福井県中学校長研修会 知事あいさつ

最終更新日 2017年5月12日ページID 035699

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 このページは、平成29年5月12日(金)に福井市で行われた、福井県中学校長研修会での知事あいさつをまとめたものです。

 今日は中学校長の研修会で話をする機会をいただき、ありがとうございます。
 また、新任の校長先生方、就任おめでとうございます。

 昨年は、5月13日に鯖江で話をしましたので、そのときの復習をします。
 ちょっと目を閉じてください。NHKの英語のラジオ番組、基礎英語や英会話などを聴いていらっしゃる校長先生、手を挙げてください。
 (挙手)去年とあまり変わらないですね。校長が聴いてくれないと、福井の英語教育がよくなりませんので、1日15分でいいですので是非聴いてください。

 中学校の校長先生はいろんな意味でつらい仕事だということも申し上げました。
 小学校に課題が無いわけではありませんが、中学校に比べると深刻さがそれほどではないかもしれません。また、中学校は高校につながりますので、高校入試をどうしたらいいかという課題もあり、大変だと思います。
 中学校の校長先生はやりがいがあると同時に、厳しくて緊張感があると思います。自分の学校がよその校長先生に迷惑をかけてはいけないということだけでも大変だと思いますが、是非がんばってほしいということを申し上げました。
 校長先生の体験談を本屋で読むと、小学校の校長先生は大体が楽しいことを書いていますが、中学校になると苦しい反省が多いです。中学校にはそういうバックグランドがありますから、そこを乗り切ってほしいというのが2点目の話でした。

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 それから、中学校の校長先生の使命は何かということを話しました。
 4名の校長先生に聞いたところ、最初の答えは「先生方の応援団」、二番目は「教員のコーチ」でした。三番目は「学校の特色を出して方向性を与える」、四番目は「生徒、教師、地域とのコーディネーター」という考えで、みんな正しそうです。
 校長は、何が起こっても最終的に責任を取らなければならないし、取りたくなっても終わりにできないという立場ですから、覚悟がいりますし、逃げ隠れができません。問題があった時、責任を負わなくてはならないのですから、夜中でも昼でも朝でも、どんな用事があっても最前線に立ち、判断に迷うことがあるかもしれませんが、覚悟を持ってやるといいと思います。

 ナポレオンは40歳で皇帝になりましたが、何か不穏な状況が発生すると、夜中でも馬に乗って最前線に行き、自分が見て判断をしたと伝記にあります。
 ですから、責任は自分が取りました。最後はエルバ島からセントヘレナ島に流されますが、彼の部下は責任を取っていません。教頭や教務主任が責任を取っているのではなく、校長が責任を取っているのです。ナポレオンが責任を取って、島流しになったのです。そういう覚悟でやったから、成果を上げ、歴史的な評価があります。

 ミッションが何かは別にして、絶えず最前線に立つという覚悟が、一つのスタイルであると思います。最前線の現場の実感を持って、生徒や教師、地域のことなどを考え、実行することが大切です。計画を作るときには、自ら計画の真ん中に入って先生方と議論するといいです。

 学力テストの話を5番目にしました。
 目をつぶってください。今年の学力テストを解いた校長先生は手を挙げてください。
 (挙手)全員は解いていないですね。これはいけません。先ほどの最前線にいない。どんな問題だったのかは新聞を見ればわかるでしょうが、それではよくない。最前線に立っていないと話が成立しませんので、大人が問題を解くという感覚ではなく、解かなければいけないと思います。

 6番目に申し上げたのが、最近の福井県の学力・体力の状況です。
 校長先生方は、福井県の学力や体力を若い時から支えてきてくれた先生ばかりで、その結果が現在であると思いますが、全国の状況を見ると、最近はかなり混戦状態です。
 47本の一次方程式で見ると、上の方に接近してきて、時々クロスしています。中学校は幸いにして小学校よりいいですが、小学校がクロスし始めると、中学校もクロスするということかもしれないです。
 1500m走で言うと、最後にゴール前のホームストレッチで混戦するという状態になっていますので、長年、主導権を握ってきた福井県としては、この辺でさらに新しいパワーを発揮するということが大事だと思います。

 問題が二つあって、一つには、高校にうまくつながっていないという問題が出てきています。高校はもっと混戦で、福井県が学力・体力日本一という状態ではないということです。大都市には私立学校、中高一貫の環境などはありますが、北陸の中でもあまりよくないという状況です。

