働者は、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(正社員など)の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者とされています。例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「臨時社員」など、呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば、パートタイム労働者としてこの法律の対象となります。
 また、有期雇用労働者は、事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者のことです。
パートタイム・有機雇用労働法のポイントは次のとおりです。

1 雇入れの際の労働条件の明示化

 労働基準法では、労働者を雇い入れる際には労働条件を明示することが事業主に義務付けられていますが、パートタイム・有期雇用労働法ではこれらに加えて、「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」、「相談窓口」の4つを文書の交付などにより、速やかに、パートタイム・有期雇用労働者に明示することが義務化されています(第6条)。

2 雇入れ時の説明義務

 事業主は、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れたときは、実施する雇用管理の改善措置の内容(賃金制度の内容等)をパートタイム・有期雇用労働者に説明しなければなりません(第14条第1項)。

3 待遇の決定に当たって考慮した事項の説明

 事業主は、雇い入れ後、パートタイム・有期雇用労働者から求められたとき、そのパートタイム・有期雇用労働者の待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明することが義務付けられています(第14条第2項)。
 説明義務が課される事項
  労働条件の文書交付等、就業規則の作成手続、待遇の差別的取扱い禁止、賃金の決定方法、教育訓練、福利厚生施設、通常の労働者への転換を推進するための措置

4 パートタイム・有期雇用労働者の待遇はその働きや貢献に応じて決定

 (1)職務の内容(業務の内容と責任の程度)、(2)人材活用の仕組みや運用などの2つの要件が通常の労働者と同じかどうかにより、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱いについて規定されています(第10条~第12条)。
 特に、パートタイム・有期雇用労働者について、職務の内容、人材活用の仕組みや運用などが正社員と同じ場合には、正社員との差別的取扱いが禁止されています(第9条)。

5 不合理な待遇の禁止

 事業主は、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、その雇用するパートタイム・有期雇用労働者の待遇と正社員の待遇との間において、職務の内容、人材活用の仕組みや運用などその他の事情のうち、待遇の性質や目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはいけません(第8条)。

 正規・非正規労働条件の格差の不合理性が争われていた労働契約法第20条(※)に関する裁判例として、最高裁は、2020年10月に5つの判決を示しました。
(※)改正前の労働契約法第20条のことであり、「働き方改革」における改正により現行では「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善に関する法律」(パート・有期雇用労働法)の第8条に移行

(1)大阪医科薬科大学事件(最高裁三小判決 令2.10.13)
 大学の正職員とアルバイト職員間の賞与や病気欠勤賃金等の格差の不合理性が争われ、賞与の不支給、欠勤・休職中の賃金の不支給を不合理ではないと判断
(2)メトロコマース事件(最高裁三小判決 令2.10.13)
 売店での販売業務の正社員と契約社員間の退職金等の格差の不合理性が争われ、退職金の不支給を不合理ではないと判断
(3)日本郵便(東京)事件(最高裁一小判決 令2.10.15)
 郵便事業の正社員と契約社員間の格差が争われ、年末年始勤務手当の不支給、夏期冬期休暇の不付与、病気休暇の相違を不合理であると判断
(4)日本郵便(大阪)事件(最高裁一小判決 令2.10.15)
 郵便事業の正社員と契約社員間の格差が争われ、年末年始勤務手当の不支給、夏期冬期休暇の不付与、祝日給(年始期間に関する相違)の相違、扶養手当の不支給を不合理であると判断
(5)日本郵便(佐賀)事件(最高裁一小判決 令2.10.15)
 郵便事業の正社員と契約社員間の格差が争われ、夏期冬期休暇の不付与を不合理であると判断

6 パートタイム・有期雇用労働者から通常の労働者への転換について

 事業主は、次のいずれかの措置を講じることが義務付けられています。(第13条)
 ・通常の労働者を募集する場合、既に雇っているパートタイム・有期雇用労働者に周知する。
 ・通常の労働者のポストを社内公募する場合、既に雇っているパートタイム・有期雇用労働者にも応募する機会を与える。
 ・通常の労働者へ転換するための試験制度を設ける。
 ・その他通常の労働者への転換を推進するための措置

7 パートタイム・有期雇用労働者と事業主の苦情・紛争の解決について

 事業主がパートタイム・有期雇用労働者から苦情の申出を受けたときは、事業所内で自主的な解決を図るように努めなければなりません(第22条)。
 また、紛争解決援助の仕組みとして、(1)都道府県労働局長による助言、指導、勧告、(2)均衡待遇調停会議による調停があります(第24、25条) 。

参考

 

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