講演Ⅰ 「国民保護と地方公共団体の関わり」

最終更新日 2008年4月18日ページID 004262

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講師 総務省消防庁国民保護室長 平嶋彰英

      平嶋室長

講演概要

・ 資料の表紙に書かれているオレンジ色の三角マークは、ジュネーブ条約で定められた国民保護、文民保護の世界共通のマークである。
・ 国民保護法が6月に公布され、9月に施行されたが、国民保護法とは、分かりやすくいうと、武力攻撃から皆さんの命や財産を守るため、避難や救援などの仕組みを定めるものである。

・ 武力攻撃とは、我が国に対する外部からの武力攻撃のことを言い、いわゆる国と国との戦争のことであるが、緊急対処事態は、テロ組織等により行われる事態に対し対処するものである。
・ 武力攻撃には、着上陸侵攻など4パターンが想定され、緊急対処事態には、新幹線爆破テロや炭素菌テロなど4パターンの事態がある。
・ 着上陸侵攻とは、四方を海に囲まれている日本の独特のものであって、湾岸戦争のように陸地から攻められることはなく、必ず海からやってくる。
・ 弾道ミサイルは、発射されてから6分から10分で着弾する。ミサイル攻撃というと、町全体が火の海になるのでは、というイメージがあるが、弾頭に積める火薬量は限られており、戦時中の東京大空襲の時は焼夷弾2千トンの攻撃を受けたが、北朝鮮が保有しているノドン200発全部でも2百トンであり、全然状況が違う。
・ こうした武力攻撃に対する認識としては、わが国に対する着上陸や空襲などの本格的な武力侵攻の可能性は低下しているが、テロリストなどの非国家主体による攻撃が深刻な問題として対応しなければいけないと考えている。
・ こうした事態に対応できるよう準備する必要がある。この前の台風の時でも、災害が起きたらどうするということを考えていた市町村は被害が少なかった。

・ 国民保護法は、有事法制の一つであり、住民の避難や救援等を定めている構成になっている。実際、武力攻撃が起きたら、住民を守るのは自治体である。地域の事情をよく知っている地方でないと国民を守ることはできない。
・ 法では、地方公共団体は、当該地域の住民の生命、身体及び財産を保護する使命を有し、保護に関して必要な措置を講ずるとなっている。あらゆる場合でも住民を守ることを明らかにしたものである。
・ 実際に地方公共団体に何をやってもらうのかというと、平時の準備が重要であり、①国民保護計画を作ること、②協議会を設置して、住民、有識者の方にも参加してもらい、意見を求めること、③知識の普及啓発、備蓄、訓練の整備、をしていただくことになる。
・ 有事においては、①対策本部を設置し、②警報を通知、③場合によっては避難を指示する、④また避難住民に対し炊き出し等の救援を行い、⑤安否情報の収集、報告をしていただくことになっている。
・ 消防についても、2つの大きな役割が増えた。1つは、住民の誘導である。消防団が活きている地域は、災害が起きても被害は小さい。住民、特に高齢者を援助できる仕組みを持っているところは強く、地域をよく知っている消防団しかできないことであり、大きく期待されている。
・ もう一つは、消防は、武力攻撃による火災から国民の生命、身体、財産を保護しなければならない。これは、消防組織法の条文に武力攻撃を加えただけであり、地方公共団体同様、あらゆる場合から国民を守ることになったものと思っている。
・ 消防庁においても、7月2日に国民保護推進本部を立ち上げ、国民保護に取り組んでいるところであり、ホームページなどでも情報を提供しているので、ぜひご覧いただきたい。

・ 今後のスケジュールとして、12月に基本指針の要旨を公表し、今年度末には基本指針を策定、17年度には都道府県に国民保護計画を作成していただき、18年度には市町村にも作っていただく予定。
・ 都道府県の国民保護計画については、想定される具体的な状況がわからない、弾道ミサイルを撃たれても何をすればいいのかわからない、という意見が多く寄せられている。そこで、われわれもシミュレーションしていくことは難しいので

、過去のいろんな事例について研究することにしている。
・ そういう作業をするに当たり、各方面の有識者を集めた、「地方公共団体の国民保護に関する懇談会」を開催し、研究を行っている。幹事として福井を含め5つの都道府県にも入っていただいている。
・ 研究事例であるイスラエルの弾道ミサイル被害においては、6週間で約40発の着弾があったのにもかかわらず、死者は2名と少なかった。運がよかったこともあるが、理由として考えられるのは、弾頭が通常弾頭であったことに加え、迅速な警報の発令と、警報を受け、住民が速やかに屋内退避をしたことが被害を最小限に止めたのではないかと考えている。
・ イスラエルの住民には、事前に弾道ミサイルが発射された場合の対応として、緊急サイレンの確認、火薬等の使用禁止、密閉室の退避、ガスマスクの着用などについて書かれた冊子が配布されている。ガスマスクは別として、それ以外のことは、われわれも結局同じことではないかと考えている。
・ シェルターなどはなく、部屋の選択として、適度の広さを有し、窓の少ない、ガムテープで密閉された部屋を実際使用していた。
・ ゲリラの案件として、韓国に北朝鮮のゲリラが侵入し、掃討作戦により韓国軍が6万人出動した事案がある。ここで注目すべきことは、このとき民間人が3人、ゲリラに殺害され、1人が誤射で死亡したことである。なぜ民間人が巻き込まれたかというと、軍による初期の住民の警戒活動が甘かったためである。危険な場所は、直ちに立ち入り禁止にするなどの対応が必要であるということを学ぶことができる。
・ 広島の原爆においても、爆心地から500m内に80名の生存者がいた。そのなかの一人の方は、忘れ物を取りに家に帰り、たまたま地下室にいたため、生存することができた。大事なことは、初期段階で家の中にいること、できたら地下室にいること、その後も死の灰を避けることでかなり被害を抑えることができる。
・ 原子力施設へのテロ等の対応については、福井県では一番心配されていることだと思われるが、我々も、住民がそういう事態に巻きこまれて、被害が受けることがないよう必要な対策について、現在検討しているところである。

・ 懇談会では、差し迫った問題として、弾道ミサイルとテロ・ゲリラについて、その対応が急がれるのではないかということで、まとめているところである。
また、多数の委員からは、正確な情報をいかに伝達するかということが一番重要である、という意見が出ている。
・ 9.11自爆テロでは、アルカイダのもう一つの攻撃選択として、ハイジャックした飛行機を日本、シンガポール、韓国の米施設に突っ込ませることが計画されていたことが分かっている。
・ 9.11の報告書の最後に書かれているように、もしそういうことが起きたらどうするか、という問題意識を日頃から持つことが大事である。

質疑応答

(質問)
・危険が切迫した時に、警報を発令し、住民に伝達するためには、防災行政無線の使用が考えられるが、屋内にいると聞こえない等の問題がある。こうした問題に取り組む必要があるのではないか。

(平嶋室長)
・現在、防災行政無線の整備を進めているところで、同報系無線の整備率は全国平均約70%である。有事の際でも情報の迅速な提供は重要なことであり、先ほどのお話したイスラエルの例では、すぐにサイレンで情報を流したため、被害が最小に抑えることができた。この問題については、これからも全力で取り組んでいく。
 

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