 これの原因は何かと言うと、あえて単純化して話してみますと、高校の側が悪いのか、中学校がちゃんとやっていないのかということですが、どちらにも問題があります。
 中学校でちゃんとやったことを受けて高校が頑張ってもらわないと、皆さんがやった甲斐が無い。学力・体力を中学校でしっかり支えている甲斐が無いというのが一つです。
 もう一つは、中学校と高校の生活とか教育内容から見ると、高校は、生徒の自主性とか自分で考えてやるとか、最近の言葉で言うとアクティブなということが必要です。
 総合して話しているので正しくないかもしれませんが、中学校で枠にはめすぎていないかということを反省してみてはどうでしょう。枠にはめて教えると中学校では物になっているが、高校になると必ずしもうまくいかない。

 両方の側に課題があるという想定をして取り組んではどうでしょう。このことは去年は申し上げませんでした。私が1年かけて考えたことですが、皆さんも考えてほしいと思います。学力・体力とも頑張っているが、課題が出てきていると思います。

 去年は、『世界教育戦争』というアメリカの女性ジャーナリストが取材をして書いた本の話をしました。アメリカの高校生が、フィンランド、ポーランド、韓国にそれぞれ留学してどうであったか、その国の教育が本国アメリカとどう違うのかという話を申し上げました。
 彼女(ジャーナリスト)の理論では、教育の向上に関わる課題として、私は必ずしもそうは思いませんが、教育設備にお金をかけても比例してよくならないという考えです。インターネットとか何とかの設備にお金をかけたからといってよくならない。これはアメリカの話ですが、州ごとにあるいは学校ごとにお金のかけ方が違いますから、必ずしも比例をしないということです。
 韓国では、競争のしすぎで子どもたちも先生も疲れてしまっていることが報告されています。ポーランドは、教育全体が不作というか不振であるということでした。

 彼女は、ポーランドやフィンランドや韓国、自分の国も取材していますが、学校に行って授業を見て、授業をしている先生の所へ行って最初に「あなたは今、何をやっているのか」という質問をするのです。しかし、先生はなかなか答えられないそうです。この質問は、何をするのかということを意識して、時間をうまく使って、準備も含めて授業をするのが先生としてのミッションだということを伝えているのだと思います。
 私が校長室に行って、「校長先生、あなたは今、何を考えていますか」と聞いたとき、私に向かって何を答えられるかということです。「今晩、地域との会議があるから、そのことを考えていた」とか「先生のことで悩んでいた」とかを話せるかということにつながっているのです。先ほどの最前線に立つという話と深く関わるだろうと考えています。

 去年、県庁に入った新社会人に、高校の授業で何が困ったか、不都合だったか、嫌だったかを聞いたところ、話がむずかしいとか、微分・積分がよく分からないとか、英語の問題がむずかしいというのではなくて、「この授業で何をやっているのかがよく分からない」という答えが多かったです。
 授業の始めに「今日はこれをする」とか、授業が終わって「今日はこれをやったね」という話になっていない。次の授業の時に「この前の授業でこれをやったよね」「これを覚えたから、今日はこれだよ」というのができていないことを意味していますので、この点からも注意してほしいと思います。

 福井県は教育県として注目を集めており、昨年度は全都道府県から2,700名を超える教育関係者が視察のために福井を訪れました。以前は1,500名、しばらくしてから2,000名くらいでしたから、かなり増えているわけです。
 本県の学校で直接教育を学ぶために、五つの県からそれぞれ2名あるいは4名、全部で11名の先生がおみえになっています。高知県から足羽第一中、松岡中、森田中、丸岡南中、京都府から勝山中部中、和歌山県から中河小、金津中、滋賀県から有終南小、松陵中、茨城県から武生東小、成和中に来られていて、実績が上がっています。

 また、2名の先生が茨城県と和歌山県の学校に派遣されています。それから、教員の代表を県の東京事務所に派遣し、東京の私学や進学塾に出入りをしています。
 さらに、文部科学省初等中等教育局の学力調査室にも福井県の教員を1名出向させて、勉強してもらっています。
 今年度の組織改正で、教育庁の教育政策課の課長に文部科学省から来ていただき、文部科学省とのつながりもあるという状況です。

 4月15日に春江工業高校をリフォームして、教育総合研究所を開所しました。教職研修センター、教科研究センター、教育相談センターを置くとともに、教育博物館を併設しました。教育博物館に行ってください。そして、いいものがあったら供出してください。私もいくつか供出しました。

