職場のトラブルQ&A ~経営悪化を理由とした退職金減額~

最終更新日 2020年3月27日ページID 000288

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 経営状況が悪化しているので、就業規則を見直し、退職金の2割減と定年延長を考えていますが、従業員との関係でどのようなことに配慮すべきでしょうか。
 

 就業規則によって支給条件が明確である場合の退職金は、労働基準法では労働の対価としての賃金に該当する重要な労働条件であり、会社が一方的に就業規則を変更して退職金を減額することは、原則として許されません。
 就業規則の変更は、これを労働者に受忍させることができる高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合に限り、有効とされています。合理性があるか否かは、具体的に、

  1. 経営危機の状況など、変更の必要性の程度
  2. 就業規則の変更によって労働者が被る不利益の度合い
  3. 代償措置、その他関連する労働条件の改善
  4. 労働組合や労働者への十分な説明と交渉の経緯
  5. 変更に関する同業他社等の状況

などを総合的に勘案して判断します。
 まずは、労働組合や労働者に退職金減額の必要性や幅などついて詳細に説明し、話し合ってください。こうした就業規則の変更は、労働者の利益との調整に十分配慮する必要があります。
 

解説

 使用者は、社会環境や経営環境の変化に応じた経営を続けていくためには、労働条件を変更する必要が生じる場合があります。
 しかし、賃金や退職金規定の変更は、労働者に不利益を及ぼす程度が他の労働条件に比べ大きいことから、一方的に変更することは、原則として認められていません。退職金規定の不利益変更が争われた多くの事件で裁判所は不利益変更の効力を否定的に解しています。
 退職金の変更について争われた代表的な裁判例として次のようなものがあります。

退職金規定の不利益変更の効力を否定した判例

退職金の算定基礎額を従来の基準(現職最終月の基準賃金総額)からより低い基準(現職最終月の基本給のみ)に変更したことについて、経営不振等の状況があっても到底合理的とはいえないとした。
(大阪高裁判決 昭45.5.28 大阪日日新聞社事件)

従来は会社が支給していたものを社外退職金制度に切り換えたことによって、退職金額が旧規定による額に比べ4分の1程度となる大幅な変更について合理性を否定した。(東京地裁判決 昭50.3.11 ダイコー事件)

退職金規定を廃止し、それまでの就労期間分の退職金は支払うがそれ以降は支払わない旨の就業規則改訂について、不利益変更の代償となる労働条件が提供されていないことを理由に無効とした。
(最高裁二小判決 昭58.7.15 御国ハイヤー事件) 

退職金規定の不利益変更の効力を肯定した判例

  七つの農協の合併に伴う統一就業規則の作成の一環として一つの農協の退職金の支給率が引き下げられた事件については、変更の必要性が非常に高いこと、他の労働条件が合併により向上していることなどを理由に、合理性を肯定している。(最高裁三小判決 昭63.2.16 大曲市農協事件)
 

参考

 

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