第355回定例県議会知事提案理由説明要旨

最終更新日 2008年6月24日ページID 002147

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平成20年2月25日

第355回定例県議会

 

 

平成20年度当初予算案

 

 

知事提案理由説明要旨

 

福 井 県

 

 

 第355回定例県議会の開会に当たり、県政運営の所信の一端を申し述べますとともに、県政の諸課題および平成20年度当初予算案の概要につきまして、ご説明申し上げます。

 さて、いよいよ地域の力が問われる時代になってきました。厳しい社会情勢の中、地方分権も様々論じられ実行もなされていますが、いま将にこうした地域の力、これは教育力、文化力、産業力、県民力そして私たちの気力が問われる時代であります。これらの力を合わせた総合力を存分に発揮して、福井の力を高めていかなければなりません。我々のこのような自覚がなければ、福井が全国に一歩でも先んじて発展することなどは困難であると考えます。

 私は、これまで、安全で安心な生活を土台に、一人でも多くの県民が福井で暮らせてよかったと実感できるふるさとづくりを一歩一歩着実に進めてまいりました。県民一人ひとりの「暮らしの質」を高められるよう、これまで以上に県民が抱いている将来に向けた希望や期待を受け止め、具体的な成果を挙げていきたいと考えております。また、活き活きとした健康長寿社会を目指して、新たに大学との共動により、調査・研究活動を進めるなど、その成果を今後の政策に活かしていきたいと考えております。

 現在、新幹線や中部縦貫自動車道など、福井県の将来の発展に欠かすことのできないプロジェクトが重要な時期を迎えております。しっかりとした道筋をつけ確かなものとするために、今年をまさに「勝負の年」にしなければなりません。そしてこうした時こそ、県はもとより、県議会、市町、経済界そして県民の皆様の力を一つに結集して、本県の「総合力」を発揮していかなければなりません。先頭に立って全力を尽くす所存でありますので、議員各位には、引き続き力を合わせていただきますよう、お願い申し上げます。

 さて、国と地方の関係について、総理大臣は所信表明の中で、地方に一層の権限移譲を行う分権改革の議論を加速すると表明しています。国の地方分権改革推進委員会は、6月頃までに政府に対して、国と地方が担う事務事業の見直しなどを中心とした第1次勧告を行う予定でありますが、昨年11月に委員会が策定した「中間的な取りまとめ」で示された見直しの方向性に沿った勧告が行われることが重要であります。

 一方、地方分権の推進には、その基盤となる地方財源の充実が不可欠であり、各地方自治体が安定的な税収を確保できる地方税の改革を進める必要があります。21年度からの法人事業税再配分の改正は、次の抜本的な地方消費税や地方法人課税の改革につながる必要があり、今後も積極的に提言を行ってまいります。

 ところで、国と地方の関係の見直しが進むことに伴い、自らの判断と財源で責任ある行政運営を行っていくことになります。県ではこれまで、21年度までの5年間を推進期間とする「行財政改革実行プラン」により、改革を進めてきました。しかしながら、多額の県債残高を抱え、今後、公債費や社会保障関係経費などの伸びが避けられない中、将来の発展につながる高速交通網などの整備、安心した暮らしを支える福祉や医療、教育の充実などが実行できる財政基盤を作っていく必要があります。

 そのため、現行プランの達成状況をもとに、さらに行財政改革を進めていくため、今回、22年度までの4年間を推進期間とする新プランを策定し、職員数の削減や公社の整理合理化などの改革を一層進めることにしました。

 さて、「ふるさと納税」についてでありますが、福井県の提案に沿った形で来年度の地方税制改正案に盛り込まれたことは画期的なことであり、その実現を強く期待しております。

 県としては、ふるさと貢献の気運を盛り上げていくため、制度導入に先がけて、昨年9月にふるさと福井応援のウエブサイトを設け、12月から自治体として全国で初めて、インターネットによるクレジットカードでの寄付ができるようにしました。

 県外から「ふるさと納税」として寄付をされた方には「ふくいふるさと県民」として、ふるさとを応援したいという思いを寄付にとどまらず、パブリックコメントの参加など様々な形で表してもらえるよう工夫してまいります。