 スクールプランはもう完成しましたか。スクールプランは、校長先生が学校経営を行う指針となるので、特色を出して、ミッションですから是非いいものを作ってください。

 学力テストについて、各学校においては、「これまで大切にしてきた、正しく文章を読み取り要約して書く力や計算力などを定着させ、学習してきたことを使って新たな問題に対応できる力を身につける教育を徹底するとともに、情報を取捨選択したり活用したりする力を、教科の域を超えて育んでほしいと」いうことですが、ここに「力」という字が四つ入っています。

 子どもには力が無いのです。だから、何の力なのか、どういう意味なのかということをもう少し具体的にしてください。
 読解力はつけたらいいと思うし、悪くないと思うけれど、それが無いから読めないのであって、どうやって読めるようにするかということでしょう。情報の取捨選択力、計算力、要約力、問題対応力、これらの抽象的な言葉を具体的にしてほしいと思います。
 先生方が文章を書かれたときに、「力」という字が出てきたら注意してほしいのです。ほとんど内容が無いことが書かれていると思います。意味がはっきりしていない。できるだけ具体化して、こうしようというようにやっていただきたい。

 福井県としては、学力、体力、突破力、これらを福井らしい言葉に具体化できることによって、大混戦から違う見方ができる、そういう立場に立てると思います。相変わらず「学力・体力日本一」と言っていると、日本一ではなくなるし、置いてけぼりを食らうことになってしまうので、それを避けなければならない。どうしたらよいかということを校長先生自身も考えていただきたいと思います。

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 さて、校長先生は、どういう教師像を描きますか。自分の学校で、どんな教師像の先生たちが活動してくれるといいかというイメージはどうでしょうか。
 (校長)それぞれの先生方に持ち味があります。多様性を活かせるような教員たちの集団を作りたいです。真面目すぎると潰れてしまうので配慮しています。
 (校長)子どもたちにこういうことをやってみたいとか、こういう授業をしてみたいという思いが次々とあふれてくるような先生方の集団を作りたいと思います。
 (校長)子どもに夢を持たせられる教師です。
 (校長)教科のおもしろさ、楽しさをしっかり語れる先生であってほしいと思います。
 それぞれどんなふうにやれるかですね。中学校で、どういうふうにやるんでしょう。我々にやってほしいということがありますか。
(校長)教員採用試験で、優秀な講師に校長が加点する。

 一人ひとりの子どもと向き合うと言いますが、具体的にどういうことですか。
(校長)生徒をよく理解して、個に応じた指導をすることです。

 子どもの頃に、担任の先生から個別に指導を受けたことがありますか。あなたはこういうところがいい、こういうところが課題だと一対一で言われたことがありますか。ある人は幸せですね。
 これからは、向き合うことについて、先生と生徒が一対一で、その生徒に対していろいろなことを指導するということが大事だと思います。それがどのくらいできているか、意外とできていないのではないかと思います。生徒全体に対しては目配りをして、なんとなくこの生徒にはこんなことをしたらいいということはされると思いますが、一人ひとりに通知表を渡すときに子どもに向かって話すような機会をもっと増やすと向き合えると思います。

これをさらに拡大すると、校長先生が学校の20名か30名の先生一人ひとりにどんなことを言うかということです。
 (校長)全員に違うことを言います。年に3回くらい、まず褒めて、ここは直したらいいということを伝えています。
 いいですね。かなりやってくれているのかなあ。昔からそうなのですか。
 (校長)朝とか休み時間とかに、校長室に来てもらって話をしています。
 生徒についても、今は少人数の学級ですから、静かに一人ひとりに話していただくといいです。

 今後10年間で、約半分の先生が退職されるようですので、いろいろなノウハウや教育の伝統などを次の世代にうまくつないでいくようにお願いします。
 先生方が自分でやろうとしているのを待ちきれず、先回りして校長先生がついつい手助けしてしまうのはよくないです。若い人は本来、自分で伸びていく力を持っているので、先生方をしっかり育てるようにお願いします。

 これから一般的には、英語教育、芸術・文化が重要です。来年は国体があり、学校にもお願いすることがあると思いますので、50年に1回の国体に協力をお願いします。

 遠隔システムで教育総合研究所と学校がスピーディーに連絡できるように大いに活用すると同時に、不満な点があれば教育総合研究所に伝えてください。
 教育委員会としては、学習指導要領に基づく考え方の説明、県の指導主事による学校訪問、研修会等をかなり盛んに行うと思いますので、先生方が積極的に参加できるように配慮をお願いします。

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