職場のトラブルQ&A ~定年退職後の再雇用~

最終更新日 2021年3月31日ページID 025650

印刷

 私は今年度中に60歳の誕生日を迎え、定年となりますが、会社の再雇用制度を希望して定年後も働き続けたいと考えています。
 ところが、人事部長から「社員数は十分足りているので、再雇用するつもりはない。」と言われました。再雇用は諦めないといけないのでしょうか。 

 事業主は、高年齢者雇用安定法第9条第1項の規定により、定年(65歳未満のものに限る)の定めをしている場合は、その雇用する高年齢者の65歳までの雇用確保措置として、次のいずれかの措置を講じなければなりません。

1.定年の引上げ
2.継続雇用制度の導入
3.定年の定めの廃止
 このうち、2.の継続雇用制度を導入する場合、かつては労使協定で対象者の基準を定めて対象者を限定することが可能でしたが、平成25年4月の改正高年齢者雇用安定法の施行により、継続雇用制度の対象となる高年齢者を事業主が限定できる仕組みが廃止され、希望者全員を制度の対象とすることとされました。(第9条第2項、経過措置も有り)
 以上のことから、会社は、あなたが希望する場合、雇用を確保する措置を取らなければなりません。
 会社にはもう一度、再雇用による雇用継続を申し入れ、よく話し合ってみてはいかがでしょうか。
 なお、65歳から70歳までの就業機会の確保について、令和3年4月1から改正高年齢者雇用安定法が施行され、事業主が高年齢者就業確保措置のいずれかを講ずることが努力義務とされました。(法第10条の2)  

解説 

1 高年齢者雇用確保措置(義務)
(1)改正趣旨
 平成25年度から老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢が、段階的に65歳まで引き上げられることになり、これまでの高年齢者雇用安定法のままでは、60歳定年以降、継続雇用を希望しても雇用が継続されず、無年金・無収入となる者が生じる可能性があることから、希望者全員の65歳までの雇用の確保等を目的として同法の見直しが行われました。
(2)主な改正内容
  継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止
  継続雇用制度の対象者を雇用する企業の範囲を子会社や関連会社など特殊な関係にある企業まで拡大 経過措置 
(3)経過措置
 平成25年3月31日までに労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主に限り、令和7年3月31日まで、厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢以上の者のみを対象に、労使協定により定められた基準を引き続き利用することを認めています。

対象者基準制度廃止の経過措置
H25.4.1~H28.3.31 61歳以上の者
H28.4.1~H31.3.31 62歳以上の者
H31.4.1~R4.3.31 63歳以上の者
R4.4.1~R7.3.31 64歳以上の者

 ※左欄の期間中は、右欄の者について対象者の基準を適用することができます。

(4)継続雇用しないことができる場合 
 心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由または退職事由(年齢に係るものを除く。)に該当する場合には、継続雇用しないことができます。
 ただし、この点については、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められることに留意が必要です。(第9条第3項)

2 高年齢者就業確保措置(努力義務)
(1)改正趣旨
 少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境整備を図ることが必要であり、個々の労働者の多様な特性やニーズを踏まえ、70歳までの就業機会の確保について、多様な選択肢を法制度上整え、事業主としていずれかの措置を制度化する努力義務が設けられました。
(2)主な改正内容 
 65歳から70歳までの就業機会を確保するため、高年齢者就業確保措置として、次の(1)~(5)のいずれかの措置を講ずる努力義務を設ける((4)および(5)を創業支援等措置という(過半数組合・過半数代表者の同意を得て導入))
  (1)70歳までの定年の引き上げ
    (2)70歳までの継続雇用制度の導入(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
    (3)定年廃止
    (4)高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
    (5)高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に次の事業に従事できる制度の導入
           a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
           b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
   高年齢者就業確保措置の実施および運用に関する指針の策定
     厚生労働大臣は、事業主に対して、高年齢者就業確保措置の実施について必要な指導および助言を行うこと、当該措置の実施に関する計画の作成を勧告すること等ができる
    70歳未満で退職する高年齢者について、事業主が再就職援助措置を講ずる努力義務および多数離職届を行う義務の対象とする

《参考》定年後再雇用者の労働条件
    業務内容について
 高年齢者雇用安定法は、希望者全員の65歳までの雇用確保を義務付けていますが、定年後再雇用の労働契約に際し、定年前と全く同じ労働条件で雇用することは義務付けていませんので、定年前と異なる業務内容や責任の軽い業務内容とすることは問題ありません。
 しかし、退職させることを目的として全く別個の職種を提示することは、違法と判断される可能性があります。
    賃金について
 2018年7月の法改正により労働契約法第20条がパートタイム・有期雇用労働法第8条に統合され、均衡待遇の原則適用が示されました。同一企業内における正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることを禁止しており、このルールは定年後再雇用による有期雇用にも適用されます。
 法改正を受けて、「短期間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(いわゆる「同一労働同一賃金ガイドライン」)」が2018年12月に策定されました。
 裁判例では、「長澤運輸事件」の最高裁判決の影響を受け、基本給、賞与の格差は、仕事内容やその責任の程度、転勤や昇進など配置転換の範囲、その他の事情を考慮の上是認し、各種手当や福利厚生給付について定年後もその趣旨に即して同様であるべきものを是正する判断傾向がみられます。
    長澤運輸事件(最高裁二小判決 平30.6.1)
 定年後の有期労働契約による再雇用労働者が定年前の正社員との間に労働契約法第20条に違反する労働条件の相違があるとして争われた。
 本件では、有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることは、その相違が不合理かどうかの判断において、労働契約法第20条にいう職務内容および職務内容・配置の変更範囲にとどまらない「その他の事情」として考慮されることとなる事情に当たるとしたうえで、基本給、能率給及び職務給等の相違は不合理とはいえないとしたが、精勤手当、超勤手当(時間外手当)を支給しないことは不合理であるとした。

 

 職場のトラブルQ&A トップへ戻る

アンケート
ウェブサイトの品質向上のため、このページのご感想をお聞かせください。

より詳しくご感想をいただける場合は、roui@pref.fukui.lg.jpまでメールでお送りください。

お問い合わせ先

労働委員会事務局

電話番号:0776-20-0597 ファックス:0776-20-0599メール:roui@pref.fukui.lg.jp

福井市大手3丁目17-1(地図・アクセス)
受付時間 月曜日から金曜日 8時30分から17時15分(土曜・日曜・祝日・年末年始を除く)