 一方、市町と県の関係については、今年度から市町ごとの課題解決に向けた「市町振興プロジェクト」の策定を進めており、市町が利用しやすい新たな補助制度や協力体制を作ってまいります。

 さて、高規格道路や基幹的な道路網、子どもや高齢者にとって安全な通学路や歩道、雪に強い道路などを着実に整備することは、「暮らしの質」を高める上で重要なことであります。現行のガソリン税等の暫定税率が延長され、特定財源制度が堅持されることが前提となります。この制度が延長されないとなりますと、本県全体の道路整備財源が約230億円減少することになります。このことは市町も含めて、単に新たな道路整備が進まなくなるだけでなく、道路の維持・補修、さらには県民生活全般に影響を及ぼすことになります。このため、暫定税率延長の必要性について広く県民の理解を求めてまいります。

 

 それでは、当面する県政の重要課題について申し上げます。

 まず、北陸新幹線であります。

 北陸新幹線の福井駅部につきましては、800メートル全域で既に高架橋の柱部まで完了し、先月末で工事進捗率が7割に達するなど、平成20年度末の完成を目指して工事が着実に進んでおります。

 北陸新幹線の整備促進については、昨年末に政府・与党整備新幹線検討委員会が開かれ、着工のための財源確保等について検討するワーキンググループを設置して、今年度末までに安定的な財源を確保する方策の目途をつけた上で結論を得るべく全力を傾注することが合意されました。

 そして、先月23日のワーキンググループの第1回会議では、JRの貸付料や根元受益の前払いなどについて検討していくことが確認されました。

 また、与党などのレベルにおいても、新たな財源確保に向けた本格的な議論が開始されております。この間、北陸新幹線整備実現福井県推進本部を中心に継続的に要請活動を実施してまいりました。

 今後、ワーキンググループ等による議論が精力的に進められ、今年度末までには財源を確保する目途をつけた上で、敦賀までの新規着工が決定されることが、県民の政治への信頼につながるものであります。国会議員各位の大きな努力を期待すると同時に、引き続き県内一丸となって取り組んでまいります。

 次に、原子力行政であります。

 プルサーマル計画については、12月県議会での議論、地元高浜町の意見、原子力発電所の高経年化対策や耐震安全性の確保等に係る国の方針などを総合的に判断し、1月30日に関西電力からトラブル低減計画や地域共生に向けた今後の方針等について報告を受け、関西電力が自らの判断で手続きを進めることについて理解を示したところです。

 その際、関西電力に対し、策定したトラブル低減計画等を着実に実行し、県民の有するプルサーマルという新しい計画への不安を取り除くため、各段階ごとに進み具合を詳細に公表し理解が得られるよう、これまで以上にオープンに対応することを強く要請したところです。

 県としては、計画の進捗状況等について、節目となる工程の各段階で報告を求め、その内容を厳正に確認してまいります。

 「もんじゅ」については、平成18年10月に、原子力機構から国に申請していた初装荷燃料の変更計画についての安全審査が終了し、今月19日に国の許可がなされました。この計画については、安全協定に基づき、平成18年7月に原子炉施設の重要な変更に関する事前了解願が原子力機構から提出されているところです。

 県としては、燃料変更の健全性や妥当性について、今後、県原子力安全専門委員会の審議などを通じ、国の審査状況等を厳正に確認するとともに、県議会での議論や地元敦賀市の意見等も十分踏まえ、安全の確保を最優先に慎重に対応したいと考えております。

 また、原子力発電所の耐震安全性については、平成18年9月に国が改訂した新しい耐震設計審査指針に基づき、各事業者において鋭意、再評価の作業が進められております。

 一方、本県の要請の結果、国においては、事業者が実施した海域活断層調査結果の妥当性を検証するため、敦賀湾と小浜湾において、海上音波探査を本年度中に開始することになっております。

