講演Ⅰ 「国民保護のしくみ」~有事対応の考え方~

最終更新日 2008年4月18日ページID 004255

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講師 総務省消防庁次長 東尾 正  
                                      
    東尾次長

 

講演概要 

・今回、国民保護法が6月に公布、9月に施行されたことにより、我が国の有事の際の国民保護を行うしくみが整備されたことになる。
・国会で法律が、どう議論され、どういう内容が修正されたかを中心に説明したい。
・修正案では、対策本部に現地対策本部を置くことができるという部分が追加された。これは、テロのような偶発的に起きる事案については、現地対策本部で即応しなければならないという考えに基づくものである。
・訓練については、防災訓練との有機的な連携を図ることにより、普段の備えと有事の備えを同レベルで考えていくことが必要となる。
・有事に備え、国と地方が協同して行う訓練の費用について、国が負担することになった。知事会からも強く要望されており、それに合わせて修正することとなった。
・総じて地元密着型の修正が行われることとなった。
・イラクにおける戦争のように、最近の武力攻撃事態は、本当の戦争なのか、テロ・ゲリラなのか、わからない渾然一体となった危険状態が続いている。そのため、テロのような類型(緊急対処事態)についても、戦争と同じように扱いましょう、ということが国会で強く議論された所であり、有事法そのものが改正となった。
 
・武力攻撃には4類型を提案している。弾道ミサイルは、いろいろな種類のミサイルが開発されており、日本は北朝鮮のミサイルの射程圏内に十分入っている。ミサイルの特徴として、高度1万メートルの上空をマッハ9の速さで飛ぶことができ、仮に北朝鮮が発射したとしたら、6分から10分後に日本に着弾することになる。
・湾岸戦争時にイスラエルが受けた弾道ミサイルは、250㎏~500㎏の通常の火薬による弾頭であり、一発の被害は比較的小さいものであるが、テロ、ゲリラで使われる可能性が強い。
・イスラエルでは、6週間の間に40発の弾道ミサイルの着弾を受けたが、死者は2名であった。これは、警報の発令が早かったのと、国民の準備が良かったのが、要因とみられる。
・警報発令後は、①遠くに逃げずに家の中で避難し、②十分な食糧を備蓄③火は絶対使わない、④密閉された部屋(風呂場など)に隠れることにより、十分生命を守ることができた。
・ただし、これは、普通の火薬爆弾に対する対応であり、生物化学兵器を使った爆弾であれば、別の対応が必要となる。
・また、普段から国民に対し、マンガなどを利用し、警報が発令された際は、うかつに外に出ないよう呼びかけていた。

・現在、国では、国民保護モデル計画を策定するために、関係者から構成する国民保護懇談会を設置し、議論をしている。
・早いうちに作成しなければならない計画において、武力攻撃のイメージを固めるために、武力攻撃4類型のうち、当面、弾道ミサイルとゲリラ攻撃の2パターンを中心に、計画や避難マニュアルを作る予定である。
・計画の大要素となる、「警報の発令」と「避難」について、そのうち「警報の発令」は国が責任をもって行うことであり、現在、情報伝達システムや収集方法について検討している。
・一方「避難」については、県が中心にやらないといけない。一般的に考えられる屋外へ逃げる避難は、はたして有効かどうか考える必要がある。むしろイスラエルの例のように、大きな攻撃がない場合には、自宅で持ちこたえる方が危害が少ないという分析が最近出ている。第2回国民保護懇談会の取りまとめでも話があった。

・今後のスケジュールでは、都道府県が17年度、市町村が18年度に計画を作成することとなっており、18年度末には全国の計画が作成されることになると考えている。
・注意しなければならないのは、法律が施行されている以上、国民保護計画が整備されていようとなかろうと、県や市町村には国民保護の責任が生じている。そのため、準備はどんどん進めていってほしい。
・国としても、県、市町村の国民保護の事務に従事する職員の人件費の支援や、自主防災組織、消防団の資機材の整備に対する支援、防災行政無線の早期整備に対する財政措置など総合的に取り組んでいきたい。

質疑応答

(質問)
・資料のなかで、消防の任務として、通常災害の業務の範囲内で、武力攻撃災害を防除し、被害の軽減をしなければならない、とされているが、武力攻撃災害の場合、通常の災害と比べて危険性が高いと思われるため、現場において活動する消防職員等の安全を守るための措置が必要ではないか。

(東尾次長)
・法の中で、「消防は武力攻撃災害を防除し、及び軽減しなければならない」とされているが、この武力攻撃災害の意味については、武力攻撃が終わった後の現に発生している火災や救急事案のことであり、武力攻撃が行われているところへ消防を駆け込ませることは絶対にないと考えている。侵害排除は自衛隊が行うべきことであり、消防や警察の方はそのような事態では、一般の方と同様避難や退避をしていただくことになり、武力攻撃事態が終わり、安全を確保した上で、活動をしていただくことになる。
・ただし、武力攻撃が終わったという線引きが難しく、今後、消防の活動指針というものを作る予定だが、その際には、隊員や市民の安全確保をベースに行う。
・また、警報が解除された後、すぐに消防等が活動するわけでなく、何が着弾したのかということを調べることが大事である。化学兵器や生物兵器が使用された場合だと2次災害を引き起こす可能性がある。そのような調査を行う特殊チームの創設を考えていかないといけない。調査をした後に、消防に救急、救助などの活動をしていただくことになる。
 

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