 次に、「エネルギー研究開発拠点化計画」については、国をはじめ、電力事業者、大学、産業界などと一体となって、平成20年度の推進方針に基づき、全力で進めております。

 このうち、特に「もんじゅ」や「ふげん」等の施設と人材を活用し、教育・研究を行う広域連携大学については、福井大学が中心となり、関西・中京圏の大学の専門家等とともに検討を重ねております。3月中には、大学、原子力機構、国、県、敦賀市等で構成する検討委員会を開き、構想策定に着手する予定になっております。

 また、二次電池や燃料電池など次世代エネルギー産業の集積を目指す「福井クールアース・次世代エネルギー産業化プロジェクト」については、国の協力も得て、県と関西電力が中心に、6月を目途に企業・大学などによる協議会を設置し、共同研究テーマの検討、事業化研究を進めてまいります。

 さらに、新型転換炉「ふげん」については、今月12日に原子炉等規制法に基づく廃止措置計画が認可されたのを受けて、原子力機構がその名称を「原子炉廃止措置研究開発センター」に改め、エネルギー研究開発拠点化計画に沿った廃止措置の研究開発を進めることとしております。

 なお、県としては、今後、廃止措置の各段階において、立入調査や県原子力安全専門委員会の審議により、廃止措置計画の実施状況を厳正に確認してまいります。

 次に、福井鉄道福武線の問題について申し上げます。

 2月15日、福井鉄道、名古屋鉄道、県および沿線3市等からなる第4回の「福井鉄道福武線協議会」を開き、福井鉄道が引き続き運行する方式により福武線を残すことで協議が整うとともに、先週21日の第5回協議会では、累積債務の削減や、老朽化した設備の更新・修繕など、福武線の運行を維持・活性化していくための課題について、さらに検討を行いました。その中で、福井鉄道が、資産の売却や名古屋鉄道からの増資により債務の削減を図ること、また、国が「上下分離方式」での鉄道運営に対し支援を強化していることや、過去の「えちぜん鉄道」の存続スキームも踏まえ、県と3市の負担で鉄道用地を取得するとともに、安全運行に不可欠な設備更新や維持修繕に対する支援の拡充について協議がなされています。協議の中での残る課題としては、債権者である金融機関としての協力の必要があげられております。

 今後は、こうした枠組みや課題について、県議会の議論を踏まえ、早期に結論を得ていきたいと考えております。

 福井駅の西口開発については、昨年12月に国の同意を得て、駅前広場の拡張整備と西口中央地区の再開発に関する都市計画を決定いたしました。駅前広場の拡張部分の整備については、来年度からの事業着手に向け、事業主体の福井市において年度内に事業計画の変更を行う予定であります。また、再開発事業については、事業パートナーが正式に決定し、現在、準備組合において事業計画の作成が進められております。県としては、事業の円滑な推進について福井市を支援してまいります。

 それでは、当初予算について申し上げます。

 今回の予算は、2期目における通年予算であります。

 来年度の税制改正案には、法人事業税の譲与税化や「ふるさと納税」が盛り込まれていますが、地方分権につながる税制改革や地域間格差の是正など、抜本的な税財政改革の重要な時期に差しかかっています。こうした認識の下、今回の予算編成に当たっては、税収の伸び悩みが見込まれるなど厳しい財政状況ではありますが、新たな工夫を加えながら総合力を発揮し、「新元気宣言」に掲げた政策をステップアップさせ、「暮らしの質」を高めることを目指したところであります。

 特に、中部縦貫自動車道等の高速交通網や新幹線福井駅部、西口広場の整備や教育の充実など本県の将来の発展につながる基盤整備や人づくり、必要な医療を受けられるための医師の養成確保や母子家庭、障害者の支援など昨今の格差問題も踏まえた「暮らしやすさの実感」につながる施策に力点を置いたところであります。

 以下、主要施策について、「新元気宣言」に沿って申し上げます。

 まず、「元気な社会」のうち、教育についてであります。

 子どもたちが、福井で生まれ、学べてよかったと思えるような教育環境を整えていくためには、絶えず教育内容や授業方法、学級編制等についての改善が必要であります。

 そこで、昨年8月以降、「教育・文化ふくい創造会議」において、教員の指導力向上や理科・数学教育の充実に関する第1次提言とあわせ、本県独自の学級編制基準を定めた「元気福井っ子笑顔プラン」の見直し等のまとめを行っています。

 子どもたちに「ていねいな教育」「きたえる教育」を行っていくために、今回の提言を最大限に生かし、速やかに改革を実行してまいります。

 まず、本県の学力や学習の向上につながっている全国的にも進んだ少人数学級編制について、さらなる改善を行うこととしております。

 小学校1、2年生については、複数教員により学校生活全般にわたる支援を拡充することとし、非常勤講師の配置基準を現行の36人以上のクラスから段階的に31人以上にまで引き下げます。小学校5年生については6年生と同じ36人とし、6年進級時にクラス替えをしなくて済むようにします。また、中学校2、3年生についても、この4月から35人とし、段階的に32人まで引き下げます。そして、新しく学校長の自らの判断で、少人数学級編制とティーム・ティーチングなどを学校内で効果的に選択できるようにします。

 次に、理科・数学教育の充実では、公民館などで企業の技術者などが身近な科学実験を通じて小・中学生の関心を引き出す「ふくいサイエンス寺子屋」を実施するほか、高校生には、世界最先端の科学分野に触れ、知的探究心を高めてもらうために、ノーベル化学賞の白川英樹筑波大学名誉教授を招き、8月に「スーパーサイエンスフォーラム」を開催します。さらに、切磋琢磨することで興味と能力を高めるよう、「ふくい理数グランプリ」を実施するほか、11月には、横浜で開催される「WRO(ロボット五輪)2008世界大会」の出場チームを招いて恐竜博物館でエキシビション大会を開催します。

 さて、教育委員会において、昨年12月に高等学校教育問題協議会に対して、高校の適正規模と配置、職業系学科のあり方、定時制・通信制のあり方について諮問したところです。生徒の数も減少してきている中で、一人ひとりの生徒の将来につながる教育を行うという基本に立ち、この協議会で様々な観点から十分な議論がなされることを期待しており、その答申をまって改善を行ってまいりたいと考えております。

 次に、「子ども歴史文化館」については、交通アクセスやコストなどの面を考え、旧県立図書館を有効に活用することとしており、現在、委員会において、展示・紹介する人物について検討しております。今後、展示内容や建物改修に関する設計・工事に着手してまいりたいと考えております。また、多くの子どもたちが利用できるよう、バス運行などの方策も検討していきます。

 さて、国民体育大会については、開催の意義やメリット、選手育成や運営方法などの諸課題について、開催すべきかどうかも含めて検討するため、様々な分野の委員からなる「国体検討懇話会」を1月24日に設置しました。今後、幅広く県民の意見も聞きながら県民全体の視点に立ち、オープンな形で議論を深め、半年を目途に結論を得たいと考えております。

 県立大学の生物資源学部については、これまで生物資源と海洋生物資源の1学部2学科の体制で運営してまいりましたが、平成21年度からそれぞれの学科を独立させ、福井キャンパスの生物資源学部と小浜キャンパスの海洋生物資源学部の2学部とし、あわせて農業や水産業との産学連携を、地場産業の育成や企業誘致とともに一層進めてまいります。

 次に、子育て支援について申し上げます。

 まずママ・ファースト運動の一環として、子育て家庭への特典サービスなどを行う「すまいるFカード事業」について3月1日から約700店舗の協力を得てスタートさせ、協力店舗の拡大にも努めてまいります。

 次に、明るく安全な通学路や安心して遊べる公園など、子どもや家族の視点に立った共動によるキッズデザイン「子どものまち」づくりについては、今年度、福井市社南地区、鯖江市神明地区、永平寺町御陵地区のモデル事業の成果をガイドラインにまとめており、来年度は、新たに2地区においてモデル事業を実施します。

 また、おおい町に建設を進めてきた「こども家族館」が6月末に完成します。7月下旬には見学会を設け、8月1日から開館記念イベントを開催いたします。今後、おおい町の運営により、多くの方の利用を期待しております。

 母子家庭のお母さんの経済的自立を応援するため、県の貸付金を利用して看護師等の資格を取得し、就労した場合に貸付金の一部を助成する本県独自の制度を設けます。また、障害者の授産施設に企業診断等の専門家を派遣して経営改善を図るなど、障害者の所得増加を目指します。

 さて、産婦人科と小児科の医師数について、女性と子どもの数当たりで、都道府県間にいずれも2倍以上の格差があることが明らかになりました。本県の場合、全国平均を上回っておりますが、医師の確保に努めていかなければなりません。そこで、県内の自治体病院等で働く医師の養成・確保に向け、福井大学と協力して、新たな奨学金制度を創設し、21年度から入学定員を5名増員したいと考えています。また、県立病院救命救急センターで医師を養成・確保し、21年度から自治体病院等に派遣できる体制を整備します。一方、年々増加している女性医師の働きやすい職場環境の整備については、女性活躍会議でも提案を受けており、新年度から県立病院に夜間対応の院内保育施設を整備するとともに、医師会と協力して、女性医師の短時間勤務や育児休業後の復帰などの相談に対応する「女性医師支援センター」を開設いたします。

 次に、健康長寿の推進について申し上げます。

 がんについて、予防と治療の両面から対策を充実することは、健康長寿を伸ばしていく上で極めて重要なことであります。県では、市町のほかに職域まで含めて、がんの種類ごとの検診状況を、本年度全国で初めて調査しました。しかし、最も高い場合でも約3割にとどまっており、検診の重要性が十分理解されているとはいえません。

 今年度から、ショッピングセンター等で休日等に「出前検診」を行っておりますが、今後は、特に職域における検診について市町別に実態把握を行い、効果的な対策を検討してまいります。また、医師会の協力を得て、がん検診推進医が直接、市町や企業に対し検診を指導、助言するなど、受診率の向上を目指してまいります。

 また、がんの高度な診療治療・臨床研究の拠点となる「がん医療推進センター」を県立病院内に開設し、来年度は、最も患者数が多い胃がんを対象に、がん専門医や抗がん剤治療を行う専門医等が、患者の状態に応じ、連携して治療に当たるチーム医療を開始いたします。

 陽子線がん治療施設については、建築工事の設計積算や医療分野の専門家等の意見も聞き、今後の進め方を検討してきました。その中で、委員からは、現在の施設規模等は見直す必要がないこと、資材価格の高騰などの現状を踏まえ実勢価格を再調査する必要があるとの指摘を受け、改めて価格調査を行い、これに基づき設計額を積算して増額することとしました。今後、競争性や公平性を高める必要があるとの意見も踏まえ、入札参加業者を確保し、夏には工事に着手できるよう準備を進めてまいります。

 次に「元気な産業」であります。

 本県経済は、各種の経済指標によると、生産の一部に持ち直しの動きがあるものの依然として消費に弱さが見られ、景気の回復は緩やかと判断されております。一方、原油・原材料価格の高騰や家計所得の伸び悩み等を背景として、昨年秋以降、全体の景況感としては悪化の傾向が見られ、先行きについては細心の注意を払う必要があります。年末には、本県独自の緊急融資対策を講じましたが、4月以降も、借換え資金融資制度の延長、経営安定資金の要件緩和等を実施してまいります。また、省エネルギー型設備を導入する中小企業者に対して、保証料助成を伴う新たな融資制度を設けます。

 なお、生活関連物資については、価格調査を行い、便乗値上げを監視していきます。

 さて今月、経済戦略政策会議から、本県産業が新たな段階に踏み出すための5つの戦略からなる提言を受けたところであり、可能なものから速やかに実行してまいります。

 このうち「福井から売る」ための戦略については、例えば、衣食住に焦点を当て、製造業や流通業の技術やノウハウを農産物加工品の分野で活用する、いわゆる農商工連携により、付加価値の高い商品を中量生産する福井型生産モデルの展開を図っていきます。

 また、「福井を支える」元気な中小企業を応援する戦略として、企業の優れた技術や製品を、株式会社デンソーと関連企業に対して提案・紹介する展示商談会を、14日、15日の両日開催しました。私自身も直接協力を要請しましたが、2日間で約2,300名の来場者があり、自動車関連ビジネスの新規取引先の開拓につながることを強く期待しております。今後、十分なフォローをしてまいります。

 さて、今年の10月に、国の観光庁が発足することとなっており、観光振興策に新たな展開が期待されるところであります。福井県においては、平成26年度の舞鶴若狭自動車道の全線開通、その後の中部縦貫自動車道さらには新幹線の整備などの実現により、本県の立地条件は外に開かれたものに大きく変化していくことになります。そこで、常時1,000万人を超える観光客を誘致できるよう、10年から15年先の変化も考えた新しい観光推進計画を策定してまいります。

 また、県の陶芸館については、窯元が製作実演し観光客と直接触れ合える場を設けるなど、産業観光拠点としての魅力を高めるためにリニューアルを行います。

 さて、平成5年10月に中国浙江省と友好提携を結んで以来、今年で15年を迎えます。浙江省との相互訪問を行い、観光など様々な分野において友好交流を深めていきたいと考えております。また、明治41年にブラジルへの移民が始まって、今年は100周年の年でもあります。移住された郷土の人達を訪ね、交流を深めるとともに、経済関係者とも情報交換を行いたいと考えております。

 次に、農林水産業の振興についてであります。

 平成21年春に開催される「第60回全国植樹祭」については、今月12日の国土緑化推進機構の特別委員会において基本計画が承認、決定されました。今後は、この基本計画に基づき、一乗谷朝倉氏遺跡周辺の自然や景観、歴史を活かした式典内容や式典会場の整備の具体的な検討を進め、開催準備に万全を期してまいります。

 また、植樹祭を契機とした県民運動については、継続的に自治会や公民館、学校、企業などが参加した活動につながっていくことが重要であります。そこで、季節の花木に合わせ花壇づくりのアドバイザーを自治会や学校に派遣するなど、県民との共動により、身近な所での花づくり活動を推進してまいります。

 さて、本年度から導入された品目横断的経営安定対策については面積要件の見直し、また、米の生産調整についても麦や大豆等の作付け拡大に対する支援など、実効性を確保するための制度改善が、昨年末に決定されました。

 こうした中、熱心な農業者や食品産業関係者等による検討会議を設け、国の施策や農業情勢の変化を前提に、本県農業の課題や進むべき方向性について様々な検討を行っております。今後、さらに議論を広めて、新たな農業・農村再生戦略を策定いたします。

 次に、地域農業サポート事業については、全ての市町においてサポート計画が作成されました。サポーターとなる農業者に加え、地域の方やボランティア等が参加したサポート組織など、地域一体の体制づくりを進め、今年の春の農作業から本格的に実施できるよう支援していきます。

 次に、九頭竜川下流地区の国営かんがい排水事業については、農林水産大臣との協議を経て、今月、北陸農政局長からコスト縮減等の方針について説明を受けたところであります。具体的には、年度内に国と県が合同で「事業管理・コスト縮減検討会議」を設け、大学や試験研究機関などからの助言も得ながら検討を行い、3年後には外部委員による「合同評価委員会」を設けて事業効果等の点検、評価を行い、公表することとしています。そして、これらの検討や評価を通じて、国として15パーセントを超えるコスト縮減を目指すこととしております。

 次に「元気な県土」についてであります。

 舞鶴若狭自動車道のうち、平成23年度完成を目指す小浜西・小浜間については、全区間で工事に着手するなど着実に進捗しております。

 小浜・敦賀間においては、今年4月に新たに国富トンネルの工事着手を予定しており、平成21年度末までを目標に全区間で工事が行われる見込みであり、26年度完成を目指し着実に進捗しております。

 次に、中部縦貫自動車道のうち永平寺大野道路の上志比・勝山間約8キロメートルについては、平成20年度中の開通を目指し、工事が進められております。また、大野油坂道路についても「真に必要な道路」であることが確認されたことから、今後10年から15年で全線が整備されなければなりません。特に、大野市富田地区から和泉地区(旧和泉村朝日)にかけては事故や災害の危険性が高い区間であり、優先的に事業に着手するよう、先月末に国に対し要請したところです。

 次に、足羽川ダムについては、国が行う環境アセスメントの方法書の公告・縦覧が先月21日に終了し、現在、方法書の決定に向けた手続きが進められています。また、用地測量等の調査についても、平成20年度に完成する予定です。県としては、早期完成を目指し、国の事業の推進に協力してまいりたいと考えております。

 ところで、平成16年から始まった足羽川の激甚災害対策特別緊急事業については、河床掘削も9割以上完了し、木田橋は今年の12月、泉橋は来年2月の完成に向けて工事が行われるなど、全体として20年度の完成を目指しております。この工事で両岸約12キロメートルにわたって設けた工事用道路や荒川との合流部の仮設橋については、散策やジョギングなどに活用できるよう、遊歩道として整備を進めていきます。さらに、堰などを設けて親水環境を増やすことを検討しています。

 次に、公共工事の入札制度の改革について申し上げます。

 入札監視委員会等の意見も踏まえ、競争性・透明性をさらに高めるため、平成20年度から、250万円を超える工事は原則として一般競争入札の対象とするなどの改革を実施します。

 なお、地元の建設業者は、地域経済を支え、災害時や除雪などでの緊急出動など、県民の安全・安心にとって重要な役割を担っております。こうしたことから、競争性や透明性を確保しつつ、地域要件を設けながら地元業者の育成にも配慮いたします。

 最後に、「元気な県政」のうち、環境については、今年が京都議定書で定められた5年間の第一約束期間のスタートの年であり、7月に日本で開催されるサミットでも主要テーマとなるなど、温暖化対策の大きな節目となる年であります。今年の秋を目標に新しい県の環境基本計画の策定を進めておりますが、たとえば「生活環境」の分野では、県民の自動車の利用状況を調査把握して、できるだけ車に頼らないための工夫や方策を考え、また「自然環境」の分野では、昔ならどこにでもいた生き物が、今でも身近な所で見られるような、福井の自然を豊かにする方策などを盛り込み、新しい環境像を示せる計画にしたいと考えております。

 次に、ふくいブランドの創造であります。

 恐竜博物館では、アジアにおける恐竜研究の拠点として、研究レベルの向上と世界規模のネットワークづくりを進めており、来年度は、タイに加え中国での共同調査を行います。また、来月22日と23日の両日、アジアの恐竜化石について、世界の研究者が会する「国際恐竜シンポジウム2008」を開きます。

 また、恐竜博物館や発掘現場を含めた九頭竜川流域一帯について、恐竜モニュメントの設置や勝山駅前広場の整備などを行う「恐竜渓谷(ダイノソーバレー)」構想を具体的に進めていきたいと考えております。

 最後に、「ちりとてちん」の放映も、あと1か月余りとなりました。福井県の名前が全国に知れわたり、また、「箸のふるさと館」の来館者数は前年の約5倍、塗箸の売上げも大幅に増加するなど、成果が表れています。今後も女流落語選手権を開催するなど、この流れを継続していきたいと考えています。

 以上、主要施策と課題について概略を申し上げましたが、平成20年度当初予算案の規模は、

  一般会計  4,636億2,808万円余

  特別会計    161億4,242万円余

  企業会計    298億6,062万円余

   計    5,096億3,113万円余

となった次第であります。

 また、これに見合う歳入予算については、確実に収入が見込まれる県税1,157億8,449万円余、地方交付税1,145億円を計上いたしましたほか、国庫支出金692億9,238万円余を計上するとともに、不足する財源については、県債管理基金等を取り崩して措置することといたしました。

 次に第30号議案についてご説明申し上げます。

 75歳以上の高齢者を対象とした新たな医療保険制度である後期高齢者医療制度が4月から開始されるのに伴い、保険者である広域連合の財政の安定化を図るため、法に基づき、基金を設置するものであります。

 その他の議案につきましては、それぞれ記載の理由に基づき提案いたした次第であります。

 以上、私の県政に対する所信の一端と県政の重要課題等について申し上げました。なにとぞご審議のうえ、妥当なご決議を賜りますようお願い申し上げます。

 

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